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解説記事2022年11月14日 未公開裁決事例紹介 各重ダンプは「機械及び装置」に該当(2022年11月14日号・№954)

未公開裁決事例紹介
各重ダンプは「機械及び装置」に該当
審判所、主たる役務が運搬と断定できず


○重ダンプトラックが法人税額の特別控除の対象となる「機械及び装置」に該当するか争われた裁決。原処分庁は、請求人が作業現場で使用する重ダンプトラックは、構造・形態・用途等からその主要部分が車両からなる運搬具であり、砂利や土砂等の物の運搬を主目的として使用していることから、「車両及び運搬具」に該当するとしたが、国税不服審判所は、各重ダンプは運搬以外の作業も行っており、これらの作業は一方が主たる役務で他方が従たる役務であると認めることができず、各重ダンプの主たる役務が運搬であると断定することはできないから、各重ダンプが「車両及び運搬具」に該当すると判断することはできないとし、原処分の一部を取り消した(熊裁(法)令3第5号、一部取消し)。

主  文

1 平成26年4月1日から平成27年3月31日まで、平成28年4月1日から平成29年3月31日まで、平成29年4月1日から平成30年3月31日まで及び平成30年4月1日から平成31年3月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙4及び別紙6ないし別紙8の「取消額等計算書」のとおり取り消す。
2 平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分の一部を別紙5の「取消額等計算書」のとおり取り消し、過少申告加算税の賦課決定処分の全部を取り消す。
3 平成27年4月1日から平成28年3月31日まで及び平成28年4月1日から平成29年3月31日までの各課税事業年度の地方法人税の各更正処分の一部を別紙9及び別紙10の「取消額等計算書」のとおり取り消し、過少申告加算税の各賦課決定処分の全部を取り消す。
4 平成29年4月1日から平成30年3月31日まで及び平成30年4月1日から平成31年3月31日までの各課税事業年度の地方法人税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙11及び別紙12の「取消額等計算書」のとおり取り消す。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、××等採掘現場で使用している重ダンプトラックについて、法人税額の特別控除の対象となる「機械及び装置」に該当するとして、その控除を適用して法人税等の確定申告書を提出したところ、原処分庁が、当該重ダンプトラックは「車両及び運搬具」に該当するから、法人税額の特別控除を適用することはできないとして法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の一部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令等(略)
(3)基礎事実

 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人は、××××に××・××・×等(以下「××等」という)の採掘加工販売等を目的として設立された資本金××の法人である。
  なお、請求人は、措置法第42条の6第1項又は第42条の12の4第1項に規定する中小企業者等に該当し、請求人が営む××等の採掘業は、各項に規定する指定事業に該当する。
ロ 請求人は、平成26年4月1日から平成27年3月31日まで、平成27年4月1日から平成28年3月31日まで、平成28年4月1日から平成29年3月31日まで、平成29年4月1日から平成30年3月31日まで及び平成30年4月1日から平成31年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成27年3月期」、「平成28年3月期」、「平成29年3月期」、「平成30年3月期」及び「平成31年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)において、××××ダンプトラック(以下「×」という。)、××××ダンプトラック(以下「×」という。)及び××ダンプトラック(以下「×」といい、×及び×と併せて「本件各重ダンプ」という。)を別表1のとおり取得した。
ハ 請求人は、××××××××(以下「×」という。)から、本件各重ダンプのうち、①別表1の番号1ないし11のものについては「産業競争力強化法の生産性向上設備等のうち先端設備に係る仕様等証明書」と題する書面、②同表の番号12ないし14のものについては「中小企業等経営強化法の経営力向上設備等に係る生産性向上要件証明書」と題する書面、③同表の番号15及び16のものについては「中小企業等経営強化法の経営力向上設備等及び生産性向上特別措置法の先端設備等に係る生産性向上要件証明書」と題する書面(以下、これらの各書面を併せて「本件各証明書」という。)の各交付を受けた。
ニ 請求人は、××××付で、××××から「経営力向上計画に係る認定について」と題する書面(以下「本件認定書」という。)の交付を受けた。
ホ 請求人は、××、××、××、××、××、××及び××付で、××から「経営力向上計画の変更に係る認定について」と題する各書面(以下、これらの各書面と本件認定書を併せて「本件認定書等」という。)の各交付を受けた。
(4)審査請求に至る経緯
イ 請求人は、本件各事業年度の法人税について、青色の確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおりそれぞれ記載して、いずれも提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限の延長の特例》第1項の規定により1月延長されたもの。)までに申告した。
ロ 請求人は、平成27年4月1日から平成28年3月31日まで、平成28年4月1日から平成29年3月31日まで、平成29年4月1日から平成30年3月31日まで及び平成30年4月1日から平成31年3月31日までの各課税事業年度(以下、順次「平成28年3月課税事業年度」、「平成29年3月課税事業年度」、「平成30年3月課税事業年度」及び「平成31年3月課税事業年度」といい、これらを併せて「本件各課税事業年度」という。)の地方法人税について、青色の確定申告書に別表3の「確定申告」欄のとおりそれぞれ記載して、いずれも提出期限(地方法人税法第19条第5項により1月延長されたもの。)までに申告した。
ハ 請求人は、本件各事業年度の法人税の納付すべき税額の計算に当たり、本件各重ダンプが「機械及び装置」に該当するとして、平成27年3月期、平成28年3月期及び平成29年3月期の法人税の計算については措置法第42条の6に規定する法人税額の特別控除を、平成30年3月期及び平成31年3月期については措置法第42条の12の4に規定する法人税額の特別控除を適用し、上記(3)のハないしホに記載した各書類を添付して申告した。
ニ 請求人は、平成28年3月期の法人税及び平成28年3月課税事業年度の地方法人税について、平成29年6月30日に、別表2及び別表3の「修正申告」欄のとおりとする修正申告書を提出した。
ホ ××は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、本件各重ダンプは、「車両及び運搬具」に該当し、「機械及び装置」に該当しないとして、令和2年6月29日付で別表2及び別表3の「更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。なお、本件法人税各更正処分に係る通知書を「本件各更正処分通知書」という。)及び本件各課税事業年度の地方法人税の各更正処分(以下「本件地方法人税各更正処分」といい、本件法人税各更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)並びに本件法人税各更正処分に係る過少申告加算税の各賦課決定処分及び本件地方法人税各更正処分に係る過少申告加算税の各賦課決定処分(以下、これらを「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。
  なお、本件各更正処分通知書に記載された更正の理由の要旨は、別紙2のとおりである(別紙2で用いた定義は、同別紙限りで用いる。)。
へ 請求人は、本件各更正処分等を不服として令和2年7月22日に審査請求をした。

争点および主張

(1)本件各更正処分通知書の処分の理由に不備があるか否か(争点1)。
(2)本件各重ダンプは、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」に該当するものとして、措置法第42条の6又は第42条の12の4に規定する「機械及び装置」に該当するか否か(争点2)。(争点の主張は次頁のとおり(争点1は省略))

【表】争点2(本件各重ダンプは、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」に該当するものとして、措置法第42条の6又は第42条の12の4に規定する「機械及び装置」に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人

 次のとおり、本件各重ダンプは、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」に該当しないことから、措置法第42条の6第2項に規定する「機械及び装置」又は第42条の12の4第1項に規定する「機械及び装置」に該当しない。
イ ブルドーザー又はパワーショベルのような建設車両等は、車両としての構造をしていても走行することが目的ではなく、掘削、積込み、てん圧等の各種の作業を作業場において行うために自力で移動することができる自走式作業用機械設備と考えられ、一方、本件各重ダンプは、構造・形態・用途等から考察してその主要部分が車両からなる運搬具であり、砂利や土砂等の物の運搬を主目的として使用していることから自走式作業用機械設備に該当せず、「車両及び運搬具」に該当する。
  また、本件各重ダンプによる「投入作業」は、重ダンプトラックに備わった機能を利用した一作業であって、飽くまで本件各重ダンプの主目的は「運搬」であることに何ら影響を及ぼすものではない。
ロ 原処分庁は、本件各重ダンプが、その構造、性能及び使用状況から「車両及び運搬具」に該当すると判断した具体的根拠を示しており、鉱山保安法施行規則における「車両系鉱山機械」の規定について、原処分庁としては何ら述べる立場にない。


ハ ××等採掘現場において、本件各重ダンプが、ホイルローダーにより本件各重ダンプの荷台に積み込まれた××等を立坑へ運搬し、投入するまでの作業は、××等に加工を施すなどの直接的な付加価値の増加のための生産活動を行っていない。したがって、本件各重ダンプによる作業は、××等を単純に移動させているにすぎないものであり、その他の資産と有機的に結合し、採掘工程を構成するものではない。

 次のとおり、本件各重ダンプは、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」に該当することから、措置法第42条の6第2項に規定する「機械及び装置」又は第42条の12の4第1項に規定する「機械及び装置」に該当する。
イ 本件各重ダンプは、人又は物の運搬を目的とせず、作業現場において××等採掘設備の一部として、機械的に××等の岩石の運搬・投入を行うことを目的としていることから、「機械及び装置」に該当する。
  なお、本件各重ダンプによる××等の運搬及び立坑への投入作業について、物の運搬を行っている外形的な形態のみに着目して判断すべきではない。

 

 

 

 

 

ロ 鉱山保安法施行規則第1条第2項第13号において、「車両系鉱山機械」とは、「掘削機械、積込機械、運搬機械、せん孔機械その他の原動機により自走できる機械」と規定し、同項第14号で「自動車」とは、道路運送車両法第2条第2項に規定する自動車であって、車両系鉱山機械以外のものをいう旨規定していることから、本件各重ダンプは、「車両系鉱山機械」である。
ハ 立坑投入方式を採用している作業現場においては、本件各重ダンプを使用しないと、原鉱石の選別作業及び××等の立坑への投入作業が行えないことから、鉱山における採鉱、積込、運搬及び立坑への投入工程のない生産ラインとなり、××等の生産・製造工程そのものが成り立たないことになる。したがって、採鉱から製品船積みまでの一連の設備を「有機的に結合し一つの設備を構成する有形資産」と判断すべきである。

審判所の判断

(1)争点1(本件各更正処分通知書の処分の理由に不備があるか否か。)について(略)
(2)争点2(本件各重ダンプは、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」に該当するものとして、措置法第42条の6又は第42条の12の4に規定する「機械及び装置」に該当するか否か。)について

イ 法令解釈等
(イ)耐用年数通達の取扱いについて
 上記のとおり、耐用年数省令は、別表第二に掲げる減価償却資産に含まれる「ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式作業用機械」に該当するものを、別表第一に掲げる「車両及び運搬具」から除く旨規定している。
 また、別紙のとおり、耐用年数通達2−5−5は、トラッククレーン、ブルドーザー等のように人又は物の運搬を目的とせず、作業場において作業することを目的とする建設車両等は、別表第一の「車両及び運搬具」の「特殊自動車」に該当せず、「機械及び装置」に該当する旨定めている。
 ところで、減価償却資産の耐用年数については、昭和36年当時、固定資産の耐用年数等に関する省令(以下「旧省令」という。)に規定されており、ロードローラー、タイヤローラー、ショベルローダーなどの自走式作業用機械が旧省令の別表一(機械及び装置以外の有形固定資産の耐用年数)の「車両及び運搬具」欄中「特殊自動車」の細目に特掲され、その耐用年数は5年とされていたものが、昭和39年に、大幅な改正が行われた経緯がある。その際、それまで旧省令の別表一の「車両及び運搬具」欄中「特殊自動車」の細目に特掲され、ロードローラー等と併記されていた除雪車等の一部の資産を除き、ロードローラー、タイヤローラー、ショベルローダーなどの自走式作業用機械が同細目から削除されて、旧省令の別表二(機械及び装置の耐用年数)の第334号に「ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式作業用機械設備」として特掲される(耐用年数は5年)とともに、旧省令の別表一の「車両及び運搬具」欄中「構造又は用途」欄の「特殊自動車」には、「特殊自動車(この項には、別表二第334号の自走式作業用機械を含まない。)」と括弧書の文言が追加された。この改正は、ロードローラー等は車両というよりは機械とみなすべきとの考えに基づいており、旧省令の別表二の第334号はこれら建設作業用のものに限られず、鉱業、鉄鋼業等において使用されるパワーショベル等のほか自走式の作業用機械についても適用された。
 よって、耐用年数通達における上記取扱いは、上記改正の経緯と合致するものであり、当審判所においても相当であると認められる。
(ロ)「車両及び運搬具」及び「自走式作業用機械」の意義について
 そこで、上記取扱いも踏まえて更に検討する。
 A 「車両及び運搬具」の意義について 
  税法上に「車両及び運搬具」の定義はないが、「広辞苑(第7版)」によれば、車両とは、「電車・自動車など、旅客・貨物を輸送するための車。」と記載され、運搬具については、用語としては、「広辞苑(第7版)」に掲載されていないが、運搬とは、「人や物を運びうつすこと。」と記載され、具とは、「うつわ。器物。また、手段。」と記載されている。このことに上記(イ)の取扱いも踏まえると、車両及び運搬具とは、自走能力の有無を問わず、人や物の運搬を主たる目的とするものをいうと解される。
 B 「自走式作業用機械」の意義について
  「車両及び運搬具」と同様に、税法上に「自走式作業用機械」の定義もないが、別表第一の特殊自動車から除かれる自走式作業用機械の例示として掲げられているブルドーザー及びパワーショベルは、「広辞苑(第7版)」によれば、ブルドーザーについて、「土木機械の一種。キャタピラーを持つ車両の前面に上下方向に動く長方形の排土板を備える。排土板で土を前方に押し、削土・盛土・運搬・土ならし・転圧を行うほか、開墾・除雪などにも用いる。」と記載されている。また、パワーショベルについては、「土木・建設機械の一種。動力で駆動するアームにバケットを取り付け、地面の掘削、土砂の移動・積込み等を行う装置。また、それを備える車両(ショベル-カー)。バック-ホー・フェイス-ショベルなど。近年は油圧式が主流で、油圧ショベルともいう。もと商品名。パワー-シャベル。動力シャベル。」と記載されている。このことに上記(イ)の取扱いを踏まえると、自走式作業用機械とは、自らの動力により移動することができるもので、作業現場において運搬も行うが、掘削、積込み、てん圧等の作業を行う機械であり、運搬が主たる目的であるとまでいえないものであると解される。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)重ダンプトラックの意義について
 A 自動車の分類は、道路運送車両法と道路交通法による分類があり、各法において定義に差はあるが、道路運送車両法の委任を受けた道路運送車両法施行規則及び道路交通法の委任を受けた道路交通法施行規則に、大型特殊自動車として「ダンパ」が掲げられている。
 B 日本工業規格(JIS)(令和元年7月、工業標準化法の改正に伴い、日本産業規格(JIS)に名称変更。)A:土木及び建築には、規格番号JIS A 8308に属する「ダンパ」について、「ダンパ(重ダンプトラック及び不整地運搬車、dumper)自走する履帯(クローラ)式又は車輪(ホイール)式の機械で、開放形の荷台(open body)をもち、土砂などを運搬し、ダンプ又はまきだしするもの」と記載され、備考に「ダンパへの積込みは、他の機械によって行われる」と記載されている。
 C 財団法人日本規格協会が発行している「JIS工業用語大辞典(第5版)」によれば、「重ダンプトラック」とは、「公道外を走行するホイール式の車両で、開放された荷台をもち、他の機械によって荷台に積み込まれた土砂などを輸送し、放荷又はま(撒)きだす機械」、「土砂などの運搬及びダンプ又はまき出しのためのペッセルを備えた、土工現場専用に設計された車輪式の建設車両」と記載されている。
 D 社団法人日本建設機械化協会が発行している「建設機械施工ハンドブック(改訂3版)」には、「重ダンプトラック」とは、「土砂などの運搬及びダンプ又はまきだしのためのベッセル(荷台)を備えた、土工現場専用に設計されたホイール式の建設車両を云う」と記載され、また、「重ダンプトラック(オフロードダンプトラック)は、公道を走行できる普通のダンプトラックと次の寸法、重量によって区分され(セミトレーラを除く)、これらの仕様より大型のものを云う」と記載されている。
 (A)寸法 幅2.5m、高さ3.8m、長さ12m
 (B)性能 最小回転半径12m
 (C)質量 総質量25t、軸重10t、輪荷重5t
 E 上記AないしDからすると、「ダンパ」と「重ダンプトラック」は同義であると認められ、土木・建築分野においては、「重ダンプトラック」は、機械又は建設車両に分類されていると認められる。  また、上記Dの(A)ないし(C)に記載した仕様は、別紙に記載した道路法第47条第1項の委任を受けた車両制限令第3条第1項において、道路(以下「公道」という。)を通行する車両の幅、高さ、長さ及び最小回転半径等について最高限度として定められた値と同じであることが認められる。そして、別紙に記載した道路法第47条第2項において、車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が車両制限令第3条第1項で定める最高限度を超えるものは、公道を通行させてはならない旨規定していることからすると、土木・建築分野においては、重ダンプトラックと普通のダンプトラックは、公道を走行できる大きさ等であるか否かによって区分しているものと認められる。
(ロ)本件各重ダンプについて
 A 本件各重ダンプは、車体フレームにエンジン、ブレーキ、ボディ、タイヤ等が装着され、運転席には、ハンドル、シート、シートベルト、ペダル等が装備されており、外形や基本装備は、公道を走行できる普通のダンプトラックとほぼ変わりがない。
 B 本件各重ダンプの全長、全幅、高さ及び最大積載量は、別表1のとおりであり、別紙に記載した道路法第47条第1項及び車両制限令第3条第1項に定める公道を通行する車両の幅や重量等の最高限度とされる値を超えているため、本件各重ダンプは、公道を走行できないことが認められる。
 C 本件各重ダンプは、公道を走行できないことから、請求人の所有する鉱山へ複数のパーツに分解した状態で運ばれ、採掘場で組み立てられ、請求人の所有する鉱山のみにおいて使用されている。また、本件各重ダンプを廃棄する場合は、採掘場で解体され、スクラップ化した上で処分される。
 D 本件各重ダンプの車体フレームには、外形が四角で中が空洞の箱型断面構造を採用し、ボディの主要部分には、高強度の耐摩耗鋼板を使用し、耐久性を高め、強固な構造となっている。
 E 本件各重ダンプの荷台は、積込みによる衝撃や運搬に耐えることができるよう、標準で16ミリメートル以上の厚さの耐摩耗性に優れた鋼板を使用している。
 F 本件各重ダンプのサスペンションは、悪路を走行する際の衝撃を和らげるため、窒素ガス封入式や倒立型を採用している。
 G 本件各重ダンプは、大量の積載物を積んだ状態で、エンジン回転数を一定に保ち一定速度で下り坂を降坂できる電子制御ブレーキを搭載している。
 H 本件各重ダンプは、転倒時や積込作業時の頭上からの落石等に備えて、ISO3471及びISO3449レベルⅡの安全基準に適合したROPS(転倒時運転者保護構造)及びFOPS(落下物保護構造)の操作室を装備している。
(ハ)日本の××等採掘現場の状況
 A 現在の日本における露天堀りの××等の採掘は、「階段採掘法」が主流であり、「階段採掘法」の中でも「立坑方式階段採掘法」が広く採用されている。
 B 「階段採掘怯」とは、鉱床を一つあるいは数個の水平なベンチ(階段)で採掘する方式で、ベンチカット法ともいう。ベンチの高さは、鉱石の性状、夾雑物の状態、せん孔機の能力、積込機械の大きさ、一次破砕機の大きさなどによって決まるが、現状では、一般的に5メートルないし15メートルであり、10メートルが最も普通である。
 C 「立坑方式」とは、切羽(掘削現場)と粉砕プラントの高低差が大きい場合に、この間のトラック運搬を省く目的で、切羽内若しくはその周辺に立坑(垂直又は斜め方向に掘られた坑道)を設け、切羽で採掘した××等を重機で運搬し、立坑へ投入する方式をいう。立坑底から抽出した××等は、立坑底に設けた1次クラッシャで破砕後、ベルトコンベアで坑外へ運び出す場合が多い。
 D 「階段採掘法」において使用する運搬機械は、重ダンプトラック、ホイール式トラクタショベル、ブルドーザー等であり、重ダンプトラックは、積込機と組み合わせて最も広く使われており、切羽から立坑までの運搬には、ベルトコンベア運搬はほとんど使用されない。
(ニ)請求人の××等採掘現場の状況
 A 請求人は、××××に鉱山を所有し、××××(以下、これらを併せて「本件鉱山」という。)にある露天堀りの採掘現場において、立坑方式階段採掘法により××等の採掘加工を行っている。
 B 請求人は、××に直径××、深さ××××の立坑を、また、××には直径××、深さ××の立坑をそれぞれ有しており、縦横××の鉄板に最大高さ××、厚さ××の鉄塊が接着された本件各重ダンプ専用の車止めを各立坑の縁に設置している。
  なお、上記立坑の直径及び深さは、平成25年4月1日時点のものである。
 C 本件鉱山の模式図は別紙のとおりであり、せん孔するためのクローラドリルを使用して岩盤に穴を開けて発破を行い、ホイールローダー、ドーザーショベル等の機械により、発破された××等を本件各重ダンプの荷台に積み込む。
 D 本件各重ダンプは、荷台に積み込まれた××等を立坑の入り口まで運搬し、立坑の入り口に設置された本件各重ダンプ専用の車止め位置にて停車し、荷台を傾斜させて立坑へ××等を投入する。
 E 本件各重ダンプから立坑に投入された××等は、立坑下に設けた小割室において更に細かく粉砕され、ふるい分けの工程を経て貯鉱槽に貯鉱された後、最終製品化を行うために港頭生産設備へ地下坑道内のベルトコンベアで運ばれ、鉄鋼用焼結粉、生コン用骨材等の製品が生産され、生産された製品は、港に接岸された船舶に積み込まれ、顧客へ輸送される。
ハ 検討
(イ)本件各重ダンプの「車両及び運搬具」の該当性について
 上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、本件各重ダンプは、自動車(車両)の一種でありながら、土木・建築分野では機械の一種とも分類されており、法人税法上の「車両及び運搬具」と「機械及び装置」のいずれにも該当する可能性があるところ、原処分庁は、本件各重ダンプは「車両及び運搬具」に該当する旨主張するから、まず、本件各重ダンプの「車両及び運搬具」の該当性について検討する。
 上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、①本件各重ダンプは、普通のダンプトラックと同様、車両としての外形と主な装備を備えている一方、耐久性を高める強固な構造、エンジン制御を行う電子制御ブレーキ機能や操作室の安全性を高める装備を有しており、また、規格等制限により公道を走行することができないから、本件各重ダンプは、普通のダンプトラックと性質を異にするものと認められること、②ダンパと重ダンプトラックは同義と認められることから、道路運送車両法及び道路交通法の規定からすると、本件各重ダンプは大型特殊自動車に区分されること、③法人税法上、「特殊自動車」の定義はないものの、本件各重ダンプは、本件鉱山における作業に耐え得るよう車体に特殊な装備を備えていることが認められることを併せ考えると、本件各重ダンプが「車両及び運搬具」に該当するとするならば、本件各重ダンプは、別表第一の「車両及び運搬具」欄中「構造又は用途」を「特殊自動車」とするものに分類されると考えられる。
 以上のように、本件各重ダンプは、「車両及び運搬具」への該当性が認められるものの、上記イの(ロ)のとおり、人や物の運搬を主たる目的とせず、作業現場で作業することを主たる目的とするものであれば、「車両及び運搬具」から除かれるから、次に、本件各重ダンプの「役務」について検討する。
(ロ)本件各重ダンプの「役務」について
 上記ロの(ハ)及び(ニ)のとおり、日本における階段採掘法による積込み、運搬は、積込機と重ダンプトラックの組み合わせが最も広く使用されているところ、 請求人においても立坑方式階段採掘法を採用し、ホイールローダー及びドーザーショベル等の積込機と本件各重ダンプを使用している。そして、本件各重ダンプの作業内容は、ホイールローダー等の積込機により荷台に積み込まれた××等を立坑まで運搬し、立坑へ××等を投入するというものである。
 また、上記ロの(ニ)のとおり、立坑への××等の投入に当たっては、××等を正確に投入して安全を確保しなければならず、本件各重ダンプは、立坑縁の所定の位置に縦横××mmの鉄板を埋め込んで設置された本件各重ダンプ専用の車止めの上に乗って投入作業を行っており、本件鉱山においては、本件各重ダンプ以外のダンプトラックやほかの機械等は投入作業を行っていない。
 更に、本件各重ダンプの請求人の事業における位置付けについてみてみると、本件各重ダンプから立坑に投入された××等は、立坑下に設けられた小割室において、更に細かく粉砕され、ふるい分けの工程を経て貯鉱槽に貯鉱された後、最終製品化を行う港頭生産設備へベルトコンベアで運ばれ、鉄鋼用焼結粉、生コン用骨材等が生産されていることからすると、本件鉱山においては、採掘から製品化までが一連の工程であり、本件各重ダンプが行う××等の運搬作業及び立坑への投入作業は、請求人の事業目的である××等の採掘加工販売において、その製品を生産するための一連の作業の一端を担うものと認められる。
(ハ)まとめ
 上記(ロ)のとおり、本件鉱山において使用されている本件各重ダンプは、単に××等を搭載して立坑まで運搬するだけではなく、当該××等を立坑へ安全かつ正確に投入するという作業を行っており、この二つの作業を行って初めてその役割を果たしているのであるから、この二つの作業は一体不可分のものであるということができる。そして、本件鉱山においては、この立坑への投入作業は本件各重ダンプ以外の機械等は行っていないというのであるから、本件各重ダンプは、請求人の事業目的を果たすための一連の作業の一端を専属に担うという重要な役割を果たしているということができる。
 そうすると、本件各重ダンプが行っている××等の運搬作業と立坑への投入作業という二つの作業は、一方が主たる役務で他方が従たる役務であると認めることはできないというべきである。すなわち、本件各重ダンプの主たる役務が××等の運搬であると断定することはできず、ほかにこれを認めるに足りる事実も認められないから、本件各重ダンプが「車両及び運搬具」に該当すると判断することはできない。
ニ 原処分庁の主張について
(イ)原処分庁は、本件各重ダンプは、構造・形態・用途等からその主要部分が車両からなる運搬具であり、砂利や土砂等の物の運搬を主目的として使用していることから「車両及び運搬具」に該当し、また、本件各重ダンプによる「投入作業」は、重ダンプトラックに備わった機能を利用した一作業であって、飽くまで本件各重ダンプの主目的は「運搬」であることに何ら影響を及ぼすものではない旨主張する。
  確かに、本件各重ダンプの主要な構造は普通のダンプトラックとほぼ変わりがない車両であると認められるものの(上記ロの(ロ)のA)、本件各重ダンプは、その規格により公道を走行することができず(同B)、その利用範囲が限定的であり(同C)、また、その利用状況の特殊性から普通のダンプトラックとは異なる特殊な構造が施されているなど(同DないしH)、普通の車両とは明らかに性格を異にするものである。
  そして、運搬作業と投入作業は、一方が主たる役務で他方が従たる役務であると認めることができず、物の運搬が主たる目的であると断定することができないことは上記ハのとおりであるから、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。
(ロ)原処分庁は、××等採掘現場において、本件各重ダンプが、ホイルローダーにより本件各重ダンプの荷台に積み込まれた××等を立坑へ運搬し、投入するまでの作業は、××等に加工を施すなどの直接的な付加価値の増加のための生産活動を行っていないことから、本件各重ダンプによる作業は、××等を単純に移動させているにすぎないものであり、その他の資産と有機的に結合し、採掘工程を構成するものではない旨主張する。
  確かに、本件各重ダンプが直接的な付加価値の増加のための生産活動を行っていないことは原処分庁の主張するとおりであるが、それはほかの機械装置(クローラドリル、ホイールローダー、ドーザーショベル等)も同様であり、そのこと自体は、「機械及び装置」に該当しないことの理由にはなり得ない。
  そして、本件各重ダンプの行っている作業が、請求人の事業目的である××等の採掘加工販売において、その製品を生産するための一連の作業の一端を担っており、本件各重ダンプ以外に同じ作業を行っている機械等はないことは上記ハのとおりであるから、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。
(3)原処分の適法性について(略)
(4)結論

 よって、審査請求には理由があるから、原処分の全部又は一部を取り消すこととし、主文のとおり裁決する。

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