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解説記事2021年09月13日 ニュース特集 コロナ禍における各省庁の令和4年度税制改正要望(2021年9月13日号・№897)

ニュース特集
例年以上に適用期限の延長などが中心
コロナ禍における各省庁の令和4年度税制改正要望


 各省庁等の令和4年度税制改正要望が出揃った。新型コロナウイルス感染症の影響がいまだに収束しない中、例年以上に適用期限の延長及び拡充が主になっている印象だ。経済のデジタル化に対応した新国際課税制度への対応などを除けば大きく法人税制などが見直される項目は少ない。本特集では、各省庁等の主な税制改正要望を紹介する。

コロナ禍でも順調に推移するオープンイノベーション促進税制

 最近の経済産業省の税制改正要望では、特別償却制度や税額控除制度の創設等が並ぶことが多いが、令和4年度税制改正要望についてはオープンイノベーション促進税制(特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例)や5G投資促進税制(認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)の適用期限を令和6年3月31日まで2年間延長するよう求めている。オープンイノベーション促進税制については、事業会社が令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に、一定のベンチャー企業の株式(特定株式)を出資の払込みにより取得した場合には、その株式の取得価額の25%の所得控除を認めるというもの(特別勘定として経理した金額を限度)。コロナ禍にあっても112件の適用件数(投資額344.4億円)があり、更に案件成立を推進することが必要としている。
 適用期限切れとなる中小法人の交際費課税の特例や、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置についても適用期限を令和6年3月31日までの2年間延長するよう求めている。
修正ROAからROICに要件変更
 産業競争力強化法に基づく事業再編に係る登録免許税の特例措置についても令和6年3月31日まで延長するとともに、税制の適用要件の見直しを求めている。例えば、事業再編計画の認定を受けるには生産性の向上の1つとして「修正ROA(総資産利益率)2%ポイント向上」との要件があるが、これをROIC(投下資本利益率)に変更することで改善を図ることができるとしている。また、ソフトウエア投資が増加する中、「有形固定資産回転率5%向上」との要件について、有形固定資産でないソフトウエアを考慮することで、実態に即した評価を行うことができるとしている。
デジタル課税、10月の最終合意を踏まえ対応
 経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応等に関しては、今年7月にOECD/G20のBEPS包摂的枠組みにおいて2つの柱からなる解決策(市場国への課税権配分、グローバル最低税率課税)の大枠が合意され、10月にも最終合意される方向となっている(本誌890号4頁・891号4頁参照)。国内法化に当たっては、諸外国の動向を踏まえ、外国子会社合算税制の簡素化などを通じて日本企業に過度な負担とならないように配慮すべきとした(図表1参照)。

 また、本誌(892号40頁参照)が指摘した子会社からの配当及び子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応の見直しについても要望として盛り込まれている。
個人版事業承継、事業用資産すべてを対象に
 そのほか、個人版事業承継税制については棚卸資産や売掛金なども含め、貸借対照表に計上されるすべての事業資産を対象にするなどの検討が必要としている。現在の対象資産は事業用の宅地・建物及び減価償却資産(固定資産税の課税対象等)とされているものである。

新型コロナ感染症関連の印紙税非課税措置の延長を

 金融庁に関しては、すでにお伝えした金融商品間の損益通算の範囲に有価証券市場デリバティブを追加することや上場株式等の相続税に係る見直し、NISA口座及び特定口座の利便性向上に向けた見直しなどが挙げられる(本誌896号40頁参照)。
 そのほかでは、火災保険等に係る異常危険準備金制度について、令和4年3月31日までの時限措置となっている経過措置を延長するとともに、昨今の自然災害により高額化する保険金支払いを踏まえた残高を確保する観点から積立率(現行の経過措置4%)を8%に引き上げ、洗替保証率を30%から40%に引き上げることを求めている。
 また、金融機関(銀行、信用金庫等)が新型コロナウイルス感染症等によりその経営に影響を受けた事業者(特定事業者)に対して行う一定の金銭の貸付けに係る消費貸借契約書については、令和4年3月31日まで作成されるものは印紙税が非課税とされているが、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、非課税措置を延長するよう求めている。なお、別途、公的貸付機関等(地方公共団体や政府系金融機関等)に対する印紙税の非課税措置も経済産業省や厚生労働省等が要望している。

基金拠出型医療法人への移行の際のみなし配当課税の猶予を

 厚生労働省では、昨年に引き続き基金拠出型医療法人における負担軽減措置の創設を盛り込んだ。持分あり医療法人から基金拠出型医療法人へ移行する場合、持分を基金として拠出することになるが、その一部が配当所得とみなされ課税されるため、円滑な移行に障害が生じているとしている。また、相続人が基金を相続するときに相続税の支払いが困難な場合、基金の放棄が生じて医療法人へ課税されるため、医療法人の財政的基盤に影響があるとしている。このため、持分なし医療法人への移行を促進するため、持分あり医療法人から基金拠出型医療法人へ移行する際、基金が払い戻しされるまでの間、みなし配当課税を納税猶予する等の特例措置を講じることを求めている。併せて基金を相続・贈与したときの相続税・贈与税を納税猶予する等の特例措置も求めている(図表2参照)。

 また、新規では、例えば、緊急小口資金等の特例貸付に係る非課税措置の創設を要望。新型コロナウイルス感染症への対応として実施している緊急小口資金等の特例貸付については、償還時に住民税非課税世帯である場合に償還を免除することができる特例(令和4年度以降適用予定)を設けているが、その償還免除額(債務免除益)について非課税措置を講じるよう求めている。また、「ひとり親家庭住宅支援資金貸付金」制度における返済免除額(債務免除益)等についても非課税措置とするよう求めている。同制度は、母子・父子自立支援プログラムの策定を受け、自立に向けて意欲的に取り組んでいる児童扶養手当受給者等に対して住居費貸付を行っており、1年間の就業継続で返済免除となるものである。
 そのほか、交際費については、中小法人の損金算入の特例(交際費800万円までは全額損金算入)だけでなく、大企業(資本金の額等が100億円以下)も適用できる飲食費(社内接待費を除く)の50%損金算入できる特例措置についても2年間の適用期限延長を求めた。
令和4年度では固定資産税が増加する地点も
 国土交通省では、土地に係る固定資産税における所要の措置を講じるよう求めている。令和3年度税制改正では、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、土地の評価替えを行った結果、税額が上昇するすべての土地について、令和2年度税額に据え置く措置が講じられている。しかし、令和4年度では、令和3年度評価替えの結果が反映され、大きく地価上昇した地点を中心に固定資産税負担が増加する見込みとなっていることからこれを踏まえた措置が必要としている。
 住宅関係では、省エネ性能等に優れた住宅の普及を促進するため、住宅ローン減税等の所得税等に係る特例措置、認定住宅に係る登録免許税、不動産取得税、固定資産税の特例措置の2年間延長を求めた。また、居住用財産の買換え等に係る特例措置なども2年間の延長措置を求めている。

法務省、相続登記の登録免許税の負担軽減を

 所有者不明土地問題の解決に向け、相続登記の義務化等を盛り込んだ「民法等の一部を改正する法律」が令和3年4月28日に公布されたことを踏まえ、不動産登記法の改正により新設された職権的登記の登録免許税を非課税とするほか、相続登記等に係る登録免許税の負担軽減を図るための特例の新設を求めている。
 また、既存の相続登記の促進のための登録免許税の特例措置の適用期限を3年間延長するよう求めている。具体的には、①個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。②の場合において同じ)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときに、当該個人を当該土地の登記名義人とするために受ける登記に係る登録免許税の免除、②個人が、土地について所有権の保存の登記又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、当該土地が当該登記の促進を特に図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地であり、かつ、当該土地の当該登記に係る登録免許税の課税標準となる価額が10万円以下であるときにおけるその登録免許税の免除である。さらに①の措置の恒久化や②の要件の緩和などを求めた。
地方移転に更なるインセンティブ
 そのほか、内閣府では、令和4年3月31日までとされている地方拠点強化税制の適用期限を2年間延長するとともに、コロナ禍において東京圏から地方に移転する場合のインセンティブを高める措置が必要としている。
 また、文部科学省では、国等への美術品の寄贈に係る寄附金控除等の特例措置について、現在取得価額とされている寄附金控除の適用金額を時価相当額とすることを要望している。
 総務省については、電子帳簿等保存制度における総務大臣による時刻認証業務の認定制度の活用を挙げている。民間の認定制度に係るタイムスタンプに代わり、国による信頼性のある総務大臣認定の業務に係るタイムスタンプを電子帳簿等保存制度の要件に位置付けることにより、スキャナ保存による国税関係書類の電子化等を推進するとしている。
 なお、各省庁等における令和4年度税制改正要望のうち、適用期限の延長を求めている項目は以下の通りである。

【図表3】各省庁等における令和4年度税制改正要望のうち、適用期限延長を求めている事項(国税)

内閣府
(単独要望の事項)
・地方における企業拠点の強化を促進する税制措置の拡充及び延長(所得税、法人税)
・小さな拠点の形成に資する事業を行う株式会社に対する特例措置の延長(所得税)
・国家戦略特区における特別償却又は投資税額控除の延長(法人税)
・国家戦略特区における所得控除制度の延長(法人税)
・国家戦略特区におけるエンジェル税制の延長(所得税)
・国際戦略総合特区における特別償却又は投資税額控除の延長(法人税)
・沖縄の経済金融活性化特別地区における課税の特例措置の延長等(法人税、所得税)
・沖縄の離島の旅館業に係る課税の特例措置の延長等(法人税、所得税)
・特定駐留軍用地等内の土地を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例措置の延長(法人税、所得税)
・沖縄県産酒類に係る酒税の特例措置の段階的廃止等(酒税)
・沖縄の揮発油に係る揮発油税等の特例措置の延長(揮発油税、地方揮発油税)
・新型コロナウイルス感染症に関する特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税措置の延長(印紙税)
(共同要望で主管省庁となる事項)
・沖縄の観光地形成促進地域における課税の特例措置の延長等(法人税)(経済産業省、国土交通省)
・沖縄の情報通信産業振興地域・特別地区における課税の特例措置の延長等(法人税)(総務省、経済産業省)
・沖縄の産業イノベーション促進地域(仮称)(旧産業高度化・事業革新促進地域)における課税の特例措置の延長等(法人税、所得税)(経済産業省)
・沖縄の国際物流拠点産業集積地域における課税の特例措置の延長等(法人税、所得税)(経済産業省)
・沖縄路線航空機の航空機燃料税に係る所要の措置(航空機燃料税)(国土交通省)
・沖縄発電用特定石炭等の引取りに係る課税の特例措置の延長(石油石炭税)(経済産業省)
金融庁
(単独要望の事項)
・火災保険等に係る異常危険準備金制度の拡充及び延長(法人税)
・日本版スクークに係る非課税措置の延長(所得税、登録免許税)
・金融機能強化法に基づく資本増強等に係る登録免許税の軽減措置の拡充及び延長(登録免許税)
(共同要望で主管省庁となる事項)
・新型コロナウイルス感染症関連の印紙税非課税措置の延長(厚生労働省、農林水産省)(印紙税)
・経営者の私財提供に係る譲渡所得の非課税措置の拡充及び延長(内閣府、復興庁、経済産業省)(所得税)
復興庁
(単独要望の事項)
・帰還・移住等環境整備推進法人に土地等を譲渡した場合等の特例措置の延長(登録免許税)
法務省
(単独要望の事項)
・相続登記の促進のための登録免許税の特例措置の拡充及び延長(登録免許税)
財務省
(単独要望の事項)
・新型コロナウイルス感染症に関する特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税措置の延長(印紙税)
文部科学省
(共同要望で主管省庁となる事項)
・特定の学資としての資金の貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の延長(内閣府)(印紙税)
厚生労働省
(単独要望の事項)
・雇用保険制度の見直しに伴う税制上の所要の措置(所得税、国税徴収法)
(共同要望で主管省庁となる事項)
・交際費課税の特例措置の延長(経済産業省)(法人税)
農林水産省
(単独要望の事項)
・山林所得に係る森林計画特別控除(所得税)
・農業協同組合等の合併に係る課税の特例措置(①農業協同組合関係、②森林組合関係、③漁業共同組合関係)(法人税)
・農地中間管理機構が農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置(登録免許税)
経済産業省
(単独要望の事項)
・特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例の拡充及び延長(法人税)
・認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等の税率の軽減の延長(登録免許税)
・海外投資等損失準備金の延長(法人税)
・探鉱準備金又は海外探鉱準備金、新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除の拡充及び延長(所得税、法人税)
・保険会社等の異常危険準備金の適用期限延長(法人税)
・産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画の認定自治体における登録免許税の軽減措置の延長(登録免許税)
(共同要望で主管省庁となる事項)
・産業競争力強化法に基づく事業再編に係る登録免許税の軽減措置の延長・見直し(経済産業省、総務省、農林水産省、国土交通省)(登録免許税)
・認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除の見直し及び延長(経済産業省、総務省)(所得税、法人税)
・交際費の課税の特例(中小法人における損金算入の特例)措置の延長(経済産業省、厚生労働省)(法人税)
・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の延長(経済産業省、厚生労働省、総務省)(所得税、法人税)
・中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る税負担の軽減措置の延長(経済産業省、農林水産省、厚生労働省)(登録免許税)
・新型コロナウイルス感染症に関する特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税措置の延長(経済産業省、財務省)(印紙税)
国土交通省
(単独要望の事項)
・物流総合効率化法の認定計画に基づき取得した事業用資産に係る特例措置の延長(所得税、法人税)
・工事請負契約書及び不動産譲渡契約書に係る印紙税の特例措置の延長(印紙税)
・低未利用土地権利設定等促進計画に係る特例措置の延長(登録免許税)
・民間施設直結スマートインターチェンジ整備に係る特例措置の延長(登録免許税)
・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例措置の延長(所得税)
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度の延長(所得税)
・特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度の延長(所得税)
・住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置の延長(登録免許税)
・買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置の延長(登録免許税)
・マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等の免税措置の延長(登録免許税)
・国際船舶の所有権の保存登記等に係る特例措置の拡充及び延長(登録免許税)
(共同要望で主管省庁となる事項)
・既存住宅の耐震・バリアフリー・省エネ・三世代同居・長期優良住宅化リフォームに係る特例措置の拡充及び延長(内閣府・経済産業省・環境省)(所得税)
・認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に係る軽減措置の延長(環境省)(登録免許税)
・認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に係る軽減措置の延長(経済産業省・環境省)(登録免許税)
環境省
(単独要望の事項)
・特定廃棄物最終処分場における特定災害防止準備金の損金算入等に係る特例措置の延長(所得税、法人税)

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