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解説記事2022年02月28日 SCOPE 税効果適用指針の改正で実務指針移行後の課題を解消へ(2022年2月28日号・№920)

グループ法人税制や税金費用の計上区分見直し
税効果適用指針の改正で実務指針移行後の課題を解消へ


 企業会計基準委員会(ASBJ)は、3月中にも税効果適用指針などの改正案を公表する方針だ。同委員会は、日本公認会計士協会の税効果実務指針などを移管しているが、今回の改正は、その際の将来的な検討課題とされていた「グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果」と「税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税)」である。連結財務諸表上、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却については、税金費用が計上されないように見直しを行うこととしている。

グループ法人税制が適用される場合の子会社株式売却では税金費用を計上せず

 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果については、連結財務諸表上、売却時において売却損益が消去され、かつ課税関係が生じないにもかかわらず税金費用が計上されるという取扱いに対して、会計処理として違和感があるとの指摘がなされている。このため、連結財務諸表上、税金費用が計上されないように税効果適用指針の見直しを行うとしている。具体的には、子会社株式等を売却した企業の個別財務諸表において、売却損益に係る一時差異に対して繰延税金資産又は繰延税金負債が計上されているときは、連結決算手続上、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を消去し、購入側企業による子会社株式等の再売却等、課税所得計算上(法法61条の11②③)、繰り延べられた損益を計上することとなる事由についての意思決定がなされた時点において、当該消去額を戻し入れることとしている。なお、今回の改正は、既存の税効果の枠組みの中での例外的な取扱いとなるため、連結財務諸表に限定される。
 また、注記については特段定めない。子会社等に対する投資に係る連結財務諸表固有の将来減算一時差異については「繰延税金資産又は繰延税金負債の発生原因別の主な内訳」の注記の対象外(企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」第32項なお書)とされているため、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却における売却損益の繰り延べに係る一時差異についても同様であるとしている。
2023年4月1日以後開始事業年度から適用
 改正後の税効果適用指針は、2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することとしている。対象となる取引はグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に限定されており、長期の準備期間は必要ないと判断したもの。また、税効果適用指針公表日以後最初に終了する事業年度の年度末からの早期適用も認める方針だ。
 なお、今回の改正は、会計基準等の改正によって特定の会計処理の原則及び手続きを変更するものであるため、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」に該当することになり、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することになる。企業会計基準委員会では、対象となる取引はグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に限定されており、当該取引による譲渡損益について、売却元企業の税務申告書において譲渡損益調整勘定として計上しているため、遡及適用が必要となる過去の期間における対象取引の把握は可能であると考えられるとし、特段の経過措置は設けないことにしている。
持分法実務指針の改正は会計士協会に提案
 そのほか、関連会社に対する投資に係る一時差異の取扱いについては、日本公認会計士協会における会計制度委員会報告第9号「持分法会計に関する実務指針」を改正することが必要になるため、今後、同協会に改正案を提案する。

税金費用の計上区分の見直しは2024年4月から適用

 「税金費用の計上区分」(その他の包括利益に対する課税)に関しては、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」を見直すこととしている。原則として、当期税金費用は、その発生源泉となる取引等に応じて、損益(税引前当期純利益から控除)、その他の包括利益及び株主資本の各区分に計上する方向となっている。
 ただし、例外として、その発生源泉となる取引等が、損益、その他の包括利益及び株主資本の各区分のうち複数の区分に計上されており、かつ、その他の包括利益又は株主資本に対応する当期税金費用を算定することが困難である場合には、当期取引等に係る当期税金費用は損益として計上することができるとしており、この取扱いは、現時点では退職給付に係る掛金等の支出が想定されている(本誌916号20頁参照)。
 また、その他の包括利益及び株主資本の各区分に計上する当期税金費用は、原則として、当期税金費用の発生源泉となった取引に関してその他の包括利益及び株主資本として計上した金額に、法定実効税率を乗じて計算する。ただし、税金の納付が生じていない場合にその他の包括利益及び資本から控除する額をゼロとするなど他の合理的な計算方法により算定することができることとしている。この点、税効果適用指針第28項では、子会社株主の一部売却において、資本剰余金から控除する法人税等相当額は、売却元の課税所得や税金の納付額にかかわらず、原則として、親会社の持分変動による差額に法定実効税率を乗じて計算することとしているため、実務的な影響を及ぼさないように同様の取扱いとする方向となっている。
期首の利益剰余金に加減する経過措置あり
 適用は1年以上の準備期間が必要であると判断し、2024年4月1日以後開始する事業年度の期首からとしているが、2023年4月1日以後開始する事業年度の期首からの早期適用は容認する(本誌919号18頁参照)。 また、経過措置として、会計方針の変更による累積的影響額を、改正した会計基準を適用した年度における期首の利益剰余金に加減するとともに、対応する金額をその他の包括利益累計額、評価・換算差額等又は資本剰余金のうち、適切な区分に加減することを認めるとしている。

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