税務ニュース2022年07月08日 簿外経費措置、恣意的運用を懸念する声(2022年7月11日号・№938) 国税庁、帳簿書類や反面調査で確認した上で課税処分

  • 令和4年度税制改正で導入された簿外経費の損金不算入制度に対して、恣意的な運用がなされるのではないかとの懸念の声も。
  • 国税庁、帳簿書類や反面調査で確認した上で課税処分を行う方針。形式的な適用は行わず。

 令和4年度税制改正では、所得税及び法人税の税務調査において、証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者などへの対応策として、必要経費不算入・損金不算入の措置が講じられた(個人の場合は令和5年分以後の所得税、法人の場合は令和5年1月1日以後に開始事業年度の所得に対する法人税について適用)。仮装・隠蔽又は無申告の年分(事業年度)において、確定申告における所得金額の計算の基礎とされなかった間接経費の額は、①帳簿書類等を保存する場合、②反面調査等により税務署長がその取引が行われたと認める場合を除き、必要経費(損金の額)に算入しないこととされている。対象となる経費は、事後的に主張される一定の売上原価、販売費、一般管理費等とされ、簿外経費であったとしても取引に直接要する仕入のような経費については対象外となっている。
 昨年の政府税制調査会では、国税庁から税務調査後に確認困難な簿外経費を主張する悪質な納税者がいるとの問題が指摘されており、これを踏まえて税制改正に至ったものである(本誌894・908号参照)。
 悪質な納税者対策ということで同制度に関する議論を深める間もなく導入されることになったわけだが、一部の専門家からは、一般の納税者に対して恣意的な運用がなされるのではないかとの懸念の声が上がっている。仮装・隠蔽の認定は税務当局が行うものであり、また、無申告であるということのみで形式的に今回の措置が適用されるのではないかというものだ。
 国税庁では、仮装・隠蔽の認定については税務調査で収集した証拠や、納税者の申述に基づいて事実確認を行うとしており、また、無申告に関しては、納税者が主張する簿外経費にについて帳簿書類等を確認する、あるいは税務調査において判明した取引の相手先に対して必要な調査を行った上で課税処分を行うとしており、単に無申告であることだけで形式的に適用するわけではないと説明している。したがって、簿外経費が否認されるような場合とは、納税者から帳簿書類が提示されなかったり、反面調査により取引の内容や経費の支出の実態が明らかとならないといったケースに限定されることになりそうだが、税務当局においては、より適正な税務調査の実施が求められることになりそうだ。

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