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解説記事2021年12月27日 税務マエストロ 日本型インボイス制度(5)(2021年12月27日号・№912)

税務マエストロ
日本型インボイス制度(5)
#268
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 仕入税額控除の規定の適用を受けるためには、法定事項が記載された帳簿と適格請求書等の保存が必要となる。今月は、買い手側に保存が義務付けられている法定書類について確認する。

1 帳簿の記載事項と保存を要する請求書等の種類(消法30⑦〜⑨)

 課税仕入れが軽減税率対象品目に係るものである場合には、帳簿に記載すべき事項として「軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨」を記載することが義務付けられている。
 この記載事項は、区分記載請求書等保存方式により令和元年10月1日から義務付けられているものであるから、要するに、帳簿の記載事項と保存要件については令和5年10月1日以後も変更はないということである。
 なお、次頁に掲げる課税仕入れについては、その課税仕入れを行った事業者において適格請求書等の保存を省略することができるので、次頁の①〜⑩に該当する旨などを記載した帳簿のみの保存により、仕入税額控除が認められることになる(消令49①⑦、消規15の4)。

○電子インボイス
 電子インボイスを受領した場合でも、電子データの保存に代えて、出力した書面で保存することができる(インボイスQ&A問66)。
 なお、令和3年度の税制改正により、受領した電子データを書面で出力して保存することは、所得税や法人税の世界では認められないこととなったので注意が必要だ。
 受領した電子インボイスを電子データで保存する場合には、電子帳簿保存法に規定するタイムスタンプの使用やシステム関係書類等の備付けなどの整備が必要となる。 
 なお、基準期間における売上高が1,000万円以下の小規模事業者については、電子データの提示などができるようにしていることを条件に、検索機能の確保などは保存要件から除外することとしている。
○仕入計算書・仕入明細書(保存が義務付けられる請求書等の③)
 デパートと問屋との取引などにおいては、買手側であるデパートが、納品された商品のうち、実際に売れた商品についてだけ、問屋からの仕入れを計上するという取引手法があり、これを「消化仕入れ」という。この場合には、売手側(問屋)からは請求書等の書類は発行されず、買手側(デパート)が仕入明細書などの書類を作成し、売手側に確認を受けるということになるので、この仕入明細書、仕入計算書など、仕入サイドで作成する上記③の書類についても、法定事項が記載されているものは、請求書等と同じ効力があるものとして取り扱うこととしている。
 記載事項に誤りのあるインボイスの交付を受けた事業者は、自らが追記や修正を行うことはできないので、修正したインボイスの交付を求める必要がある。ただし、仕入明細書等について売手の確認を受けた上で、発行者(買手)が修正した書類を発行することも認められている(インボイスQ&A問29・73)。

○農協などが委託を受けて行う農林水産品の譲渡等について作成する書類(保存が義務付けられる請求書等の④)
 媒介又は取次ぎに係る業務を行う卸売市場、農業協同組合又は漁業協同組合等は、生産者に代行して購入者に書類を発行している。上記④の書類は、販売者である生産者が発行するものではないが、法定事項が記載されていることを条件に、請求書等と同じ効力があるものとして取り扱われる。

2 免税事業者である生産者の取扱い(農協特例)

(1)農協特例とは?
 令和5年10月1日以降は、請求書等が不要なケースを除き、上記1①〜⑤のいずれかの書類の保存が仕入税額控除の絶対条件となるわけであるが、ここで注意したいのが、農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産品の譲渡等について作成する④の書類の取扱いである。
 無条件委託方式かつ共同計算方式により、農業協同組合等が委託を受けて行う農水産品の譲渡等については、生産者である農家等は適格請求書の交付義務が免除されている。
 「無条件委託方式」と「共同計算方式」は、農業協同組合だけでなく、漁業協同組合でも利用されている契約方式であるが、ここでは農業協同組合を例にとって説明する。

 これを受け、農業協同組合等が生産者から委託を受けて行う農林水産品の譲渡等について作成する書類は、販売者である生産者が発行するものではないが、法定事項が記載されていることを条件に、適格請求書等と同じ効力があるものとして取り扱われることになる。
 ここで注意したいのは、農業協同組合等は、生産者の納税義務の有無にかかわらず、法定書類の発行ができるということである。媒介者交付特例の場合には、委託者と受託者のいずれもが適格請求書発行事業者であることが書類発行の要件とされていたが、農業協同組合等が生産者から委託を受けて行う農林水産品の譲渡等について作成する書類は、媒介者交付特例により発行する書類とは別のものであり、委託者(生産者)が適格請求書発行事業者であることは要件とされていないのである。


 結果、免税事業者である生産者から直売で購入した農作物は仕入税額控除の対象とならないのに対し、免税事業者から購入した農作物も、下記①と②の要件を満たすものであれば、農協というフィルターを経由して購入することで、仕入税額控除の対象とすることができるのである(消令70の9②Ⅱロ)。

① 無条件委託方式かつ共同計算方式による販売であること
② 生産者を特定せずに販売するものであること   

(2)出荷形態別にみた農協特例の取扱い
 組合員(生産者)からJAへ生産物を出荷する場合には、下記①〜③のような取引形態がある。
 無条件委託方式による場合、受託者である農業協同組合等にすれば、免税事業者である生産者から販売委託を受けた農作物だけを区分して代理販売することは事実上不可能であることを考えると、このような取扱いにせざるを得ないのもある意味致し方ないところなのかもしれない。しかし、町工場などの小規模な下請業者にもインボイスの登録を強いられることが予想される環境下において、JAを経由した取引だけが優遇されるような税制には、筆者としては疑問を感じざるを得ない。

(3)「消費税法施行令70の9②Ⅱロ」の疑問点
 (2)
の表中③の個別選果共同販売(個選共販)とは、組合員自らが農作物を区分けをした上でJAに出荷し、生産者を特定して販売する販売形態をいう。表中②の個別選果個別販売(個選個販)と同様に「○○さんのメロン」などの表示をして販売することができるものの、精算については、無条件委託・共同計算方式によることとする点が異なっている。
 そうすると、個別選果共同販売(個選共販)の場合には、売り手と買い手が直接紐付くことから消費税法施行令70の9②Ⅱロ末尾のかっこ書(生産者を特定せずに販売するもの)に該当せず、農協特例の適用除外となるのかという疑問が生ずるのである。
 ただ、共同計算方式によるのであれば、「○○さんのメロン」などの表示をしていても、売り手と買い手が直接紐付くとは限らないので農協特例の対象になるとも読めそうである。
 共同計算方式によるのであれば、おのずと生産者は特定されないのであろうか? 消費税法施行令70の9②Ⅱロの末尾のかっこ書の意味がわからない……。生産者が特定されているのであれば、そもそも共同計算方式による必要がないのであるから、あえて末尾のかっこ書を設ける必要もないように思えるのである。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 ta@lotus21.co.jp

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