会社法ニュース2023年03月24日 株式保有ガイドラインの策定要求が増加(2023年3月27日号・№972) 退職所得としての株式報酬に継続保有要件はフィットしない等の声
税法や会社法の後押し、投資家からのプレッシャーもあり、いまや日本企業の多くが取締役に株式報酬を付与しているが、こうした中、投資家から株式の継続保有要件などを定めた株式保有ガイドライン(42頁参照)の策定を求められるケースが最近目に付くようになってきた。12月決算会社の3月総会では、海外機関投資家から株式保有ガイドラインの策定を求める株主提案を受けた事例も発生している。
機関投資家が求める株式保有ガイドラインの内容としては、日本企業の取締役への株式報酬は報酬全体に占める割合が低く、取締役と株主の「価値共有」ができていないとして、役員の在任中の自社株式取得目標を固定基本報酬の3倍相当とすることや、一定期間の株式の「継続保有」を義務付けるものなどがあるが、これに対し日本企業側からは「実態に合っていない」との声が聞かれる。
まず株式報酬の割合を増やすことについては、欧米企業では株式報酬の額が大きく、役員報酬全体に占める割合も高いのに対し、日本企業の場合、株式報酬の額も、役員報酬全体に占める割合も欧米企業よりも相当低い。いきなり「株式報酬を固定基本報酬の3倍にせよ」と言われても、にわかには受け入れ難いというのが実情だろう。
また、「継続保有」についても、欧米企業では株式報酬が在任中に付与され、株式保有量が一定水準に達した場合には在任中であっても売却可能であるため、株式保有ガイドラインの中で継続保有要件を規定しておかないと、役員が株式を自由に売却できてしまう。これに対し日本企業では、役員が所得税上の優遇を受けるため、譲渡制限付株式報酬等が「退職所得」として付与され、退任時まで譲渡制限が課されているケースも多い。また、仮に在任中に譲渡制限が解除されても、インサイダー取引規制への抵触を恐れ、売却しないことも多い。すなわち、わざわざ株式保有ガイドラインを作って継続保有要件を課さなくても、継続保有が半ば前提となっている。
とはいえ、6月総会に向け、機関投資家に株式保有ガイドラインを設けるよう求められたり、場合によっては株主提案を受ける可能性もあるだけに、各社は対応を検討しておく必要があろう。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.