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解説記事2021年07月19日 税制改正解説 令和3年度における納税環境整備に関する改正について(2)(2021年7月19日号・№891)

税制改正解説
令和3年度における納税環境整備に関する改正について(2)
 和栗佑介

二 電子帳簿等保存制度の見直し

Ⅰ 改正前の制度の概要

1 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度の概要
(1)国税関係帳簿の電磁的記録による保存等

 国税に関する法律の規定により国税関係帳簿書類の保存をしなければならないこととされている者(以下「保存義務者」という。)は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、税務署長等の承認を受けたときは、次の要件の下、その電磁的記録の備付け及び保存をもってその帳簿の備付け及び保存に代えることができることとされていた(旧電子帳簿保存法4①、旧電子帳簿保存法規則3①)。
① 電磁的記録の訂正・削除・追加の履歴の確保
  国税関係帳簿に係る電子計算機処理に、次に掲げる要件を満たす電子計算機処理システムを使用することとされていた(旧電子帳簿保存法規則3①一)。
 イ その国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
 ロ その国税関係帳簿に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合には、その事実を確認することができること。
② 各帳簿間での記録事項の相互関連性の確保
  国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項とその国税関係帳簿に関連する国税関係帳簿(以下「関連国税関係帳簿」という。)の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則3①二)。
③ 電子計算機処理システムの概要書等の備付け(旧電子帳簿保存法規則3①三)
④ 見読可能装置の備付け等(旧電子帳簿保存法規則3①四)
⑤ 検索機能の確保
  国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則3①五)。
 イ 取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索の条件として設定することができること。
 ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
 ハ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
(2)国税関係書類の電磁的記録による保存
 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、税務署長等の承認を受けたときは、次の要件の下、その電磁的記録の保存をもってその書類の保存に代えることができることとされていた(旧電子帳簿保存法4②、旧電子帳簿保存法規則3②)。
① 電子計算機処理システムの概要書等の備付け(旧電子帳簿保存法規則3①三、②)
② 見読可能装置の備付け等(旧電子帳簿保存法規則3①四、②)
③ 検索機能の確保
  国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則3①五、②)。
 イ 取引年月日その他の日付(記録項目)を検索の条件として設定することができること。
 ロ 日付に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
(3)国税関係書類に係るスキャナ保存
 保存義務者は、国税関係書類(決算関係書類を除く。)の全部又は一部について、その記載事項をスキャナにより電磁的記録に記録する場合であって、税務署長等の承認を受けたときは、次の要件の下、その電磁的記録の保存をもってその書類の保存に代えることができることとされていた(旧電子帳簿保存法4③、旧電子帳簿保存法規則3⑤)。
① スキャナによる入力要件
  国税関係書類に係るスキャナ保存に当たっては、次のイ又はロの方法により入力することとされていた(旧電子帳簿保存法規則3⑤一)。
 イ 国税関係書類のスキャナでの読み取りを、国税関係書類の作成・受領後、速やかに行うこと。
 ロ 国税関係書類のスキャナでの読み取りを、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと。
② 電子計算機処理システムの要件
  上記①の入力に当たっては、次のイからニまでの要件を満たす電子計算機処理システムを使用することとされていた(旧電子帳簿保存法規則3⑤二)。
 イ 一定以上の解像度・階調(旧電子帳簿保存法規則3⑤二イ)
 ロ タイムスタンプ     
  国税関係書類をスキャナで読み取る際に、一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に、一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付すこと(旧電子帳簿保存法規則3⑤二ロ)。
(注)国税関係書類を作成・受領する者(以下「受領者等」という。)が読み取りを行う場合には、その国税関係書類に受領者等が署名を行った上で、その作成・受領後、特に速やかに上記のタイムスタンプを付さなければならないこととされていた。
 ハ 読み取った際の解像度等の情報の保存(旧電子帳簿保存法規則3⑤二ハ)
 ニ ヴァージョン管理
  国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること(旧電子帳簿保存法規則3⑤二ニ)。
③ 入力者等の特定に係る要件
  国税関係書類に係る記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則3⑤三)。
④ 適正事務処理要件
  国税関係書類の作成・受領から入力までの各事務について、その適正な実施を確保するために必要なものとして次のイからハまでの事項に関する規程を定めるとともに、これに基づき処理することとされていた(旧電子帳簿保存法規則3⑤四)。
 イ 国税関係書類の作成・受領から入力までの相互に関連する各事務について、それぞれ別の者が行う体制(相互けん制要件)
(注)受領者等が国税関係書類の読み取りを行う場合には、作成・受領事務と読み取り事務をそれぞれ別の者が行うこととする要件が不要とされ、これに代え、受領者等以外の別の者が国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の確認を行うことが要件とされていた。
 ロ 各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続(定期検査要件)
 ハ 各事務に係る処理に不備があると認められた場合において、その報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制(再発防止要件)
 (注)小規模企業者に該当する保存義務者にあっては、上記ロの「定期的な検査」について税務代理人が行うこととしている場合は、上記イの「相互けん制要件」が不要とされていた。
⑤ スキャナで読み取りを行った国税関係書類と帳簿との関連性の確保 
  国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項とその国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則3⑤五)。
⑥ スキャナで読み取りを行った国税関係書類に係る電磁的記録の可視性の確保(旧電子帳簿保存法規則3⑤六)
⑦ 電子計算機処理システムの概要書等の備付け(旧電子帳簿保存法規則3①三、⑤七)
⑧ 検索機能の確保
  国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則3①五、⑤七)。
 イ 取引年月日その他の日付、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目を検索の条件として設定することができること。
 ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
 ハ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
⑨ スキャナ保存の適時入力方式
  スキャナ保存の承認を受けている保存義務者は、国税関係書類のうち国税庁長官が定める資金や物の流れに直結・連動しない書類(以下「一般書類」という。)のスキャナでの読み取りを行う場合には、スキャナによる入力要件(上記①)、大きさに関する情報の保存要件(上記②ハ)及び適正事務処理要件(上記④)以外の要件(カラー階調要件(上記②イ)にあっては、グレースケールによる読み取りで代替することも可。)を満たし、電磁的記録の保存に併せて、その電磁的記録の作成及び保存に関する事務の手続を明らかにした書類(これらの事務の責任者が定められているものに限る。)の備付けを行うことにより、適時の入力によるスキャナ保存をすることができることとされていた(旧電子帳簿保存法規則3⑥、平成17年国税庁告示第4号)。
 (注)上記②ロのタイムスタンプに係る電子計算機処理システムの要件について、受領者等が読み取りを行う場合にあっては、スキャナで読み取る際に必ずしもタイムスタンプを付す必要はなく、その国税関係書類に受領者等が署名を行った上で、その作成・受領後、特に速やかにタイムスタンプを付すことで足りることとされていた。
⑩ 過去分重要書類のスキャナ保存
  スキャナ保存の承認を受けている保存義務者は、国税関係書類の電磁的記録の保存をもってその国税関係書類の保存に代える日(基準日)前に作成・受領をした一般書類以外の国税関係書類(以下「過去分重要書類」という。)について、あらかじめ、その過去分重要書類の種類等を記載した適用届出書を税務署長等に提出した場合には、電磁的記録の保存に併せて、その電磁的記録の作成・保存に関する事務の手続を明らかにした書類(これらの事務の責任者が定められているものに限る。)の備付けを行った上で、スキャナ保存を行うことができることとされていた(旧電子帳簿保存法規則3⑦)。
  この過去分重要書類のスキャナ保存を行う場合の保存要件については、スキャナによる入力要件(上記①)並びに適正事務処理要件のうち相互けん制要件(上記④イ)及び再発防止要件(上記④ハ)が不要とされるほか、次の事項について要件が緩和されていた(旧電子帳簿保存法規則3⑦後段)。
 イ タイムスタンプ及び解像度等の情報の保存の要件
  過去分重要書類のスキャナ保存を行う場合には、タイムスタンプ(上記②ロ)及び解像度等の情報の保存(上記②ハ)の要件について、受領者等が読み取りを行う場合の措置(上記②ロ(注)及びハ(注))は適用されない。
 ロ 適正事務処理要件(定期検査要件)
  過去分重要書類のスキャナ保存を行う場合には、適正事務処理要件のうち定期検査要件(上記④ロ)について、入力事務に関するものに限定するとともに、検査を定期的に行うことは不要(一度で可)とされている。
(4)国税関係帳簿書類のCOMによる保存等
① 保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、税務署長等の承認を受けたときは、上記(1)①から⑤までの要件及び次の要件の下、その電磁的記録の備付け及びCOMの保存をもってその帳簿の備付け及び保存に代えることができることとされていた(旧電子帳簿保存法5①、旧電子帳簿保存法規則4①)。
 イ COMの作成過程等に関する書類の備付け
  COMの保存に併せて、次の書類の備付けを行うこととされていた(旧電子帳簿保存法規則4①一)。
(イ)COMの作成及び保存に関する事務手続を明らかにした書類
(ロ) 次に掲げる事項が記載された書類
  a 保存義務者のその国税関係帳簿に係る電磁的記録(上記(1)①イ及びロの事実及び内容に係るものを含む。)が真正に出力され、そのCOMが作成された旨を証する記載及び記名押印
  b そのCOMの作成責任者の記名押印
  c そのCOMの作成年月日
 ロ 索引簿の備付け
  COMの保存に併せて、国税関係帳簿の種類、取引年月日その他の日付及び勘定科目(勘定科目が主要な記録項目でない国税関係帳簿にあっては、勘定科目を除く。)を特定することによりこれらに対応するCOMを探し出すことができる索引簿の備付けを行うこととされていた(旧電子帳簿保存法規則4①二)。
 ハ COMへの索引の出力
  COMごとの記録事項の索引をその索引に係るCOMに出力しておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則4①三)。
 ニ マイクロフィルムリーダプリンタ等の備付け(旧電子帳簿保存法規則4①四)
 ホ 当初3年間におけるCOMの記録事項の検索機能の確保
  国税関係帳簿の保存期間の当初3年間について、次の(イ)又は(ロ)のいずれかの措置を講じておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則4①五)。
(イ)COMの保存に併せ、見読可能装置の備付け等(上記(1)④)及び検索機能の確保(上記(1)⑤)の要件に従って、そのCOMに係る電磁的記録の保存を行うこと。
(ロ)COMの記録事項の検索をすることができる機能(上記(1)⑤の検索機能に相当するものに限る。)を確保しておくこと。
② 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、税務署長等の承認を受けたときは、電子計算機処理システムの概要書等の備付け(上記(1)③)及び次の要件の下、そのCOMの保存をもってその書類の保存に代えることができることとされていた(旧電子帳簿保存法5②、旧電子帳簿保存法規則4②)。
 イ COMの作成過程等に関する書類の備付け(旧電子帳簿保存法規則4①一、②。内容については、上記①イと同様。)
 ロ 索引簿の備付け
  COMの保存に併せて、国税関係書類の種類及び取引年月日その他の日付を特定することによりこれらに対応するCOMを探し出すことができる索引簿の備付けを行うこととされていた(旧電子帳簿保存法規則4①二、②)。
 ハ COMへの索引の出力(旧電子帳簿保存法規則4①三、②。内容については、上記①ハと同様。)
 ニ マイクロフィルムリーダプリンタ等の備付け(旧電子帳簿保存法規則4①四、②。内容については、上記①ニと同様。)
 ホ 当初3年間におけるCOMの記録事項の検索機能の確保
  国税関係書類の保存期間の当初3年間について、次の(イ)又は(ロ)のいずれかの措置を講じておくこととされていた(旧電子帳簿保存法規則4①五、②)。
(イ)COMの保存に併せ、見読可能装置の備付け等(上記(2)②)及び検索機能の確保(上記(2)③)の要件に従って、そのCOMに係る電磁的記録の保存を行うこと。
(ロ)COMの記録事項の検索をすることができる機能(上記(2)③の検索機能に相当するものに限る。)を確保しておくこと。
③ 上記(1)又は(2)の承認を受けている保存義務者は、次の場合において、更に税務署長等の承認を受けたときは、上記①又は②に相当する要件の下、そのCOMの保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができることとされていた(旧電子帳簿保存法5③、旧電子帳簿保存法規則4③④)。
 イ 承認を受けている国税関係帳簿書類の全部又は一部について、その保存期間のうち下記2の承認申請書に記載することによりその国税関係帳簿書類に係る電磁的記録の保存をする期間としてあらかじめ特定する期間が経過した日以後の期間(COMの保存をもって電磁的記録の保存に代えようとする日以後の期間に限る。)につきCOMの保存をもって電磁的記録の保存に代えようとする場合
 ロ 承認を受けている国税関係帳簿書類の全部又は一部について、その保存期間の全期間(COMの保存をもって電磁的記録の保存に代えようとする日以後の期間に限る。)につきCOMの保存をもって電磁的記録の保存に代えようとする場合

2 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等の承認申請手続
 保存義務者は、国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等又はスキャナ保存の承認を受けようとする場合には、その承認を受けようとする国税関係帳簿の備付けを開始する日又は国税関係書類の電磁的記録の保存をもってその国税関係書類の保存に代える日(以下「保存等開始日」という。)の3月前までに、所定の事項を記載した承認申請書に必要書類を添付して税務署長等に提出することとされていた(旧電子帳簿保存法6①②)。
 ただし、新たに業務を開始した個人又は新設法人が承認を受けようとする場合において、その承認を受けようとする国税関係帳簿書類の全部又は一部が、その業務の開始の日から同日以後5月を経過する日までの間又は設立の日から同日以後6月を経過する日までの間に保存等開始日が到来するものであるときは、その業務の開始の日以後2月を経過する日又はその設立の日以後3月を経過する日までに承認申請書を提出することができることとされていた(旧電子帳簿保存法6①ただし書、②ただし書)。
 また、保存義務者は、その承認を受けている国税関係帳簿書類(以下「電磁的記録に係る承認済国税関係帳簿書類」という。)の全部又は一部について、その電磁的記録の保存等をやめようとする場合には、そのやめようとする電磁的記録に係る承認済国税関係帳簿書類の種類等を記載した届出書(以下「承認取りやめの届出書」という。)を税務署長等に提出しなければならないこととされていた(旧電子帳簿保存法7①前段)。この場合において、その承認取りやめの届出書の提出があったときは、その提出があった日以後は、その承認取りやめの届出書に係る電磁的記録に係る承認済国税関係帳簿書類については、その承認は、その効力を失うものとされていた(旧電子帳簿保存法7①後段)。
 なお、税務署長等は、電磁的記録に係る承認済国税関係帳簿書類の全部又は一部につき次のいずれかに該当する事実があるときは、その該当する事実がある電磁的記録に係る承認済国税関係帳簿書類について、その承認を取り消すことができることとされていた(旧電子帳簿保存法8①)。
(1)その電磁的記録の備付け又は保存が行われていないこと。
(2)その電磁的記録の備付け又は保存が所定の要件に従って行われていないこと。
 (注)国税関係帳簿書類のCOMによる保存等の承認申請手続についても、上記と同様とされている(旧電子帳簿保存法9)。

3 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の概要
 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、一定の要件に従って、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないこととされている(旧電子帳簿保存法10)。ただし、その要件に従って、その電磁的記録を出力することにより作成した書面又はCOMを保存する場合は、この限りでないこととされていた(旧電子帳簿保存法10ただし書)。
 具体的には、上記の保存義務者は、電子取引を行った場合には、書面又はCOMに出力して保存する場合を除き、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を、その取引情報の受領が書面により行われたとした場合又はその取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、その書面を保存すべきこととなる場所に、その書面を保存すべきこととなる期間、次の(1)に掲げる真実性の確保のための措置のいずれかを行い、(2)の可視性の確保、(3)の電子計算機処理システムの概要書等の備付け及び(4)の検索機能の確保を行って保存しなければならないこととされていた(旧電子帳簿保存法10、旧電子帳簿保存法規則8①)。
(注1)上記の「電磁的記録を出力することにより作成した書面」を保存する保存義務者は、その書面を、上記の場所に、上記の期間、整理して保存しなければならないこととされていた。この場合においては、その書面は、整然とした形式及び明瞭な状態で出力しなければならないこととされていた(旧電子帳簿保存法規則8②)。
(注2)上記の電磁的記録をCOMに出力して保存する保存義務者は、そのCOMを、上記の場所に、上記の期間、上記1(4)②イからニまでの要件(上記1(4)②イの要件については、COMの作成及び保存に関する事務手続を明らかにした書類の備付けを除く。)に従って保存しなければならないこととされていた(旧電子帳簿保存法規則8③)。
(1)真実性の確保
① 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、その取引情報の授受を行うこと(旧電子帳簿保存法規則8①一)。
② 電子取引の取引情報の授受後遅滞なく、その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、その電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと(旧電子帳簿保存法規則8①二)。
③ 次の要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して、電子取引の取引情報の授受及びその電磁的記録の保存を行うこと(旧電子帳簿保存法規則8①三)。
 イ その電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
 ロ その電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
④ その電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、その規程に沿った運用を行い、その電磁的記録の保存に併せてその規程の備付けを行うこと(旧電子帳簿保存法規則8①四)。
(2)可視性の確保(見読可能装置の備付け等)
 その電磁的記録の保存をする場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと(旧電子帳簿保存法規則3①四、8①)。
(3)電子計算機処理システムの概要書等の備付け
 自社開発のプログラムを使用する場合には、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に併せて、その電磁的記録に係る電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付けを行うこと(旧電子帳簿保存法規則3①三イ、3⑤七、8①)。
(4)検索機能の確保
 次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと(旧電子帳簿保存法規則3①五、3⑤七、8①)。
① 取引年月日その他の日付、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目を検索の条件として設定することができること。
② 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
③ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

4 他の国税に関する法律の規定の適用
(1)
国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等の承認(上記1(1)(4)参照)を受けているその国税関係帳簿書類に係る電磁的記録又はCOMに対する他の国税に関する法律の規定の適用については、その電磁的記録又はCOMをその国税関係帳簿書類とみなすこととされていた(旧電子帳簿保存法11①)。
(2)保存が行われている電子取引の取引情報に係る電磁的記録又はその電磁的記録を出力することにより作成したCOMに対する他の国税に関する法律の規定の適用については、その電磁的記録又はCOMを国税関係書類以外の書類とみなすこととされていた(旧電子帳簿保存法11②)。
(3)上記1の国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等又は上記3の電子取引の取引情報に係る電磁的記録等の保存を行っている青色申告者若しくは青色申告法人又は通算予定法人について、これらの保存等が、それぞれの要件(上記13参照)に従って行われていないときは、青色申告の承認申請却下若しくは承認取消し又は通算予定法人に係る通算承認の承認申請却下の事由に該当することとされていた(旧電子帳簿保存法11③)。

Ⅱ 改正の内容

 電子帳簿等保存及びスキャナ保存制度については、近年、その利用促進のための改正が行われ、利用件数は堅調に増加しているが、その伸びしろは依然大きいものと考えられており、平成29年の政府税制調査会の報告(経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告②(平成29年11月20日))では、「社会のデータ活用の促進や納税者の文書保存に係る負担軽減を図る観点から、当該制度の利用促進のための方策について検討を行うべきである。ただしその際、適正課税の観点から、帳簿書類の正確性を担保する仕組みにも配意が必要」との指摘がされ、その後の「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」(令和元年9月26日)においても、「ICTの活用により、企業等の業務プロセスの簡素化・効率化や誤りの未然防止等を図る観点から、企業等の規模や業種に応じた経理・税務手続の実態を踏まえた上で、データの適正性の確保にも配慮しつつ、電子帳簿等保存制度の見直しを進めるべきである。」との指摘がされていた。
 そのような中、政府税制調査会の総会では、こうした指摘を踏まえ、ウィズコロナ時代における税務手続の電子化や、グローバル化・デジタル化の進む経済社会における適正課税のあり方について更に議論が行われ、同調査会の下に、外部有識者も交えて設置された「納税環境整備に関する専門家会合」において、「納税環境整備に関する専門家会合の議論の報告(令和2年11月13日政府税制調査会資料)」として、総会への報告が行われたが、その中では、電子帳簿保存法の要件や承認制度が電子帳簿等保存制度の利用促進を阻害している可能性について指摘がされている。
 また、同報告においては、スキャナ保存制度についても、更なる利便性向上のための要件緩和や、その要件緩和に当たっての改ざん等の不正を防止するためのペナルティーの必要性について指摘がされるとともに、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の重要性についても指摘がされている。
 今回の改正においては、こうした政府税制調査会における指摘や経済社会のデジタル化の状況を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資する観点から、以下で述べるとおり、帳簿書類等を電子的に保存する際の手続について、その適正性を確保しつつ、抜本的に簡素化するための各種の措置を講ずることとされた。

1 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度の見直し
(1)承認制度の廃止

 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度の利用に当たっての事務負担を軽減する観点から、その承認制度が廃止された(旧電子帳簿保存法6〜9、旧電子帳簿保存法規則5〜7)。これにより、これまで国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度の適用に当たって必要とされてきた事前手続が不要となり、下記(2)の国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存要件等を満たすことにより本制度を利用することが可能となる(電子帳簿保存法4①②、5)。
(2)国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存方法の見直し
① 対象となる国税関係帳簿の範囲の見直し
  個人事業者については、現状、その7割が簡易簿記(単式簿記、現金主義)や白色申告である中、こうした方が手間・費用をかけずにどのように正規の簿記による青色申告に移行することを促進していくかといったことが課題とされており、「納税環境整備に関する専門家会合の議論の報告(令和2年11月13日政府税制調査会資料)」においても「制度面で一定の移行期間は必要ではあると思うが、正規簿記による青色申告に個人事業者を相当程度誘導するような制度改正、義務化が必要なのではないか。」といった指摘がされていた。
  今回の改正においては、こうした指摘を踏まえ、正規の簿記による青色申告を促進する観点から、国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等について、対象となる国税関係帳簿が正規の簿記の原則又は複式簿記の原則に従って記録されるものに限定された。
  具体的には、国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等について、所得税法又は法人税法の規定により備付け及び保存をしなければならないこととされている帳簿であって、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、正規の簿記の原則(法人税法の規定により備付け及び保存をしなければならないこととされている帳簿にあっては、複式簿記の原則)に従い、整然と、かつ、明瞭に記録されているもの以外のものが、対象となる国税関係帳簿の範囲から除外された(電子帳簿保存法4①、電子帳簿保存法規則2①)。
② 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存要件の見直し
  多くの中小事業者は電子的に帳簿を作成しているが、電子帳簿保存法の要件を満たすことができず、結局、印刷して電子的に作成された紙の帳簿として保存しているのが実情であり、現状において「電子的に作成された紙の帳簿」が不正防止の点で必ずしも有効に機能しているわけでもなく、それが電子データの状態のまま保存されたとしても、適正な税務執行の面で現状と比べ大きな支障が生じることはないと考えられる実態を踏まえ、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存については、電子計算機処理システムの概要書等の備付け等の最低限の要件により可能とされ、改正前において求められていた電磁的記録の訂正・削除・追加の履歴の確保(上記Ⅰ1(1)①参照)や検索機能の確保(上記Ⅰ1(1)⑤参照)といった要件が不要とされた(電子帳簿保存法4①②、5、電子帳簿保存法規則2②③、3①②④)。
  また、税務調査の適正性・効率性を一定程度確保する観点から、上記の国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等を可能とする「最低限の要件」として、「国税に関する法律の規定によるその国税関係帳簿書類に係る電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしておくこと」が求められることとされた。なお、この求めに応じなかった場合や不十分な状態でデータが提供された場合には、保存要件を満たしていないことになり、その電磁的記録等は国税関係帳簿書類として扱われないこととなる(電子帳簿保存法8①。下記4(1)①参照。)。
  上記の具体的な改正後の要件については、保存対象(国税関係帳簿・国税関係書類)及び保存方法(電磁的記録・COM)の区分に応じて次のとおりとされている。
 イ 国税関係帳簿の電磁的記録による保存等
  保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、次の要件の下、その電磁的記録の備付け及び保存をもってその帳簿の備付け及び保存に代えることができることとされた(電子帳簿保存法4①、電子帳簿保存法規則2②)。
  また、改正前に求められていた電磁的記録の訂正・削除・追加の履歴の確保(上記Ⅰ1(1)①参照)、各帳簿間での記録事項の相互関連性の確保(上記Ⅰ1(1)②参照)及び検索機能の確保(上記Ⅰ1(1)⑤参照)の要件は不要とされるが、これらの要件は一部見直しがされた上で、優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良な国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の要件(下記(3)②イ参照)として位置付けられている。
  なお、これらの改正前に求められていた要件に相当する要件の全てに従ってその電磁的記録の保存等を行っている場合には、下記(ハ)の要件は不要とされる(電子帳簿保存法規則2②柱書)。
 (イ)電子計算機処理システムの概要書等の備付け(電子帳簿保存法規則2②一)
 (ロ)見読可能装置の備付け等(電子帳簿保存法規則2②二)
 (ハ)ダウンロードの求めに応じること(電子帳簿保存法規則2②三)。
 ロ 国税関係書類の電磁的記録による保存
  保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、上記イ(イ)から(ハ)までに相当する要件の下、その電磁的記録の保存をもってその書類の保存に代えることができることとされた(電子帳簿保存法4②、電子帳簿保存法規則2③)。
  また、改正前に求められていた検索機能の確保(上記Ⅰ1(2)③参照)の要件は不要とされるが、これに相当する要件に従ってその電磁的記録の保存を行っている場合には、上記イ(ハ)に相当する要件は不要とされる(電子帳簿保存法規則2③後段)。
 ハ 国税関係帳簿のCOMによる保存等
  保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、上記イ(イ)から(ハ)までに相当する要件及び次の要件の下、その電磁的記録の備付け及びCOMの保存をもってその帳簿の備付け及び保存に代えることができることとされた(電子帳簿保存法5①、電子帳簿保存法規則3①)。
  なお、これらの改正前に求められていた要件に相当する要件の全てに従ってそのCOMの保存等を行っている場合には、上記イ(ハ)の要件は不要とされる(電子帳簿保存法規則3①柱書)。
 (イ)COMの作成過程等に関する書類の備付け(電子帳簿保存法規則3①一)
  要件の内容については、上記イのとおり、改正前に求められていた電磁的記録の訂正・削除・追加の履歴の確保(上記Ⅰ1(1)①参照)の要件が不要とされたことに伴う備付書類の記載事項の整備がされたほかは(電子帳簿保存法規則3①一ロ(1))、改正前と同様とされている(上記Ⅰ1(4)①イ参照)。
 (ロ)マイクロフィルムリーダプリンタ等の備付け(電子帳簿保存法規則3①二)
 ニ 国税関係書類のCOMによる保存
  保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、上記イ(イ)及び(ハ)に相当する要件及び上記ハ(イ)及び(ロ)に相当する要件の下、そのCOMの保存をもってその書類の保存に代えることができることされた(電子帳簿保存法5②、電子帳簿保存法規則3②)。
  また、改正前に求められていた索引簿の備付け(上記Ⅰ1(4)②ロ参照)、COMへの索引の出力(上記Ⅰ1(4)②ハ参照)及び当初3年間におけるCOMの記録事項の検索機能の確保(上記Ⅰ1(4)②ホ参照)の要件は不要とされるが、これらに相当する要件に従ってそのCOMの保存を行っている場合には、上記イ(ハ)の要件は不要とされる(電子帳簿保存法規則3②後段)。
 ホ 国税関係帳簿又は国税関係書類の電磁的記録による保存からCOMによる保存への移行
  上記イの国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもってその国税関係帳簿の備付け及び保存に代えている保存義務者又は上記ロの国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもってその国税関係書類の保存に代えている保存義務者は、一定の場合には、その国税関係帳簿又はその国税関係書類の全部又は一部について、上記ハ又はニに相当する要件の下、そのCOMの保存をもってこれらの電磁的記録の保存に代えることができることとされた(電子帳簿保存法5③、電子帳簿保存法規則3④)。
(3)優良な電子帳簿保存制度(優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置)の整備
 今回の改正においては、上記(2)②で述べたとおり、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等の要件が大幅に緩和されたが、記帳水準の向上に資する観点から、事後検証可能性の高い改正前の電子帳簿保存法の要件を満たす電子帳簿については、いわば経理誤りを是正しやすい環境を自ら整えているものといえるため、他の最低限の要件のみを満たす電子帳簿との差別化を図り、その普及を進めていく必要がある。そのため、その改正前の電子帳簿保存法の要件に相当する要件を満たした電子帳簿については、「優良な電子帳簿」と位置付けて、その電子帳簿に記録された事項に関して修正申告書の提出又は更正(以下「修正申告等」という。)があった場合でも、その申告漏れについて課される過少申告加算税の額を軽減するインセンティブ措置が設けられた。
 具体的には、一定の国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存又はその電磁的記録の備付け及びCOMの保存が、国税の納税義務の適正な履行に資するものとして一定の要件を満たしている場合におけるその電磁的記録又はCOM(一定の日以後引き続きその要件を満たして備付け及び保存が行われているものに限る。)に記録された事項に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税の額については、通常課される過少申告加算税の金額からその修正申告等に係る過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実でその修正申告等の基因となるその電磁的記録又はCOMに記録された事項に係るもの以外のもの(以下「電磁的記録等に記録された事項に係るもの以外の事実」という。)があるときは、その電磁的記録等に記録された事項に係るもの以外の事実に基づく税額を控除した税額)の5%に相当する金額を控除した金額とすることとされた(電子帳簿保存法8④、電子帳簿保存法令2、3、電子帳簿保存法規則5①〜⑤)。ただし、本措置は、「優良な電子帳簿」を促進するためのインセンティブ措置であるため、その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されたものがあるときは、適用しないこととされている(電子帳簿保存法8④ただし書)。
① 対象となる優良な国税関係帳簿の範囲
  本措置の対象となる「一定の国税関係帳簿」とは、修正申告等の基因となる事項に係る次の帳簿をいうこととされている(電子帳簿保存法規則5①)。
(注)上記の「一定の国税関係帳簿」については、上記(2)②の要件で保存等が行われている必要がある(電子帳簿保存法8④一・二)。
 イ 所得税法上の青色申告者が保存しなければならないこととされる仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿(所規58①、63①)
 ロ 法人税法上の青色申告法人が保存しなければならないこととされる仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿(法規54、59①)
 ハ 消費税法上の事業者が保存しなければならないこととされる次の帳簿
 (イ)課税仕入れの税額の控除に係る帳簿(消法30⑦⑧一)
 (ロ)特定課税仕入れの税額の控除に係る帳簿(消法30⑦⑧二)
 (ハ)課税貨物の引取りの税額の控除に係る帳簿(消法30⑦⑧三)
 (ニ)売上対価の返還等に係る帳簿(消法38②)
 (ホ)特定課税仕入れの対価の返還等に係る帳簿 (消法38の2②)
 (ヘ)資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物の保税地域からの引取りに関する事項に係る帳簿(消法58)
  保存義務者は、あらかじめ、これらの帳簿(以下「特例国税関係帳簿」という。)に係る電磁的記録又はCOMに記録された事項に関し修正申告等があった場合には本措置の適用を受ける旨及び特例国税関係帳簿の種類等を記載した届出書(以下「軽減加算税適用届出書」という。)を納税地等の所轄税務署長(上記ハ(ハ)及び(ヘ)(課税貨物の保税地域からの引取りに関する事項に係るものに限る。)の帳簿については、納税地等の所轄税関長。以下「所轄税務署長等」という。)に提出している必要がある(電子帳簿保存法規則5①)。
  なお、保存義務者は、本措置の適用を受けることをやめようとする場合には、あらかじめ、その旨等を記載した届出書(以下「軽減加算税取りやめ届出書」という。)を所轄税務署長等に提出しなければならないこととされており(電子帳簿保存法規則5②前段)、その軽減加算税取りやめ届出書の提出があったときは、その提出があった日の属する課税期間以後の課税期間については、軽減加算税適用届出書は、その効力を失うこととされている(電子帳簿保存法規則5②後段)。
  また、保存義務者は、軽減加算税適用届出書に記載した事項の変更をしようとする場合には、あらかじめ、その旨等を記載した届出書を所轄税務署長等に提出しなければならないこととされている(電子帳簿保存法規則5③)。
② 対象となる優良な国税関係帳簿の保存等の要件
  上記の「国税の納税義務の適正な履行に資するものとして一定の要件」とは、次に掲げる保存義務者の区分に応じそれぞれ次に定める要件とされた(電子帳簿保存法規則5⑤)。
 イ 上記(2)②イの国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもってその国税関係帳簿の備付け及び保存に代えている保存義務者……次の要件(その保存義務者が国税に関する法律の規定によるその国税関係帳簿に係る電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、下記(ハ)b及びcの要件を除く(下記2(2)③参照))。
(イ)電磁的記録の訂正・削除・追加の履歴の確保(改正前の上記Ⅰ1(1)①に相当する要件)
  国税関係帳簿に係る電子計算機処理に、次に掲げる要件を満たす電子計算機処理システムを使用することとされている(電子帳簿保存法規則5⑤一イ)。
 a その国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
 b その国税関係帳簿に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合には、その事実を確認することができること。
(ロ)各帳簿間での記録事項の相互関連性の確保(改正前の上記Ⅰ1(1)②に相当する要件)
  国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項と関連国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこととされている(電子帳簿保存法規則5⑤一ロ)。
(ハ)検索機能の確保(改正前の上記Ⅰ1(1)⑤に相当する要件)
  国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこととされている(電子帳簿保存法規則5⑤一ハ)。
  a 取引年月日、取引金額及び取引先(記録項目)を検索の条件として設定することができること。
  b 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
  c 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
(注)改正前の検索機能の確保(上記Ⅰ1(1)⑤参照)については、「取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目」を検索の条件として設定することができることが必要とされていたが、上記aのとおり「取引年月日、取引金額及び取引先」に記録項目が限定された(下記2(2)③参照)。
 ロ 上記(2)②ハの国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及びCOMの保存をもってその国税関係帳簿の備付け及び保存に代えている保存義務者……次の要件
 (イ)上記イの要件(電子帳簿保存法規則5⑤二イ)
 (ロ)電磁的記録の訂正・削除・追加の履歴の確保に関する事項を含む備付書類の記載要件(上記(2)②ハ(イ)参照)
  上記(2)②ハ(イ)の電磁的記録に上記イ(イ)a及びbの事実及び内容に係るものを含めた上で記載することとされている(電子帳簿保存法規則5⑤二ロ)。
 (ハ)索引簿の備付け(改正前の上記Ⅰ1(4)①ロに相当する要件)
  COMの保存に併せて、国税関係帳簿の種類及び取引年月日その他の日付を特定することによりこれらに対応するCOMを探し出すことができる索引簿の備付けを行うこととされている(電子帳簿保存法規則5⑤二ハ)。
  なお、検索機能の確保の要件の見直し(上記イ(ハ)(注)参照)に伴い、勘定科目の特定が不要とされている。
 (ニ)COMへの索引の出力(改正前の上記Ⅰ1(4)①ハに相当する要件)
  COMごとの記録事項の索引をその索引に係るCOMに出力しておくこととされている(電子帳簿保存法規則5⑤二ニ)。
 (ホ)当初3年間におけるCOMの記録事項の検索機能の確保(改正前の上記Ⅰ1(4)①ホに相当する要件)
  国税関係帳簿の保存期間の当初3年間について、次のa又はbのいずれかの措置を講じておくこととされている(電子帳簿保存法規則5⑤二ホ)。
  a COMの保存に併せ、見読可能装置の備付け等(上記(2)②イ(ロ)、ハ)及び検索機能の確保(上記イ(ハ))の要件に従って、そのCOMに係る電磁的記録の保存を行うこと。
  b COMの記録事項の検索をすることができる機能(上記イ(ハ)の検索機能に相当するものに限る。)を確保しておくこと。
③ 対象となる優良な国税関係帳簿に係る電磁的記録等の備付け等が行われる日
  本措置を適用するためには、特例国税関係帳簿に係る電磁的記録又はCOMについて、本措置の適用を受けようとする過少申告加算税の基因となる修正申告書又は更正に係る課税期間の初日(新たに業務を開始した個人のその業務を開始した日の属する課税期間については、同日)以後引き続き上記②の要件を満たして備付け及び保存が行われている必要がある(電子帳簿保存法8④、電子帳簿保存法令2)。
  なお、課税期間の中途に業務を開始した個人については、その業務開始日から備付け及び保存が引き続き行われていれば、適切な期間の備付け及び保存であると考えられることから、新たに業務を開始した個人のその業務を開始した日の属する課税期間については、その業務を開始した日以後引き続き上記②の要件を満たして備付け及び保存が行われていれば、本措置の適用が可能とされている(電子帳簿保存法令2)。
④ 本措置の適用対象となる本税額
  修正申告等がその電磁的記録又はCOMに記録された事項に関する事実(申告漏れ)のみに基づくものである場合には、本措置の計算対象となる「過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額」は、その「修正申告等により納付すべき本税額」となる(電子帳簿保存法8④)。
  なお、「電磁的記録等に記録された事項に係るもの以外の事実」があるときは、「修正申告等により納付すべき本税額」(全体)から、その「電磁的記録等に記録された事項に係るもの以外の事実」のみに基づいて修正申告等があったものと仮定計算した場合に算出される本税額を控除した税額となる(電子帳簿保存法8④、電子帳簿保存法令3)。

2 国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し
 事業者におけるペーパーレス化を一層促進する観点から、国税関係書類に係るスキャナ保存制度を利用する際における手続・要件を大幅に緩和することとされ、以下の見直しが行われた。
(1)承認制度の廃止
 国税関係書類に係るスキャナ保存制度の利用に当たっての事務負担を軽減する観点から、その承認制度が廃止された(旧電子帳簿保存法6〜8、旧電子帳簿保存法規則5、6)。
(2)国税関係書類に係るスキャナ保存要件の見直し
① 電子計算機処理システムの要件の整備
 イ タイムスタンプ要件の整備
  上記Ⅰ1(3)②ロのタイムスタンプ要件について、これまで、受領者等が読み取りを行う場合には、電子データ等の改ざんを防止する観点から、作成・受領からタイムスタンプを付すまでの期間が短く設定(特に速やかに)されていたが、タイムスタンプを付すまでに故意に行われる改ざんまでも防止できるものではなく、その効果は限定的であること等を踏まえ、こうした改ざんに対しては、新たな担保措置(下記4(3)参照)を講ずることで対応することとした上で、スキャナ保存を行う際の入力期間(上記Ⅰ1(3)①の要件)までにタイムスタンプを付すことで足りることとされた。
  具体的には、国税関係書類の作成又は受領後、速やかに一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に、一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付すこと(その国税関係書類の作成又は受領からそのタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合にあっては、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにその記録事項にそのタイムスタンプを付すこと)とされた(電子帳簿保存法規則2⑥二ロ)。
(注)上記の改正に併せて、受領者等が読み取る際に行う国税関係書類への署名は不要とされた(電子帳簿保存法規則2⑥二ロ)。
  また、上記に従ってスキャナ保存を行う際の入力期間(上記Ⅰ1(3)①の要件)までにタイムスタンプを付す場合には、その時刻証明機能によりそのタイムスタンプを付した後の電子データについて改ざんの有無を確認することが可能となっているが、保存義務者がその入力期間までにその国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合にあっては、その入力後の電子データについて更なる入力による改ざんの有無の確認が可能であることから、上記のタイムスタンプは不要とされた(電子帳簿保存法規則2⑥二柱書)。
 ロ ヴァージョン管理要件の整備
  上記Ⅰ1(3)②ニのヴァージョン管理要件について、従前の訂正等の内容等を確認することができるシステムのほか、訂正等による改ざんが不可能なシステム、すなわち、訂正等を行うことができないシステムもその対象とすることとされた。
  具体的には、次の要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用することとされた(電子帳簿保存法規則2⑥二ニ)。
 (イ)その国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
 (ロ)その国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
② 適正事務処理要件の廃止
  上記Ⅰ1(3)④の適正事務処理要件が廃止された(旧電子帳簿保存法規則3⑤四)。
  今回の改正においては、事業者におけるペーパーレス化を一層促進する観点から、改ざん防止のための新たな担保措置(下記4(3)参照)を講ずることとした上で、適正事務処理要件を廃止したものである。
③ 検索機能の確保の要件の整備
  上記Ⅰ1(3)⑧の検索機能の確保の要件について、記録項目が取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定された(電子帳簿保存法規則2⑥六)。
  具体的には、国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこととされた(電子帳簿保存法規則2⑥六)。
 イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(記録項目)を検索の条件として設定することができること。
 ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
 ハ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
  なお、保存義務者が国税に関する法律の規定によるその国税関係書類に係る電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、上記ロ及びハの要件は不要とされる(電子帳簿保存法規則2⑥柱書)。
(3)要件に従ってスキャナ保存が行われていない場合の国税関係書類に係る電磁的記録の保存措置の整備
 上記(2)②のとおり、紙原本の保存を一定期間必要とする適正事務処理要件は廃止することとされたことから、スキャナ保存を行う場合においては、スキャナ保存後、原本の即時廃棄が可能となる。そのため、税務調査において、スキャナ保存が要件に従って行われておらず、かつ、国税関係書類(紙原本)は廃棄されて存在せずに確認がもはやできない状況に円滑に対処する観点から、要件に従ってスキャナ保存が行われていない場合の国税関係書類に係る電磁的記録の保存措置が整備された。
 具体的には、国税関係書類に係る電磁的記録のスキャナ保存が保存要件(上記Ⅰ1(3)及び上記(2)参照)に従って行われていない場合(その国税関係書類(紙原本)の保存が行われている場合を除く。)には、保存義務者は、その国税関係書類の保存場所(その国税関係書類を紙原本として保存する場合の保存場所)に、その国税関係書類の保存をしなければならないこととされている期間(その国税関係書類を紙原本として保存する場合の保存期間)、その電磁的記録を保存しなければならないこととされた(電子帳簿保存法4③後段、電子帳簿保存法規則2⑫)。

3 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し
(1)電磁的記録の出力書面等による保存措置の廃止

 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者について、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力することにより作成した書面又はCOM(以下「出力書面等」という。)の保存をもって、その電磁的記録の保存に代えることができる措置(上記Ⅰ3参照)が廃止された(旧電子帳簿保存法10ただし書、旧電子帳簿保存法規則8②③)。また、この改正に伴い、出力書面等を国税関係書類以外の書類とみなす措置も廃止されている(電子帳簿保存法8②)。
(2)真実性の確保の要件を満たす措置の整備
 真実性の確保の要件を満たす措置のうち、受領者側によるタイムスタンプ付与による措置(上記Ⅰ3(1)②参照)について、タイムスタンプを付すまでの期間をスキャナ保存におけるタイムスタンプの取扱いと整合させる観点から、スキャナによる入力要件における入力期間(上記Ⅰ1(3)①参照)に相当する期間内にタイムスタンプを付すことで足りることとされた(上記2(2)①イ参照)。
 具体的には、受領者側によるタイムスタンプ付与による措置(上記Ⅰ3(1)②参照)について、次に掲げる方法のいずれかにより、その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、その電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこととされた(電子帳簿保存法規則4①二)。
① その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその取引情報の授受後、速やかに行うこと。
② その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(その取引情報の授受からその記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
(3)検索機能の確保の要件の整備
 上記Ⅰ3(4)の検索機能の確保の要件について、スキャナ保存の検索機能の確保の要件(上記2(2)③参照)と同様の整備がされた。
 具体的には、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこととされた(電子帳簿保存法規則2⑥六、4①)。
① 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(記録項目)を検索の条件として設定することができること。
② 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
③ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
 なお、その保存義務者が国税に関する法律の規定によるその電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、上記②及び③の要件が不要となる取扱いはスキャナ保存と同様だが(上記2(2)③参照)、更に、その提示又は要求に応じることができるようにしていることに加えて、その保存義務者が、その判定期間に係る基準期間における売上高が1,000万円以下である事業者であるときは、上記①の要件についても不要とされ、結果的に検索機能の確保の要件は全て不要となる(電子帳簿保存法規則4①)。
(注1)上記の「判定期間」とは、個人事業者については、「電子取引を行った日の属する年の1月1日から12月31日までの期間」をいい、法人については、「電子取引を行った日の属する事業年度」をいう(電子帳簿保存法規則4②二)。
(注2)上記の「基準期間」とは、個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(その前々事業年度が1年未満である法人については、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう(電子帳簿保存法規則4②三)。

4 国税関係書類に係るスキャナ保存制度及び電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度における電磁的記録の適正な保存を担保するための措置の整備
(1)国税関係帳簿又は国税関係書類等とみなす電磁的記録等の整備

① 国税関係帳簿又は国税関係書類とみなす電磁的記録等の整備
  改正後の保存要件(上記1(2)②、2(2)参照)に従って備付け及び保存が行われている国税関係帳簿又は保存が行われている国税関係書類に係る電磁的記録又はCOMに限り、その国税関係帳簿又は国税関係書類とみなすこととされた(電子帳簿保存法8①)。
② 国税関係書類以外の書類とみなす電磁的記録の整備
  改正後の保存要件(上記3参照)に従って保存が行われている電子取引の取引情報に係る電磁的記録に限り、国税関係書類以外の書類とみなすこととされた(電子帳簿保存法8②)。
(2)災害その他やむを得ない事情に係る宥恕措置の整備
 保存義務者が、災害その他やむを得ない事情により、改正後の保存要件(上記2(2)参照)に従って国税関係書類に係る電磁的記録のスキャナ保存をすることができなかったことを証明した場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとされた(電子帳簿保存法規則2⑧)。ただし、その事情が生じなかったとした場合において、その保存要件に従ってその電磁的記録の保存をすることができなかったと認められるときは、この限りでないこととされている(電子帳簿保存法規則2⑧ただし書)。 
 また、電子取引の取引情報に係る電磁的記録についても、今回の改正において電磁的記録の出力書面等による保存措置が廃止されたため(上記3(1)参照)、保存義務者の責めに帰すことができない状況における保存要件充足の困難性を考慮し、上記のスキャナ保存の場合と同様の宥恕措置が設けられている(電子帳簿保存法規則4③)。
(3)電磁的記録に係る重加算税の加重措置の整備
 取引の相手から受領した書類等については、その取引内容を証する原始記録であり、それに基づき各種の帳簿作成・税務申告が行われる基礎となるものであることから、その確認書類としての現物性が確保されていることの要請は強いものと考えられる。一方で、こうした確認書類が電子的に保存されている場合、すなわち、国税関係書類に係る電磁的記録のスキャナ保存又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存が行われている場合には、紙によってその書類等を保存する場合と比して、複製・改ざん行為が容易であり、また、その痕跡が残りにくいという特性にも鑑みて、こうした複製・改ざん行為を未然に抑止する観点から、今回の改正においては、これらの電磁的記録に記録された事項に関し、「隠蔽仮装された事実」に基づき生じた申告漏れ等について課される重加算税を加重する措置が講じられた。
 具体的には、保存要件に従ってスキャナ保存が行われている国税関係書類に係る電磁的記録(電子帳簿保存法4③前段)若しくはその保存要件に従ってスキャナ保存が行われていない国税関係書類に係る電磁的記録(電子帳簿保存法4③後段)又は保存義務者により行われた電子取引の取引情報に係る電磁的記録(電子帳簿保存法7)に記録された事項に関し期限後申告書若しくは修正申告書の提出、更正若しくは決定又は納税の告知若しくは納税の告知を受けることなくされた納付(以下「期限後申告等」という。)があった場合の重加算税の額については、通常課される重加算税の金額に、その重加算税の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実(申告漏れ等)でその期限後申告等の基因となるこれらの電磁的記録に記録された事項に係るもの(隠蔽仮装されているものに限る。以下「電磁的記録に記録された事項に係る事実」という。)以外のものがあるときは、その「電磁的記録に記録された事項に係る事実に基づく本税額」に限る。)の10%に相当する金額を加算した金額とすることとされた(電子帳簿保存法8⑤)。
 なお、この「電磁的記録に記録された事項に係る事実に基づく本税額」については、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定めるところにより計算することとされている(電子帳簿保存法令4)。
① 期限後申告等の内容に「隠蔽仮装されていない事実」がある場合(電子帳簿保存法令4一)
 イ 過少申告加算税又は無申告加算税に代えて課される重加算税
  「隠蔽仮装されていない事実」及び「電磁的記録に記録された事項に係る事実」(以下「隠蔽仮装されていない事実等」という。)のみに基づいて期限後申告書若しくは修正申告書の提出又は更正若しくは決定があったものと仮定計算した場合に算出される本税額から「隠蔽仮装されていない事実」のみに基づいて期限後申告書若しくは修正申告書の提出又は更正若しくは決定があったものと仮定計算した場合に算出される本税額を控除した税額
 ロ 不納付加算税に代えて課される重加算税
  スキャナ保存に係る国税関係書類の保存義務者が「隠蔽仮装されていない事実等」のみに基づいてその源泉徴収等による国税の法定納期限までに納付しなかった本税額からその保存義務者が「隠蔽仮装されていない事実」のみに基づいてその源泉徴収等による国税の法定納期限までに納付しなかった本税額を控除した税額
② 期限後申告等の内容が「隠蔽仮装された事実」のみである場合(電子帳簿保存法令4二)
 イ 過少申告加算税又は無申告加算税に代えて課される重加算税
  「電磁的記録に記録された事項に係る事実」のみに基づいて期限後申告書若しくは修正申告書の提出又は更正若しくは決定があったものと仮定計算した場合に算出される本税額
 ロ 不納付加算税に代えて課される重加算税
  スキャナ保存に係る国税関係書類の保存義務者が「電磁的記録に記録された事項に係る事実」のみに基づいてその源泉徴収等による国税の法定納期限までに納付しなかった本税額

Ⅲ 適用関係

1 上記Ⅱ1(1)及び(2)並びに2の改正は、令和4年1月1日以後に備付けを開始する国税関係帳簿又は保存が行われる国税関係書類等について適用し、同日前に備付けを開始した国税関係帳簿又は保存が行われた国税関係書類等については従前どおりとされている(改正法附則82①〜④)。
  また、この改正の施行の際現に改正前の国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等又はスキャナ保存の承認(上記Ⅰ1(1)(4)参照)を受けている国税関係帳簿又は国税関係書類等については、令和4年1月1日以後に備付けを開始し、又は保存が行われる場合であっても従前どおりとされている(改正法附則82①〜⑤)。なお、同日以後に備付けを開始する国税関係帳簿又は保存が行われる国税関係書類等についても、その承認が有効とされる間は、引き続き改正前の要件でこれらの保存等を行う必要があるが、その承認を受けている場合であっても承認取りやめの届出書を提出する等の承認を取りやめる一定の手続をとることにより、改正後の要件に従ってこれらの保存等を行うことができることとなる(旧電子帳簿保存法7①)。
2 上記Ⅱ1(3)の改正は、令和4年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用される(改正法附則82⑦前段)。
3 上記Ⅱ3の改正は、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報について適用し、同日前に行った電子取引の取引情報については従前どおりとされている(改正法附則82⑥)。
4 上記Ⅱ4(3)の改正は、令和4年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される(改正法附則82⑧前段)。
  なお、本措置の適用に当たっては、改正前のスキャナ保存の承認を受けている国税関係書類に係る電磁的記録は、改正後の保存要件(上記Ⅱ2(2)参照)に従って保存が行われている国税関係書類に係る電磁的記録と、改正前の保存義務者により行われた電子取引の取引情報に係る電磁的記録(その保存義務者が出力書面等を保存する場合における電磁的記録を除く。)は、改正後の保存義務者により行われた電子取引の取引情報に係る電磁的記録と、それぞれみなすこととされている(改正法附則82⑧後段)。

三 納税管理人制度の拡充

1 改正前の制度の概要
 納税者は、次に掲げる場合において、その納税者が納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、これらの事項を処理させるため、国内に住所又は居所(事務所及び事業所を含む。)を有する者でこれらの事項の処理につき便宜を有するもののうちから納税管理人を選任しなければならないこととされている(通法117①)。
(1)個人である納税者が国内に住所及び居所を有しない場合
(2)個人である納税者が国内に住所及び居所を有しないこととなる場合
(3)外国法人である納税者が国内に事務所及び事業所を有しない場合
(4)外国法人である納税者が国内に事務所及び事業所を有しないこととなる場合
 また、納税者は、納税管理人を選任したとき、又は納税管理人を解任したときは、その納税管理人に係る国税の納税地を所轄する税務署長にその旨を届け出なければならないこととされている(通法117②)。

2 改正の内容
 近年、非居住者又は外国法人による国内不動産の売買等や外国法人の国内サポート会社を通じた取引、インターネットを介したデジタルコンテンツ(オンラインゲーム、音楽等)に係る取引など、国境を越えた経済活動が活発化しており、これにより、国内に拠点を有しない非居住者又は外国法人において課税関係が発生する場面が増えてきている。
 これらの納税者に対する税務調査については、国内に所在する納税管理人を通じた接触等により対応をしてきたところである。しかし、調査通知や照会文書の発送等、税務当局側から接触の必要性があるにもかかわらず、これらの納税者が納税管理人の選任義務(上記1参照)を履行しない場合には、納税管理人の選任について税務当局側に法令上取り得る措置がないため、このような納税者に対する税務調査が困難な場合があるという課題があった。
 今回の改正においては、こうした課題に対応し、適正・公平な課税を実現するため、次のとおり、納税管理人を定めるために税務当局が行使することができる措置を講ずることとされた。
(1)納税者に対する納税管理人の届出をすべきことの求め
 納税管理人を選任すべき納税者が納税管理人の届出をしなかったときは、所轄税務署長等は、その納税者に対し、国税に関する事項のうち納税管理人に処理させる必要があると認められるもの(以下「特定事項」という。)を明示して、60日を超えない範囲内においてその準備に通常要する日数を勘案して指定する日(以下「指定日」という。)までに、納税管理人の届出をすべきことを書面で求めることができることとされた(通法117③)。
(注1)上記の「所轄税務署長等」とは、上記の納税者に係る国税の納税地を所轄する国税局長又は税務署長をいう。
(注2)上記の「特定事項」とは、具体的には、次に掲げる事項その他これに類する事項をいう(通規12の2)。
① 国税に関する調査において国税局長若しくは税務署長又は国税局若しくは税務署の当該職員(以下「国税局長等」という。)が納税者に対して発する書類を受領し、及びその納税者に対してその書類を送付すること。
② 国税に関する調査において納税者が国税局長等に対して提出する書類を受領し、及びその国税局長等に対してその書類を提出すること。
(2)国内便宜者に対する納税者の納税管理人となることの求め
 納税管理人を選任すべき納税者が納税管理人の届出をしなかったときは、所轄税務署長等は、国内に住所又は居所(事務所及び事業所を含む。)を有する者で特定事項の処理につき便宜を有するもの(以下「国内便宜者」という。)に対し、その納税者の納税管理人となることを書面で求めることができることとされた(通法117④)。この場合において、その求めに応じた国内便宜者をその納税者が納税管理人として選任すると判断したときは、その納税者は、上記1の手続によりその納税管理人に係る国税の納税地を所轄する税務署長に納税管理人の届出をすることとなる(通法117②)。
(3)税務当局による特定納税管理人の指定
 所轄税務署長等は、上記(1)の納税者(以下「特定納税者」という。)が指定日までに納税管理人の届出をしなかったときは、上記(2)により納税管理人となることを求めた国内便宜者のうち次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める者を、特定事項を処理させる納税管理人(以下「特定納税管理人」という。)として指定することができることとされた(通法117⑤)。この場合において、所轄税務署長等は、特定納税管理人及び特定納税者に対し、書面により特定納税管理人を指定した旨を通知することとされている(通法117⑦)。
① その特定納税者が個人である場合
 イ その特定納税者と生計を一にする配偶者その他の親族で成年に達した者
 ロ その特定納税者に係る国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実についてその特定納税者との間の契約により密接な関係を有する者
 ハ 電子情報処理組織を使用して行われる取引その他の取引をその特定納税者が継続的に又は反復して行う場(プラットフォーム等)を提供する事業者
② その特定納税者が法人である場合
 イ その特定納税者との間に特殊の関係のある法人
 ロ その特定納税者の役員又はその役員と生計を一にする配偶者その他の親族で成年に達した者
 ハ 上記①ロ又はハに掲げる者
(注1)上記①ロに掲げる者は、特定納税者との間のその課税の基因となった資産、事業又は取引についての契約により、その納税者と現在も密接な関係を有する者をいう。
(注2)上記②イの法人間における「特殊の関係」とは、移転価格税制(措法66の4)における「特殊の関係」と同様である(通令39の2①)。
(4)税務当局による特定納税管理人の指定の解除
 所轄税務署長等は、上記(3)により特定納税管理人を指定した場合において、特定納税管理人に特定事項を処理させる必要がなくなったときは、その特定納税管理人の指定を解除することとされた(通法117⑥)。この場合において、所轄税務署長等は、特定納税管理人であった者及び特定納税者に対し、書面により特定納税管理人の指定を解除した旨を通知することとされている(通法117⑦)。
(注)上記の「特定納税管理人に特定事項を処理させる必要がなくなったとき」とは、例えば、税務調査が終了したこと等により税務当局から特定納税者に対し接触の必要性がなくなった場合や、特定納税者から上記1の手続により納税管理人の届出がされた場合等がこれに該当する。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和4年1月1日から施行され(改正法附則1五ハ、改正通令附則①ただし書、改正通規附則1一)、同日以後に行う納税者に対する納税管理人の届出をすべきことの求め若しくは国内便宜者に対する納税者の納税管理人となることの求め又はこれらの求めに係る税務当局による特定納税管理人の指定について適用されることになる。

四 国際的徴収回避行為への対応

Ⅰ 改正の背景等

 近年、経済取引の国際化が進展し、国境を越えた財産移転が容易となり、滞納者が国外に財産を所有するケースが生じている。このようなケースで、国内に所在する財産だけではその国税の徴収が実現できない場合には、その国外財産が所在する国又は地域の税務当局に対し徴収共助(租税債権の徴収において執行管轄権という制約がある中で、多国間租税条約である租税に関する相互行政支援に関する条約(以下「税務行政執行共助条約」という。)又は二国間租税条約に基づき、各税務当局が相互主義の下、互いに条約相手国等の租税債権を徴収していこうとする枠組みをいう。)の要請をし、滞納者の国外財産からの強制的な徴収方法を含む徴収を試みることで、徴収の実現を図っている。他方で、徴収共助が要請されることを予期して、その被要請国に所在する国外財産を第三者に贈与する事案や、その被要請国に所在する国外財産をその被要請国以外の他国へ移転する事案など、滞納国税の徴収が困難な事案が顕在化してきている。
 このように、徴収実務を巡る環境が変化している中、政府税制調査会の納税環境整備に関する専門家会合において、こうした国際的徴収回避行為に対処するための方策等について議論が行われ、同専門家会合における議論の内容については、「納税環境整備に関する専門家会合の議論の報告」(令和2年11月13日)として、総会への報告が行われている。
 今回の改正においては、こうした議論等を踏まえ、適正・公平な徴収を実現する観点から、無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の整備及び滞納処分免脱罪の適用対象の整備が行われた。
 以下では、これらの見直しの内容について説明する。
(参考)一般的な租税滞納事案に関して、我が国が徴収共助の要請をすることができる国又は地域(以下「徴収共助可能国」という。)は、税務行政執行共助条約の締約国の増加及び二国間租税条約の締結・改正の進捗により、令和3年4月1日現在で72の国・地域まで拡大している。

Ⅱ 無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の整備

1 改正前の制度の概要
 滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足する(以下「徴収不足」という。)と認められる場合において、その徴収不足と認められることが、その国税の法定納期限の1年前の日以後に滞納者がその財産につき行った無償譲渡等の処分に基因すると認められるときは、その無償譲渡等の処分により権利を取得し、又は義務を免れた者(利益を受けた者)は、その無償譲渡等の処分により受けた利益が現に存する限度(その利益を受けた者がその無償譲渡等の処分の時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは、その無償譲渡等の処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負うこととされている(旧徴法39)。
(注)上記の「無償譲渡等の処分」とは、国及び公共法人以外の者に対する処分で、無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与えるものをいう(旧徴法39、徴令14①)。

2 改正の内容
 無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務は、滞納者の国税につき滞納処分の執行をしてもなお徴収不足であると認められる場合において、その徴収不足であると認められることが、滞納者が行う第三者への無償譲渡等の処分に基因すると認められるときに負うこととされている。しかし、この「滞納処分の執行」の対象となる財産の範囲は滞納処分を執行し得る財産に限られ、「徴収共助の要請による徴収」の対象となるような国外財産は含まれないことから、滞納処分の執行の対象とされない徴収共助可能国に所在する財産につき第三者へ無償譲渡等の処分をしたとしても、その無償譲渡等の処分によって徴収不足が拡大するわけではないため、徴収不足であることがその無償譲渡等の処分に基因したとはいえず、その第三者が第二次納税義務を負うことはなかった。
 今回の改正においては、滞納者が徴収共助可能国に所在する財産を第三者へ無償譲渡等の処分をした場合についても、その無償譲渡等の処分による利益を受けた第三者に対して第二次納税義務の責任を追及できるよう無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の整備が行われた。
 具体的には、滞納者の国税につき徴収共助の要請をした際には、滞納処分の執行及びその要請による徴収をしてもなお徴収不足であると認められる場合において、その徴収不足であると認められることがその国税の法定納期限の1年前の日以後に滞納者がその財産につき行った無償譲渡等の処分に基因すると認められるときは、その無償譲渡等の処分により利益を受けた者はその利益が現に存する限度において、第二次納税義務を負うこととされた(徴法39)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和4年1月1日以後に滞納となった国税(同日前に行われた無償譲渡等の処分に係るもの(以下「特定国税」という。)を除く。)について適用し、同日前に滞納となっている国税(特定国税を含む。)については従前どおりとされている(改正法附則14)。

Ⅲ 滞納処分免脱罪の適用対象の整備

1 改正前の制度の概要
 滞納処分免脱罪の類型は、次の(1)から(3)までに掲げる者の区分に応じそれぞれ次の(1)から(3)までの罰則の構成要件及び刑罰の内容が定められている。また、これらの違反行為に係る次の(4)の両罰規定が定められている。
(1)納税者
 納税者が滞納処分の執行を免れる目的でその財産を隠蔽し、損壊し、国の不利益に処分し、又はその財産に係る負担を偽って増加する行為をしたときは、その者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされている(旧徴法187①)。
(2)納税者の財産を占有する第三者
 納税者の財産を占有する第三者が納税者に滞納処分の執行を免れさせる目的で上記(1)の行為をしたときは、その第三者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされている(旧徴法187②)。
(3)情を知って上記(1)又は(2)の行為につき納税者又はその財産を占有する第三者の相手方となった者
 情を知って上記(1)又は(2)の行為につき納税者又はその財産を占有する第三者の相手方となった者は、2年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされている(徴法187③)。
(4)両罰規定
 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人、その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して上記(1)から(3)までの違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しそれぞれ上記(1)から(3)までの罰金刑を科することとされている(徴法190①)。

2 改正の内容
(1)滞納処分免脱罪の適用対象の見直し

 滞納処分免脱罪は、滞納処分の執行を免れる目的(故意)をもってその財産を隠蔽する等の違反行為をしたことが構成要件とされてる。しかし、この「滞納処分の執行」の対象となる財産の範囲は滞納処分を執行し得る財産に限られ、「徴収共助の要請による徴収」の対象となるような国外財産は含まれないことから、徴収共助の要請による徴収を免れる目的で滞納処分の執行の対象とされない徴収共助可能国に所在する財産を隠蔽する等の行為をしたとしても、「滞納処分の執行」を免れる目的があったとはいえず、その行為をした者に対して滞納処分免脱罪の適用はなかった。
 今回の改正においては、徴収共助の要請による徴収を免れる目的で国外財産を移転する等の隠蔽等の行為をした者についても、滞納処分免脱罪の対象とされた。
 具体的には、次に掲げる者は、滞納処分免脱罪の対象となる(徴法187①〜③)。
① 徴収共助の要請による徴収を免れる目的で徴収共助可能国に所在する財産を隠蔽する等の行為をした納税者
② 納税者に徴収共助の要請による徴収を免れさせる目的で上記①の行為をした納税者の財産を占有する第三者
③ 情を知って上記①又は②の行為につき納税者又はその財産を占有する第三者の相手方となった者
(注)上記①から③までに掲げる者に関する上記1(4)の両罰規定の適用関係も同様となる(徴法190①)。
(2)上記(1)の見直しに伴う国外犯処罰規定の整備
 上記(1)の徴収共助の要請による徴収を免れる目的で徴収共助可能国に所在する財産を移転する等の隠蔽等の行為は、国外で行われることが想定されることを踏まえ、上記(1)の見直しと併せて、徴収共助の要請による徴収を免れる目的で「国外」で行われる財産の隠蔽等の行為について、滞納処分免脱罪の適用対象とする国外犯処罰規定が整備された(徴法187④⑤)。
(注)法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人、その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して「国外」において上記(1)①から③までの違反行為をしたときも、上記1(4)の両罰規定の適用対象となる(徴法190①)。
 
3 適用関係
 上記2の改正は、令和4年1月1日以後にした違反行為について適用し、同日前にされた違反行為に対する罰則の適用については従前どおりとされている(改正法附則1五、131)。

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