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解説記事2021年12月27日 ニュース特集 不服申立てにより当局が認めた処分ミス(2021年12月27日号・№912)

ニュース特集
再調査決定(取消)、減額更正の事例を紹介
不服申立てにより当局が認めた処分ミス


 大阪国税局審理課が、再調査決定(原処分(一部・全部)取消)事案、減額更正事案(不服申立事案の処理に際し、裁決又は決定前に減額更正を行った事案)等を基に調査で誤りやすいポイントを調査担当者等に周知していることが判明した。本特集では、当該再調査決定、減額更正事例の一部を紹介する。なお、同審理課は、更正決定処分、加算税の賦課決定処分を行う際、これらの事例を必ず確認するよう促している。

>>個人課税編

事例1 再調査決定(所得税:租税公課)
 前受金として前年分に計上されていた不動産収入に係る固定資産税を、当年分に対応する収入がないことから否認


〈取消等の要因〉
 当年分も含めた不動産収入が前受金として前年に1年間分一括計上されていた(前年4月〜12月・当年1月〜3月)ところ、当年分は使用貸借(無償)に変更され、不動産収入がなかったため、費用収益対応の原則から、当該不動産収入に係る業務用固定資産の固定資産税の額を全額否認した。

〈正しい取扱い〉
 固定資産税の額は、賦課期日である1月1日に業務用固定資産として使用している場合、当年分の不動産収入がなかったとしても、家事用に転用した事実がない限り、賦課決定があった日の属する年分の必要経費にその全額を算入する。

ポイント
 前年に当年分も含めた不動産収入が一括計上されていた場合、固定資産税の額は、当年分の不動産収入がなかったとしても、原則賦課決定があった日(1月1日)の属する年分の①必要経費に算入、②月数按分せずにその全額を算入する。

事例2 減額更正(所得税:所得控除)
 当初申告書に添付された所得控除の証明書を確認しないまま更正処分


〈取消等の要因〉
 納税者が確定申告書に記載していた所得控除について、添付書類を確認することなく、申告額と同額で更正処分をしたところ、不服申立て後に、確定申告書に添付された生命保険料控除証明書を再確認した結果、生命保険料控除の金額に計算誤りがあった。
〈正しい取扱い〉
 更正処分の際には、確定申告書に添付された証明書等から、控除金額等が適正であることを確実に確認する。

ポイント
 更正処分及び修正申告を勧奨する際は、必ず当初申告書に添付された書類を確認し、内容・計算に誤りがないか確認する。

事例3 減額更正(通則法:加重分の計算)
 加重分の計算における「期限内申告税額」の適用解釈誤り


〈取消等の要因〉
 配当所得の申告漏れに係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分について、通則法65②の過少申告加算税の加重分の計算を行うに当たり、「期限内申告税額」に当該配当所得の源泉徴収税額を含めずに計算した。

〈正しい取扱い〉
 通則法65③二の「期限内申告税額」は、期限内に納税者が申告した税額に、正しく所得税法を適用した場合の源泉徴収された又はされるべき税額に相当する金額を加算するため、当該配当所得に係る源泉徴収税額を加算して、加重分を計算する。

ポイント
 過少申告加算税の加重分の計算に当たり、通則法65③二に規定する「期限内申告税額」には、当初申告に記載されている金額ではなく、正しく申告した際(更正後・修正申告後)の所得に係る①源泉徴収税額、②外国税額控除、③予定納税額、④災害減免額を加算して計算する。

>>資産課税(譲渡所得を含む)編

事例1 減額更正(相続税:相続財産)
 未支給年金が計上されたまま処分


〈取消等の要因〉
 申告において、未支給の国民年金が相続財産に計上されていた。その後、更正の請求がされたが、未支給年金の計上に気付かずに、更正の請求に対する理由なし通知処分をした。
〈正しい取扱い〉
 未支給の国民年金は、被相続人の遺族が自己の固有の権利として請求することから、相続税の課税対象にはならないため、相続財産から除外する。

ポイント
 更正の請求の処理に当たっては、申告の内容を見直し、相続財産に該当しないものが計上されていないかどうかを確認する。

事例2 再調査決定(相続税:小規模宅地等の特例)
 共同住宅の一部が空室であるとして貸付事業用宅地等の面積を按分


〈取消等の要因〉
 相続開始日において、共同住宅の一部が空室であったが、いつでも入居可能な状態であったにもかかわらず、空室部分に対応する敷地部分については、貸付事業用宅地等に該当しないと判断した。

〈正しい取扱い〉
 いつでも入居可能な状態に空室を管理している場合は、相続開始時においても被相続人の貸付事業の用に供されているものと認められ、また、申告期限においても相続開始時と同様の状況にあれば、被相続人の貸付事業は継続されているものと認められるため、空室部分に対応する敷地部分も含めて、共同住宅の敷地全体が貸付事業用宅地等に該当する。

ポイント
 貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲(庁ホームページの質疑応答事例を参照)とは、扱いが異なる。

事例3 減額更正(相続税:税額控除)
 障害者本人の相続税額を超過する障害者控除額を扶養義務者の相続税額から差し引かずに処分


〈取消等の要因〉
 申告において、障害者控除額が障害者本人の相続税額より大きく、控除額の全額が引ききれなかったにもかかわらず、その引ききれなかった部分の金額がその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引かれていなかった。その後、更正の請求がされたが、障害者控除額の計算誤りに気付かずに、更正の請求に対する理由なし通知処分をした。
〈正しい取扱い〉
 障害者控除額が障害者本人の相続税額より大きいため、控除額の全額が引ききれない場合、その引ききれない部分の金額は、その障害者の扶養義務者の相続税額から差し引く。

ポイント
 更正の請求の処理に当たっては、申告内容を見直し、税額控除の内容が適正であるかどうかを確認する。

事例4 再調査決定(相続税:土地の評価)
 貸付先が複数ある土地について、土地全体を1画地の宅地として評価


〈取消等の要因〉
 申告において、土地の貸付先が複数であったにもかかわらず、土地全体が1画地の宅地として評価されていた。その後、更正の請求がされたが、評価単位の誤りに気付かずに、更正の請求に対する理由なし通知処分をした。

〈正しい取扱い〉
 1画地の宅地の判定は、原則として、①宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として使用貸借による使用借権を除く)の存在の有無により区分し、②他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分することから、土地の貸付先が複数であるときには、それぞれの部分を1画地の宅地とする。

ポイント
 更正の請求の処理に当たっては、申告における評価単位が適正であるかどうかを見直す。

事例5 再調査決定(相続税:土地の評価)
 不整形地の評価及びセットバックを必要とする宅地の評価の適用について検討せず処分


〈取消等の要因〉
 広大地の評価の適用を求めた更正の請求に対し、理由なし通知処分を行ったところ、広大地の評価の適用を求めた土地については、不整形地の評価及びセットバックを必要とする宅地の評価の適用があるとして不服申立てがされた。原処分庁は、原処分の際、不整形地の評価及びセットバックを必要とする宅地の評価の適用について検討しなかった。
〈正しい取扱い〉
 原処分の際に、不整形地の評価及びセットバックを必要とする宅地の評価の適用についても検討する。

ポイント
 土地の評価に係る更正の請求の処理に当たっては、請求に理由があるかどうかを検討するだけではなく、当該土地が評価通達に基づき適正に評価されているかどうかについても十分に検討する。

事例6 減額更正(相続税:土地の評価)
 貸し付けられている雑種地の評価誤り


〈取消等の要因〉
 申告において、貸し付けられている雑種地は、評価通達86(1)本文の定めにより評価されていた。しかし、評価通達86(1)ただし書の定めにより評価した方が評価額は低かった。その後、更正の請求がされたが、ただし書の定めにより、当初申告よりも評価額が低くなることに気付かずに、更正の請求に対する理由なし通知処分をした。
〈正しい取扱い〉
 貸し付けられている雑種地は、評価通達86(1)本文又はただし書のいずれか評価額が低い方で評価する。

ポイント
 貸し付けられている雑種地の評価方法には、賃借権の価額を控除する方法(評価通達86(1)本文)及び賃借権の残存期間に応じ割合を乗じて計算した金額を控除する方法(評価通達86(1)ただし書)があり、いずれか評価額が低い方で評価する。

事例7 減額更正(相続税:株式の評価)
 株式の評価における端数処理漏れ


〈取消等の要因〉
 株式の評価明細書上、端数を切り捨てて計算すべき箇所があったにもかかわらず、申告において、端数が切り捨てられずに計算され、株式の評価額が算出されていた。その後、更正の請求がされたが、端数処理漏れに気付かずに、更正の請求に対する理由なし通知処分をした。
〈正しい取扱い〉
 端数を切り捨てて計算すべき箇所がある場合、端数を切り捨てて計算する。

ポイント
 株式の評価に当たっては、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」や「上場株式の評価明細書」に従って、適正に端数処理する。

事例8 減額更正(相続税:株式の評価)
 被相続人名義のNISA口座で支払われるべき配当に係る配当期待権の評価に係る源泉徴収税額の控除漏れ


〈取消等の要因〉
 被相続人が死亡した日以後に被相続人名義のNISA口座で支払われるべき配当があった。当該配当に係る配当期待権を評価するに当たって、NISA口座であるから源泉徴収されるべき所得税等の額はないとして、当該所得税等の額を控除しなかった。

〈正しい取扱い〉
 NISA口座の開設者が死亡した日以後、そのNISA口座で支払われるべき配当がある場合には、その配当については非課税措置の適用はない。したがって、当該配当に係る配当期待権の評価に当たっては、源泉徴収されるべき所得税等の額を控除する。

ポイント
 NISA口座は非課税であるからといって、源泉徴収されるべき所得税等の額はないと安易に判断しない。

事例9 減額更正(譲渡所得:所得控除)
 社会保険料控除適用漏れ


〈取消等の要因〉
 譲渡所得の調査において、社会保険料の内容を確認せずに所得税等の更正処分を行ったところ、後日、社会保険料控除の対象となる社会保険料の存在が判明した。
〈正しい取扱い〉
 譲渡所得の調査であっても、社会保険料控除の内容に誤りがないかどうかを確認する。

ポイント
 譲渡所得の調査であっても、申告において社会保険料控除の額が計上されていないなど、所得控除の額に明らかに誤りがあると認められる場合には、所得控除の内容が適正かどうかを十分に確認する。

事例10 減額更正(譲渡所得:譲渡費用)
 印紙代控除漏れ


〈取消等の要因〉
 申告書に添付されていた売買契約書の写しには印紙が貼付されていたにもかかわらず、譲渡所得から印紙代を差し引くことなく、更正の請求に対する理由なし通知処分をした。
〈正しい取扱い〉
 申告書の添付書類を確認し、印紙代等の譲渡費用に該当するものがあれば譲渡所得から差し引く。

ポイント
 更正の請求の処理に当たっては、申告書の添付書類を見直し、申告の内容が適正かどうかを十分に確認する。

>>法人課税編

事例1 減額更正(法人税:売上原価)
 集計誤りにより否認金額を過大に認定


〈取消等の要因〉
 海外子会社から商品を輸入(仕入れ)している請求人が、仕入額を通関金額(輸入許可通知書の集計額)よりも多額に計上していたことから、原処分庁は、その差額を仕入れの過大計上として否認したが、集計誤りにより、否認金額を過大に認定した。

〈正しい取扱い〉
 集計誤りは、同種の(同日付、ほぼ同額)輸入許可通知書が複数あったことから発生したものであり、申告番号など他の項目も確認し誤りを防止する。

ポイント
 単なる計算誤り、集計ミスについては原処分の適法性を争うことすらできないため、基礎資料について確実に確認する。

事例2 再調査決定(法人税:重加算税)
 商品廃棄損の先上げ計上は経理処理誤りであったところ「仮装」と認定


〈取消等の要因〉
 請求人は、在庫商品を廃棄する予定で、商品廃棄に関する契約書を交わしていたところ、事業年度末までに商品廃棄を実施しなかったにもかかわらず、商品廃棄損を計上していた。そこで、原処分庁は、実体のない損失を虚偽の契約書を作成することにより損金の額に算入したとして、仮装行為と認定し、重加算税の賦課決定処分をした。
〈正しい取扱い〉
 原処分庁は、当事業年度において商品廃棄の事実がないにもかかわらず、商品廃棄の契約書があったことから仮装行為と認定したが、商品廃棄損を計上したのは、法人内部での連絡ミスによる経理処理誤りであり、単なる損失の計上時期の問題であって、仮装行為と認定できない。

ポイント
 重加算税の賦課決定に当たっては、仮装隠蔽行為があり、当該行為に基づいて申告があったことを立証する。

※編注:上記「ポイント」の一部の内容は明らかにされていない。

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