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解説記事2021年05月24日 未公開裁決事例紹介 執行役員兼務も退職手当の全額が特定役員退職手当に(2021年5月24日号・№883)

未公開裁決事例紹介
執行役員兼務も退職手当の全額が特定役員退職手当に
審判所、代表取締役の地位で業務執行したものと評価


○各代表取締役に対して支給した各退職手当の全額が特定役員退職手当等に該当するか否かが争われた事案。国税不服審判所は、仮に、代表取締役が使用人としての業務に属する仕事に従事したとしても、それは代表取締役としての地位で業務を執行したものと評価すべきであり、また、各代表取締役が執行役員を兼務したとしても、その業務は使用人たる執行役員としてではなく、代表取締役としての地位で行われたとみるのが相当であるから、請求人が各代表取締役に対して支給した退職手当は、その全額が特定役員退職手当等に該当するとの判断を示した(東裁(諸)令2第15号、令和2年9月3日、棄却)。

主  文

 審査請求をいずれも棄却する。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の代表取締役であった者に対し支給した退職手当について、特定役員退職手当等と特定役員退職手当等以外の退職手当等に区分して源泉所得税等の計算を行い納付したところ、原処分庁が、当該退職手当は、全て特定役員退職手当等に該当するとして源泉所得税等の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該退職手当については、特定役員退職手当等以外の退職手当が含まれており、全てが特定役員退職手当等に該当するとの認定は誤りであるとして原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実
 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の各事実が認められる。
イ 請求人は、昭和56年7月7日に設立された××××××を目的とする株式会社であり、監査役会設置会社、取締役会設置会社である。
ロ 請求人は、会社業務の執行体制を明確にし、その的確かつ迅速な執行の確保に資することを目的として、平成14年7月3日付で執行役員規程を定め、執行役員制度を導入した。請求人の執行役員規程には、取締役会が、会社の業務の執行を担当する役員として執行役員を選任する旨、また、取締役は執行役員を兼ねることができる旨などが定められている。
ハ 請求人の代表取締役であった×××××、××××及び×××は、それぞれ、平成23年10月1日、平成25年4月1日及び平成27年4月1日に請求人の代表取締役に就任し(以下、上記3名を併せて「本件各代表取締役」という。)、×××××及び××××は平成27年3月31日に、×××は平成30年3月31日にそれぞれ退任した。本件各代表取締役は、いずれも代表取締役の就任日に、取締役会において執行役員に選任され、就任した。
ニ 請求人は、本件各代表取締役が代表取締役を退任した際に、次表(編注:略)のとおり退職手当(以下「本件各退職手当」という。)を本件各代表取締役に支給し、源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(以下「源泉所得税等」という。)については、支給金額を所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等と特定役員退職手当等以外の退職手当(以下「一般退職手当等」という。)に区分して税額を計算した。
(4)審査請求に至る経緯
イ 原処分庁は、令和元年6月26日付で、請求人が本件各代表取締役に支給した本件各退職手当は、全て代表取締役の業務に係る退職手当であり、所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等に該当するとして、別表の「納税告知処分」欄及び「賦課決定処分」欄のとおり、平成27年4月分及び平成30年4月分の源泉所得税等に係る各納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」という。)及び不納付加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を行った。
ロ 請求人は、令和元年9月25日、本件各納税告知処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、審査請求をした。

争点および主張

(1)本件各代表取締役に対して支給した本件各退職手当の全額が、所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等に該当するか否か。
(2)本件各納税告知処分は、信義誠実の原則(以下「信義則」という。)に反し、違法であるか否か(略)。
 (当事者の主張はのとおり)

【表】当事者の主張(争点1(本件各代表取締役に対して支給した本件各退職手当の全額が、所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等に該当するか否か。)について)

原処分庁 請 求 人
 本件各退職手当は、次のとおり、執行役員分を含めたその総額が代表取締役として勤務した期間に対応する退職手当として支払を受けるものと認められるから、本件各退職手当の全額が特定役員退職手当等に該当する。
イ 本件各代表取締役の請求人における代表取締役としての勤続年数は、いずれも5年以下であるところ、請求人の定めた執行役員規程によれば、請求人の執行役員とは、定められた範囲内において請求人の業務の執行を担当する役員であり、請求人の取締役は執行役員を兼ねることができるとされている。

ロ そして、請求人は、本件各代表取締役の業務分担について代表取締役と執行役員とに区分しておらず、また、請求人は、取締役会設置会社であるところ、会社法第363条第1項第1号は、代表取締役は取締役会設置会社の業務を執行する旨規定していることからすれば、本件各代表取締役の執行役員としての業務は請求人における代表取締役としての業務に内包されている。
 本件各退職手当は、取締役部分と執行役員部分とを合理的な計算により区分しており、次のとおり、執行役員部分については、特定役員退職手当等に該当しない。

イ 特定役員退職手当等とは、退職手当のうち、法人税法第2条第15号に規定する役員としての勤続年数が5年以下である者が、役員としての勤続年数に対応する退職手当として支払を受けるものをいうところ、執行役員は同号に規定する役員に該当しないから、執行役員としての勤続年数に対応する退職手当として支払を受けるものは、特定役員退職手当等には該当しない。
ロ 本件各代表取締役の請求人における取締役としての地位は、法人税法第2条第15号に規定する役員に該当するが、執行役員としての地位は、同号の役員には該当しない。




ハ なお、仮に、本件各代表取締役に対して一般退職手当等として支給した金額が特定役員退職手当等に該当するのであれば、請求人は当該金額について株主総会の決議を経ていないことから、法人税法上の過大退職給与となり、損金の額に算入されないこととなるが、原処分庁は、請求人の法人税について、これを是正する課税処分を行っていないから、執行役員部分に係る退職手当は、一般退職手当等に該当する。

審判所の判断

(1)争点1(本件各代表取締役に対して支給した本件各退職手当の全額が、所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等に該当するか否か。)について
 イ 検討

(イ)本件各代表取締役は、いずれも、法人税法第2条第15号の役員に該当することが明らかであり、また、請求人の代表取締役に就任していた期間が5年以下であるから、所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等の適用対象となる役員等に該当する。
  もっとも、所得税法第30条第4項は、特定役員退職手当等とは、役員等が、退職手当等の支払をする者から役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものをいう旨規定していることから、本件各退職手当の全額が特定役員退職手当等に該当するというためには、その全額が法人税法第2条第15号の役員としての請求人における勤続年数に対応する退職手当等として支払われたものであることが必要である。そこで、以下、この点について検討する。
(ロ)株式会社の取締役は、株主総会の決議によって選任され(会社法第329条《選任》第1項)、株式会社と取締役の関係は、委任に関する規定に従うこととなっており(同法第330条《株式会社と役員等との関係》)、また、取締役は、会社のために忠実にその職務を行う義務を負っている(同法第355条《忠実義務》)。このようなことからすれば、取締役は法人の従業員である一般の使用人とは異なる地位にあるといえる。もっとも、取締役であっても、使用人としての地位を兼務することはあり得る。
  しかし、取締役会設置会社においては、取締役会は取締役の中から代表取締役を選定しなければならないとされているところ、代表取締役は、会社の業務を執行し、会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有するのであるから、代表取締役は、会社の目的たる事業の遂行に専念すべき者であって、使用人を指揮監督する立場にある者として、会社の使用人と両立し得ない地位にあるといえる(なお、法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第6項に規定する「使用人としての職務を有する役員」についても、当該役員から除かれるものとして、同法施行令第71条《使用人兼務役員とされない役員》第1項第1号において、代表取締役が掲げられている。)。そうすると、仮に、代表取締役が使用人としての業務に属する仕事に従事したとしても、それは使用人としての地位ではなく、代表取締役としての地位、すなわち、法人税法第2条第15号の役員としての地位により業務を執行したものと評価すべきであるから、その勤続年数に対応する退職手当等は、全額が、所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等に該当することになる。
(ハ)上記のとおり、本件各代表取締役は執行役員に就任しているところ、執行役員は、会社法その他の法令により定められたものではなく、法的には使用人に該当すると解されている。しかしながら、上記(ロ)で述べたとおり、本件各代表取締役が執行役員を兼務したとしても、その業務は、使用人たる執行役員としてではなく、代表取締役としての地位で行われたとみるのが相当である。よって、本件各退職手当は、代表取締役としての勤続年数に対応するもの以外のものはなく、その全額が所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等に該当する。
 ロ 請求人の主張について
(イ)請求人は、本件各代表取締役の請求人における執行役員としての地位は、法人税法第2条第15号に規定する役員に該当しないから、本件各代表取締役に対し、執行役員の地位に対して支払われた退職手当は、一般退職手当等に該当する旨主張する。
  しかしながら、本件各代表取締役が請求人における執行役員制度に基づいて執行役員を兼務していたとしても、本件各代表取締役が役員以外の地位で行っていたとは認められないから、本件各退職手当は、その全額が特定役員退職手当等に該当する。
  したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ)また、請求人は、仮に、本件各代表取締役に対し一般退職手当等に区分して支給した金額が特定役員退職手当等に該当するならば、当該金額に係る株主総会の決議を経ていないことを理由に法人税の計算上損金の額に算入されないこととなるところ、原処分庁は、これを是正する課税処分を行っていないから、当該金額は一般退職手当等に該当する旨主張する。
  しかしながら、退職手当を支給した法人の法人税に関し、いかなる課税処分が行われているかについては、当該退職手当が所得税法第30条第4項に規定する特定役員退職手当等に該当するか否かの判断を左右するものではないから、この点に関する請求人の主張にも理由がない。
(2)争点2(本件各納税告知処分は、信義則に反し、違法であるか否か。)について(略)
(3)本件各納税告知処分の適法性について(略)
(4)本件各賦課決定処分の適法性について(略)
(5)結論

 よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり裁決する。

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