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解説記事2021年11月01日 ニュース特集 所得税・法人税調査で贈与端緒の把握も(2021年11月1日号・№904)

ニュース特集
事業承継、保険契約、新株引受けetc.
所得税・法人税調査で贈与端緒の把握も


 所得税や法人税調査等では調査担当者が生前贈与の把握にも目を光らせているようだ。課税当局の贈与税関係資料には、「他税目調査からの贈与端緒の把握事例」が掲載されており、贈与の端緒を把握するためのポイントも示されている。本特集では、当該資料の中から所得税・法人税調査において贈与の端緒が把握された9事例を紹介する。

ケース1
事業承継に伴い事業用資産を贈与していた事例〔所得税調査で把握〕
〇事案の概要(贈与財産:事業用資産、贈与時期:事業承継時)


・事業内容を確認したところ、親から子へ事業承継が行われた事実を把握
・棚卸資産等の事業用資産の引継ぎ状況を確認したところ、無償であったことが判明

贈与の端緒を把握するためのポイント
・開業して間もない場合は、親族などから事業を承継していないか、開業資金の援助を受けていないかを聴取し、支払方法を通帳等で確認
・事業承継(※)が行われていた場合は、事業用資産等を無償で譲り受けていないか聴取
 ※農業用資産の事業承継については、相続税関係個別通達(昭35直所1-14、直資15)に別途取扱いがあるため留意すること(父子間における農業経営者の判定並びにこれに伴う所得税及び贈与税の取扱いについて)。

ケース2
無職の妻が取引している上場株式等の取得資金を負担していた事例〔所得税調査で把握〕
〇事案の概要(贈与財産:株式運用資金、贈与時期:妻名義口座への送金時)

・臨場調査時に、無職である妻名義の特定口座年間取引報告書を発見し、上場株式等の取引を2年前から開始している事実を把握
・上場株式等の取得資金の出所を確認したところ、調査対象者の預金口座より証券会社の妻名義の取引口座に送金されていたことが判明

贈与の端緒を把握するためのポイント
・収入のない者が、上場株式等の取引等を行っている場合は、①上場株式等の取得資金は誰が負担しているか、②上場株式等の取引(売買の意思決定)は誰が行っているか、③配当金等は誰が収受しているか通帳等または金融機関調査や各種照会から確認

ケース3
長男の住宅購入資金を負担していた事例〔所得税調査で把握〕
〇事案の概要(贈与財産:住宅購入資金、贈与時期:ハウスメーカーへの送金時)

・臨場調査時に把握した不明出金の支払先を解明するため金融機関調査を実施し、調査対象者名義の口座からハウスメーカーへの送金を把握
・送金内容を確認しところ、長男が所有する住宅の購入資金の一部であることが判明

贈与の端緒を把握するためのポイント
・大口の不明出金を把握した場合は、その使途を金融機関調査などで必ず確認
・不動産を購入している場合には、購入資金の負担割合に応じた登記がされているかを契約書、通帳等と登記事項証明書で確認
・家族間の資金移動を把握した場合は、①資金移動の目的は何か、②原資は誰のもので誰が移動させたか、③移動後は誰が管理(保管)・運用し又は費消しているかを聴取し、実際の資金移動の状況を通帳等で確認

ケース4
長男が保険契約者となっている生命保険契約の保険料を母親が負担していた事例〔所得税調査で把握〕
〇事案の概要(贈与財産:満期保険金、贈与時期:保険満期時)

・臨場調査時に、調査対象者の長男が保険契約者かつ保険受取人となっている生命保険契約の満期保険金支払明細書を把握
・保険料の支払方法を確認したところ、調査対象者名義の預金口座から保険料が振り替えられており、保険料は調査対象者が負担していたことが判明

贈与の端緒を把握するためのポイント
・保険契約者が、保険料の負担者でないケースもあることから、実質の保険料負担者を通帳等で確認
・親族の預金口座に保険会社からの入金があった場合は、入金理由を聴取し、その保険契約の保険料負担者を通帳等で確認
(注)1 保険契約者と保険料負担者が異なっていても保険事故等が発生(保険金を受領)していない場合には、原則として、贈与税は課税されないが、その後に保険事故等が発生した場合には、その時点において、贈与税が課税されることになる(相法5)。
(注)2 保険事故等発生前に保険契約者の変更がされる場合があるが、その時点において贈与税は課税されず、その契約者たる地位に基づいて保険契約を解約し、解約返戻金を取得した場合に、新たな保険契約者は、その解約返戻金を保険料負担者から贈与により取得したものとみなされ課税されることになる(相法5②)。

ケース5
親族間の借入れにおいて、利息相当分の支払いを免除していた事例〔所得税調査で把握〕
〇事案の概要(贈与財産:経済的利益(借入利息)、贈与時期:月々の借入返済時)

・臨場調査時に、調査対象者が母親から相続税の納付資金を借り入れた際に作成した念書を発見するとともに、当該念書には利息に関しての記述がないことを把握
・利息の支払状況を確認したところ、調査時までに利息の支払いは一切行っていないことが判明

贈与の端緒を把握するためのポイント
・親族間の金銭貸借がある場合には、返済が確実に行われているかを証書や通帳等で確認するとともに、利息についても市中金利等に照らして適正に設定しているか確認

ケース6
事業所得の経費を架空計上し、国外送金により長男に贈与していた事例〔所得税連携調査で把握〕
〇事案の概要(贈与財産:国外送金資金、贈与時期:国外送金時)

・国外送金等調書から、国外に居住する長男に対して多額の国外送金をしていることを把握したことから、所得税(事業所得)と贈与税の連携調査を実施
・臨場調査時に、送金内容について追及したところ、事業所得の経費に人件費を架空計上し、長男へ国外送金していた事実が判明(併せて長男への国外送金の大部分は贈与であることを認めた)

贈与の端緒を把握するためのポイント
・国外送金等調書から不明送金がある場合、送金の目的を聴取
・所得税調査などで贈与が想定される場合を把握したときは、必要に応じて連携調査を実施

ケース7
対価の支払いがなく株式の名義が変更されていた事例〔法人税調査で把握〕
〇事案の概要(贈与財産:有価証券、贈与時期:名義変更時)

・臨場調査において、株主名簿を確認したところ、調査対象法人の株主が親族間で異動している事実を把握
・名義変更の経緯や代金決済状況等を確認したところ、無償で子供や孫へ名義変更されていたことが判明

贈与の端緒を把握するためのポイント
・調査対象法人の株式の異動事実を把握した場合は、無償で名義変更されていないかを、株式譲渡所得申告の有無や契約書等で確認
・対価の支払いがある場合には、その金額の妥当性を算定過程や計算根拠により確認

ケース8
同族法人が増資した際、代表者の長男が募集株式引受権を取得した事例〔法人税調査で把握〕
〇事案の概要(贈与財産:経済的利益(増資後の株価と払込金額の差額)、贈与時期:新株取得時)

・臨場調査により、調査対象法人が増資している事実を把握
・株主総会(取締役会)議事録や募集株式引受けに係る契約書などを確認したところ、株主ではなかった代表者の長男が全ての募集株式引受権を取得していたことが判明

贈与の端緒を把握するためのポイント
・調査対象法人が増資している事実を把握した場合には、増資前の株式の保有割合と異なる募集株式引受権を取得している者がいないか株主総会議事録や募集株式引受契約書等を確認

【具体的計算例】
〇事案例

 調査対象法人における募集株式に係る募集事項は下記のとおりである。
(株)□□□(募集株式 1,000株、払込金額 1株当たり1,000円)

・同族法人の募集株式引受権の付与について、課税関係が生ずるのは、増資前の株式の価額(時価)より低い価額の払込みで新株が発行される場合である。
・今回の場合、長男は、増資前の株価10,000円より低い1,000円の払込みで新たに株式を取得し、増資後の株価は5,500円になっている。
・一方、もともと株主であった父親の増資前の株価10,000円は増資によって5,500円に下がっている。
・つまり、増資後の株価と長男の払込金額の差額4,500円は、父親の株価の減少分が付け替わったことにほかならず、長男は父親から贈与を受けたことになる。

贈与税の課税価格は……
 ↓
4,500円(増資後の株価と払込金額の差)×1,000株(募集株式引受権の数)=4,500,000円

〔参考〕
・募集株式引受権の付与が旧株主に平等に行われなかった場合の課税は、ケースによって異なる。
・募集株式引受権の利益に対する課税は次のとおりである。
 ① 旧株主と新株主に親族関係があるかどうかに関係なく、労働の対価に対する役務の対価として付与された場合………給与所得又は退職所得
 ② ①に該当しない場合で、旧株主と新株主に親族関係がある場合………贈与税
 ③ ①②に該当しない場合………一時所得

ケース9
CRS情報を端緒に法人代表者からの贈与を把握した事例〔所得税調査で把握(海外関連)〕
○事案の概要(贈与財産:現金・預貯金、贈与時期:現金の支払い時)

・日本の居住者が国外の金融機関等に保有する金融口座情報(CRS情報)を端緒に、利子等に関する調査を開始
・調査過程で調査対象者が国外の金融機関に保有している預貯金は、法人代表者からの贈与であることが判明

贈与の端緒を把握するためのポイント
・調査対象者の過去の収入状況と保有財産を聴取
・保有財産は、原資は誰のものでどのようにして形成された財産であるかを聴取
・財産の所在が国外にある場合、納税義務者の区分を国籍及び国内に住所を有していた期間で判断し、課税対象となる財産の範囲を確認

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