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解説記事2022年03月21日 SCOPE 東京高裁、子SPCの純利益から配当等を受け得る支配力なし(2022年3月21日号・№923)

みずほ銀行、CFC税制適用事案で逆転勝訴
東京高裁、子SPCの純利益から配当等を受け得る支配力なし


 みずほ銀行(原告)がケイマンに置いたSPC(特別目的会社)に係るタックス・ヘイブン対策税制(CFC税制)の適用の可否が争われている事件では一審でみずほ銀行が敗訴していたが(本誌876号参照)、令和4年3月10日、控訴審でみずほ銀行が逆転勝訴した。
 東京高裁(鹿子木康裁判長)は、本件の事実関係から、みずほ銀行が各子SPCの当期純利益から剰余金の配当等を受け得る支配力は存在しないとして、CFC税制を適用すべきでないと判断した。ただし、「CFC税制の適用除外要件に租税回避の目的や実態の有無という新たな要件を付加するものではない」とされている点には注意が必要だ。

東京高裁も「租税回避の目的等」は適用除外要件とせず

 本件は、原告の益金の額に算入されるべき「課税対象金額」を算定するための「請求権勘案保有株式等割合」が争われた事件である。
 原告は特定外国子会社等に該当する各子SPCの発行済普通株式の全部を保有していたが、各子SPCの優先出資証券は、みずほFGの100%子会社であるケイマンSPC(本件持株SPC)が全て保有していた。しかし、各子SPCは期中において優先出資証券の全部を本件持株SPCに償還したため、各子SPCが事業年度終了日において発行する株式等は、原告が100%保有する普通株式のみとなっていた。
 そのため処分行政庁は、事業年度終了時における「請求権勘案保有株式等割合」は100%であり、本件各子SPCの適用対象金額(各子SPCが原告から受け取る劣後ローンの利息等)の全額が課税対象金額として原告の益金の額に算入されるべきとして、各更正処分等を行った。
 原告は、事業年度末における事業年度末の状況はたまたま生じた形式的な状況にすぎず、本件資金調達スキームはバーゼルⅡ規制に対応するための方法として邦銀で広く採用されていた方法であり、また、各子SPCの稼得した所得は全て優先出資証券について配当され原告には帰属しないことなどから、租税回避の実態を伴うものではないなどと主張したが、一審は、規定の文理から、当該割合を判断すべき時点は「当該外国子会社の事業年度終了時」であり、当該割合は100%であるとして、原告の請求を棄却した。
 また、原告の「租税回避の目的も実態もない本件にタックス・ヘイブン対策税制を適用すべきでない」との主張に対しては、「租税回避の目的・実態の有無はタックス・ヘイブン対策税制の適用の可否を左右するものではない」などとして、同税制の適用の可否判断はあくまで「文理解釈」によるべきとの考え方を明確に打ち出していた。
あくまで「個別具体的事実」に対する判断
 これに対し東京高裁は、まずCFC税制の趣旨について、「タックス・ヘイブンに設立した外国子会社の所得から剰余金の配当等を受け得る支配力を有している内国法人が剰余金の配当等を受けずに外国子会社に留保所得を蓄積しているところに租税回避があるとみて、留保所得のうち内国法人の持分に応じて計算される金額を内国法人の所得に合算して課税することとしたものである。」との解釈を示した。
 そして、措置法施行令39条の16第2項1号所定の「外国法人が請求権の内容の異なる株式等を発行している場合に該当するか否かの判定は、特定外国子会社等の事業年度終了の時の状況によると解するのが同規定の文理解釈として自然である。」とした上で、本件各子SPCの請求権勘案保有株式等割合は100%と認定した。
 その上で、「しかしながら、(中略)本件資金調達スキームが利用された経緯、目的、仕組みからして、控訴人が本件各子SPCの当期純利益から剰余金の配当等を受け得ること、言い換えれば、その当期純利益に対して支配力を有すると評価されるような処理はもともと想定されておらず、現に本件各子SPC事業年度においても、上記の仕組みに従って、本件各子SPCの当期純利益を上回る金額が期中に持株SPCに配当されており、事業年度全体を通じてみても、また、期末時点についてみても、控訴人が上記当期純利益(適用対象金額は同額である。)に対して支配力を有していたとは認められない。そうすると、本件資金調達スキームにおける本件各子SPC事業年度の処理において、内国法人(控訴人)が外国子会社(本件各子SPC)の利益から剰余金の配当等を受け得る支配力を有するというタックス・ヘイブン対策税制の合算課税の合理性を基礎付け、正当化する事情は見いだせないし、また、上記処理に租税回避の目的があることも、客観的に租税回避の事態が生じていると評価すべき事情も認められない。」と判示した。
 そして、「事実関係によれば、本件各子SPC事業年度の本件各子SPCの適用対象金額(当期純利益)に対する控訴人の支配力は存在しないから、その適用対象金額のうちに、控訴人の有する株式等の数に対応するものとして剰余金の配当等の経済的な利益の給付を請求する権利の内容を勘案して控訴人の益金に算入するのが相当な金額(課税対象金額)は存在しないと解するのが、タックス・ヘイブン対策税制の基本的な制度及び理念、そして、これを踏まえた措置法66条の6の趣旨に照らして相当であり、これに反する限度で措置法施行令39条の6第1項、2項を本件に適用することはできないというべきである。」と結論づけた。
 注意しなければならないのは、これに続く「上記判断は、本件の具体的事案において、措置法66条の6の趣旨等に照らし、措置法施行令39条の16第1項、2項2号が定める課税対象金額の計算に関する部分を文理解釈どおりに形式的に適用することはできないとするにとどまるものであり、措置法66条の6第1項の適用要件及び同条3項の適用除外要件に租税回避の目的や実態の有無という新たな要件を付加するものではない。」との判示部分だ。今回の判決は、個別の具体的事案に対する判断の結果であり、「租税回避の目的や実態」がなければCFC税制が適用されないということではない点に留意する必要がある。

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