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解説記事2021年09月20日 SCOPE 「駐車場業」に該当しないとする控訴審判決受け上告断念(2021年9月20日号・№898)

東京都は個別に課税処分を見直しへ
「駐車場業」に該当しないとする控訴審判決受け上告断念


 コインパーキング事業者への土地賃貸が地方税法(個人事業税)に規定する「駐車場業」に該当するか否かが争点となった個人事業税課税事案(本誌875号40頁、883号10頁、896号7頁、今号24頁参照)で、個人事業税の賦課決定処分を取消した控訴審判決が、東京都の上告断念により確定した。
 コインパーキング事業は社会に広く定着したものとなっており、控訴審判決が「近年は土地賃貸方式が主流となっている」と指摘しているように、コインパーキング事業者への土地賃貸方式に対して個人事業税の認定基準が見直されることになれば、広い範囲に影響(課税処分の取消し・見直し及び還付)が及ぶことが想定される。
 上告断念を受けて本誌が東京都に取材したところ、担当官より、駐車場の事業形態(管理業務への関与)はさまざまであることから、駐車場業の認定基準を見直した上で、(本件訴訟の類似事案に対しては)個別に課税処分の見直しを図っていくとの回答を得ている。

「駐車場業」の認定基準の見直しは不可欠

 東京都の担当者は、本誌の取材に対して本件の上告を断念したことを明かにした。
 コインパーキング事業は広く普及しており、本判決が確定すると、個人事業税の課税実務に広く影響(課税処分の見直し)が及ぶことが懸念されてきた。東京都は本件の一審段階で他の道府県に対する照会結果を提出し、回答のあった45道府県のうち42道府県が、『「駐車場業」の認定を、土地の直接の借主が駐車している場合に限定していない旨回答した』と主張していた。東京都がこのような主張を行った意図は、各道府県の実態を踏まえ、本判決が確定した場合の個人事業税課税実務への影響の大きさを訴えたものと考えられる。
 控訴審判決の確定を受け、本誌が東京都の担当者に課税処分の見直しの範囲を取材したところ、担当者は、本件事案の性質上、取扱い(認定基準)の見直しの検討を行っていると回答している。課税処分の見直しの前提として、「駐車場業」の認定基準の見直しは不可欠となる。東京都のホームページには、「土地を駐車場用地として貸し付けている場合も含みます。」と注記していたが、この文言を削除しただけでは課税の見直しには不十分なのは明らかだ。東京都の担当者は、控訴審判決で『個人事業税の対象となる『駐車場業』とは、当該個人において事業といえる程度の形態で有料の駐車場が営まれていることが必要であると解すべき』と判示されていることを受け、同様・類似の事案に対しては、駐車場の管理業務への関与などを見極め、個別に課税処分の見直しを行っていきたいと語った。

埼玉県の認定基準が参考にされる可能性

 本件訴訟の経緯からは、東京都における「駐車場業」の認定基準は、埼玉県が平成22年度の課税分から一部変更して採用している「認定基準」を参考にして見直していくことが予想される。
 本件訴訟において、原告(被控訴人)が唯一評価してきた認定基準が埼玉県の認定基準であった。東京都とは明らかに異なる認定基準を具体的に提示したことで、原告の主張にリアリティを持たせることができたと言えよう。
 埼玉県は平成22年度の課税分から、「駐車場用地として、土地を一括して貸し付けている場合は、駐車場の利用に関する管理業務を行っているもののみ駐車場業の認定を行います。なお、利用に関する管理業務とは、駐車場利用者の募集、契約及び駐車車両の特定など、駐車場を経営する上で必要な業務のことです。」と、「駐車場業」の取扱いの一部変更を周知させている。また、変更の理由として、次のように記している。
 「これまでは、申告内容や土地の利用状況、契約書の名目などを確認して、貸し付けた土地が駐車場として利用されていれば、駐車場業の認定を行ってきました。しかし、近年、土地利用や契約形態などが多様化しており、不動産貸付業における『貸地』との区分が困難な事例が生じています。そこで、認定基準を見直し、納税者の皆様により分かりやすく、より適正な課税を行うために、取扱いを明確化することとしました。」
 控訴審判決は原告(被控訴人)の主張に沿ったものとなっており、その主張を裏付けた具体的な「駐車場業」の認定基準が、埼玉県の「駐車場業」の取扱いと位置付けられてきたのである。

東京都以外の道府県の実態・対応は不明

 「事案ごとの個別の対応」との東京都の担当官の回答は、ある意味担当官としては当然のものであり、コインパーキング業の実態を考慮すれば、実際のコインパーキング駐車場の管理はコインパーキング事業者に丸投げされていることから、ほとんどの類似事案では、「駐車場業」には該当しないという認定に落ち着くものと考えられる。
 東京都以外の他の道府県については、訴訟の両当事者の主張がかけ離れているため、本件と同様の典型的な土地賃貸方式によるコインパーキング事業者への賃貸に対し「駐車場業」として個人事業税が課税されていたのかどうかは不明である。東京都が主張してきたように、典型的な土地賃貸方式によっていた場合にも「駐車場業」として個人事業税が課税されていたとすると、本件確定判決を踏まえ、納税者は課税処分の見直しを求めることが考えられよう。各道府県の対応が現時点では不明なため、課税道府県への照会から始める必要があろう。

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