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税務ニュース2019年12月27日 過大配当利用の節税封じに簿価の切下げ(2020年1月6日号・№817) 持分割合50%超、簿価の10%超の配当対象も一定の適用除外措置

  • 法人が「持分割合50%超」の子会社から「簿価の10%を上回る配当」を受ける場合、株式の簿価を「配当のうち益金不算入額となる金額」分切り下げで、譲渡損失の計上を阻止。
  • 租税回避を意図しない企業への影響緩和のため、設立以来90%以上保有、支配関係発生から10年経過等なら適用対象外。

 令和2年度税制改正で、ソフトバンクが利用し、税務当局が問題視していたとされる節税スキームを封じる措置が導入されることになった。
 まず、本節税スキームをおさらいしておこう。税務当局が問題視しているのが、下記の(2)における譲渡損失の計上だ。 

(1)外国子会社が、その傘下の法人の株式を内国法人に配当(現物分配)。内国法人においては、その配当に対し外国子会社配当益金不算入規定が適用されることから、(配当額の5%分を除き)課税は生じない。
(2)(1)で行われた配当(現物分配)により、外国子会社は「利益を吐き出した」状態となり、その株式の価値は大幅に目減り。内国法人が当該外国子会社の株式を譲渡することにより譲渡損失を計上。

 令和2年度税制改正で導入される本節税スキームの封じ込め策は、法人が「一定の支配関係」にある子会社から「一定の配当」を受ける場合、その配当の起因となった株式の簿価を切り下げるというもの。支配関係のある法人からの配当で、当該配当の額が配当の起因となる株式の帳簿価額の一定割合以上となる場合には、当該配当を「投資の回収」と捉えることにより、株式の帳簿価額を切り下げることには合理性があるということであろう。これにより、配当の結果「利益を吐き出した」格好となった法人の株式をその親法人が売却しても、譲渡損失を計上できないようにするのが本改正の狙いである。
 ここでいう「一定の支配関係」とは、基本的に持分割合が50%超か否かで判定する。当時者間の支配関係のほか、一の者との間に当事者間の支配関係のある法人相互の関係も該当する点、留意したい。なお、子会社は外国法人に限定されず、内国法人も対象となる。
 「一定の配当」とは、その配当の起因となる株式の簿価の10%を上回る配当を指す。当該株式の簿価の10%を上回っているかどうかの判定は、その配当を含む期首からの配当の累積額をもって行う。すなわち、事業年度単位で判定することになるということだ。簿価の切り下げ額は、基本的には配当のうち益金不算入額となる金額とされる。
 ただ、簿価の10%を上回る配当を行う企業は多くはないものの、必ずしも珍しくはない。そこで、租税回避を意図しない企業が大きな影響を受けることのないよう、①子会社(内国法人に限る)が設立されてから支配関係が生じるまでの間、90%以上の株式を、内国法人・居住者によって保有されている場合、②支配関係発生前の利益を原資とする配当が行われない場合、③支配関係発生から10年が経過している場合、④1事業年度における配当の合計額が2000万円を超えない場合――は適用対象外とする。
 まず①の「子会社(内国法人に限る)が設立されてから支配関係が生じるまでの間、90%以上の株式を、内国法人・居住者によって保有されている場合」との適用除外基準は、今回の改正議論の発端がソフトバンクによる国際的な節税スキームであったことから、国内配当への影響を最小化する狙いがある。
 ②の「支配関係発生前の利益を原資とする配当が行われない場合」とは、逆に言えば、支配関係発生後の利益を原資とする配当が行われる場合を指している。支配関係発生後の利益が配当の原資となっている限りにおいては租税回避の可能性は低いため、規制対象とする実益が乏しい、ということである。なお、ここでいう利益とは、利益積立金額ではなく、あくまで会計上の利益剰余金を指す。国内・海外の子会社の利益積立金額を親会社でトレースするのは困難だからだ。
 ③の「支配関係発生から10年が経過している場合」を適用対象外としたのは、企業によっては数十年前から保有する子会社もあることを踏まえたもの。設立以来の資本関係や支配関係発生前の利益といっても、無限に遡って検証できるわけではない。一つの“割り切り”として設けられた適用除外基準と言えよう。
 ④の「1事業年度における配当の合計額が2000万円を超えない場合」とはいわゆるデミニマス基準であり、少額配当については適用対象外とする趣旨である。「2000万円」という金額は、外国子会社合算税制や過大支払利子税制に平仄を合わせた形となっている。
 このように、本改正は当初の懸念とは打って変わり、多くの企業にとって、税負担・事務負担という意味で比較的“実害”が少ない決着となったと言えよう。
 なお、本改正の施行時期が大綱に記載されていないとの指摘が編集部に寄せられているが、これは通常のタイミングで適用開始となるものは大綱のルールとして記載されないことになっているため。すなわち、通常の法人税改正と同じく、「令和2年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税」から適用されることになる。

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