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解説記事2021年09月13日 SCOPE 免税店から国外業者へのキックバック、国外取引と認定(2021年9月13日号・№897)

旅行手配業者に係る消費税の内外判定で国勝訴
免税店から国外業者へのキックバック、国外取引と認定


 訪日ツアー客向けの免税店を経営する原告が国外のランドオペレーター(旅行サービス手配業者)から受けた役務の提供が「国内において行った課税仕入れ」に当たるか否かが争われた事案で、東京地裁民事3部(市原義孝裁判長)は、令和3年6月2日、本件役務は「国内及び国外にわたって行われるもの」であり、本件ランドオペレーター(以下、本件ランド)が国内に事務所等を有していないことから、国内取引には該当しないとの判決を下した。

東京地裁、国外の旅行手配業者の役務の内容は国内外で行われた一連の行為

 ランドオペレーターとは、ツアーを主催する旅行会社からの依頼を受けて、主にホテル、食事、ガイド、交通等の手配・予約等を専門に行う業者である。本件では、ツアー客が原告の店舗で買物をした場合に、原告の売上げに比例した本件手数料を原告が本件ランドに支払う契約になっており、また、原告と本件ガイドとは直接の契約関係にはないものの、本件ランドが本件ガイドに対して、原告の売上げに比例した手数料を支払うことが前提とされていた。
 役務の提供の内外判定については、原則として、その役務の提供が行われた場所で判定することになるが、一定の役務の提供以外で、国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供が行われた場所が明らかでないものについては、役務の提供を行う者の事務所等の所在地により判定することとされている(消令6②六)。
 本件では、本件手数料と対価関係にある本件ランドの役務の内容が何であるかがポイントとなった。東京地裁は、その役務の内容は、①本件ランドが本件ガイドを選任し、原告の店舗に訪日ツアー客を誘引して、買物をさせるように指示すること、②その指示に基づいて、本件ガイドが原告の店舗に訪日ツアー客を誘引して買物をさせること、③本件ランド又はその指示を受けた本件ガイドが原告に対し、訪日ツアー客の名簿を送付し、本件手数料の額の計算ができるようにすることにより構成される原告の商品の購入に向けられた一連の行為であると認定した。
 そして、本件ランドによって行われた上記①及び③の役務の提供は、本件ランドの国外の事務所等から国内の原告及び本件ガイドに対して行われたものであり、一方、本件ガイドによって行われた②及び③の役務の提供は国内で行われたものといえると指摘。したがって、本件手数料の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区分されているとはいえず、そうすると、本件役務の提供は、施行令6条2項6号に規定する「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」に該当するものと認められるところ、本件ランドはいずれも国内に事務所等を有していないから、当該役務の提供は、「国内において行った課税仕入れ」に該当しないと結論づけた。
 原告は、本件ランドの役務の内容は、①日本国内ツアーにおける国内のバスでの移動中等に、訪日ツアー客に対し、原告の店舗の紹介・宣伝を行うこと、②日本国内のバスでの移動中や原告の店舗内において、訪日ツアー客に対し、原告の店舗が取り扱う商品に関する紹介・宣伝を行うこと、③訪日ツアー客を原告の店舗まで引率し、店内の案内を行うことであり、本件ランドは、これらの役務の提供を履行補助者である本件ガイドに委託し、原告に対する債務を履行していたとして、国内取引であると主張した。
 しかし東京地裁は、本件ランドの役務の内容は、本件ガイドの選任、本件ガイドに対する上記指示、原告に対する訪日ツアー客の名簿の送付を含めた一連の行為と解するのが相当であるから、これらの一連の行為のうち一部のみを殊更に取り出すことは相当でないとして、原告の主張を斥けた。

裁決、パック旅行の一部を輸出免税と認めず
 本件以外のランドオペレーターに係る消費税を巡る紛争としては、日本のランドオペレーターが海外の旅行会社に販売したパック旅行の売上げが輸出免税の対象となるかが争われた事案がある(平成23年6月14日裁決、本誌466号18頁)。審判所は、国内パック旅行の対価に含まれる飲食、宿泊、輸送等の役務の提供は、輸出免税取引の対象から除かれている国内における飲食又は宿泊、運送等(消令17②七イ及びロ)に当たるとして、対価の一部を輸出免税取引の対象外とする判断を下した(平成29年国税庁質疑応答事例に追加)。しかし、専門家からは、ランドオペレーターは日本国内役務の提供を海外旅行会社に「包括的」に販売しているだけであり、海外旅行会社の顧客であるツアー客に対して本件役務の提供を行っているわけではないとして、審判所の判断を疑問視する声も上がっている。
 ランドオペレーターについては、過去に問題が多発し、平成30年の旅行業法の改正で登録制になるなど業務の改善が図られた。コロナ後の日本でも、外国人観光客の誘致を促進する政策において重要な役割を果たすことが期待されるだけに、消費税の取扱いがその障害となることがないよう望まれる。

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