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解説記事2022年07月11日 SCOPE 価額弁償が行われた場合も代償分割に準じた相続税計算可(2022年7月11日号・№938)

相基通11の2−10の適用を巡る裁決
価額弁償が行われた場合も代償分割に準じた相続税計算可


 代償分割を巡っては、納税者と税務当局との間で争いが多く、今回紹介する2つの裁決事例は、いずれも相続税法基本通達11の2−10(代償財産の価額)の適用に関するものである。1件目は遺留分の価額弁償として取得した金額が争われた裁決で、国税不服審判所は、相続税の課税価格の計算上は価額弁償が行われた場合も代償分割が行われた場合と同様に扱うのが相当であるとの判断を示している(原処分の一部取消し)。また、2件目は相続税の課税価格に算入する代償金の価額を合意書に従って計算することが認められるか否かが争われた裁決で、原処分の全部が取り消されたものとなっている。

審判所、代償財産の価額の取扱いを定めた通達の準用認める

 1件目に紹介する裁決は、請求人(被相続人の長男)が受遺者(被相続人の養子)に対して遺留分減殺請求を行い、訴訟外の合意により不動産や現金等を取得したことから、相続税の修正申告をしたが、原処分庁が取得財産の価額に算入すべき現金の金額の計算に誤りがあるとして更正処分等を行ったため、その全部の取消しを求めた事案である(関裁(諸)令3第11号)。請求人が遺留分の価額弁償として取得した金額が争われており、請求人は、価額弁償金の金額は被相続人の養子との間で合意した遺留分減殺請求に係る具体的な侵害額を相続開始時の価額に調整した金額である3,623万6,205円とすべきと主張。一方、原処分庁は財産評価基本通達4−4の定めに準じた5,449万7,645円であるとした。
 審判所は、価額弁償(改正前民法1041条)は遺産の現物の取得者がその現物に変わるものとして遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償することにより返還の義務を免れるものであり、その経済的実質をみると、価額弁償金は代償分割における代償財産と同じ性質を有するといえると指摘。相続税の課税価格の計算上は、価額弁償が行われた場合も代償分割が行われた場合と同様に扱うのが相当であるとした上で、本件では、共同相続人全員の協議に基づいて価額弁償金の金額を計算して申告した事情はないため、相続税法基本通達11の2−10(代償財産の価額)のただし書(2)の定めを準用できるか検討されている。
裁判所が関与しなくても
 審判所は、合意に至る経緯及び合意書から判断すると、価額弁償金は遺留分減殺請求の対象となった財産が特定され、かつ、対象財産の合意の時における通常の取引価額を基にして合意されたものといえるとし、本件通達(2)の定めを準用することができるとした。結果、請求人が遺留分減殺請求に基づき取得した価額弁償金5,413万3,309円については、本件通達(2)の定めを準用して計算した4,082万3,194円に修正し、審判所は原処分の一部を取り消した。原処分庁は、本件合意は裁判所が後見的に関与していない上、価額弁償の対象財産の合意の時における価額は、時点が混在したものであるから通常の取引価額とは認められないとして、本件通達(2)の定めに準じた計算はできないと主張したが、審判所は、裁判所が後見的に関与していないとしても、対立する当事者が交渉及び調整を重ね、両者が歩み寄って合意した価額を通常の取引価額とみることには一般的な合理性があるとして原処分庁の主張を斥けた。

相続税の負担を不当に減少させた事情がない限り合意書の計算方法を否定せず

 2件目は、請求人の相続税の課税価格に算入する代償金の価額を合意書に従って計算することが認められるか否かが争われた裁決(大裁(諸)令3第22号)。請求人は、遺産の分割が確定したことを理由として、相続税の更正の請求をしたところ、原処分庁が相続税の課税価格に算入すべき代償財産の価額に誤りがあるとして更正をすべき理由がない旨の通知処分等をしたことから、原処分の全部の取消しを求めた。請求人は、合意書に定める代償財産の価額の計算方法は、共同相続人の全員の協議に基づくものであるなどと主張。一方、原処分庁は、請求人が行った代償財産の価額の計算方法は、共同相続人全員の協議に基づくものではなく、相続税法基本通達11の2−10ただし書(2)に定める計算方法により算出すべきと主張した。
 審判所は、相続税の課税価格の計算における代償財産の価額については、その価額の計算が共同相続人全員の協議に基づく合理的と認められる方法によるものである限り、これを否定する理由はなく、共同相続人の意思を尊重して、その協議に基づく計算方法によることを認めるのが相当であるとし、その計算方法が配偶者に対する相続税額の軽減制度(相法19条の2)を利用するなどして相続税の負担を不当に減少することを目的としたなどの事情がない限り、本件通達11の2−10ただし書(1)に定める合理的と認められる方法によるものというべきであるとの見解を示した。その上で審判所は、請求人の合意書に定める計算方法は共同相続人の全員の協議に基づくものであると認め、原処分の全部を取り消した。

代償財産の価額
 代償財産の価額については、代償分割の対象となった財産を現物で取得した人が他の共同相続人などに対して負担した債務の額の相続開始の時における金額となる。ただし、代償財産の価額については、①代償分割の対象となった財産が特定され、かつ、代償債務の額がその財産の代償分割の時における通常の取引価額を基として決定されている場合には、その代償債務の額に、代償分割の対象となった財産の相続開始の時における相続税評価額が代償分割の対象となった財産の代償分割の時において通常取引されると認められる価額に占める割合を掛けて求めた価額となる(相基通11の2−10ただし書(2))、②共同相続人及び包括受遺者の全員の協議に基づいて、①で説明した方法に準じた方法又は他の合理的と認められる方法により代償財産の額を計算して申告する場合には、その申告した額によることが認められる(相基通11の2−10ただし書(1))。

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