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解説記事2021年08月02日 税制改正解説 令和3年度における納税環境整備に関する改正について(3・了)(2021年8月2日号・№892)

税制改正解説
令和3年度における納税環境整備に関する改正について(3・了)
 和栗佑介

五 クラウドサービス等を利用した支払調書等の提出方法の整備

1 改正前の制度の概要
(1)電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等

 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う者は、その申請等を行う者の使用に係る電子計算機(以下「特定電子計算機」という。)から、その申請等につき規定した法令の規定において書面等に記載すべきこととされている事項並びに税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を入力して、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、その申請等を行わなければならないこととされている(旧国税オンライン化省令5①)。
 ただし、その電子情報処理組織(e-Tax)の使用に係る情報に個人番号カードを用いて電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信する場合には、識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)の入力は要しないこととされるとともに、国税庁長官が定める者については、電子署名及びその電子署名に係る電子証明書の送信は要しないこととされている(旧国税オンライン化省令5①ただし書、平成18年国税庁告示第32号)。
(2)申請等において氏名等を明らかにする措置
 申請等のうちその申請等に関する他の法令の規定において署名等(署名、記名、自署、連署、押印その他氏名又は名称を書面等に記載することをいう。以下同じ。)をすることが規定されているものについて電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う場合には、その署名等については、その法令の規定にかかわらず、氏名又は名称を明らかにする措置として次に掲げるものをもってこれに代えることができることとされている(情報通信技術活用法6④、旧国税オンライン化省令6)。
① 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書をその申請等と併せて送信すること。
② 税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を入力して申請等を行うこと。
③ 電子情報処理組織(e-Tax)の使用に係る情報に個人番号カードを用いて電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書を送信して申請等を行うこと。

2 改正の内容
 企業の生産性を向上するためには、従業員に関する社会保険・税手続をデジタル化・簡便化をし、企業の負担を軽減することが重要となっている。そのため、企業が行う従業員の社会保険・税手続について、従業員のライフイベントに伴う行政手続のワンストップサービスや、企業と行政機関との間でのデータ連携を通じたワンスオンリー化を実現するための取組を進める必要がある。
 これまで、内閣官房において、関係府省とともに、ワンストップサービスの実現に向けた検討等が行われ、「デジタル・ガバメント実行計画」(令和元年12月20日閣議決定)において、「社会保険・税手続の新たな方法として、金融機関に係る法定調書の提出(事業者提出の全ての法定調書について検討)に関して、クラウドサービス等を活用した企業保有情報の新しい提出方法に係る情報システムの利用を2021年度(令和3年度)以降開始し、事業者の事務作業の負担を軽減する」とされた。
 今回の改正においては、この「デジタル・ガバメント実行計画」を踏まえ、支払調書等の提出義務者の利便性の向上を図る観点から、クラウドサービス等を利用した支払調書等の提出方法の整備が行われた。
(1)措置の概要
 電子情報処理組織を使用する方法により申請等(国税庁長官が定めるものに限る。)を行う者は、あらかじめ税務署長に届け出た場合には、認定特定電子計算機(特定電子計算機であって国税庁長官の定める基準に適合するものであることにつき国税庁長官の認定を受けたもの(認定クラウド等)をいう。)に備えられたファイル(以下「特定ファイル」という。)にその申請等に必要な情報(以下「申請等情報」という。)を記録し、かつ、税務署長に対して、その特定ファイルに記録されたその申請等情報を閲覧し、及び国税庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する権限を付与することにより、その申請等を行うことができることとされている(国税オンライン化省令5の2①)。
(2)適用対象となる申請等(支払調書等の提出)
 この措置の対象となる申請等は、国税庁長官が定める申請等に限定されているが、具体的には、所得税法等に規定する調書(国外財産調書及び財産債務調書を除く。)、源泉徴収票、計算書及び報告書の提出(支払調書等の提出)とされている(令和3年国税庁告示第18号)。
(3)適用対象となる認定特定電子計算機(認定クラウド等)
 この措置の適用対象となる認定特定電子計算機(認定クラウド等)とは、申請等(支払調書等の提出)を行う者の使用に係る電子計算機(特定電子計算機)であって国税庁長官の定める基準に適合するものであることにつき国税庁長官の認定を受けたものをいう(国税オンライン化省令5の2①)。
(4)申請等(支払調書等の提出)の具体的な方法
① 事前届出
  この措置により申請等(支払調書等の提出)を行おうとする者は、一定の事項をあらかじめ税務署長に届け出なければならないこととされている(国税オンライン化省令4⑤)。
② 届出事項の変更届出
  上記①の届出をした者は、一定の届出事項に変更が生ずることとなったときは、遅滞なく、その旨を税務署長に届け出なければならないこととされている(国税オンライン化省令4⑦二)。
③ 申請等の方法
 イ 申請等の方法
   この措置により申請等(支払調書等の提出)を行う者は、認定特定電子計算機(認定クラウド等)に備えられたファイル(特定ファイル)に申請等情報を記録し、かつ、税務署長に対して、その特定ファイルに記録されたその申請等情報を閲覧し、及び国税庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する権限(アクセス権限)を付与する必要がある(国税オンライン化省令5の2①)。
 ロ 申請等において氏名又は名称を明らかにする措置
   電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う場合には、上記1(2)のとおり、氏名又は名称を明らかにする措置として上記1(2)①から③までに掲げるもの(電子署名等の送信)をもって署名等に代えることができることとされているが、上記イの方法により申請等(支払調書等の提出)を行う場合の氏名又は名称を明らかにする措置は、税務署長に対して上記イのアクセス権限を付与することとされている(国税オンライン化省令6四)。
④ 申請等情報のファイル形式
  この特定ファイルに記録する申請等情報のファイル形式は、XML形式又はCSV形式とされている(国税オンライン化省令5の2②、令和3年国税庁告示第19号)。
⑤ 申請等(支払調書等の提出)の到達時期
  上記③イの方法により申請等(支払調書等の提出)を行った場合には、特定ファイルに申請等情報が記録された時又は税務署長に対してアクセス権限が付与された時のいずれか遅い時に、税務署長に対して申請等が行われたものとみなされる(国税オンライン化省令5の2①後段、情報通信技術活用法6③)。
(5)申請等情報の保存期間
 上記(4)③イの方法により申請等(支払調書等の提出)を行う者は、特定ファイルに記録した申請等情報の電磁的記録を税務署長に対してアクセス権限を付与した状態で国税庁長官が定める期間保存しなければならないこととされている(国税オンライン化省令5の2③)。
 上記の「国税庁長官が定める期間」は、特定ファイルに申請等情報が記録された日又は税務署長に対してその申請等情報に係るアクセス権限が付与された日のいずれか遅い日(上記(4)⑤の申請等の到達時期)からそのアクセス権限を税務署長が解除した日までの期間(1年未満の範囲内に限る。)とされている(令和3年国税庁告示第20号)。
(6)電子計算機(クラウド等)の認定手続
① 認定を受けようとする者の申請
 イ 認定を受けようとする者の申請
  電子計算機(クラウド等)について国税庁長官の認定を受けようとする者(その認定に係る電子計算機を管理する者(クラウドサービス事業者等)に限る。以下同じ。)は、次に掲げる事項を国税庁長官に申請しなければならないこととされている(国税オンライン化省令5の2④)。
 (イ)その認定を受けようとする者の氏名又は名称、住所又は居所及び法人番号(法人番号を有しない者については、氏名又は名称及び住所又は居所)
 (ロ)その認定に係る電子計算機の名称
 (ハ)その認定に係る電子計算機が上記(3)の国税庁長官の定める基準に適合することを証する事項
 (ニ)その他参考となるべき事項
 ロ 申請事項の変更届出
  下記③の認定事業者は、上記イ(イ)から(ニ)までに掲げる申請事項に変更が生ずることとなったときは、遅滞なく、その旨を国税庁長官に届け出なければならないこととされている(国税オンライン化省令5の2⑦)。
② 国税庁長官による電子計算機(クラウド等)の認定又は認定申請の却下
  国税庁長官は、上記①イの申請があった場合には、遅滞なく、これを審査し、その申請に係る電子計算機(クラウド等)について認定をし、又はその申請に係る電子計算機が上記(3)の国税庁長官の定める基準に適合しないと認めるときは、その申請を却下することとされている(国税オンライン化省令5の2⑤)。
  また、国税庁長官は、電子計算機の認定又は認定申請の却下をするときは、その認定を受けようとする者に対し、その旨を通知することとされている(国税オンライン化省令5の2⑩)。
③ 認定電子計算機(認定クラウド等)の公表
  国税庁長官は、上記②の認定をした場合において、申請等(支払調書等の提出)を行う者の利便性の向上に資すると認めるときは、その認定をした電子計算機(以下「認定電子計算機」という。)についてその認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)の氏名又は名称及び住所又は居所、その認定電子計算機(認定クラウド等)の名称並びにその認定の日の公表をすることができることとされている(国税オンライン化省令5の2⑥)。
④ 認定電子計算機(認定クラウド等)の公表事項の変更
  国税庁長官は、上記①ロの申請事項の変更届出があった場合において、上記③の公表をしている事項に変更が生じたときは、その旨、その申請事項の変更届出による変更後の認定事業者の氏名又は名称及び住所又は居所、その変更後の認定電子計算機(認定クラウド等)の名称並びにその変更の日の公表をしなければならないこととされている(国税オンライン化省令5の2⑧)。
(7)認定電子計算機(認定クラウド等)の認定の取消し
① 認定電子計算機(認定クラウド等)の認定の取消し
  国税庁長官は、上記(6)②の電子計算機(クラウド等)の認定をした後、認定電子計算機(認定クラウド等)が上記(3)の国税庁長官の定める基準に適合しなくなったときは、その認定を取り消すことができることとされている(国税オンライン化省令5の2⑨)。
  また、国税庁長官は、認定電子計算機の認定の取消しをするときは、認定事業者に対し、その旨を通知することとされている(国税オンライン化省令5の2⑩)。
② 認定電子計算機(認定クラウド等)の認定の取消しをした場合の公表
  国税庁長官は、上記①の認定電子計算機(認定クラウド等)の認定の取消しをした場合(上記(6)③の認定電子計算機の公表をしている場合に限る。)には、その旨、認定事業者であった者の氏名又は名称及び住所又は居所、その取消しに係る認定電子計算機の名称並びにその取消しの日の公表をしなければならないこととされている(国税オンライン化省令5の2⑪)。

3 適用関係
(1)上記2の改正は、令和4年1月1日から施行され(改正国税オンライン化省令附則1三)、同日以後に行われる申請等(支払調書等の提出)について適用されることになる。
(2)上記(1)のとおり、上記2の改正は令和4年1月1日から施行することとされているが、この措置を円滑に実施する観点から、この措置により申請等(支払調書等の提出)を行おうとする者、電子計算機(クラウド等)の認定を受けようとする者及び国税庁長官は、同日前においても、上記2(4)①並びに(6)①イ、②及び③の手続に則って、必要な手続を行うことができることとされている(改正国税オンライン化省令附則2②③)。

六 その他納税環境整備関係の改正

1 スマートフォンを使用した決済サービスによる納付手続の創設
(1)改正前の制度の概要

① 電子情報処理組織を使用して行う通知による納付の委託
  国税を納付しようとする者は、その税額が一定の金額以下である場合であって、電子情報処理組織(インターネット)を使用して行う納付受託者に対する通知に基づき納付しようとするときは、納付受託者に納付を委託することができることとされている(通法34の3①二)。
(注1)上記の「一定の金額以下である場合」は、1,000万円未満であり、かつ、国税を納付しようとする者のクレジットカードによって決済することができる金額以下である場合とされている(旧通規2①二)。
(注2)上記の「納付受託者」とは、納付事務を適正かつ確実に実施することができると認められる者であり、かつ、一定の要件に該当する者として国税庁長官が指定するものをいう(通法34の4①)。
(注3)上記の「納付受託者に対する通知」は、納付書記載事項(国税を納付しようとする者の氏名又は名称、その国税に係る税目及び税額その他の納付書に記載すべきこととされている事項をいう。)及びクレジットカードの番号、有効期限その他クレジットカードの決済に必要な事項とされている(旧通規2③)。
② 納付の委託を受けた場合における附帯税等の取扱い
  納付受託者が国税を納付しようとする者から上記①の納付の委託を受けたときは、その納付の委託を受けた日にその国税の納付があったものとみなして、延納、物納及び附帯税に関する規定が適用される(通法34の3②二)。
(2)改正の内容
 近年、スマートフォンを使用した決済サービスによる取引が一般化してきている中で、一部の地方税や公共料金の納付の場面においても、スマートフォンを使用した決済サービスによる納付手続が導入されている。
 今回の改正においては、こうした状況を踏まえ、納税者の利便性向上のため納付手続の多様化を図るとともに、納付手続における非対面化を促進する観点から、上記(1)①の電子情報処理組織を使用して行う通知による納付の委託について、スマートフォンを使用した決済サービスを利用した納付(スマホアプリ納付)を可能とする措置が追加された。
 具体的には、国税を納付しようとする者は、その税額が30万円以下であり、かつ、その者が使用する第三者型前払式支払手段による取引等によって決済することができる金額以下である場合であって、電子情報処理組織(インターネット)を使用して行う納付受託者に対する通知に基づき納付しようとするときは、納付受託者に納付を委託することができることとされた(通法34の3①二、通規2①三)。
(注1)上記の「第三者型前払式支払手段による取引等」とは、資金決済に関する法律第3条第5項に規定する第三者型前払式支払手段による取引その他これに類する為替取引をいう(通規2①三)。
(注2)上記の「納付受託者に対する通知」は、次に掲げる事項の通知とされている(通規2③二)。
 イ 納付書記載事項
 ロ 第三者型前払式支払手段による取引等に係る業務を行う者の名称その他その第三者型前払式支払手段による取引等による決済に関し必要な事項
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年1月4日から施行される(改正通規附則1二)。

2 国外からの納付方法の拡充
(1)改正前の制度の概要

 国税を納付しようとする者で国外に住所又は居所を有するもの(以下「国外納付者」という。)の納付方法は、主に次に掲げる方法がある。
① クレジットカードを利用した納付(通法34の3、通規2①二)
② インターネットバンキングによる納付、ダイレクト納付等(国税オンライン化省令8①)
③ 国外納付者の納税管理人による納付(通法117①)
(2)改正の内容
 上記(1)①から③までの納付方法には、納付金額の制約(限度額)、国内の金融機関口座の設定、第三者(納税管理人)への依頼の負担等があり、国外からの納付方法の拡充が課題とされていた。
 今回の改正においては、こうした課題に対応し、国外納付者の利便性向上のため納付方法の多様化を図る観点から、国外納付者による国税の納付について、金融機関の国外営業所等を通じた払込みによる方法(以下「国外からの送金」という。)により行うことができることとされた。
 具体的には、国外納付者は、金融機関の国外営業所等を通じて納付しようとする国税の税額に相当する金銭をその国税の収納を行う国税局又は税務署の職員の預金口座(国税の納付を受けるために開設されたものに限る。以下「納付用国内預金口座」という。)に対して払込みをすることにより納付することができることとされた(通法34④前段)。
(注1)上記の「金融機関の国外営業所等」とは、国外にある金融機関の営業所、事務所その他これらに類するものをいう。
(注2)国外納付者は、上記の方法により国税の納付を行おうとする場合には、国税局長又は税務署長に対し、納付書及び金融機関の国外営業所等を通じて送金したことを証する書類の提出をしなければならないこととされている(通規1の3③)。
 この場合において、その国税の納付は、その国外納付者がその金融機関の国外営業所等を通じて送金した日においてされたものとみなして、延納、物納及び附帯税に関する規定が適用される(通法34④後段)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年1月4日から施行される(改正法附則1六、改正通規附則1二)。

3 電子情報処理組織を使用する方法による申請等の方法の拡充
(1)改正前の制度の概要

 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う者は、その申請等につき規定した法令の規定において書面等に記載すべきこととされている事項(以下「申請書面等記載事項」という。)並びに税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を入力して、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、その申請等を行わなければならないこととされている(旧国税オンライン化省令5①)。ただし、その電子情報処理組織(e-Tax)の使用に係る情報に個人番号カードを用いて電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信する場合には、識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)の入力は要しないこととされるとともに、国税庁長官が定める者については、電子署名及びその電子署名に係る電子証明書の送信は要しないこととされている(旧国税オンライン化省令5①ただし書)。
 なお、通算親法人が、他の通算法人の法人税及び地方法人税に係る申請等(法人税及び地方法人税の「申告」を除く。)に関する事項の処理として、申請書面等記載事項並びに税務署長より通知された当該通算親法人の識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)並びに当該他の通算法人の識別符号(ID)を入力して、その申請等の情報に当該通算親法人の代表者等の電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信した場合には、当該他の通算法人は、その申請等を電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行ったものとみなすこととされている(旧国税オンライン化省令5⑥)。
(2)改正の内容
① 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等の方法の拡充
  電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等については、制度上、申請書面等記載事項を入力して送信する方法によれば、いずれの申請等でも可能とされている。他方で、申請件数が僅少である等の一定の申請等については、これまで、費用対効果の観点等から、申請書面等記載事項を入力して送信する方法による申請等を可能とするシステム整備が行われておらず、また、申請書面等記載事項を入力して送信する方法以外の方法が制度上も認められていないことから、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行うことができない状況となっていた。
  今回の改正では、こうした状況や、行政手続における書面主義・押印原則・対面主義の抜本的な見直しに向けた政府全体の方針、政府税制調査会・同調査会の下に設置された納税環境整備に関する専門家会合における議論等を踏まえ、納税者利便の向上を図る観点から、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等の方法の拡充が行われた。
  具体的には、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等について、申請書面等記載事項を入力して送信する方法により行うことができない場合には、申請書面等記載事項を次に掲げる要件を満たすようにスキャナにより読み取る方法その他の方法により作成した電磁的記録(以下「イメージデータ」という。)に記録された情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、その申請等を行うことができることとされた(国税オンライン化省令5②前段)。
 イ 解像度が一般文書のスキャニング時の解像度である25.4mm当たり200ドット以上であること。
 ロ 赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調以上であること。
  なお、その電子情報処理組織(e-Tax)の使用に係る情報に個人番号カードを用いて電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信する場合には、識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)の入力は要しないこととされるとともに、国税庁長官が定める者については、電子署名及びその電子署名に係る電子証明書の送信は要しないこととされている(国税オンライン化省令5②後段)。
(注1)上記の方法により申請等を行う場合には、添付書面等に記載されている事項又は記載すべき事項(以下「添付書面等記載事項」という。)についても、その添付書面等記載事項に係るイメージデータをその申請等と併せて送信することをもって、その添付書面等の提出に代えることができることとされている(国税オンライン化省令5③二)。
(注2)申請書面等記載事項及び添付書面等記載事項のイメージデータを送信する際のファイル形式は、PDF形式とされている(国税オンライン化省令5④、令和3年国税庁告示第12号)。
② 上記①の見直しに伴う通算親法人による他の通算法人の申請等に係る電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請手続の整備
  通算親法人による他の通算法人の申請等に係る電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請手続について、上記①の改正に伴う整備が行われた。
  具体的には、通算親法人が、他の通算法人の法人税及び地方法人税に係る申請等(法人税及び地方法人税の「申告」を除く。)に関する事項の処理として、税務署長より通知された当該通算親法人の識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)並びに当該他の通算法人の識別符号(ID)(国税庁長官が定める場合には、当該通算親法人及び当該他の通算法人の識別符号(ID))の入力をして、イメージデータに記録されたその申請等の情報に当該通算親法人の代表者又は国税庁長官が定める者の電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信した場合(申請書面等記載事項を入力する方法により行うことができない場合に限る。)には、当該他の通算法人は、その申請等を電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行ったものとみなすこととされた(国税オンライン化省令5⑦前段)。
(注1)上記②の場合において、当該通算親法人が、その申請等に係る添付書面等記載事項に係るイメージデータを送信し、又は提出したときは、当該他の通算法人は、その添付書面等記載事項を送信し、又は提出したものとみなすこととされる措置も併せて講じられている(国税オンライン化省令5⑦後段)。
(注2)上記の「国税庁長官が定める場合」は、当該通算親法人の法人税又は地方法人税に係る税務書類の作成の委嘱を受けた税理士が、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信する場合(その委嘱を受けた税理士が税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を入力する場合に限る。)とされている(令和3年国税庁告示第17号)。
(注3)上記の「国税庁長官が定める者」は、当該他の通算法人の法人税及び地方法人税に係る申請等(法人税及び地方法人税の「申告」を除く。)に関する事項の処理を行おうとする当該通算親法人の代表者が、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することを委任した場合において、これらの行為の委任を受けた者(次に掲げる者に限る。)が電子情報処理組織を使用する方法によりその申請等に関する事項の処理を行うとき(その申請等に関する事項の処理と併せてその委任を受けたことを証する電磁的記録が送信された場合に限る。)におけるその委任を受けた者とされている(令和3年国税庁告示第16号)。
 イ 当該通算親法人の役員又は職員
 ロ 当該通算親法人の法人税又は地方法人税に係る税務書類の作成の委嘱を受けた税理士
(3)適用関係
① 上記(2)①の改正は、令和3年4月1日から施行される(改正国税オンライン化省令附則1)。
② 上記(2)②の改正は、令和4年4月1日以後に行う申請等について適用される(令和2年6月改正法規等附則18)。

4 処分通知等の電子交付の拡充
(1)改正前の制度の概要

 国税に関する処分通知等については、各税法の規定により通知書等(書面)を交付して行うことが基本とされているが、一定の場合には、情報通信技術活用法等に基づき電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行うことができることとされている(情報通信技術活用法7①)。
(注)上記の「一定の場合」とは、その処分通知等に係る申請等が電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行われた場合において、その処分通知等を受ける者のその処分通知等について電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により受ける旨の同意がその申請等に併せて入力して送信する方式により確認(処分通知等を受ける者の同意確認)ができたときをいう(情報通信技術活用法7①ただし書、国税オンライン化省令11)。
 税務署長等が電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行うことができる処分通知等は、具体的には、次に掲げる処分通知等とされている(国税オンライン化省令9②、旧平成30年国税庁告示第8号)。
① 適格請求書発行事業者の登録に係る通知
② 更正の請求に係る次に掲げる処分通知等
 イ 更正通知書の送達
 ロ 更正の請求に係る更正があった場合に課する加算税に係る賦課決定通知書の送達
 ハ 更正をすべき理由がない旨の通知
③ 納税証明書の交付
④ 住宅ローン控除証明書の交付
⑤ 電子申請等証明書の交付
(2)改正の内容
 処分通知等を受ける者の利便性向上の観点から、税務署長等が電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行うことができる処分通知等について、その範囲が拡充され、次に掲げる処分通知等が追加された(国税オンライン化省令9②、令和3年国税庁告示第15号)。
① 所得税の予定納税基準額及び予定納税額の通知又は予定納税額の減額承認申請に対する処分の通知
② 期限後申告書又は修正申告書の提出があった場合に課する加算税の賦課決定通知書の送達
③ 国税庁長官による電子計算機(クラウド等)の認定若しくは認定申請の却下又は認定電子計算機(認定クラウド等)の認定の取消しの処分の通知
(注)処分通知等を受ける者の同意確認については、次に掲げる処分通知等の区分に応じそれぞれ次に定める申請等の際に、その処分通知等について電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により受ける旨の同意の表示を行うこととなる。
 イ 上記①の処分通知等……電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による所得税の確定申告書の提出
 ロ 上記②の処分通知等……電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による期限後申告書又は修正申告書の提出
 ハ 上記③の処分通知等……電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による電子計算機(クラウド等)の認定の申請
(3)適用関係
 上記(2)①の改正は令和5年1月1日以後に行う処分通知等について、上記(2)②の改正は令和4年1月1日以後に行う処分通知等について、上記(2)③の改正は令和4年6月1日以後に行う処分通知等について、それぞれ適用される(令和3年国税庁告示第15号附則①)。

5 納税地の異動があった場合の質問検査権の行使主体の整備
(1)改正前の制度の概要

 国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、法人税等(法人税、地方法人税又は消費税をいう。以下同じ。)に関する調査(犯則事件の調査を除く。以下同じ。)について必要があるときは、納税義務者等に質問し、その納税義務者等の事業に関する帳簿書類等の物件を検査し、又はその物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めること(質問検査権の行使)ができることとされている(通法74の2①)。
 また、所得税に関する調査については、質問検査権の行使主体に関する制限はないが、法人税等に関する調査については、質問検査権の行使主体は、次に掲げる調査の区分に応じそれぞれ次に定める者に限定されている(通法74の2④)。
① 法人税又は地方法人税に関する調査……法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員
(注1)連結親法人の各連結事業年度の連結所得に対する法人税又は連結親法人の地方法人税に関する調査に係る連結子法人(その取引関係者を含む。)に対する質問検査権の行使については連結親法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員及びその連結子法人の所在地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を、その調査に係る連結親法人に対する質問検査権の行使については連結子法人の所在地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を、それぞれ含む。
(注2)納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に本店、支店、工場、営業所等を有する法人に対する法人税又は地方法人税に関する調査については、その国税局又は税務署の当該職員を含む。
② 消費税に関する調査……事業者の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員
(注)納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所等を有する消費税の納税義務者等に対する消費税に関する調査については、その国税局又は税務署の当該職員を含む。
(2)改正の内容
 法人税等に関する調査については、法人又は事業者の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員に限定されており、これを悪用して、調査中に納税地の異動を繰り返すことにより調査忌避が行われる事例が散見されている。
 今回の改正においては、このような調査忌避行為への対応として、法人税等についての調査通知があった後にその納税地に異動があった場合において、その異動前の納税地(以下「旧納税地」という。)を所轄する国税局長又は税務署長が必要があると認めるときは、旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員は、その異動後の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員に代わり、その法人税等に関する調査(その調査通知に係るものに限る。)に係る納税義務者等に対し、質問検査権の行使をすることができることとされた(通法74の2⑤)。
(注1)上記の「旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員」には、連結親法人の各連結事業年度の連結所得に対する法人税又は連結親法人の地方法人税に関する調査に係る連結子法人(その取引関係者を含む。)に対する質問検査権の行使については連結親法人の旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員及びその連結子法人の所在地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を、その調査に係る連結親法人に対する質問検査権の行使については連結子法人の所在地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を、それぞれ含むこととされている。また、令和4年4月1日以後に開始する通算法人の各事業年度の所得に対する法人税又はその法人税に係る地方法人税に関する調査に係る他の通算法人に対する質問検査権の行使については、当該通算法人の旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を含むこととされている(通法74の2⑤後段、74の2④)。
(注2)上記の「旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員」には、旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に本店、支店、工場、営業所等を有する法人に対する法人税又は地方法人税に関する調査については、その国税局又は税務署の当該職員を含むこととされている(通法74の2⑤後段、74の2④)。
(注3)上記の「旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員」には、旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所等を有する消費税の納税義務者等に対する消費税に関する調査については、その国税局又は税務署の当該職員を含むこととされている(通法74の2⑤後段、74の2④)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和3年7月1日以後に法人税等に関する調査に係る納税義務者等に対して行う質問、検査又は提示若しくは提出の要求(同日前から引き続き行われている法人税等に関する調査(同日前に法人税等の納税義務者に対して質問、検査又は提示若しくは提出の要求を行っていたものに限る。)に係るものを除く。)について適用される(改正法附則13)。

6 所得税の還付申告書の提出義務の見直しに伴う財産債務調書の提出義務者の範囲の整備
(1)改正前の制度の概要

 所得税の申告書を提出すべき者は、その申告書に記載すべきその年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する場合には、その者の氏名、住所又は居所及び個人番号並びにその者が同日において有する財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載した調書(以下「財産債務調書」という。)を、その年の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(旧国外送金等調書法6の2①)。ただし、同日(提出期限)までに、財産債務調書を提出しないで死亡したときは、財産債務調書の提出を要しないこととされている(旧国外送金等調書法6の2①ただし書)。
 また、申告分離課税の対象となる所得金額がある場合には、上記の「総所得金額及び山林所得金額の合計額」は、その合計額にその申告分離課税の対象となる所得金額を加算した金額とされている(旧国外送金等調書令12の2⑤)。
(2)改正の内容
 今回の改正において、新型コロナウイルス感染症への対応として確定申告会場への来場者を分散させる等の観点から、所得税の確定申告書の提出義務について、その計算した所得税の額の合計額が配当控除の額を超える場合であっても、その申告書が還付を受けるための申告書(以下「還付申告書」という。)に該当するときは、その還付申告書の提出を要しないこととする見直しが行われた(所法120①、122①、127②等)。
 他方で、適正・公平な課税を確保する観点から、財産債務調書の提出義務者の範囲については、この見直し前と同様とされ、還付申告書(その計算した所得税の額の合計額が配当控除の額を超える場合におけるその還付申告書に限る。)を提出することができる者は、従前と同様に、財産債務調書の提出対象者とされた(国外送金等調書法6の2①二、四)。
 また、申告分離課税の対象となる所得金額がある場合には、上記の「所得税の額の合計額」は、その合計額にその申告分離課税の対象となる所得金額に対して課される所得税の額を加算した額とされるとともに、年末調整において住宅ローン税額控除の適用がある場合には、上記の「配当控除の額」は、その配当控除の額に年末調整において控除された住宅ローン税額控除の控除額(措法41の2の2①)を加算した額とされている(国外送金等調書令12の2⑥⑦)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年1月1日から施行される(改正法附則1五ト、改正国外送金等調書令附則)。

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