税務ニュース2022年08月19日 待機期間の短い株式報酬、否決リスクも(2022年8月22日号・№943) 法人税上は損金算入の余地あり
日本企業の株式報酬は権利確定までに3年間の待機期間(権利を付与されてから権利行使可能になるまでの期間)を設けるのが一般的となっている。これに対し、欧米企業の株式報酬は、権利が“段階的”に確定することが珍しくない。例えば、毎年1/3ずつ3年間かけて権利が確定するものや、1年間経過後は、四半期ごと、場合によっては月次で細かく権利確定するものもある。より短期間で権利が確定する株式報酬を提供した方が人材獲得競争において有利となるからだ。
日本企業の中にも、欧米企業のように段階的に権利が確定するタイプの株式報酬の導入を検討しているところもある。この場合、まず問題となるのが税法だ。法人税法上、譲渡制限付株式報酬は「事前確定届出給与」として損金算入する途が開かれているが、四半期ごと、さらには月次で細かく権利確定する譲渡制限付株式報酬を事前確定届出給与として損金算入できるのかという懸念が生じる(なお、待機期間が3年間など長期にわたる譲渡制限付株式報酬は最初だけ届出を行えば、毎年届出を行う必要はないという実務となっている)。
法人税法上、事前確定届出給与について年間の支払回数の制限は設けられていない。ただし、事前確定届出給与の届出用紙を見ると、記載できるのは「4回」となっていることから、少なくとも四半期で権利確定するものであれば、事前確定届出給与として損金算入する余地はあることが本誌取材により確認されている。また、それより回数が多くなる場合には、通番を振って複数枚の届出用紙を提出することも可能とのことだ。ただし、「月次」となると、今度は定期同額給与として、その損金算入要件を満たす必要が出て来る可能性がある。
もっとも、議決権行使助言会社のポリシーや国内機関投資家の議決権行使基準では、株式報酬の待機期間を最低でも「2〜3年以上」と定めているケースが多い。したがって、短期間で権利確定する譲渡制限付株式報酬を付与するための役員報酬議案を株主総会に上程した場合、賛成率がかなり低くなることが予想され、場合によっては否決される可能性も否定できないだろう。
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