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解説記事2022年11月28日 税務マエストロ 簡易課税制度選択(不適用)届出書に関する災害特例承認申請&課税期間特例選択・変更(不適用)届出書の実務(2022年11月28日号・№956)

税務マエストロ
簡易課税制度選択(不適用)届出書に関する災害特例承認申請&課税期間特例選択・変更(不適用)届出書の実務
#280
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 災害が発生した場合の簡易課税制度選択(不適用)届出書に関する特例承認申請は、下記13のいずれかの方法によることになる。非常にわかりづらい制度であるからまずはその内容を整理する。
 次に、課税期間を短縮することのメリットと制度の内容、実務上のポイントなどについてで確認する。

Ⅰ 簡易課税制度選択(不適用)届出書に関する災害特例承認申請の実務

1 簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書
 「簡易課税制度選択届出書」又は「簡易課税制度選択不適用届出書」を期限までに提出できなかった場合でも、次のような事情がある場合には、承認申請をすることにより、これらの届出書をその提出期限までに提出したものとして取り扱うこととしている(消法37⑧、消令57の2①・②、消基通13−1−5の2)。
① 天災、火災、自己の責めに帰さない人災が生じた場合など
② その課税期間の末日前おおむね1か月以内に相続があった場合で、簡易課税を選択していた被相続人の事業を承継した場合
 承認申請の期限は、災害等の場合には事情がやんだ後2か月以内に、相続の場合には翌年2月末日までとされている。
 なお、承認申請をする場合には、承認申請書とともに「簡易課税制度選択(不適用)届出書」も提出する必要がある。

2 災害等による簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書
 災害が発生し、多額の設備投資が必要となるにもかかわらず、簡易課税制度が強制適用となったのでは、せっかくの設備投資について消費税の控除あるいは還付を受けることができない。
 こういった事情に配慮して、課税期間の中途において災害等が発生した場合には、その災害等がやんだ後2か月以内に承認申請をすることにより、その災害等があった課税期間の初日にさかのぼって、簡易課税の選択あるいは取り止めができることとされている。
 この場合において、課税期間の初日にさかのぼって簡易課税制度の適用を止める場合には、たとえ簡易課税制度の強制適用期間を満了していなくとも、簡易課税を取り止め、本則課税に切り替えることが可能となる(消法37の2①・⑥)。
(1)申請書の提出期限に注意する!
 承認申請書の提出期限は、災害等がやんだ後2か月以内とされているが、災害等がやんだ日がその承認を受けようとする課税期間の末日の翌日以後の場合には、確定申告書の提出期限までに申請書を提出する必要がある(消法37の2②)。
【具体例1】
 平成x1年中に災害が発生し、同年5月31日に災害がやんだ12月決算法人が平成x1年1月1日から簡易課税を取り止めるケース

【具体例2】
 平成x1年中に災害が発生し、平成x2年2月1日に災害がやんだ12月決算法人が平成x1年1月1日から簡易課税を取り止めるケース

 なお、個人事業者の場合には、確定申告書の提出期限が3月31日であることから、災害等がやんだ日の属する年の前年にさかのぼって承認を受けようとする場合には、2月1日以後に災害等がやんだ場合についてだけ、申請書の提出期限が3月31日となる。たとえば、1月10日に災害等がやんだ場合には、申請書の提出期限は3月10日になるのに対し、3月10日に災害等がやんだ場合には、申請書の提出期限は、確定申告書の提出期限である3月31日になるということである(消基通13−1−8(1))。
 また、国税通則法第11条≪災害等による期限の延長≫の規定により申告書の提出期限が延長されている場合には、その延長された期限までに申請書を提出すればよいこととされている(消基通13−1−8(2))。
(注)承認申請をする場合には、承認申請書とともに「簡易課税制度選択(不適用)届出書」も提出しなければならない。
(2)翌課税期間での取り止めもできる!
 災害等が継続している場合には、簡易課税の強制適用期間中に限り、その災害等が発生した課税期間だけでなく、その翌課税期間以後に簡易課税を取り止めることもできる(消令57の3①)。
 たとえば、個人事業者が平成x1年中に「簡易課税制度選択届出書」を提出し、平成x2年から簡易課税の適用を受けていた場合には、平成x3年までの2年間は簡易課税が強制適用となる。この場合において、平成x2年中に災害が発生したようなケースでは、承認申請をすることにより、平成x2年から簡易課税の取り止めができることになる。
 一方、平成x2年中は設備投資の予定がなく、翌年の平成x3年に設備投資の予定があるようなケースでは、平成x2年分は簡易課税により申告し、平成x3年から簡易課税を取り止めることもできるということである。
(3)災害のやんだ日とは?
 広域指定がなされた災害については、告示によって災害終息日が宣せられるようであるが、狭い地域の火災などについては、納税者が「災害がやんで、やっと申告ができるようになった日」と解されている。実務では、税務署サイドで「災害のやんだ日」を指定するのではなく、各被害者の状況に応じて、ある程度柔軟に取り扱われているようだ。
【具体例】
 x2年中に災害が発生した場合において、個人事業者が簡易課税を取り止める場合の手続についてケース別に確認する。
<ケース1>
 x1年中に「簡易課税制度選択届出書」を提出し、x2年から簡易課税制度の適用を受けている個人事業者が、x2年から簡易課税を止めようとする場合

<ケース2>
 x1年中に「簡易課税制度選択届出書」を提出し、x2年から簡易課税制度の適用を受けている個人事業者が、x3年から簡易課税を止めようとする場合

<ケース3>
 x1年中に「簡易課税制度選択届出書」を提出し、x2年から簡易課税制度の適用を受けている個人事業者が、x4年から簡易課税を止めようとする場合

3 特定非常災害に係る届出等に関する特例(措法86の5)
 「特定非常災害」として指定された災害による被災事業者は、国税庁長官が定めた「指定日」までに「課税事業者選択(不適用)届出書」又は「簡易課税制度選択(不適用)届出書」を提出することにより、本来の期限までに届出書を提出したものとして取り扱うことが認められている。
 また、平成22年度改正法(旧3年縛り)や高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例(新3年縛り)による本則課税の強制適用も適用除外となるので、「課税事業者選択不適用届出書」又は「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、調整対象固定資産(高額特定資産)を取得した翌課税期間から免税事業者となったり簡易課税制度の適用を受けることができる。

Ⅱ 課税期間特例選択・変更(不適用)届出書の実務

 消費税の課税期間は、納税義務者の事務負担に配慮し、原則として、個人事業者については1月1日から12月31日まで、法人については事業年度と定められている(消法19①一、二)。ただし事業者の選択により、課税期間を3か月単位あるいは1か月単位に短縮することも認められている。
 また、3か月単位に短縮した課税期間を1か月単位の課税期間に変更すること、あるいは1か月単位に短縮した課税期間を3か月単位に変更することもできる(消法19①三〜四の二)。

1 課税期間の短縮
 本来1年サイクルとなっている申告を、3か月あるいは1か月サイクルにするということは当然それなりの理由がある。
 たとえば輸出業者の場合、税込みで仕入れた商品を税抜価格で輸出するわけであるから、確定申告により、消費税は還付となる。このような場合には、多少面倒であっても、課税期間を短縮したほうが、運転資金の面からみても得策なわけである。
<図解>
◯個人事業者が課税期間を3か月単位に短縮した場合

(注)各課税期間の確定申告期限は、その課税期間終了後2か月以内であるが、10/1〜12/31課税期間についてだけは、申告期限は翌年の3/31まで延長されている(措法86の4①)。

○個人事業者が課税期間を1か月単位に短縮した場合

(注)各課税期間の確定申告期限は、その課税期間終了後2か月以内であるが、12/1〜12/31課税期間についてだけは、申告期限は翌年の3/31まで延長されている(措法86の4①)。

2 課税期間特例選択・変更届出書
 課税期間を短縮あるいは変更する場合には、「課税期間特例選択・変更届出書」を所轄税務署長に提出する必要がある。
 「課税期間特例選択・変更届出書」を提出した場合には、提出日の属するサイクルの次のサイクルから短縮あるいは変更の効力が生ずることとなるので、課税期間の初日からその効力が生じた日の前日までの期間をワンサイクルとして消費税の確定申告をすることになる(消法19②)。
<具体例>
 個人事業者が、課税期間を3か月に短縮するために、年の中途の5月20日に「課税期間特例選択・変更届出書」を提出した場合

 なお、次のケースの場合には事前に提出することができないので、届出書を提出したサイクルから短縮の効力が生ずることとされている(消令41①)。
① 新規に開業(設立)をした日の属する期間
② 個人事業者が、相続により期間短縮をしていた被相続人の事業を承継した場合の相続があった日の属する期間
③ 法人が、合併や吸収分割により期間短縮をしていた被合併法人や分割法人の事業を承継した場合の合併、吸収分割があった日の属する期間
 課税期間を3か月単位に短縮している事業者が、課税期間を1か月単位に変更する場合には、3か月単位の期間短縮の効力が生じた日から2年を経過する日の属する月の初日以降でなければ「課税期間特例選択・変更届出書」を提出することができない。つまり、いったん課税期間を短縮した場合には、2年間は継続適用しなければいけないということである。
 また、課税期間を1か月単位に短縮している事業者が、課税期間を3か月単位に変更する場合には、1か月単位の期間短縮の効力が生じた日から2年を経過する日の属する月の前々月の初日以降でなければ「課税期間特例選択・変更届出書」を提出することができない(消法19⑤、消令41②)。


3 課税期間特例選択不適用届出書
 課税期間の短縮をやめ、暦年又は事業年度単位の申告に戻そうとする場合には、「課税期間特例選択不適用届出書」を所轄税務署長に提出する必要がある。
 「課税期間特例選択不適用届出書」を提出した場合には、提出日の属するサイクルの次のサイクルから短縮の効力が失効することとなるので、その初日から本来の課税期間の末日までの期間をワンサイクルとして消費税の確定申告をすることになる(消法19③、④)。
 なお、「課税期間特例選択不適用届出書」は、期間短縮の効力が生じた日から2年を経過する日の属する期間の初日以降でなければ提出することができない。
 つまり、いったん課税期間を短縮した場合には、2年間は継続適用しなければ、暦年あるいは事業年度サイクルの課税期間に戻すことはできないということである(消法19⑤)。
 ただし、廃業の場合には提出時期についての制限はないのでいつでも提出することができる。
<具体例>
 個人事業者が年の中途の5月20日に「課税期間特例選択・変更届出書」を提出し、3か月単位の課税期間で申告していたが、2年後の5月25日に「課税期間特例選択不適用届出書」を提出した場合

4 期間短縮制度の活用方法
 免税事業者が、設備投資などについて消費税の還付を受けようとする場合には、原則として、設備投資などがある課税期間が始まる前までに「課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出する必要がある。また、簡易課税制度の適用を受けている事業者が、設備投資などについて消費税の還付を受けようとする場合には、設備投資などがある課税期間が始まる前までに「簡易課税制度選択不適用届出書」を所轄税務署長に提出する必要がある。
 つまり、これらの届出書をその設備投資などがある課税期間が始まる前までに提出できなかったような場合には、消費税の還付は受けられないということになってしまうわけであるが、たとえこのような場合であっても、課税期間を短縮することにより、消費税の還付が受けられるケースがある。
<具体例>
 個人事業者(免税事業者)が、x2年の8月中に設備投資の予定があり、消費税の還付が見込まれるにもかかわらず、x1年中に「課税事業者選択届出書」を提出していない場合には、x2年6月30日までに「課税期間特例選択・変更届出書」及び「課税事業者選択届出書」を提出することにより、x2年7月1日〜x2年9月30日課税期間について、消費税の還付を受けることができる。

5 新設法人と期間短縮制度の関係
 月の中途で新設した月末決算法人が3か月に課税期間を短縮した場合には、設立日から期間短縮の効力が生ずることになるので注意が必要だ。
 たとえば、3月10日に12月決算法人を設立した場合における課税期間であるが、3月31日、6月30日、9月30日という節目で終了するのではなく、あくまでも、その事業年度開始の日以後、3か月ごとに区分した各期間が課税期間になるのである。また、最後に3か月未満の期間がある場合には、その3か月未満の期間を一課税期間とする(消法19①四)。

6 期間短縮をしている場合の納税義務の判定
 課税期間を短縮しているか否かに関係なく、個人事業者の基準期間は前々年、1年決算法人の基準期間は前々事業年度である(消法2①十四)。したがって、個人事業者が課税期間を3か月に短縮している場合の各課税期間における納税義務は下図のように判定する。

 ⑨・⑩・⑪・⑫の課税期間の納税義務は、すべて基準期間であるx1年における課税売上高(①+②+③+④)により判定することになる。


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