税務ニュース2021年10月29日 出金依頼の可能性は否定できず隠蔽なし(2021年11月1日号・№904) 審判所、被相続人に対する不当利得返還請求権は有しないと判断

  • 被相続人名義の預金から請求人及びその妻が出金した金員について、被相続人に不当利得返還請求があったか否かが争われた事案。
  • 国税不服審判所は、被相続人は自身の財産を自己の管理下に置いており、金員の出金を請求人及びその妻に依頼することができないとまではいえないと判断。原処分庁による更正処分を全部取り消した。

 本件は、原処分庁が被相続人名義の預金から請求人及びその妻が出金した金員は法律上の原因なくして利得したものであり、被相続人は請求人に対して当該金員と同額の不当利得返還請求権を有していたから、当該不当利得返還請求権は相続財産であるなどとして相続税の更正処分等を行ったことに対し、請求人が当該不当利得返還請求権は存在しておらず相続財産ではないなどとして、更正処分等の取消しを求めた事案である。
 原処分庁は、本件金員は請求人及びその妻が老人ホームに入居していた被相続人から了解を得ることなく引き出したものであり、被相続人には金員に相当する額の不当利得返還請求権があったにもかかわらず、請求人は金員の引き出しは被相続人の指示によるものであったなどとし、不当利得返還請求権がなかったかのように事実を隠蔽仮装したなどと主張。一方、請求人は被相続人の利益のために使用することを目的として金員を引き出したなどと主張した。
 審判所は、不当利得返還請求権が成立するためには、受益者(請求人及びその妻)が法律上の原因なく他人(被相続人)の財産等により利益を受け、これにより他人(被相続人)に損失を及ぼしたと認められることが必要であるとした。その上で本件については、被相続人は老人ホームの職員によると、少なくとも平成26年1月頃(住居型居室に入居していた頃)までは自身の居室内に設置してある金庫で自身の貴重品を管理していたものと認められることから、少なくともこの頃までは、被相続人は自身の財産を自己の管理下に置いていたものと認められると指摘。審判所は、平成26年1月から相続開始日までの間に被相続人の体調等が本件金員の出金を請求人夫妻に依頼又は指示することが困難にならしめる程度まで低下していたとまでは認め難く、被相続人が請求人夫婦に対し金員の出金を依頼又は指示していた可能性は否定できないとの判断を示し、被相続人は請求人夫婦に対して金員に相当する額の不当利得返還請求権を有していたとはいえないとして、更正処分の全部を取り消した(令和3年1月6日裁決)。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索