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解説記事2021年11月08日 SCOPE 東京都コインパーキング裁判、他の道府県への影響は限定的(2021年11月8日号・№905)

駐車場管理せず課税の場合は交渉の余地も
東京都コインパーキング裁判、他の道府県への影響は限定的


 東京都は10月11日、今年8月の東京高裁判決を受け、個人事業税の「駐車場業」に関する取扱いを変更した。東京高裁の判決では、コインパーキング事業者に駐車場事業用の土地を貸し付け、自らは駐車場事業の運営には関与しない典型的な土地賃貸方式の場合には個人事業税における「駐車場業」には該当しないとして、東京都の個人事業税賦課決定処分を取り消している(本誌896号7頁、898号40頁、今号19頁参照)。今回の東京高裁の判決が他の道府県にどの程度影響を及ぼすのか注目されるが、本誌取材によれば、東京都の従来の取扱いとは異なり、更地をコインパーキング事業者等に一括して貸し付けているようなケースでは「駐車場業」とする取扱いをしているところはほとんどないようだ。
 ただし、一括した土地の貸付けでも、駐車場用地として整地し、区画を設けるなど一定の設備を施した上で貸付けている場合には「駐車場業」に該当するとの取扱いを行っているところもある。個別ケースにはなるが、仮に駐車場の管理などを行っていないにもかかわらず「駐車場業」として個人事業税が課せられている納税者においては地方公共団体と交渉の余地もあろう。

土地の貸付けのみで管理しない場合は「駐車場業」に該当せず

 コインパーキング事業者に土地を賃貸した個人への個人事業税課税の是非が争われた事件で、東京高裁(中山孝雄裁判長)は8月26日、コインパーキング事業者に駐車場事業の用に供するための土地を貸し付けて、駐車場事業の運営には関与せず、低額の賃料を受け取るにすぎないような典型的な土地賃貸方式の場合には、自動車の駐車のための場所を提供する業務を自己の計算と危険において独立して反復継続的に行っているものとは評価し難いとして「駐車場業」には該当しないとの判断を示している。その後東京都は上告を断念したため東京高裁の判決が確定。10月11日には個人事業税の「駐車場業」に関する取扱いを変更した。
東京都、裁判で他の道府県も同じと主張
 東京都以外の県なども不動産貸付業・駐車場業の認定基準を事務提要で規定しているが、東京都と同様、多くは①「建築物・機械式等である駐車場(及び寄託を受けて保管行為を行う駐車場)」の場合は駐車可能台数が1台以上、②「①以外の駐車場」(青空駐車場)の場合は駐車可能台数が10台以上の要件を満たすものが「駐車場業」に該当するとされている。東京都の場合は、①のケースで納税者がコインパーキング事業者に土地を貸し付けている場合でも「駐車場業」としていたものだが、他の道府県も東京都と同様の取扱いを行っているところがあるのではないかとの懸念があった。東京都が裁判において他の道府県に対する照会結果を提出し、42道府県が「駐車場業」の認定をしていたと主張していたからだ(なお、裁判では東京都の照会結果をもって42道府県が東京都と同様の理解の下で課税をしているものとは解し難いとして東京都の主張は斥けられている)。
 本誌の取材によれば、一般的な考え方として他の道府県の多くは、土地をコインパーキング事業者等に貸し付け、自らは管理していない場合には「駐車場業」ではなく「不動産貸付」(認定基準を満たす場合には「不動産貸付業」として課税)との取扱いを行っているようだ。ホームページ上で「不動産貸付」となる旨を示している埼玉県、石川県、熊本県を含め、従来行っていた東京都の取扱いとは異なっていた。このため今回の東京高裁の判決が他に及ぼす影響は限定的なものになりそうだ。

舗装等している場合には「駐車場業」に認定するケースも

 ただし、個別ケースで見ることになるが、これらの道府県についても駐車場用地として一定の設備投資(舗装、車止め等)を行った上で貸し付けているケースでは「駐車場業」として認定していることがある。また、決算書に駐車場をアスファルトにするなど、償却資産が計上されているようなケースについては認定を行う際に確認が行われるようだ。
 東京高裁で争われた事件の納税者は不動産所得を確定申告する際にアスファルト舗装を行っており減価償却資産として計上していたが、判決では特に判断は示されておらず、自らは駐車場事業の運営には関与しない土地賃貸方式であったかどうかが大きなポイントとなっている。
 仮に舗装等をしていたとしてもコインパーキング事業者に管理運営を任せている土地賃貸方式の場合で「駐車場業」に認定されているケースであれば今回の東京高裁の判決を踏まえて不動産貸付になるか地方公共団体と交渉する余地も少なからずあろう。

東京都、増税の場合は遡及適用せず
 東京都は10月11日、個人事業税の「駐車場業」に関する取扱いを変更している(本誌902号10頁参照)。例えば、貸し付けた先のコインパーキング事業者が第三者に駐車させているような場合は、住宅用以外の土地の貸付けとして取り扱うことになる。
 令和2年分所得にかかる課税分から変更されることになるが、過去の分については個別ごとに対応していく方針を示している。「駐車場業」に該当しなくなり、かつ「不動産貸付業」にも該当せず減税となるケースは職権で減額するとしている。一方、「駐車場業」から「不動産貸付業」に変更されたことで増税になってしまうようなケースについては不利益遡及の原則から増税は行わず、令和3年分所得にかかる課税分から取扱いを変更するとしている。

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