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解説記事2021年11月29日 SCOPE 納税者本人の行為と同視できる納税者以外の隠蔽・仮装行為(2021年11月29日号・№908)

最近の裁決事例からみる
納税者本人の行為と同視できる納税者以外の隠蔽・仮装行為


 納税者による隠蔽又は仮装行為については重加算税の対象となるが、納税者以外の者であっても、納税者本人の行為と同視することができる場合には、納税者本人に対して重加算税を賦課することができるとされている。今回のスコープでは、納税者本人以外の隠蔽又は仮装行為が納税者本人の行為と同視された最近の裁決事例を2件紹介する。

不正行為を行った従業員の地位や不正行為、管理・監督等を総合的に判断

 国税通則法68条1項では、「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」と規定し、隠蔽又は仮装する行為の主体を納税者としているが、納税者以外の者が隠蔽又は仮装する行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができる場合には、納税者本人に対して重加算税を賦課することができると解されている。
 納税者が法人の場合、従業員などの不正行為を納税者本人の行為と同視できるか否かは、①その従業員などの地位・権限、②その従業員などが行った不正行為の態様、③その従業員などに対する管理・監督の程度等を総合考慮して判断することになるとされている。
代表者は病気で注意義務を尽くせずと主張
 1件目に紹介する裁決は、請求人(土木建設用機械の販売及び修理等を行う法人)の「取締役統括部長A」が請求人に無断でスクラップを売却し、その金員を費消していたというもの(東裁(法・諸)令2第37号)。原処分庁は請求人の工場から生じた金属スクラップの売却に係る金員を計上しなかったことにつき、隠蔽又は仮装の事実が認められるとして更正処分及び重加算税賦課決定処分を行った。一方、請求人は、Aに対して持病の悪化した代表者の代わりに顧客に挨拶に行かせるために取締役という肩書を与えたにすぎず、請求人にとって重要な地位や権限を有していなかったとしたほか、代表者は病気で通院しており、注意義務を尽くすには限界があったとして原処分の全部の取消しを求めた。
 審判所は、Aの行為が隠蔽・仮装に該当するとした上で、請求人の行為と同視できるか否かについて検討。例えば、Aの地位・権限については、Aは単なる営業担当者ではなく、(金属スクラップが発生する)センターの業務全般の管理や社外の者に対応する業務をすべて行っており、週1回程度出勤する代表者の不在時において代表者の代理として社外の者と対応できる唯一の者であったことからすると、請求人の事業の遂行に当たり重要な地位及び権限を有していたものと認められるなどとし(参照)、審判所は、請求人の行為と同視することができると判断し、請求人の主張を斥けている。

【表】従業員の不正行為を納税者本人の行為と同視できるか否かのポイントと審判所の判断

Aの地位・権限
 Aは単なる営業担当者ではなく、センターの業務全般の管理や社外の者に対応する業務をすべて行っており、週1回程度出勤する代表者の不在時において代表者の代理として社外の者と対応できる唯一の者であったことからすると、請求人の事業の遂行に当たり重要な地位及び権限を有していた。
Aの行為の不正行為の態様
 Aは請求人の従業員と共に、スクラップを請求人名で売却し、本件金員を請求人の収入であるとの認識の上、長期間にわたり請求人の社内のパソコンで作成した精算書に「スクラップ収入」として管理していたと認められることからすれば(帳簿書類には記載せず)、各取引並びに各金員の受領及び管理は請求人の業務の一環として行われたものである。また、代表者は、スクラップの売却と売却代金である各金員の存在について、Aから説明を受けていることなどからすれば、各取引の状況及び各金員の経理処理について、より詳細かつ具体的な報告を求めることにより本件行為を確認することが可能であった。
Aに対する請求人の管理・監督
 Aは、①代表者のセンターへの出社は週1回程度であるため、Aは必要があるときに代表者にメールや電話等で報告を行っている、②社外と対応する業務はすべて行っている、③作成した見積書や請求書等について、誰からも確認を受けることはなかったことなどから、センターの業務はAに一任され、代表者などが管理・監督する態勢にはなっていなかった。

確定申告書作成の受任者を適切に選任・監督することが必要

 2件目に紹介する裁決は、請求人のホステス業に係る報酬の確定申告書について、客の税理士事務所の事務員(第三者)が事実を仮装して提出したもの(大裁(所)令2第44号、45号)。原処分庁は、第三者の行為は請求人の行為と同視できるとして重加算税の賦課決定処分を行ったが、請求人は、確定申告書は第三者が独断で作成したものであるとして原処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。
 審判所は、納税者が適切に受任者を選任し、適法に申告するように受任者を監督することを怠って、当該受任者が隠蔽、仮装行為を行うことを認識し、その是正措置を講ずることができたにもかかわらず、納税者においてこれを防止せずに隠蔽、仮装行為が行われ、それに基づいて過少申告がなされた場合は、特段の事情がない限り、当該受任者の行為を納税者本人の行為と同視することができ、重加算税を賦課することができると解されるとした。
 その上で、審判所は、請求人が第三者から受け取った名刺等に、税理士であることを示す記載はなく、その者を税理士であると信じるに足りる事情があったことはうかがわれないとしたほか、請求人は、第三者に確定申告書作成代金を支払った際、領収書の日付の改ざんを黙認するなど、その者が請求人の確定申告につき、事実の隠蔽又は仮装行為を行うことを認識し、又は認識することができたにもかかわらず、確定申告書の内容の確認を怠ったことからすると、請求人は確定申告書作成の受任者を適切に選任したとはいえず、また、適法に申告するように適切に監督したと認めることもできないと指摘。審判所は、確定申告書の提出に係る当該第三者の行為は請求人の行為と同視することができるとの判断を示した。

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