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解説記事2022年07月25日 税制改正解説 令和4年度における消費税・間接諸税関係の改正について(2022年7月25日号・№940)

税制改正解説
令和4年度における消費税・間接諸税関係の改正について
 鈴木悠夫

Ⅰ 消費税関係の改正

一 適格請求書発行事業者登録制度の見直し

1 改正前の制度の概要
① 適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置

 令和5年10月1日に施行される適格請求書等保存方式の下では、仕入税額控除制度の適用を受けるために、原則として、適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書又は適格簡易請求書(以下「適格請求書等」という。)の保存が必要とされ、課税資産の譲渡等について適格請求書等を交付しようとする課税事業者は、あらかじめ適格請求書発行事業者の登録を受ける必要がある(所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号。以下「平成28年改正法」という。)による改正後の消法30、57の2①)。
 この適格請求書発行事業者の登録は、課税事業者であることが前提とされており、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には課税事業者となる必要があるため、その登録は原則として課税期間を単位として行うこととなるが、令和5年10月1日の属する課税期間に免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、課税期間の途中であっても適格請求書発行事業者の登録を受けた日(以下「登録日」という。)から課税事業者(適格請求書発行事業者)になることができることとされている(以下「適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置」という。)(改正前の所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号。以下「旧平成28年改正法」という。)附則44④)。
(注)課税事業者選択届出書を提出して免税事業者から課税事業者となる場合は、原則として2年間は免税事業者に戻ることができないこととされている(消法9⑥)が、令和5年10月1日の属する課税期間において適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の適用を受ける場合には、こうした制限はない。
 また、簡易課税制度の適用を受けようとする者は、原則としてその適用を受けようとする課税期間の開始前に簡易課税制度選択届出書を提出する必要があるが、令和5年10月1日の属する課税期間において適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の適用を受けた者が、当該課税期間中に当該課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載して簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、当該課税期間の初日の前日に提出したものとみなして、当該課税期間から簡易課税制度を適用できることとされている(改正前の消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成30年政令第135号。以下「旧平成30年改正消令」という。)附則18)。
② 適格請求書発行事業者の登録拒否要件及び登録取消要件
 適格請求書等保存方式において、課税資産の譲渡等について適格請求書を交付しようとする課税事業者は、あらかじめ適格請求書発行事業者の登録を受ける必要があり、適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者は、登録申請書をその納税地を所轄する税務署長に提出しなければならないこととされている(旧平成28年改正法による改正後の消法57の2①②)。登録申請書の提出を受けた税務署長は、遅滞なく審査し、その登録を行うこととなるが、当該登録申請書を提出した事業者について次の事実がある場合には、税務署長は適格請求書発行事業者の登録を拒否できることとされている(旧平成28年改正法による改正後の消法57の2⑤)。
イ 特定国外事業者(国内において行う資産の譲渡等に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを国内に有しない国外事業者をいう。以下同じ。)以外の事業者(旧平成28年改正法による改正後の消法57の2⑤一)……当該事業者が、消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であること。
ロ 特定国外事業者(旧平成28年改正法による改正後の消法57の2⑤二)……次に掲げるいずれかの事実に該当すること。
ⅰ 消費税に関する税務代理人がないこと。
ⅱ 納税管理人を定めていないこと。
ⅲ 国税の滞納があり、かつ、その滞納額の徴収が著しく困難であること。
ⅳ 正当な理由なく消費税の期限内申告書の提出がなかったこと又は国税の滞納があり、かつ、その滞納額の徴収が著しく困難であることにより、適格請求書発行事業者の登録を取り消され、その取消しの日から1年を経過しない者であること。
ⅴ 当該事業者が、消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であること。
 また、税務署長は、適格請求書発行事業者について次の事実がある場合には、当該適格請求書発行事業者の登録を取り消すことができることとされている(旧平成28年改正法による改正後の消法57の2⑥)。
イ 特定国外事業者以外の事業者(旧平成28年改正法による改正後の消法57の2⑥一)……次に掲げるいずれかの事実に該当すること。
ⅰ 1年以上所在不明であること。
ⅱ 事業を廃止したと認められること。
ⅲ 合併により消滅したと認められること。
ⅳ 消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられたこと。
ロ 特定国外事業者(旧平成28年改正法による改正後の消法57の2⑥二)……次に掲げるいずれかの事実に該当すること。
ⅰ 事業を廃止したと認められること。
ⅱ 合併により消滅したと認められること。
ⅲ 確定申告書の提出期限までに、当該申告書に係る税務代理の権限を有することを証する書面が提出されていないこと。
ⅳ 納税管理人を定めていないこと。
ⅴ 正当な理由なく消費税の期限内申告書の提出がなかったこと。
ⅵ 国税の滞納があり、かつ、その滞納額の徴収が著しく困難であること。
ⅶ 消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられたこと。

2 改正の内容
① 適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の見直し

 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録の必要性を見極めながら柔軟なタイミングで登録を受けられるようにするため、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間(改正前:令和5年10月1日の属する課税期間)に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合には、登録日から登録日の属する課税期間の末日までの間について事業者免税点制度を適用しないこととし、課税期間の途中であっても登録日から適格請求書発行事業者(課税事業者)になることができることとされた(平成28年改正法附則44④)。なお、事業者が予見可能性をもってその登録を受けることができるようにするため、適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の適用を受ける際の登録申請書には、登録を希望する年月日を記載することができることとされた(消費税法施行規則等の一部を改正する省令(平成30年財務省令第18号)附則4四)。
 一方で、現行制度において課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となった場合に2年間は免税事業者に戻ることができないこととされていること(消法9⑥)とのバランスを考慮し、適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の適用を受ける場合、登録日の属する課税期間が令和5年10月1日を含む課税期間である場合を除き、登録日の属する課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度を適用しないこととされた(平成28年改正法附則44⑤)。
 また、特定非常災害の被災者である適格請求書発行事業者が、適格請求書発行事業者の登録を取り消して免税事業者になろうとする場合において、その登録の取消しを求める旨の届出書を税務署長に提出したときは、その届出をした日の翌日から登録の効力が失われることとなる特例(措法86の5⑬)が設けられている。特定非常災害により当該特例の適用を受け、その登録が取り消された場合は、上記の適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の適用を受けて登録日から登録日の属する課税期間の末日までの間について事業者免税点制度を適用しないこととされている場合であっても、事業者免税点制度を適用できることとされている(旧平成30年改正消令附則16)が、今般の改正により登録日の属する課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間について事業者免税点制度を適用しないこととされる場合について、特定非常災害により当該特例の適用を受けた場合には事業者免税点制度を適用できることとされた(消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成30年政令第135号。以下「平成30年改正消令」という。)附則16②)。
 そのほか、簡易課税制度の選択については、改正後の適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の適用を受けて課税期間の途中から適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が、その登録日を含む課税期間中(改正前:令和5年10月1日を含む課税期間中)に当該課税期間から適用を受ける旨を記載して簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、当該課税期間の初日の前日に提出したものとみなして、当該課税期間から簡易課税制度を適用できることとされた(平成30年改正消令附則18)。
② 適格請求書発行事業者の登録拒否要件及び登録取消要件の見直し
 適格請求書発行事業者の登録申請書を提出した事業者が国税通則法第117条第1項の規定により納税管理人を定めなければならないにもかかわらず納税管理人の届出をしていないときは、当該事業者が特定国外事業者であるか否かにかかわらず、税務署長はその登録を拒否できることとされ(平成28年改正法による改正後の消法57の2⑤一イ・二ロ)、既に適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとされた(平成28年改正法による改正後の消法57の2⑥一ニ・二ニ)。
 また、事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書に虚偽の記載をして適格請求書発行事業者の登録を受けた場合にも、税務署長はその登録を取り消すことができることとされた(平成28年改正法による改正後の消法57の2⑥一ヘ・二チ)。

3 適用関係
 上記の改正は、平成28年改正法等の一部を改正することにより行われており、令和4年4月1日から施行されている(改正法附則1、改正消令附則1、改正消規附則1)。また、上記について、令和4年4月1日前に適格請求書発行事業者の登録申請書が提出されており、施行の際に登録の拒否がされていないものについては、なお従前の例によることとされている(改正法附則1、78)。

二 適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る仕入税額控除に関する経過措置の見直し

1 改正前の制度の概要
 令和5年10月1日以後に国内において行った課税仕入れに係る仕入税額控除制度の適用については、原則として、適格請求書等の保存が要件とされるが、適格請求書等保存方式を円滑に実施する観点から、適格請求書発行事業者以外の者から行う課税仕入れであっても、現行の区分記載請求書等保存方式における記載事項を満たした帳簿及び区分記載請求書等が保存されていることを要件として、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間は仕入れに係る消費税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの間は仕入れに係る消費税額相当額の50%の控除を認める経過措置が設けられている(旧平成28年改正法附則52①、53①)。
 ここで保存が必要となる区分記載請求書等は、次の事項が記載された「書類」をいい、これらの事項が記録された電磁的記録を保存しても当該経過措置の適用対象とはされていない。
① 書類の作成者の氏名又は名称
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
④ 税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込)
⑤ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
 また、免税事業者が課税事業者となる日の前日に、免税事業者であった期間中に行った課税仕入れ等に係る棚卸資産を有している場合、その棚卸資産に係る消費税額を、課税事業者となった課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなして仕入税額控除の対象とすることとされている(消法36①③。以下「棚卸資産の調整措置」という。)が、上記の経過措置の適用を受ける課税仕入れに係る棚卸資産については、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間はその消費税額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの間はその消費税額の50%を仕入税額控除の対象とすることとされている(旧平成28年改正法附則52④、53④)。

2 改正の内容
 上記の経過措置の適用を受けるために保存が必要な区分記載請求書等に代えて、その区分記載請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録を保存している場合にも、当該経過措置の対象とすることとされた(平成28年改正法附則52①、53①)。
(注)電磁的記録とは、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成10年法律第25号)第2条第3号に規定する電磁的記録をいう。
 また、棚卸資産の調整措置については、免税事業者である間に行う仕入れの相手方が課税事業者であるか免税事業者であるかの区分を不要とするため、棚卸資産に係る消費税額の全額を仕入税額控除の対象とすることとされた(消法36①③、平成28年改正法附則52④、53④)。
 なお、上記の経過措置の適用を受けて消費税額相当額の80%又は50%が仕入税額控除の対象とされる棚卸資産について、課税事業者から免税事業者となる場合における棚卸資産の調整措置(消法36⑤)の適用を受ける場合には、引き続き、その消費税額相当額の80%又は50%について、仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額に含まれないこととされている(平成28年改正法附則52④、53④)。

3 適用関係
 上記の改正は、平成28年改正法の一部を改正することにより行われており、令和4年4月1日に条文は改正されたが(改正法附則1)、適格請求書等保存方式の施行は、令和5年10月1日である。

三 仕入明細書等による仕入税額控除の適用要件の明確化

1 改正前の制度の概要
 適格請求書発行事業者である個人事業者が家事用資産の売却(不課税売上げ)を行う場合、売り手である当該個人事業者は適格請求書を交付することはできない(平成28年改正法による改正後の消法57の4①)。そのため、売り手が家事用資産として売却したものについて、買い手である事業者は仕入税額控除の適用を受けることができない。
 また、買い手である事業者が課税仕入れに係る仕入明細書等を作成し、仕入明細書等の記載事項について売り手(課税仕入れの相手方)の確認を受けた場合には、当該課税仕入れについて仕入税額控除が可能とされている(旧平成28年改正法による改正後の消法30⑨三)。

2 改正の内容
 適格請求書等保存方式において、仕入明細書等による仕入税額控除は、課税仕入れの相手方である売り手にとって課税資産の譲渡等に該当する場合に限り適用できることが明確化された(平成28年改正法による改正後の消法30⑨三)。

3 適用関係
 上記の改正は、平成28年改正法の一部を改正することにより行われており、令和4年4月1日に条文は改正されたが(改正法附則1)、適格請求書等保存方式の施行は、令和5年10月1日である。

四 公売等において執行機関が適格請求書を交付する場合の特例の整備

1 改正前の制度の概要
 国税等の滞納者である事業者の財産を公売等の強制換価手続により売却する場合については、消費税法上、滞納者から買受人への資産の譲渡等に該当することとなる。このため、適格請求書等保存方式においては、適格請求書発行事業者である滞納者が適格請求書を交付し、買受人が当該適格請求書を保存することで、買受人は仕入税額控除が可能とされている(平成28年改正法による改正後の消法30⑨一)。
 一方で、滞納者の意思にかかわらず強制的に財産を売却するという強制換価手続の性質に鑑みると、買受人が適格請求書発行事業者である滞納者から適格請求書の交付を直接受けることや、媒介者交付特例(旧平成30年改正消令による改正後の消令70の12)により執行機関が適格請求書を滞納者に代わり交付するために、滞納者から適格請求書発行事業者の登録を受けている旨の通知を受けることについては、困難が伴う場合が想定された。
(注1)強制換価手続とは、滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続をいう(徴法2十二)。
(注2)執行機関とは、滞納処分を執行する行政機関その他の者、裁判所(民事執行法(昭和54年法律第4号)第167条の2第2項に規定する少額訴訟債権執行にあっては、裁判所書記官)、執行官及び破産管財人をいう(徴法2十三)。

2 改正の内容
 強制換価手続により執行機関を介して国内において課税資産の譲渡等を行う場合であって、滞納者が適格請求書発行事業者である場合には、当該執行機関は、当該滞納者から適格請求書発行事業者の登録を受けている旨の通知を受けることなく、滞納者に代わって適格請求書の交付、又は適格請求書に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供することを可能とする特例が設けられた(平成30年改正消令による改正後の消令70の12⑤)。この特例の適用を受ける場合の適格請求書には、適格請求書発行事業者である滞納者の氏名等に代えて、当該執行機関の名称及びこの特例の適用を受ける旨を記載することとされている。また、執行機関がこの特例の適用を受けて適格請求書を交付し、又は適格請求書に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供した場合には、速やかに当該適格請求書の写し又は当該電磁的記録を適格請求書発行事業者である滞納者に交付し、又は提供しなければならないこととされた(平成30年改正消令による改正後の消令70の12③⑥)。なお、執行機関が買受人を特定せずに公売等を実施することはないことから、適格簡易請求書については、本特例の対象とされていない。

3 適用関係
 上記の改正は、平成30年改正消令の一部を改正することにより行われており、令和4年4月1日に条文は改正されたが(改正消令附則1)、適格請求書等保存方式の施行は、令和5年10月1日である。

五 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)の見直し

1 改正の背景
 納税地を所轄する税務署長の許可を受けた輸出物品販売場を経営する事業者が、外国人旅行者等の非居住者に対して、当該非居住者がその出国の際に海外に持ち出す一定の物品を所定の手続により譲渡した場合には、消費税を免除することとされている(消法8)。輸出物品販売場における資産の譲渡等が、輸出取引と同様に消費税が免除されているのは、国内において行う資産の譲渡等ではあるものの、出国の際に国外へ持ち出すことを前提とした販売であり、その実質は輸出取引と変わることがないと考えられることによるものである。
 また、現行の輸出物品販売場制度では、外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号。以下「外為法」という。)第6条第1項第6号に規定する非居住者(以下単に「非居住者」という。)が免税購入可能な者とされている。このため、輸出物品販売場を経営する事業者は、外国人旅行者等からパスポート等の提示を受け、非居住者であることの確認をして免税販売を行っているが、非居住者の在留資格によっては、パスポートに加えて海外に在住していることや日本で就労していないことについての確認書類等を求める必要が生じる。現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、観光需要は大きく落ち込んでいる状況にあるが、それ以前においては、こうした確認手続が煩雑であることにより、輸出物品販売場において免税販売手続のための長い行列ができるなど、外国人旅行者等の満足度の低下につながる事例もあり、事業者の側からも改善を求める声が上がっていた。
 こうした状況を踏まえ、免税購入可能な者及びその確認方法を明確化しつつ、デジタル技術も活用することで、原則として旅券のみを確認することにより免税購入可能な者であることを確認することができるよう国土交通省から税制改正要望が提出された。そういった要望も踏まえ、令和4年度税制改正においては、免税購入可能な者の範囲を見直すこととされたほか、外国人旅行者等が旅券等に係る情報を電子的に提供することができるよう見直しが行われた。
 また、税関事務の簡素化の一環として、輸出物品販売場において免税購入した者が免税購入した物品を出国時までに輸出しない場合に、当該物品につき免除された消費税額に相当する消費税について直ちに徴収(以下「即時徴収」という。)等を行うこととされている税関長の権限について、見直しが行われた。

2 改正前の制度の概要及び改正の内容
① 免税購入可能な者の範囲の見直し

 輸出物品販売場で免税購入可能な者は、外為法上の非居住者とされており、具体的には、次のとおりとされている(外国為替法令の解釈及び運用について(昭和55年蔵国第4672号)(抄))。

(1)本邦人の場合
イ 本邦人は、原則として、その住所又は居所を本邦内に有するものと推定し、居住者として取り扱うが、次に掲げる者については、その住所又は居所が外国にあるものと推定し、非居住者として取り扱う。
(イ)外国にある事務所(本邦法人の海外支店等及び現地法人並びに国際機関を含む。)に勤務する目的で出国し外国に滞在する者
(ロ)2年以上外国に滞在する目的で出国し外国に滞在する者
(ハ)(イ)又は(ロ)に掲げる者のほか、本邦出国後外国に2年以上滞在するに至った者
(ニ)(イ)又は(ハ)までに掲げる者で、事務連絡、休暇等のため一時帰国し、その滞在期間が6月未満のもの
ロ イにかかわらず、本邦の在外公館に勤務する目的で出国し外国に滞在する者は、居住者として取り扱う。
(2)外国人の場合
イ 外国人は、原則として、その住所又は居所を本邦内に有しないものと推定し、非居住者として取り扱うが、次に掲げる者については、その住所又は居所を本邦内に有するものと推定し、居住者として取り扱う。
(イ)本邦内にある事務所に勤務する者
(ロ)本邦に入国後6月以上経過するに至った者
ロ イにかかわらず、次に掲げる者は、非居住者として取り扱う。
(イ)外国政府又は国際機関の公務を帯びる者
(ロ)外交官又は領事官及びこれらの随員又は使用人。ただし、外国において任命又は雇用された者に限る。

 前述のとおり、一部の者についてはこの非居住者であることの確認手続が煩雑であったため、免税購入可能な非居住者の範囲及びその確認方法を明確化し、原則として旅券のみを確認することにより免税購入可能な者であることの判定を可能とするよう要望があった。このため、令和4年度税制改正において免税購入可能な者の範囲を見直すこととされ、次に掲げる者(以下「免税購入対象者」という。)がその対象とされた(消法8①、消令18①、消規6①)。
イ 日本国籍を有しない者
  非居住者であって次に掲げる者
・短期滞在、外交、公用の在留資格をもって在留する者(出入国管理及び難民認定法別表1の1、別表1の3)
・寄港地上陸許可、船舶観光上陸許可、通過上陸許可、乗員上陸許可、緊急上陸許可、遭難による上陸許可を受けて在留する者(出入国管理及び難民認定法14〜18)
・合衆国軍隊の構成員等(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定1)
ロ 日本国籍を有する者
  非居住者であって、国内以外の地域に引き続き2年以上住所又は居所を有する者であることについて在留証明又は戸籍の附票の写し(最後に入国した日から起算して6月前の日以後に作成されたものに限る。)により確認された者
(注)日本国籍を有する者は旅券のみで非居住者か否かを判定することが困難であるため、旅券に加えて公的書類により確認ができるよう対象範囲を含めた見直しが行われている。
 この改正により、原則として旅券のみを確認することにより免税購入対象者かどうかの判定ができるようになる。なお、外国人旅行者のほとんどは短期滞在の在留資格又は船舶観光上陸許可で入国する者であり、これらの者は引き続き免税購入可能な者となる。
 また、輸出物品販売場を経営する事業者は、日本国籍を有する免税購入対象者について、その者から提示を受けた在留証明又は戸籍の附票の写しに記載された事項を購入記録情報として送信するか、これらの写しの提出を受けて輸出物品販売場に保存することとされている(消令18③⑦、消規6③)。
② Visit Japan Webを用いた旅券等の情報の提供に係る見直し
 輸出物品販売場制度において外国人旅行者等が免税購入する際は、輸出物品販売場を経営する事業者に対してその所持する旅券等を提示し、その所持する旅券等に記載された情報を提供することとされている(旧消令18②一〜三)。また、当該事業者は、旅券等に記載された情報及び購入の事実を記録した電磁的記録(購入記録情報)を、電子情報処理組織を使用して、遅滞なく国税庁長官に提供することとされている(旧消令18⑥)。
 現在、CIQ業務(税関、入管、検疫)等の手続のデジタル化を通じ、入国者の利便性向上と業務効率化を実現する観点から、デジタル庁により「Visit Japan Web」(ウェブサービス)が提供されている。今般の改正では、この「Visit Japan Web」の活用を念頭に、デジタル庁が整備・管理をする情報システムにより旅券等に係る情報が表示された通信端末機器の画面を免税購入対象者が提示することにより、旅券等に係る情報を輸出物品販売場を経営する事業者に対して提供することが可能となるよう見直しが行われた(消令18③一イ・二・三イ)。これにより、免税購入対象者は、輸出物品販売場(対応店舗に限る。)において、「Visit Japan Web」に事前に取り込んだ旅券に係る情報(氏名、国籍、生年月日、在留資格、上陸年月日、旅券の種類及び番号)が記録された二次元コードを通信端末機器の画面で提示し、その二次元コードを当該輸出物品販売場を経営する事業者が読み取る方法により、その情報を提供できることとなる。
③ 即時徴収等を行う場合の税関長の権限の委任
 非居住者(上記①の改正により免税購入可能な者の範囲が見直されるため、令和5年4月1日以後は「免税購入対象者」となる。以下同じ。)が輸出物品販売場において購入する物品については、出国の際に海外に持ち出すことを前提として免税価格で販売されるものである。そのため当該物品を購入した非居住者は、本邦から出国する際に、当該物品の持ち出し確認のため、その出港地を所轄する税関長にその所持する旅券等を提示しなければならないこととされており(消令18⑤)、非居住者が本邦から出国する日までに当該物品を輸出しないときは、その者が災害その他やむを得ない事情により亡失したため輸出しないことについて税関長の承認を受けた場合を除き、その出港地を所轄する税関長は、その者から当該物品につき免除された消費税額に相当する消費税を即時徴収することとされている(消法8③)。
 今般の改正では、税関事務の簡素化の観点から、免税購入した物品を輸出しない場合に行われる消費税の即時徴収の権限など、次に掲げる税関長の権限について、当該権限に係る処分の対象となる事項を所轄する税関官署の長に委任できることとされた(消法8⑩、消令18の6)。
○亡失に係る承認(消法8③本文)
○即時徴収(消法8③本文)
○即時徴収する消費税に関する次の権限
 ・賦課決定(通法33③による読替後の通法32①〜④)
 ・口頭による賦課決定の通知(通法33④)
 ・納税の告知(通法45①による読替後の通法36)
 ・繰上請求(通法45①による読替後の通法38①②)
 ・滞納処分(通法45①による読替後の通法40)
 ・国税の徴収(通法43①ただし書)
 ・徴収の引継ぎ(通法43④)
 ・徴収の引継ぎ時の納税者への通知(通法43⑤)

3 適用関係
 上記2①の改正は、令和5年4月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用し、同日前の課税資産の譲渡等については、なお従前の例によることとされている(改正法附則1四、19①)。また、上記2②の改正は、令和5年4月1日から適用され(改正消令附則1一)、2③の改正は、令和4年4月1日から適用されている(改正法附則1、改正消令附則1)。

六 個人事業者に係る納税地の異動の届出等の廃止

1 改正前の制度の概要
 個人事業者は、その所得税の納税地を住所地から居所地や事務所等の所在地に変更する場合には、その変更前の納税地の所轄税務署長に納税地の変更に関する届出書(以下「変更届出書」という。)を提出しなければならないこととされ(旧所法16①〜④)、当該変更届出書が提出された場合には、消費税の納税地も変更することとされている(旧消法21①②)。
 また、消費税の納税地に異動があった場合には、その異動前の納税地の所轄税務署長に納税地の異動に関する届出書(以下「異動届出書」という。)を提出しなければならないこととされている(旧消法25)。

2 改正の内容
 上記変更届出書及び異動届出書は、納税者の納税地の変更又は異動の状況を税務署長が的確に把握し円滑な事務処理を行うために提出することとされていたが、今般の改正では、ワンスオンリー(一度提出した情報は二度提出することは不要とする)を徹底する観点や、変更後及び異動後の納税地については、提出された確定申告書等に記載された内容や住民基本台帳ネットワークシステムを通じて入手した個人事業者の住民票情報から課税当局において把握することが可能であることを踏まえ、個人事業者に係る変更届出書及び異動届出書について、その提出が不要とされた。

3 適用関係
 上記の改正は、令和5年1月1日以後の個人事業者の納税地の変更及び異動について適用し、同日前の個人事業者の納税地の変更及び異動については、なお従前の例によることとされている(改正法附則1三、19②③)。

七 輸出入関係証明書類の範囲の見直し

1 改正前の制度の概要
① 輸出関係証明書類

 消費税は、国内において消費される財貨やサービスに対して税負担を求めていることから、輸出されたことにより、輸出した先の国(国外)で消費される財貨や、国際通信、国際運送など輸出に類似する取引については、消費税を免除することとされている(消法7①)。
 この輸出免税の適用を受けるには、次のとおり、一定の事項が記載された書類(以下「輸出許可書等」という。)又は帳簿を整理し保存することにより、その取引が輸出取引等であることを証明することが必要となる(消法7②、消規5)。
・本邦からの輸出として行われる資産の譲渡等である場合(消規5①一)……当該資産の輸出に係る税関長から交付を受ける輸出の許可があったことを証する書類等
・本邦からの輸出として行われる資産の譲渡等で郵便物として当該資産を輸出した場合(消規5①二)……日本郵便株式会社(以下単に「日本郵便」という。)から交付を受けた当該郵便物の引受けを証する書類等
・国内及び国内以外の地域にわたって行われる輸送若しくは通信又は郵便若しくは信書便である場合(消規5①三)……これらの役務の内容や対価の額、相手方の氏名等を記載した書類等
・消費税法第7条第1項各号に掲げる資産の譲渡等のうち上記の資産の譲渡等以外の資産の譲渡等である場合(消規5①四)……当該資産の譲渡等を行った相手方との契約書等で当該資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容や対価の額、相手方の氏名等が記載されている書類
② 輸入関係証明書類
 消費税の納付税額の計算に当たっては、課税期間中の課税標準額に対する消費税額から、その課税期間中の課税仕入れ等の税額を控除(仕入税額控除)して行うこととなるが、仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、その課税仕入れ等に関する仕入先等の一定の事項が記載された帳簿及び請求書等を保存することが要件とされている(消法30⑦〜⑨)。
 このうち、その課税仕入れ等の税額が輸入(保税地域からの引取りに係る課税貨物)に係るものである場合については、その課税貨物を保税地域から引き取る事業者が税関長から交付を受ける当該課税貨物の輸入の許可があったことを証する書類など、次に掲げる書類又は当該書類に関する税関長が交付した証明書類(以下「輸入許可書等」という。)を保存する必要がある(消法30⑨三、消令49⑤⑥)。
・輸入の許可があったことを証する書類
・特例申告書の提出があったことを証する書類
・輸入の許可前に保税地域から課税貨物を引き取る承認があったことを証する書類
・賦課決定通知書
・郵便物に係る賦課決定通知書とみなされる書面
・消費税の納付前に郵便物を受け取る承認があったことを証する書類
・輸入の許可後に修正申告書の提出があったことを証する書類
・輸入の許可後に行われた更正に係る更正通知書又は決定通知書
・関税法第85条第1項の規定による公売又は売却に係る代金が充当されたことを証する書類

2 改正の内容
 上記の輸出免税を適用する要件として保存することとされている輸出許可書等及び仕入税額控除を適用する要件として保存することとされている輸入許可書等の範囲に、これらの書類に係る電磁的記録を含めることとされた(消規5④、消令49⑦)。
 なお、これらの電磁的記録の保存方法については、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則(平成10年大蔵省令第43号)第4条第1項各号に掲げる措置のいずれかを行い、同項に規定する要件に準ずる要件に従って保存することとされ(消規5⑤)、その電磁的記録を出力することにより作成した書面による保存も認められている(消規5⑥)。

3 適用関係
 輸出許可書等に係る改正については、令和4年4月1日以後に事業者が行う課税資産の譲渡等に係る電磁的記録について適用されており(改正消規附則2)、輸入許可書等に係る改正については、同日以後に保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税に係る電磁的記録について適用されている(改正消令附則2)。

八 郵便物に係る輸入手続等の内国消費税の納付のキャッシュレス化

1 改正前の制度の概要
 外国貨物を輸入しようとする者は、税関長に申告し、当該貨物につき必要な検査を経てその許可を受けなければならない(関税法67)が、その価格が20万円以下の少額郵便物については適用対象外とされており(関税法76)、日本郵便から名宛人に交付された時に輸入の許可があったものとみなされる(関税法74)。この少額郵便物に係る関税は、「賦課課税方式」によることとされており(関税法6の2①二ロ)、郵便物の交付を受ける名宛人は、原則として、税関長から日本郵便を通じて送達される通知(課税標準及び税額の通知)に基づき、当該郵便物に係る関税を納付した上で、その交付を受けることとされている(関税法77)が、その納付は日本郵便に委託できることとされている(関税法77の2①)。また、令和3年度の関税改正においてその納付についてキャッシュレスで行うことが可能とされている(関税法9の5①③)。
 保税地域から引き取られる課税貨物に対する内国消費税の納付手続等については、関税法における外国貨物の輸入手続等と一体的に行うことが要請されることから、課税貨物を内容とする少額郵便物に係る内国消費税の納付についても当該郵便物に係る関税の納付手続と一体で行われるよう輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(昭和30年法律第37号。以下「輸徴法」という。)に規定され、内国消費税の納付についても日本郵便に委託できることとされている(旧輸徴法7③〜⑤)。

2 改正の内容
 今般の改正においては、令和3年度の関税改正に合わせ、少額郵便物を輸入する際の内国消費税の納付についてキャッシュレスで行うことが可能とされた(輸徴法7③、通法34の3①)。なお、少額郵便物に係る関税と内国消費税の納付方法を一致させるため、関税と内国消費税で異なる納付方法を選択することはできないこととされている(輸徴法7③〜⑤)。

3 適用関係
 上記の改正は、令和4年4月1日から適用されている(改正法附則1)。

Ⅱ 酒税関係の改正

一 輸出酒類販売場制度における免税購入対象者の範囲等に関する見直し

1 改正前の制度の概要等
 酒類製造者が輸出酒類販売場(消費税の輸出物品販売場の許可を受けた酒類の製造場であること等の要件に該当する販売場として、当該酒類の製造場の所在地を所轄する税務署長の許可を受けた酒類の販売場をいう。以下同じ。)において訪日外国人旅行者等に対して一定の手続(以下「免税販売手続」という。)により酒類を販売した場合には、当該酒類に係る酒税を免税とする制度(いわゆる「酒蔵ツーリズム免税制度」)が設けられている(旧措法87の6)。
 この場合の免税販売手続においては、酒税の免税の適用を受けるための要件の一つとして、訪日外国人旅行者等は、輸出酒類販売場を経営する酒類製造者に対して旅券等を提示し、その旅券等に記載された情報を提供しなければならないこととされていた(旧措令46の8の2②)。さらに、訪日外国人旅行者等の在留資格によっては、海外に在住していることや日本国内で就労していないことについて、書類で確認する必要が生じていた。
 また、輸出酒類販売場において免税酒類(輸出酒類販売場を経営する酒類製造者が自ら製造等をした酒類であって消費税の輸出物品販売場制度の適用を受ける酒類をいう。以下同じ。)を購入した訪日外国人旅行者等が、購入した免税酒類を出国時までに輸出しないときには、その者の出港地を所轄する税関長がその者から、免税酒類について免除された酒税額に相当する酒税を直ちに徴収(以下「即時徴収」という。)することとされてる(旧措法87の6③)。
 本特例については、上述のとおり、免税酒類を購入できる対象者(以下「免税購入対象者」という。)は訪日外国人旅行者などの非居住者(外国為替及び外国貿易法第6条第1項第6号に規定する非居住者をいう。以下同じ。)とされていたが、輸出酒類販売場において購入者が免税購入対象者であるか否かの確認について、対象者によってはその証明書類の確認が煩雑になっており、免税購入対象者とその確認書類を明確化することにより免税販売手続を円滑化することを求める声があった。
 このため、観光庁から、免税購入対象者の範囲を旅券等で容易に確認が可能な短期滞在者等に見直すことを内容とする税制改正要望が提出された。

2 改正の内容
 消費税法における輸出物品販売場制度に係る見直しと同様に次の①〜③の見直しが行われた。
① 免税購入対象者の範囲の見直し
 免税購入対象者は、非居住者のうち、以下の者とすることとされた(措法87の6①)。
・日本国籍を有しない者の場合は、出入国管理及び難民認定法第14条から第18条までに規定する上陸の許可(寄港地上陸許可、船舶観光上陸許可、通過上陸許可、乗員上陸許可、緊急上陸許可、遭難による上陸許可)を受けて在留する者又は外交、公用、短期滞在のいずれかの在留資格をもって在留する者
・日本国籍を有する者の場合は、国内以外の地域に引き続き2年以上住所又は居所を有することにつき、在留証明又は戸籍の附票の写し(最後に入国した日から起算して6月前の日以後に作成されたものに限る。)により確認がされた者(措令46の8の2①、措規37の4①)
② 旅券等に係る情報の提供に関する見直し
 現在、CIQ業務(税関、入管、検疫)等の手続のデジタル化を通じ、入国者の利便性向上と業務の効率化を実現する観点からデジタル庁により「Visit Japan Web」(ウェブサービス)が提供されている。この「Visit Japan Web」の活用を念頭に、免税購入対象者は、輸出酒類販売場を経営する酒類製造者に対して旅券等に係る情報を提供する際に、デジタル庁が整備及び管理をする情報システムにより旅券等に係る情報が表示されたスマートフォンなどの通信端末機器の画面を提示することにより旅券等に係る情報の提供を行うことができることとされた(措令46の8の2③)。
③ 即時徴収等を行う場合の税関長権限の委任規定の創設
 免税購入対象者が、本邦からの出国の日までに購入した免税酒類を輸出しないときに、その出港地を所轄する税関長がその免税購入対象者から酒税の即時徴収等を行う場合の税関長の権限について、当該権限に係る処分の対象となる事項を所轄する税関官署(税関支署、税関出張所、税関支署出張所、税関監視署、税関支署監視署)の長に委任できることとされた(措法87の6⑬、措令46の8の7①)。委任の対象となる税関長の権限は次のとおりである。
○亡失に係る承認(措法87の6③)
○即時徴収(措法87の6③)
○即時徴収する酒税に関する次の権限
・賦課決定(通法33③による読替後の通法32①〜④)
・口頭による賦課決定の通知(通法33④)
・納税の告知(通法45①による読替後の通法36)
・繰上請求(通法45①による読替後の通法38①②)
・滞納処分(通法45①による読替後の通法40)
・国税の徴収(通法43①ただし書)
・徴収の引継ぎ(通法43④)
・徴収の引継ぎ時の納税者への通知(通法43⑤)

3 適用関係
 上記2③の改正は令和4年4月1日から施行されている(改正法附則1)。また、上記2①の改正は令和5年4月1日以後に輸出酒類販売場を経営する酒類製造者が免税購入対象者に対して販売する免税酒類の移出について適用され(改正法附則1四、53)、上記2②の改正は令和5年4月1日から施行される(措令改正令附則1二)。

Ⅲ 印紙税関係の改正

一 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者に対して行う特別貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の延長

1 改正前の制度の概要
 公的貸付機関等又は金融機関が特定事業者(新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者をいう。以下同じ。)に対して新型コロナウイルス感染症等によりその経営に影響を受けたことを条件として他の金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な条件で行う特別貸付けに係る消費貸借契約書のうち、特定日として規定された令和3年1月31日までに作成されるものについては、印紙税を課さないこととされた。
 令和3年1月31日の適用期限の到来に際しては、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受ける事業者が多くあり、これを受け、多くの公的貸付機関等及び金融機関が引き続き特定事業者に対する特別貸付制度を存置していることを踏まえ、その適用期限が延長され、令和4年3月31日までの措置とされた(新型コロナ税特法11、旧新型コロナ税特令8、新型コロナ税特規6)。
(注1)「公的貸付機関等」とは、地方公共団体、株式会社日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人福祉医療機構などをいう(新型コロナ税特法11①、新型コロナ税特令8①、新型コロナ税特規6①)。
(注2)「金融機関」とは、銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、信用金庫連合会、協同組合連合会、労働金庫連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、株式会社商工組合中央金庫及び株式会社日本政策投資銀行をいう(新型コロナ税特法11②、新型コロナ税特令8④)。

2 改正の内容
 本措置については、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化を踏まえ、公的貸付機関等による新型コロナ特別貸付等が令和4年4月以降も継続されることに鑑み、その適用期限を1年延長し、令和5年3月31日までの措置とすることとされた(新型コロナ税特令8③)。

Ⅳ その他間接税等関係の改正

一 輸出免税手続における帳簿への記載方法の見直し

1 改正前の制度の概要
 酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税又は石油石炭税(以下「酒税等」という。)は、原則として、酒類、製造たばこ、揮発油、課税石油ガス、原油、ガス状炭化水素又は石炭(以下「酒類等」という。)がその製造場等から移出され、又は保税地域から引き取られる時に納税義務が成立する移出時(引取時)課税制度を採用している。これは、流通段階の直前である製造場等からの移出時に酒税等の納税義務を成立させることで、酒類等の製造者等が酒税等相当額を酒類等の価格に加えて販売することにより酒税等の転嫁を図り、これによって最終的にはその酒類等の消費者に負担を求めることを予定しているためである。したがって、課税物件である酒類等が、その製造場等で製造されたものであると否とを問わず、酒類等の製造場等から移出する場合には納税義務が成立する仕組みとされている。
 他方で、酒税等の内国消費税においては、消費地課税の考え方から、国内において消費される課税物件に対して負担を求めることを予定しているので、酒類製造者等が輸出する目的で酒類等をその製造場等から移出する場合には、移出時課税の例外として輸出免税の制度を設け、輸出のため製造場等から移出される酒類等については酒税等を免除することとされている(酒法29①、た法14①、揮法15①、地揮法6①、石ガ法11①、石石法11①)。
 輸出免税の制度により酒税等の免除の適用を受けるためには、製造場等から移出した日の属する月分の納税申告書(期限内申告書に限る。)に輸出免税の制度の適用を受けようとする酒類等の税率の適用区分及び当該区分ごとの数量等を記載するとともに、当該酒類等が輸出のため外国航路に就航する船舶等に積み込まれたことを輸出港の所轄税関長が証明した書類、当該事実を輸出の許可をした税関長が証明した書類又は当該酒類等が外国に陸揚げされたことを証明する書類等(以下「輸出証明書」という。)に基づいて酒類等の税率の適用区分、当該区分ごとの数量、輸出の年月日、仕向地、輸出港の所轄税関等を帳簿に記載する必要があった(酒法29②、酒令36①、た法14②、旧た令7①、揮法15②、揮令9①、石ガ法11②、石ガ令5①、石石法11②、石石令11①)。

2 改正の内容
 輸出証明書に基づき帳簿に記載する際の当該輸出証明書について、例えばNACCS(貿易関連の行政手続きと民間業務をオンラインで行うシステム)を利用して税関長の輸出の許可を受ける場合などを想定し、当該輸出証明書に記載すべき事項を記録した電磁的記録に基づき帳簿に記載することを可能とすることとされた(酒令36③、た令7③、揮令9③、石ガ令5③、石石令11③)。

3 適用関係
 上記の改正は、令和4年4月1日以後に酒類等の製造者等が輸出する目的でその製造場等から移出する酒類等に係る帳簿の記載について適用することとされている(改正酒令附則②、改正た令附則②、改正揮令附則②、改正石ガ令附則②、改正石石令附則②)。

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