カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2023年03月20日 ニュース特集 令和5年3月期における法人税の誤りやすいポイント(2023年3月20日号・№971)

ニュース特集
賃上げ促進税制以外にも注意すべき項目が多数
令和5年3月期における法人税の誤りやすいポイント


 所得税等の確定申告が終了し、次は令和5年3月決算作業が本格化する。3月決算においては、例年、課税処理が明確に定まっているにもかかわらず、申告の際に処理が誤っている項目が少なからず散見されている。租税特別措置法における特別償却・税額控除制度の誤りも多く、国税庁がすでに公表している「中小企業向け賃上げ促進税制の適用に当たっての注意点」もその1つだ(本誌969号参照)。受取配当等の益金不算入や、いまだに留保金課税における特定同族会社の判定なども誤りが多い項目とされている。本特集では、3月決算において企業が誤りやすい法人税処理の留意点を解説する。

中小企業向け賃上げ促進税制、改正前の適用要件と混同

 租税特別措置法における特別償却・法人税額の税額控除については、何度も制度が改正されることもあり、最も誤りやすい項目の1つといえる。
 国税庁は、「別表六(三十一)を使用するに当たっての注意点(中小企業向け賃上げ促進税制の適用に当たっての注意点)」を公表。例えば、別表六(三十一)(令和4年4月1日以後終了事業年度分)の「5」欄(比較雇用者給与等支給額)には、基本的に前事業年度における雇用者給与等支給額を記載することになるが、当該前事業年度に退職した従業員に対する給与等の支給額を差し引いて記載する等の誤りにより、本来であれば同税制の適用を受けることができないにもかかわらず適用を受けている事例や、誤って算出された金額に基づき税制の適用を受けている事例があるとして注意喚起を行っている。中小企業向け賃上げ促進税制については累次の改正が行われているため、改定前の適用要件と混同して制度を適用していることが誤りの大きな原因の1つとしている(表1参照)。

資本金1億円超の法人の子会社は適用不可
 また、中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)も、例年、誤りを多く指摘される制度だ。多くの中小企業が適用しているだけに留意したい。同税制は、機械装置等の対象設備を取得や製作等をした場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除の適用を受けることができるというもの。ただし、税額控除については資本金の額等が3,000万円以下の法人等に限られているが、3,000万円を超えているにもかかわらず、税額控除を適用している誤りが見受けられている。また、資本金の額等が1億円を超える大規模法人の子会社(資本金の額等が1億円以下の法人で、発行済株式等を同一の大規模法人に1/2以上保有されている、又は複数の大規模法人に2/3以上保有されている法人等)については同税制の適用対象外となるが、適用して申告している事例もあるという。
 医療保険業を営む法人が、「機械及び装置」ではなく、「器具及び備品」に該当するため、対象とならない下記の医療機器について同制度を適用している誤りも指摘されている。

「歯科治療用椅子」「超音波診断装置」「デジタル超音波診断装置一式」「オートレフケラトトノメーター」「白内障手術装置」「ジェネレータ」「従量式人工呼吸器」「血圧脈波監視」「デジタルベット」「人工腎臓装置」「CRシステム」「フルデジタルカラー超音波診断」「ハンドル式移動棚」「生ゴミ処理機」「全身用PET運動負荷付」「全身用X線CT装置」「CTスキャナ装置(マルチスライス装置等)」「画像読影読取診断装置」「分包機」「水剤分注記」

 また、小型自動車は、貨物の運送の用に供されるものであっても、中小企業投資促進税制の対象資産には該当しないにもかかわらず、貨物運送用小型自動車を対象資産として適用している事例があるという。なお、同税制の対象資産となる「車両及び運搬具」は、①道路運送車両法施行規則別表第一に規定する「普通自動車」であること、②貨物の運送の用に供されるものであること、③車両総重量が3.5トン以上のものであることの3つの要件を満たすものとされている(措規20の34)。
認定以外の設備に適用した事例も
 そのほか、研究開発税制(試験研究費を行った場合の税額控除制度)については、試験研究費に充てるため他の者から支払を受けた金額を試験研究費の額から控除していなかった事例、また、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)については、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受ける必要があるが、認定を受けていないにもかかわらず特別控除の適用を受けていた事例や、認定を受けた設備以外の設備について、特別控除の適用を受けていた事例が見受けられるという。

大法人の子会社は中小法人特例を適用できず

 資本金の額等が5億円以上の大法人の100%子会社であるにもかかわらず中小法人の特例を適用しているケースも多い。この場合、資本金の額等が1億円以下の法人であっても、①法人税の軽減税率、②貸倒引当金の損金算入、③欠損金等の繰越控除の控除限度額、④欠損金の繰戻しによる還付、⑤交際費の定額控除限度額については適用することはできないので留意したい。

例年多い特定同族会社の判定誤り

 毎年のように企業が誤りやすい項目として挙げられるのが、特定同族会社の判定だ(法法67条)。
 判定の基礎となる株主等については、株主等と特殊の関係のある個人及び法人を持ち株数を含めることになるが、これを含めず特定同族会社に該当しないとして留保金課税を適用していなかった事例や、特定同族会社の判定にあたり、議決権のない株式数を発行済株式総数に含めて判定したため、特定同族会社に該当しないとして留保金課税を適用していなかった事例があるとしている。
 また、別表二「同族会社等の判定に関する明細書」の「判定基準となる株主等の株式数等の明細」の各欄に記載されている内容から判断すると、資本金の額等が5億円以上の法人との間に完全支配関係がある法人(大法人の子会社)に該当することが明らかであっても、「判定結果」欄の記載漏れや誤りにより留保金課税を適用していないケースもいまだにあるという。
前期末配当の加算調整が必要も
 前期末配当等の額及び当期末配当等の額(平18.5.1以後にその支払に係る基準日がある配当等の額)については、会社法施行後、期末配当は別表四で留保所得とし、別表三(一)の留保金額の計算で留保所得に当期末配当を減算し、前期末配当を加算する調整が必要となっているが、その調整を誤っていた事例もあるとしている。

交際費、持分なし医療法人は出資金に準ずる額で判定

 交際費等の損金不算入に関しては、持分なしの医療法人で期末資本金等相当額が1億円超であるものが、定額控除限度額(800万円)を適用して損金不算入額の計算を行っていることがあるという。
 持分ありの医療法人であれば、出資金の金額が1億円以下であれば定額控除限度額も含め、交際費等の損金算入特例を適用することができる。しかし、持分なし医療法人に関しては、出資金がないため、出資金に準ずる額を算定する必要があり、これが期末資本金等相当額となる。この期末資本金等相当額については、適用年度終了の日における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除した金額(加えて利益があれば控除又は欠損金があれば加算)の60%で算定した金額で算定することになり、これが1億円以下でなければ、交際費等の額のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%の損金算入と定額控除限度額(年間800万円)まで損金算入の選択適用ができないことになる。

益金不算入対象となる株式等の区分を誤るケース

 受取配当等の益金不算入についても、毎年、誤りが散見される事項だ。①公社債の利子の額、②公社債投資信託等、MMF(追加型公社債投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)等の証券投資信託の収益の分配の額(外国株価指数連動型特定株式投資信託以外の特定株式投資信託の収益の分配の額を除く)、③オープン投資信託の特別分配金の額、④外国法人、特定目的会社、投資法人から受ける配当等の額、⑤匿名組合契約に基づいて受ける利益の分配の額については、受取配当等の益金不算入の対象とならないので留意したい。
 なお、受取配当等の益金不算入の対象とならないファンド名の例示は表2のとおりである。

 また、平成27年度税制改正では、益金不算入の対象となる株式等の区分及び益金不算入割合の改正が行われているが、いまだに区分を誤るケースが多いようだ。例えば、「非支配目的株式等」を「その他株式等」に区分したり、「非支配目的株式等」に該当する「特定株式投資信託の受益権」を「その他株式等」と記載し、誤った益金不算入割合を適用していた事例があるとしている。
「その他」欄記載の役員給与は別表四に加算
 役員給与関係では、役員給与等の内訳書の「その他」欄記載の給与について、別表四に加算していなかった事例があるほか、使用人兼務役員とされない監査役や、同族会社の特定役員に対して、使用人の職務に対する給与を支給し、損金の額に算入していた事例もあるとしており、留意しておきたい点だ。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索