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税務ニュース2022年11月11日 後発的事由に基づく更正請求、控訴棄却(2022年11月14日号・№954) 和解は租税回避を目的としたもので、真実の権利関係の変動なし

  • 和解は租税回避を目的としたもので真実の権利関係の変動がないとして、後発的事由に基づく更正の請求を求める控訴棄却(東京高裁令和4年10月31日判決)。

 周知のとおり、国税通則法23条2項は、後発的に申告等にかかる私法上の法律効果に変動が生じるなどして納付すべき税額が過大となった場合には、後発的事由に基づく更正の請求ができる旨規定している。本件は、和解が国税通則法23条2項1号の「判決と同一の効力を有する和解」に当たるか否か、すなわち、真実の権利関係等の変動があったと認められ、更正の請求が認められるかが争われた事案である。
 原告(個人)は、B証券と商品先物取引委託契約を締結し、商品先物取引を行っていたところ、平成11年に約2,500万円、平成12年に約2億9,000万円の利益を得たが無申告であったため、処分行政庁から所得税の決定処分等を受けた。なお、本件先物取引全体では、差益金総額約1億1,000万円から手数料約1億8,000万円を控除した結果、約7,000万円の損失となっていた。
 その後原告は、平成16年にB証券の従業員が不法行為を行ったなどと主張して、B証券を相手に損害賠償請求訴訟を提起。平成19年に上記の損失金と同額の約7,000万円を解決金として支払うことで合意した(平成19年和解)。その後、平成19年和解に基づく更正の請求をするも認められず、裁判でも平成24年に敗訴が確定した。
 原告は、続いて平成21年にB証券及びその従業員を相手に本件先物取引の無効確認訴訟及び損害賠償請求等を提起するも、平成26年に敗訴が確定し、平成28年にも委託契約解除通知書の送付などを理由に更正の請求をしたが認められなかった。
 さらに、平成28年には、平成19年和解が無効であることの確認を求める訴えを提起し、平成29年に和解が成立した(平成29年和解)。そして、この平成29年和解の成立により本件委託契約が解除された結果、その契約開始に遡って本件委託契約に基づく本件先物取引も効力を失ったなどとして、更正の請求を行った。
 一審の東京地裁は、「国税通則法23条2項1号の趣旨からすれば、訴訟上の和解の条項中に納税者の権利関係等を変更する旨の記載がされていたとしても、それが、専ら租税負担を回避する目的で、実体とは異なる内容を記載したものであって、その実質において客観的、合理的理由を欠き、真実は権利関係等の変動がないような場合には、当該訴訟上の和解は、同号の『判決と同一の効力を有する和解』には当たらない」との解釈を示した上で、平成29年和解の内容について検討した。
 その結果、①本件先物取引が客観的にみて公序良俗に反する無効なものといえないこと、②本件先物取引は、本件委託契約に基づいて、受託者であるB証券と第三者との間でされたものであり、その性質は問屋契約であるから、本件委託契約の効力の有無によって本件先物取引の効力は左右されず、また原告とB証券の合意によって左右されるものでもないことなどから、平成29年和解のうち、本件先物取引の無効、又は本件委託契約が効力を失うことにより本件先物取引も効力を失うことを確認等する部分は実体に反するとの判断を示した。
 また東京地裁は、①平成29年和解の和解条項は、本件先物取引の無効などの効果として、原告のB証券に対する約7,000万円の請求権が発生するが、平成19年和解に基づく解決金として受領済であり、両者に新たな金銭的負担は発生しないとしていること、②平成29年和解の時点において、本件委託契約の取消権及び解除権の消滅時効期間も経過していることなどを指摘し、「このような時点に至って本件委託契約を解除し、又は取り消すべき客観的、合理的理由は見出し難い」とした。
 そのほか、原告が課税処分による租税負担を不服として、又はその補填を目的として、数次にわたる更正の請求及び訴訟の提起等をしたものの、いずれにおいても目的を達成することができなかったことから、本件和解無効確認訴訟を提起して平成29年和解を成立させたという経緯などを踏まえれば、「平成29年和解は、平成19年和解に基づく本件解決金の名目を書き換えることにより、原告に本件各利益が帰属しないことになるという形式を作り出すことを目的としたもの」であるとした上で、「そうすると、平成29年和解は、原告に本件各利益が帰属することを前提とする本件各課税処分による租税負担を回避することを目的とするものであって、真実の権利関係等の変動を伴うものということはできず、本件各年分の本件先物取引に係る損益が原告に帰属したとの事実に変動が生じたと認めることはできない」と結論づけた。
 二審の控訴審も一審の判断を支持。
 原告は、「本件差益金のほぼ全額を利得しておらず所得がない」旨主張したが、東京高裁は、「本件訴訟は、原告が本件先物取引により本件各利益を得たことを前提として提起されたものであり、また、本件先物取引全体では控訴人に損失が発生しており、結果的に控訴人が本件差益金のほとんどを得ていないとしても、控訴人が平成11年及び平成12年の本件各利益を得たことは否定されない」と、原告の主張を一蹴した。
 また、原告は、「平成29年和解の実質に照らせば、本件差益金がB証券に返還されて権利関係が変動していることが明らかである」とも主張したが、東京高裁は、「平成29年和解は、租税負担を回避することを目的とするものであって、真実の権利関係の変動を伴うものということはできない」と一審と同様の判断を下した。

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