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解説記事2022年04月25日 税務マエストロ 令和4年度改正(1)(2022年4月25日号・№928)

税務マエストロ
令和4年度改正(1)
#272
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 令和4年度の消費税改正では、スタートが翌年に迫っているインボイス制度について、28年度改正で成立している法令の整備(改正)が行われている。今回は、この令和4年度の消費税改正の概要と免税事業者の登録申請に関する改正について、実務上のポイントを確認する。

Ⅰ 令和4年度消費税改正の内容

 次頁参照。

Ⅱ 免税事業者がインボイスの登録申請をする場合の取扱い

1 免税事業者の登録手続に関する経過措置(平成28年度改正)

 免税事業者が令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、申請期限までに登録申請書を提出することにより、「課税事業者選択届出書」を提出しなくとも適格請求書発行事業者(登録事業者)になることができる。
<具体例>
 個人事業者(免税事業者)が令和5年10月1日から登録事業者となる場合には、令和5年3月31日(申請期限)までに登録申請書を提出することにより「適格請求書発行事業者」となることができるので、令和5年1月1日から令和5年9月30日までの期間は免税事業者として申告義務はない(平成28年改正法附則44④、インボイス通達5-1)。

 また、登録日以後の期間(令和5年10月1日〜令和5年12月31日)について簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、令和5年12月31日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、簡易課税により仕入控除税額を計算することができる(平成30年改正令附則18)。
(注)令和5年10月1日〜令和5年12月31日を一課税期間とみなすという規定は設けられていないため、「簡易課税制度選択届出書」の適用開始課税期間は「令和5年1月1日〜令和5年12月31日」と記載することに注意する。

2 免税事業者の登録手続に関する経過措置の延長(令和4年度改正)

(1)登録手続に関する経過措置の延長と課税期間の中途からの登録
 免税事業者はインボイスの発行ができないため、取引先からの要請により、インボイスの登録申請をして適格請求書発行事業者となることが予想される。この場合、適格請求書発行事業者になると消費税の申告義務が生ずるため、納付消費税額をコストとして負担することになる。
 そこで、免税事業者のような適格請求書発行事業者でない「非登録事業者」からの課税仕入れについては、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間については課税仕入高の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの期間については、課税仕入高の50%を仕入控除税額の計算に取り込むことができる(平成28年改正法附則52、53)。
 免税事業者は、この経過措置も考慮に入れながら、登録の必要性と資金繰りを天秤にかけ、取引先との価格交渉に当たらなければならない。つまり、登録の是非を慎重に判断する必要があるということである。
 令和4年度改正では、免税事業者が登録の必要性を見極めながら柔軟なタイミングで適格請求書発行事業者となれるようにするため、令和5年10月1日の属する課税期間だけでなく、令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間においても、「課税事業者選択届出書」を提出することなく、登録申請書を提出することにより、適格請求書発行事業者となることを認めることとした。
 また、登録申請書を提出することにより、年又は事業年度の中途から登録をすることもできる(新平成28年改正法附則44④)。
 簡易課税制度についても、令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間において登録する免税事業者については、適用を受けようとする課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、提出日の属する課税期間から簡易課税により仕入控除税額を計算することができる。
<具体例>
 個人事業者であれば、登録申請書を提出することにより、令和5年から令和11年分までの任意の年(課税期間)について適格請求書発行事業者になることができる。また、令和6年10月1日といったように、年の中途からの登録も認められる。

(2)免税事業者が登録した場合の課税事業者としての拘束期間
 令和4年度改正では、「課税事業者選択届出書」を提出した事業者とのバランスに配慮し、令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間において登録する免税事業者は、令和5年10月2日以後に開始する課税期間について、登録開始日から2年を経過する日の属する課税期間までの間は課税事業者として申告義務を課することとしている(新平成28年改正法附則44⑤)。
 注意したいのは、上記1により、令和5年10月1日の属する課税期間において登録する免税事業者は、いわゆる2年縛りの規定がないということである。
 したがって、個人事業者(免税事業者)が令和5年10月1日に登録した場合には、令和5年12月1日までに登録取消届出書を提出することにより、令和6年から免税事業者となることができるのに対し、令和6年1月1日に登録した個人事業者(免税事業者)は、登録開始日(令和6年1月1日)から2年を経過する日(令和7年12月31日)の属する課税期間(令和7年)までの間は課税事業者として申告義務があるので、結果、令和6年と令和7年の2年間は課税事業者として拘束されることとなるのである。

Ⅲ 登録申請書の雛型の改訂

 令和4年度改正法の成立に伴い、登録申請書の雛型が改訂されている。また、登録申請書の雛型の改訂に伴い、国税庁が公表している「記載例」も改訂されているのでそれぞれの改訂内容を確認する。
□登録申請書(第1-(1)号様式)

※下線が改訂された箇所(「初葉」の改訂はない)

□「免税事業者の確認欄」の改訂

【前文の改訂】
 令和4年度改正では、令和5年10月1日の属する課税期間だけでなく、令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間においても、「課税事業者選択届出書」を提出することなく、登録申請書を提出することにより、適格請求書発行事業者となることを認めることとしたことから、免税事業者の確認欄の前文を「令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間……」と改訂した。
【「登録希望日」欄の新設】
 登録申請書の提出により年又は事業年度の中途から登録ができることに伴い、「登録希望日」欄が新たに設けられている(新平成28年改正法附則44④、新平成30年改正法施行規則附則4四)。ただ、この「登録希望日」欄に記載した日から適格請求書発行事業者になるためには、いつまでに登録申請書を出せばいいのかがわからない……。
 インボイスQ&A(消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A)問6には、課税事業者は、課税期間の途中であっても登録ができる旨が記載されている。また、登録申請から登録通知までの期間については、書面による申請は1か月程度、e-Taxは2週間程度を要すると記載されている(インボイスQ&A問4)。
 一方で、「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となる免税事業者や基準期間(特定期間)における課税売上高が1,000万円を超えたことにより課税事業者となる免税事業者が、課税事業者となる課税期間の初日から「適格請求書発行事業者」になろうとするときは、その課税期間の初日の前日から起算して1か月前の日までに登録申請書を税務署長に提出しておくことが義務付けられている(消法57の2②、消令70の2)。

 「登録希望日」欄に記載した日から適格請求書発行事業者になるためには、いつまでに登録申請書を出せばいいのだろう……。新設法人のように、登録申請をした日よりも前に遡って登録の効力が発生することもあるのだろうか?(消令70の4、消規26の4)。

□「登録要件の確認欄」の改訂

 改訂により「登録要件の確認欄」に納税管理人に関する質問が追加されている。国内事業者用の登録申請書に納税管理人の質問を新設したことに違和感はあるが、おそらくは、課税庁の管理のために設けられたものではないかと思われる。
 国内で不動産賃貸をしているサラリーマンが海外勤務をしている場合又は海外転勤となる場合などは、所得税で納税管理人の届出が必要になる。このようなケースにおいて、インボイスの登録申請をするような場合には、その旨記載しておく必要があるということなのであろう。
□「申請書の申請期間」の改訂
 適格請求書発行事業者の登録申請書の様式は、申請期間により下表のように区分されている。

 上表のうち、「第1-(3)号様式」〜「第1-(6)号様式」の申請期間に関する改訂であるが、例えば、改訂前の「第1-(3)号様式」の右側には、「この申請書は、令和5年10月1日から令和6年9月30日までの間に提出する場合に使用します。」と書いてあったものが、改訂により「この申請書は、令和5年10月1日から令和12年9月29日までの間に提出する場合に使用します。」と変わっている。
 改正により、経過措置を適用することができる課税期間が「令和5年10月1日の属する課税期間」から「令和11年9月30日の属する課税期間」まで延長されたので、「令和6年」が「令和12年」と変わるのは当然のこととして、月日をよく見ると、「9月30日」が「9月29日」に変わっている。
 経過措置の適用を受けることができる最も遅い課税期間は、令和11年9月30日にスタートする課税期間であるから、例えば、令和11年9月30日〜令和12年9月29日課税期間(事業年度)から適格請求書発行事業者になるためには、令和11年9月29日までに申請しなければいけないことになる。つまり、令和11年9月30日には経過措置による申請はできないということである。
□登録申請書の記載例
 登録申請書の(次葉)「免税事業者の確認欄」の「課税期間の初日」の欄には次のようなコメントが付されている(※の箇所)。

 この※の箇所のコメントについて、改訂前の記載例(次頁参照)では「申請書の提出時点は免税事業者でも、令和5年9月30日以前に課税事業者となる場合は、令和5年9月30日以前の日を記載して差し支えありません。……」と書かれていたものが、改訂により「……差し支えありません。」から「……記載して構いません。」という文言に変わっている。この言い回しの変更にどんな意味があるのだろうか?
 令和3年中の課税売上高が1千万円を超えたことにより、令和5年1月1日から課税事業者となる個人事業者が令和5年10月1日から適格請求書発行事業者となる場合には、「課税期間の初日」の欄には「令和5年1月1日」としか書きようがないのである(下記の「登録申請書(第1-(1)号様式)の記載要領等」抜粋の下線の箇所を参照)。

          :
ロ 「消費税課税事業者届出書」又は「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる課税期間の初日から登録を受けようとする事業者に該当する場合、「消費税課税事業者届出書」又は「消費税課税事業者選択届出書」の「適用開始課税期間(自)」欄に記載した年月日を「課税期間の初日」欄に記載します。ただし、当該課税期間の初日が令和5年10月1日から令和6年3月31日の場合に限ります。
  この場合、「消費税課税事業者届出書」又は「消費税課税事業者選択届出書」は、この申請書の提出前又は提出と同時に提出してください。
          :

 ※印で書かれている「令和5年10月1日から令和6年3月31日までの間のいずれかの日」という期間の制約は、平成28年改正法附則44条1項を意識して書かれたものと思われるが、なぜに登録申請書に「令和5年10月1日〜令和6年3月31日」までの年月日を書かなければいけないのかがわからない。どうせ申請書を改訂したのなら、「記載例」の改訂だけではなく、こういった意味不明な記載事項の欠陥について、潔く修正することが何故にできなかったのであろうか?
 インボイスの登録は、税理士が関与していない小規模事業者も申請することが想定されている。国税庁が、動画の配信やスマホによる登録申請の案内など、申請に向けて様々な工夫をされていることは重々承知しているところではあるが、肝心要の申請書の雛型と記載要領が「よくわからない」と筆者は何度も相談を受けている。改正に伴い申請書の雛型を改訂したのなら、このタイミングで「課税期間の初日」の欄も修正することができたはずである。「記載例」を改訂するだけではなく、申請書の雛型も改訂し、記載要領等をもっともっと充実させることができたはずである。申請書に書いてある文字を単になぞって記載要領に羅列するのではなく、誰が読んでも理解できる程度に改訂されなかったことがただただ残念でならない。

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