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税務ニュース2022年03月04日 租税条約の文理解釈重視し軽減税率容認(2022年3月7日号・№921) 東京地裁、保有期間終日を配当受領者の特定時点とした国の主張排斥

  • 東京地裁(横地大輔裁判長)は令和4年2月17日、租税条約における「利得の分配に係る事業年度の終了の日」の解釈が争われた事案において、「配当の受領者が特定される時点」とする国の主張を斥け、外国法人に対して約14億円の源泉所得税の還付金等の支払を命じる判決。

 ルクセンブルクに本店を有する外国法人である原告は、内国法人である完全子会社が行った会社分割に伴い、本件子会社がその対価として取得した分割承継法人の出資持分を、本件子会社の剰余金の配当として分配された。本件剰余金配当はその一部が所得税法25条により同法24条に規定する配当等とみなされることから、これにつき源泉徴収義務を負う本件子会社は、上記分配のうち同条の配当等とみなされる部分を所得税等として、所定の20.42%の税率により算出し源泉納付した。本件は、当初納付額を源泉徴収された原告が、本件みなし配当は、日本・ルクセンブルク租税条約(所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とルクセンブルク大公国との間の条約)10条2項(a)(以下「本件規定(a)」という。)の要件に該当し、その限度税率は5%になるから、当初納付額は過大であったとして、被告に対し、還付金並びに還付加算金の支払を求めていた事案である。
 当該租税条約においては軽減税率(5%)が規定されているが、原告が子会社株式を100%取得したのは2014年4月29日であり、会社分割(非適格分割型分割)が行われたのは平成26年8月1日であった。本件子会社の事業年度は11月1日から翌年の10月31日までとなっており、租税条約の「本件規定(a)」には、株式を利得の分配に係る事業年度終了の日まで6月以上保有していることの保有期間要件が付されていた。
 原告は、「本件子会社の事業年度は11月1日から翌年の10月31日までであるところ、本件分割は平成26年8月1日に行われたから、本件分割に係る「事業年度の終了の日」は、同年10月31日である。そして、原告は、同日の6か月以上前である同年4月29日から同年10月31日まで本件子会社の全株式を保有していたから、本件規定(a)の要件を満たしている。したがって、本件請求金額に係る還付請求権が発生している。」と主張した。
 一方、被告(国)は、「本件規定(a)における『利得の分配に係る事業年度終了の日』という文言(本件文言)については、『配当の受領者が特定される時点』をいうものと解すべきであり、これと異なる原告の解釈は誤りである。」「本件各みなし配当における『利得の分配に係る事業年度終了の日』とは、分割型分割の日の直前(前日)となると解すべきところ、本件各分割の効力発生日は平成26年8月1日とされているから、その前日である同年7月31日を指すことになる。そうすると、原告が本件子会社の株式を25%以上取得した日は同年4月29日である以上、本件規定(a)の要件を満たさないことになる。」と主張した。
 東京地裁は下記のとおり判示し、被告の主張を斥け、還付金等の支払を命じる判決を言い渡した。
 「本件文言は、日本の法令における当該用語の意義(ウィーン条約31条1項にいう『文脈』)としては、『利得の分配に係る会計期間の終了の日』を意味するものであり、その趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味としては、『利得の分配(配当)が行われる会計期間の終期』を意味するものであるところ、前者と後者とは実質的に同義であるということができる。そうすると、本件文言の解釈については、正文に基づき検討した後者の表現に従い、『利得の分配(配当)が行われる会計期間の終期』と解するのが相当である。
 本件文言に関する被告の解釈は、ウィーン条約31条1項に基づく解釈、すなわち、『文脈』(日本の法令における当該用語の意義)とも、その趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味とも離れたものであって、採用することができない。
 (中略)本件規定(a)に本件保有期間要件が設けられた趣旨は、同規定が5%の軽減税率を定めることにより課税の繰り返しを避け国際投資の促進を図ろうとする一方、その適用について濫用的な事例への対策を図るため、配当支払い法人の株式を一時的に取得するだけでは足りず、最低保有期間においてその保有を継続することを要するとしたものであるところ、このような濫用的な事例への対策という目的を達成するためには、最低保有期間として定められる期間が当該配当と一定の関連性を有するものであれば足りるものであって、最低保有期間における投資(株式保有)のすべてが当該配当の受領に向けられたものであること、すなわち最低保有期間のすべてが配当受領者の特定に先立つものであることまでは、必ずしも必要とされるものではないというべきである。
 (中略)事業年度の終了の日とは異なる日を基準日として定めることも可能であるから、『事業年度の終了の日』と「配当の支払を受ける者が特定される日」(基準日)とが常に一致するわけではない。したがって、通常の期末配当についても、配当受領者が特定される日が当該事業年度の終了の日より前となる事態が生じ得ることは当然に想定されるところ、本件規定(a)は、かかる場合であっても事業年度終了の日をもって最低保有期間の終期とすることを定めたものと解される。そうすると、分割型分割に基づくみなし配当の場合にもこれと別異に解すべき理由はない。
 以上によれば、被告の主張は、その根拠を欠き、採用することができない。」

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