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解説記事2021年12月06日 SCOPE 現物出資構成による取引の会計基準開発に向け論点整理へ(2021年12月6日号・№909)

SCOPE
改正会社法施行後も800社超が採用
現物出資構成による取引の会計基準開発に向け論点整理へ


 財務会計基準機構(FASF)の基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)は11月29日、現物出資構成による取引に関する会計基準の開発に向けた論点整理を企業会計基準委員会(ASBJ)の実務対応専門委員会に依頼することを決めた。
 改正会社法による取締役報酬等として株式を無償交付する場合の会計処理は、今年1月に実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」を公表したが、現物出資構成による取引は、実務対応報告第41号の適用対象外となっている。日本公認会計士協会によると、現物出資構成による取引は、改正会社法施行(令和3年3月1日)後も採用する企業が多く、会計処理及び開示の取扱いを定めるべきであるとしている。

取締役の報酬等として株式を無償交付する取引と同様の会計処理が適当

 企業会計基準委員会では、これまで実務対応報告第30号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」、実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」、実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」の3つの実務対応報告により一部のインセンティブ報酬に係る会計上の取扱いを明らかにしている。
現物出資構成は実務対応報告の対象外
 しかし、会計処理の定めのないインセンティブ報酬もある。そのうちの1つが譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)のうち、改正会社法施行前から存在するいわゆる現物出資構成による取引だ。現物出資構成による取引は、実務対応報告第41号の適用対象外だが、日本公認会計士協会によると、改正会社法施行後も引き続き多く見られ、適時情報開示からは取締役等への無償交付方式を採用した会社は約13社程度であるのに対し、現物出資方式を採用している旨の記載は800社超で見られるとしている。
 このため、日本公認会計士協会は基準諮問会議に対して、現物出資構成による取引について、実務対応報告第41号における取扱いと整合的な会計処理及び開示の取扱いの整備を求めている。
 実務対応報告第41号では、現物出資構成による取引は株式の有償発行であるなど、法的な性質が異なる点があるとされ、払込資本の認識時点など、異なる会計処理になるものと考えられるとしている。また、払込資本の認識時点以外にも、例えば、事後交付型の現物出資構成による取引について、実務対応報告第41号で定められている処理と異なり、業績等に連動した事後的な金銭債権等の付与の義務を負債として計上する実務も見られるとしている(日本公認会計士協会・会計制度委員会研究報告第15号「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」Ⅳ6(3)①1イ等)。
 一方、日本公認会計士協会は、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引も、改正会社法施行前から存在する現物出資構成による役員や従業員との取引も、職務執行の対価としては類似の性質を持つ取引と考えられ、会社に提供した役務の対価として当該会社の株式の交付を受けることができる権利を付与する点では同様の経済実態を有すると指摘。会計処理についても同様の処理とすることが適切であるとしている。実際に改正会社法の施行日後も役員や従業員に対して現物出資構成の考え方に基づく制度が引き続き採用される状況が多く見られることを踏まえると、両方の取引を含む会計処理及び開示の取扱いを設けることが適当であるとした。
インセンティブ報酬の包括的な会計基準も
 そのほか、日本公認会計士協会の「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」で取り上げている金銭(現金)によって役員等に給付される報酬であるものの、当該報酬の額が自社ないし親会社等の株価に連動して決定されるような株価連動型金銭報酬(現金決済型の株式報酬)の会計処理についても会計基準等の定めがない状況にある。このため、同協会では、多様な会計実務を生じさせないよう、現金決済型の株式報酬スキームの会計処理の整備が必要であるとしている。
 加えて、様々な形態の報酬スキームの導入が行われている状況を踏まえ、インセンティブ報酬に関わる会計処理の基本的な考え方を整理し、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」を株式報酬全般の会計基準とするよう検討を求めている。
実務専門委員会にテーマ評価を依頼
 基準諮問会議は、日本公認会計士協会からの提案を受け、現物出資構成による取引に関する会計基準に関しては実務対応専門委員会にテーマ評価を依頼し、論点整理を行った上で企業会計基準委員会にテーマ提言するかどうか検討する方針を明らかにした。また、現金決済型の株式報酬取引に関する会計基準の開発については、基準諮問会議の事務局においてインセンティブ報酬に関する包括的な会計基準と合わせて論点整理を行い、次回以降の基準諮問会議で検討するとしている。

現物出資構成による取引とは
 従来、株式会社が株式報酬を取締役に付与しようとする場合には、会社法上、募集株式を無償で発行することができないと解されていたため、会社は、取締役に対して一旦金銭又は金銭債権を報酬として付与するとともに、当該取締役を引受人として募集株式を発行し、引受人である取締役が報酬として付与された金銭を払込み又は金銭債権を現物出資として給付する形をとる必要があるとされていた。いわゆる現物出資構成による取引である。
 令和3年3月1日施行の改正会社法では、上場会社は定款又は株主総会の決議により無償で株式等を取締役の報酬として交付できるようになった(会社法202条の2)。ただし、対象者は上場会社の取締役及び執行役に限定されているため、現在も執行役員や子会社の取締役等に株式報酬を付与する場合には現物出資構成による取引によることになる。

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