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解説記事2022年01月24日 解説 監査に関する品質管理基準の改訂について(2022年1月24日号・№915)

解説
監査に関する品質管理基準の改訂について
 金融庁企画市場局企業開示課課長補佐 中野寛之
 金融庁企画市場局企業開示課専門官  加藤淳平
 金融庁企画市場局企業開示課係長   水島達哉


 本年11月、企業会計審議会は、監査に関する品質管理基準(以下「品質管理基準」という。)を改訂した。本稿では、改訂の経緯及びその内容を紹介したい。なお、意見にわたる部分はすべて私見である。

一 経 緯

 公認会計士(監査法人を含む。)による財務諸表の監査は、企業等の財務諸表の信頼性を担保し、資本市場の参加者等の保護を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することで、公益に資するという重要な役割を担っている。品質管理基準は、監査事務所による監査業務の質を合理的に確保するため、平成17(2005)年に設定されたが、既に相当の期間が経過しており、その間、経済社会を取り巻く環境変化が加速し、監査業務にも変化が生じている。このような状況において、監査事務所による監査の品質管理も経済社会の変化に対応できるよう見直しが求められている。
 監査事務所による監査の品質管理においては、監査事務所の最高責任者が、品質管理体制を構築するためにリーダーシップを発揮することや、監査リスクに見合った組織的監査を実施する体制を構築することが重要である。しかし、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)の検査においては、最高責任者のリーダーシップの発揮等が必ずしも十分でないとの指摘もなされている。
 国際的にも、監査事務所の最高責任者による積極的な品質管理への関与が求められている。同時に、中小規模監査事務所による品質管理に関する基準の柔軟な適用といった、我が国と同様の課題が認識されてきた。このような課題に対処するため、国際的な品質管理に関する基準(ISQM1、ISQM2、ISA220)においては、監査事務所が、実施する業務内容や監査事務所の状況を考慮した上で、監査品質に影響を及ぼす可能性のあるリスクを積極的に識別し、監査事務所として主体的に対応するリスク・アプローチが導入されている。
 このような状況を踏まえ、我が国においても、監査事務所が、一層積極的に監査品質の向上に取り組むことが求められる。そのためには、監査事務所が、あらかじめ定められた一定の品質管理の方針及び手続を策定し、運用する従来の品質管理から、より積極的に品質管理上のリスクを捉えて、当該リスクに対処し、品質管理体制を改善するサイクルを組織内に有効に展開する品質管理へと変えていく必要がある。
 こうした経緯を基に、企業会計審議会は、国際的な品質管理に関する基準との整合性を確保しつつ、我が国の監査を巡る状況を踏まえた品質管理基準の改訂を行うことが必要であると判断し、監査に関する品質管理について審議を行い、本年6月の公開草案に対する意見募集を経て、本年11月に品質管理基準の改訂を行った。

二 品質管理基準の主な改訂点とその考え方

1 リスク・アプローチに基づく品質管理システムの導入
 現行の品質管理基準では、監査事務所に対し、あらかじめ定められた一定の品質管理の方針及び手続の整備を求めてきた。これに対して、今回の改訂では、監査事務所自らが、品質管理システムの項目ごとに達成すべき品質目標を設定し、当該品質目標の達成を阻害しうるリスクを識別して評価を行い、評価したリスクに対処するための方針又は手続を定め、これを実施するという、リスク・アプローチに基づく品質管理システムを導入することとした。これにより、監査事務所が、経済社会の変化に応じ、主体的にリスクを管理することで、質の高い品質管理を可能とすることとしている。
 また、リスク・アプローチに基づく品質管理システムは、当該監査事務所が実施する業務の内容や監査事務所の規模、組織体制等の状況によって変化しうるものである。上場会社等の監査を行う監査事務所については、監査業務の公益性に鑑み、例え小規模の監査事務所であっても、充実した品質管理システムの整備及び運用が求められる。
 なお、改訂前の品質管理基準では、監査の実施主体のひとつを「監査実施者」と定義していたが、今回の改訂では、「監査実施者」という文言を用いず、「監査チーム」、「専門要員」の文言を用いることとした。
 ここでいう、監査チームとは、監査実施の責任者及び監査業務に従事する補助者をいう。補助者には、監査事務所及び監査事務所が所属するネットワークの内外の者で、個々の監査業務において、監査手続を実施する者が含まれる(基準一 目的 注3)。また、専門要員とは、監査事務所に所属する社員(監査法人の場合)又は業務執行責任者(個人事務所の場合)及び監査事務所の専門的な業務に従事するその他の者をいう。

2 品質管理システムの構成
(1)監査事務所のリスク評価プロセス

 監査事務所の主体的な品質管理を可能とするため、監査事務所に対し、品質管理システムの項目ごとに、品質目標を設定し、当該品質目標の達成を阻害しうる品質リスクを識別して評価を行い、評価した品質リスクに対処するための方針又は手続を定め、実施することを求めることとした。
 監査事務所は、改訂品質管理基準に規定されている品質目標に加え、監査事務所が実施する業務の内容や監査事務所の状況を考慮して必要と考える場合には、追加の品質目標を設定することを求めることとした。
(2)ガバナンス及びリーダーシップ
 監査事務所において品質管理システムの基礎となる環境を確立するためには、最高責任者が組織的に監査の質を確保するという意識を持ち、品質管理体制の構築に向けてリーダーシップを発揮することが重要となる。
 今回の改訂では、監査事務所に対し、健全な組織風土の醸成、最高責任者等の品質に関する説明責任を含む責任の明確化、監査事務所において最高責任者等が果たすべき主導的役割等に関する品質目標を設定することを求めることとした。
 監査事務所の最高責任者は、品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任を負わなければならず、また、監査事務所は、品質管理システムに関する最高責任者、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者並びにモニタリング及び改善プロセスの運用に関する責任者を明確にしなければならないとされている(基準二 品質管理システムの整備及び運用2、3)。
 「品質管理システムに関する最高責任者」と「監査事務所の最高責任者」との関係については、監査事務所の性質及び状況によっては、同一になる場合もあれば、両者が同一とならない場合もあると考えられる。例えば、監査事務所が、品質管理担当理事を品質管理システムに関する最高責任者として任命することが考えられるが、この場合でも、監査事務所の最高責任者は、品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任を負うこととなる。
 「品質管理システムに関する最高責任者」、「品質管理システムの整備及び運用に関する責任者」、「モニタリング及び改善プロセスの運用に関する責任者」の兼任の可否については、監査事務所の性質及び状況を考慮した上で、各監査事務所において適切に検討、判断される必要がある。
(3)職業倫理及び独立性
 近年、企業活動のグローバル化や業務内容の複雑化・専門化に対応して、監査事務所が、外部の業務提供者(当該監査事務所が所属するネットワークや当該ネットワークに属する他の事務所等以外の業務提供者)を利用することが多くなっている。監査事務所は、外部の業務提供者の利用に関しても責任を負わなければならないことから、外部の業務提供者が職業倫理を遵守し、独立性を保持しているかを確かめることが重要となる。
 今回の改訂では、監査事務所に対し、監査事務所、専門要員、当該監査事務所が所属するネットワーク、当該ネットワークに属する他の事務所、外部の業務提供者等による職業倫理の遵守や独立性の保持を、品質目標として設定することを求めることとした。特に、独立性の保持に関する品質目標の設定においては、監査事務所の状況に応じて、監査事務所及び当該監査事務所が所属するネットワークに属する他の事務所が提供する非監査業務が、同時提供を禁止されているかにかかわらず、独立性に与える影響を考慮することを求めることとした。
 また、職業倫理の遵守や独立性の保持に対する脅威を識別して評価し、それに対処するための方針又は手続を定めること、及び職業倫理に抵触する事項や独立性を侵害する事項を発見して対処するための方針又は手続を定めることを求めることとした。
 なお、「監査チーム」、「専門要員」、「外部の業務提供者」の関係を示すとのイメージとなる。

(4)監査契約の新規の締結及び更新
 監査契約の新規の締結及び更新に際しては、監査事務所が監査業務を適切に実施できるかを判断することが重要である。今回の改訂では、監査事務所に対し、監査契約の新規の締結及び更新に際し、監査業務の内容、経営者の誠実性、監査事務所の能力等を考慮するとともに、監査事務所の財務上及び業務上の目的を優先することなく、適切に判断することに関する品質目標を設定することを求めることとした。
 また、監査契約の新規の締結及び更新の後に、当該契約の解除につながる可能性のある情報を把握した場合に対処するための方針又は手続を定めることを求めることとした。
(5)業務の実施
 今回の改訂では、経済社会を取り巻く環境変化が加速し、監査を取り巻く環境にも変化が生じている中で、より質の高い監査の実施を可能とするため、監査事務所に対し、
・監査実施の責任者及び監査業務に従事する補助者による責任ある業務遂行
・補助者に対する適切な指揮、監督及び監査調書の査閲
・職業的専門家としての適切な判断並びに懐疑心の保持及び発揮
・監査業務に関する文書の適切な記録及び保存
に関する品質目標を設定することを求めることとした。
 また、専門的な見解の問合せの検討及び監査上の判断の相違の適切な解決に関する品質目標を設定することを求めることとした。
(6)監査業務に係る審査
 今回の改訂では、監査基準と同様に、原則として全ての監査業務について審査を求めるとともに、品質管理の方針又は手続において、意見が適切に形成されていることを確認できる他の方法が定められている場合には審査を受けないことができることを規定した。
 また、監査事務所は、意見表明前だけでなく、監査業務全体を通じて適時に適切な審査が行われていることを確かめなければならないことを明確にした。審査の担当者の選任に当たっては、過去に監査実施の責任者として行った重要な判断が審査に影響を与えないよう、監査実施の責任者として関与していた監査業務の審査の担当者に就任する際には適切なインターバルを設けることが必要である。国際品質マネジメント基準第2号審査では、監査責任者が審査担当者に就任する前に2年間のインターバル又は職業倫理に関する規定により要求される場合はそれより長い期間を定めることを要求している。
 これを念頭に、今回の改訂では、監査事務所に対して、審査の担当者が客観性及び独立性を保持し、審査の担当者としての職業倫理を遵守しているかを確かめることを求めることとした。インターバルに関する具体的・詳細な内容は、日本公認会計士協会において作成される実務指針に委ねられることとなる。
(7)監査事務所の業務運営に関する資源
 近年、監査業務の実施においては、ITの活用や監査事務所における業務上のノウハウの蓄積が必要不可欠となっている。
 今回の改訂では、監査事務所に対し、人的資源に加え、テクノロジー資源、知的資源等の業務運営に関する資源の取得又は開発、維持及び配分に関する品質目標を設定することを求めることとした。人的資源の適切な採用、教育、訓練及び評価に関する品質目標は、公認会計士以外の専門要員も対象とするものでなければならない。
 また、テクノロジー資源に関する品質目標については、ITの統制を含むITへの対応(監査事務所のセキュリティ対策、監査業務のIT化など)に関する事項を考慮しなければならない。
(8)情報と伝達
 監査事務所の品質管理において、監査事務所の内外から適時に情報を収集し、監査事務所の内外と適時に情報の伝達を行うことが重要であることから、今回の改訂では、情報と伝達に関する品質管理システムの項目を新たに追加することとした。
 監査事務所は、品質管理システムの整備及び運用を可能とするため、監査事務所の内外からの適時の情報収集、監査事務所及び監査チームによる監査事務所の内外との適時の伝達に関する品質目標を設定することが求められる。
 また、監査事務所は、品質管理システムについて、監査役等と協議することや、必要に応じて監査事務所の外部の者に情報を提供することについて、内容、時期及び形式を含めた方針又は手続を定めることが求められる。
 加えて、監査事務所は、品質管理システムの状況等について、監査報告の利用者が適切に評価できるよう、監査事務所の品質管理に関する積極的な情報発信を行うなど、十分な透明性を確保することが求められる。
(9)品質管理システムのモニタリング及び改善プロセス
 リスク・アプローチに基づく品質管理システムの整備及び運用が適切に行われるためには、品質管理システムの整備及び運用の状況に関する情報を適時に把握し、識別した不備に適切に対処するモニタリング及び改善プロセスが重要である。
 今回の改訂では、監査事務所が、監査事務所自身によるモニタリング、改善活動の実施、監査事務所の外部からの検査及びその他の関連する情報から得られた発見事項の評価を行うことを明確化した。その際、監査事務所が、不備を識別した場合には、識別した不備の重大性及び影響を及ぼす範囲を評価し、適切な改善につながるよう、根本原因(特定の不備に関する直接的な原因や、複数の不備に共通した原因について、原因が生じた原因を検討・分析することで究明される、不備の本質的な原因)を調査・分析し、不備の根本原因に対処する改善活動を実施することも求めることとした。品質管理システムの不断の改善のためには、積極的に不備を識別することが求められる。
 効果的なモニタリングと改善を可能とするため、監査実施の責任者に対しては、監査事務所から伝達されたモニタリング及び改善プロセスに関連する情報を理解し、実施する監査業務への影響を考慮して適切な措置を講じることを求めることとした。また、監査実施の責任者が、モニタリング及び改善プロセスに関連する可能性のある情報を入手した場合には、必要に応じて監査事務所に伝達することを求めることとした。
(10)監査事務所間の引継
 監査事務所間の引継は、監査人の交代による知識や経験の蓄積の中断を防ぐために重要な手続である。我が国では、平成25(2013)年に公表した監査における不正リスク対応基準(以下「不正リスク対応基準」という。)において、上場会社等の監査に関して、引継の規定を厳格化した。
 今回の改訂では、監査事務所に対し、監査事務所間の引継について品質目標を設定し、不正リスク対応基準において求められる引継に関する手続を全ての監査に対して求めることとした。

3 監査事務所が所属するネットワークへの対応
 一部の監査事務所は、グローバルな規模で活動するネットワークに所属し、ネットワークの要求事項を適用するとともに、業務運営に関する資源等を利用した監査を行っている。
 このような状況の変化を品質管理に反映するため、今回の改訂では、監査事務所に対し、品質管理システムにおいてネットワークの要求事項を適用し、又は業務運営に関する資源等を利用する場合には、監査事務所としての責任を理解した上で、適用又は利用することを求めることとした。
 また、ネットワークが監査事務所の品質管理システムに関するモニタリングを行う場合には、当該モニタリングが監査事務所の品質管理システムのモニタリング及び改善プロセスに与える影響を考慮することを求めることとした。

4 品質管理システムの評価
 今回の改訂では、監査事務所の品質管理システムに関する最高責任者に対し、少なくとも年に一度、基準日を定めて品質管理システムを評価し、当該システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供しているかを結論付けることを求めることとした。
 また、結論については、以下の3段階が考えられる。
① 合理的な保証を監査事務所に提供している。
② 重大ではあるが広範ではない影響を及ぼす識別された不備に関する事項を除き、合理的な保証を提供している。
③ 合理的な保証を提供していない。
 こうした評価の結論や当該結論に至った理由を含む品質管理システムの状況等については、監査報告の利用者が監査事務所の監査品質を適切に評価できるよう、各監査事務所において公表することが望ましい。
 公表に関しては、「2 品質管理システムの構成(8)情報と伝達」においても、品質管理システムの状況等について、十分な透明性が求められている。十分な透明性の具体的な内容(脚注1)については、今後、検討が行われることとなるが、例えば、既に公認会計士法令に基づき開示されている「業務及び財産の状況に関する説明書類」の中で、評価の結論や当該結論に至った理由を含む品質管理システムの状況等について、より充実した開示を求めていくことが考えられる。

三 品質管理基準の準用等

 改訂品質管理基準は、中間監査、四半期レビュー及び内部統制監査について準用される。それ以外の監査事務所の業務については、参照されることが望ましい。
 監査の品質管理は、監査事務所におけるガバナンス及びリーダーシップ、監査事務所の業務運営に関する資源等、監査以外の監査事務所の業務(アドバイザリー業務や合意された手続等)についても影響する事項が含まれているため、必要に応じて、監査以外の監査事務所の業務についても、本基準を参照することが望ましいと考える。

四 改訂品質管理基準の実施に当たっての留意事項

 企業会計審議会では様々な貴重なご意見等を頂いたが、これら全てを基準上で表現できないことから、意見書において、「改訂品質管理基準の実施に当たっての留意事項」を設け、以下の事項に留意することを求めることとした。
・改訂品質管理基準の実施に当たっては、品質管理基準の改訂内容について円滑な導入が図られるよう、特に中小規模監査事務所に対し、基準改訂の趣旨と内容に関する周知が徹底され、中長期的な観点から必要な支援が行われることが重要である。その際、日本公認会計士協会においては、自主規制機関として、監査事務所に対し、実践的で有用な支援を行うとともに、品質管理レビュー等を通じて、指導的な役割を果たすべきである。また、行政当局においては、監査事務所や日本公認会計士協会の取組を支援しつつ、審査会の検査等を通じて、監査事務所による主体的な品質管理の定着に努めるべきである。
・監査事務所の性質及び状況を考慮した、リスク・アプローチによる品質管理システムの整備及び運用が適切に行われるためには、監査事務所における主体的なモニタリング及び改善プロセスに加え、日本公認会計士協会の品質管理レビューや審査会による検査等の第三者によるチェックを通じた改善が実施されるべきである。
・今般の品質管理基準の改訂を受け、引き続き、関係者によって、より質の高い監査の実施を可能とする環境の整備や監査業務の魅力向上について、検討が行われることが期待される。

五 実施時期等

 改訂品質管理基準は、令和5(2023)年7月1日以後に開始する事業年度又は会計期間(公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、令和6(2024)年7月1日以後に開始する事業年度又は会計期間)に係る財務諸表の監査から実施する。なお、改訂品質管理基準中、品質管理システムの評価については、改訂品質管理基準の実施以後に開始する監査事務所の会計年度の末日から実施することができる。ただし、それ以前の事業年度又は会計期間に係る財務諸表の監査から実施することを妨げないとしている。
 例えば、公認会計士法上の大規模監査法人である監査事務所の決算が5月末日であった場合、2023年7月1日以後については、その日以後開始する事業年度の監査業務及び、監査事務所の品質管理は改訂品質管理基準により実施し、品質管理システムの評価のみ2025年5月31日以降実施することができる。ただし、それ以前から実施することもできる。また、評価基準日は監査事務所の会計年度の末日に限定されていない。
 なお、改訂品質管理基準を実務に適用するに当たって必要となる実務の指針については、日本公認会計士協会において、作成されることとなる。

六 おわりに

 監査事務所による財務諸表の監査は、企業等の財務諸表の信頼性を担保し、資本市場の参加者等の保護を図り、それによって国民経済の健全な発展に寄与する重要な役割を担っている。
 今回改訂された品質管理基準は、監査事務所に、監査業務の質を合理的に確保することを求めるものであり、監査基準と一体として適用される重要な基準である。今回の改訂により、監査事務所が、経済社会の変化に応じ、主体的にリスクを管理し、質の高い品質管理を実現していくことを期待する。

脚注1
 例えば、①品質管理に関するトップの考え方、②モニタリングや改善に関する取組みを含む品質管理体制、③発見した不備への対応状況、④品質管理システムの自己評価の結論及び当該結論に至った根拠、⑤自己評価の結論が「品質管理システムの目的が達成されている」以外の場合に、監査事務所が行った措置、⑥自己評価の結論に対する外部レビューの状況(自己評価の結論と外部レビューの評価との乖離や、外部レビューを踏まえた改善状況)等を開示することが考えられる。

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