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解説記事2021年11月29日 税務マエストロ 日本型インボイス制度(4)(2021年11月29日号・№908)

税務マエストロ
日本型インボイス制度(4)
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 適格請求書等の保存義務は、仕入税額控除の要件として買い手にだけ義務付けられたものではない。売り手である適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書等の書類の写しの保存が義務付けられていることにも注意する必要がある。
 今回は、適格請求書発行事業者に交付や保存が義務付けられているインボイスのうち、適格返還請求書について確認する。また、インボイスの交付義務が免除される取引のほか、電子インボイスについても簡単に紹介する。

1 適格返還請求書

 売上げに係る対価の返還等を行う「適格請求書発行事業者」は、取引先に対して「適格返還請求書」の交付が義務付けられている。
 「売上げに係る対価の返還等」には、課税売上げに対する返品や値引、割戻しだけでなく、売上割引や販売奨励金、協同組合が組合員に支払う事業分量配当金も含まれる(消法38①、消基通14−1−2〜4)。
(1)適格返還請求書の記載事項(消法57の4③)
 「適格返還請求書」とは、次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類をいう。

(2)交付方法(インボイス通達3−16)
 適格請求書と適格返還請求書は一の書類により交付することができる。
 また、税抜(税込)取引金額と消費税額についても相殺後の差額を記載することができる。

(3)調整税額の計算方法
 適格請求書発行事業者は、返還等対価に係る税額(申告書⑤欄の金額)を計算する際に、適格返還請求書に記載した消費税額等(記載事項の⑦の金額)に78%を乗じて算出することができる(消法38①、消令58①)。
 また、適格返還請求書の交付を受けた事業者が、仕入れに係る対価の返還等の調整税額を計算する場合においても、交付を受けた適格返還請求書に記載された消費税額等(記載事項の⑦の金額)に78%を乗じて算出することができる(消法32①、消令52①)。
(注)「仕入れに係る対価の返還等」には、課税仕入れに対する返品や値引、割戻しだけでなく、仕入割引や販売奨励金収入、協同組合から組合員が収受する事業分量配当金も含まれる(消法32①、消基通12−1−2〜4)。

2 適格請求書発行事業者の義務等

(1)適格請求書の交付義務
 適格請求書発行事業者は、取引先から要求されたときは、インボイスを交付しなければならない。また、交付したインボイスなどの記載事項に誤りがあった場合には、修正したものを交付することが義務付けられている。ただし、当初に交付したインボイスなどとの関連性を明らかにした上で、修正した事項を明示した書類で代用することもできる(消法57の4①前文、④・インボイス通達3−17・インボイスQ&A問29)。
<インボイスの修正>
 記載事項に誤りのあるインボイスの交付を受けた事業者は、自らが追記や修正を行うことはできないので、修正したインボイスの交付を求める必要がある(インボイスQ&A問73)。
 また、売手の確認を受けた上で、発行者(買手)が修正した書類を発行することもできる(インボイスQ&A問29)。
(2)媒介者交付特例(消令70の12・インボイス通達3−7、3−8・インボイスQ&A問39)
 委託販売取引については、受託者(媒介者)が委託者の名称や登録番号などを記載した適格請求書を交付することが認められている(代理交付)。
 また、次の①及び②の要件を満たすことにより、受託者の名称や登録番号などを記載した適格請求書を、委託者に代わって交付することができる(媒介者交付特例)。
① 委託者と受託者のいずれもが適格請求書発行事業者であること
② 書面または契約書などにより、委託者が適格請求書発行事業者である旨を受託者に通知すること

(3)適格請求書の交付義務が免除されるもの(消令70の9、消規26の6)
 次の①〜④の取引については、適格請求書の交付義務が免除されている。

(4)電子インボイスの提供
 適格請求書発行事業者は、インボイスなどの交付に代えて、電磁的記録(電子インボイス)を提供することができる。また、取引先に交付する書類について、書面と電子データによる提供を併用することも認められる。
 ただし、提供した電子インボイスに誤りがあった場合には、修正した電子インボイスを提供することが義務付けられている(消法57の4⑤・インボイスQ&A問57)。

(電磁的記録による提供方法の例示)
① 光ディスク、磁気テープ等の記録用の媒体による提供
② EDI取引における電子データの提供
(注)EDI(Electronic Data Interchange)取引とは、異なる企業・組織間で商取引に関するデータを通信回線を介してコンピュータ間で交換する取引等をいう。
③ 電子メールによる電子データの提供
④ インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じた電子データの提供

 (インボイス通達3−2・インボイスQ&A問28)


(5)適格請求書等の保存(消法57の4⑥)
 適格請求書・適格簡易請求書・適格返還請求書を交付した適格請求書発行事業者は、交付した書類の写しの保存義務がある。また、これらの書類の交付に代えて電子インボイスを提供した適格請求書発行事業者は、その電子データを保存する義務がある。
 保存する書類は、交付した書類のほか、レジのジャーナルや一覧表、明細書でも構わないこととされている。電子データについては、紙で出力する方法だけでなく、所定の手続の基、データのまま保存することも認められている(インボイスQ&A問61)。

(6)適格請求書類似書類等の交付禁止(消法57の5)
 下記に掲げる適格請求書類似書類等の交付及び提供が禁止される。

 インボイスが導入される令和5年9月30日までの間は、免税事業者との取引であっても仕入税額控除の対象とすることができる。こういった理由から、免税事業者が発行する区分記載請求書には、軽減税率の適用対象取引であることと、税率ごとの取引金額を記載することが義務付けられている(軽減税率Q&A(個別事例編)問111)。
 軽減税率Q&A(個別事例編)問111には、『……免税事業者は、取引に課される消費税がないことから、請求書等に「消費税額」等を表示して別途消費税相当額等を受け取るといったことは消費税の仕組み上、予定されていません。』との記載がされている。しかし、免税事業者が別途消費税相当額を受け取ることは法令などで禁止されていないため、現実の商取引においては、免税事業者でも外税で消費税相当額を受領している。
 令和5年10月以降は、免税事業者が消費税相当額を記載した書類を発行した場合、インボイス類似書類の発行として罰則規定が適用される可能性があるので注意が必要だ(消法65①四)。
○旧転嫁対策特別措置法との関係
 旧転嫁対策特別措置法では、免税事業者への減額要請や買いたたきが禁止されていた。
 例えば税率が8%から10%に引き上げになる際に、免税事業者が10,800円の商品を11,000円で売ることは、事実上認められていたのである。
 だからといって、インボイス導入後も免税事業者が消費税相当額を請求できるかというと、これはまた次元の違う話ではないかと思えるのである(私見)。
 よって、旧転嫁対策特別措置法で禁止されていた免税事業者への減額要請や買いたたきは、令和3年3月31日の法律の失効と共に消滅したものと考えるべきではないだろうか?
 なお、公正取引委員会の「消費税転嫁対策特別措置法の失効後における消費税の転嫁拒否等の行為に係る独占禁止法及び下請法の考え方に関するQ&A」には、免税事業者に対する消費税の取扱いについての指針は何ら示されてはいない。

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