税務ニュース2023年04月14日 亡母の口座から14億円出金で更正処分(2023年4月17日号・№975) 地裁、亡母の二男に対する不当利得返還請求権を相続財産と判断

  • 東京地裁、認知症の亡母の口座から現金を出金した二男に対する不当利得返還請求権が、亡母の相続財産に含まれるとした相続税の更正処分等を適法と判断(令和5年2月16日判決)。

 処分行政庁は、原告の一人である二男が、相続開始前に亡母の金融機関の口座から現金を出金したことによって、亡母が原告二男に対する不当利得返還請求権を取得し、これが相続財産に含まれるとして相続税の更正処分等を行った。本件は、原告らが、原告二男は出金しておらず、不当利得返還請求権は発生していないなどとして処分の取消しを求めた事案である。
 亡母は平成24年に認知症と診断され、平成26年に施設入所、平成28年に死亡したが、平成25年9月から12月までの間にM証券の一般口座で保有されていた株式が全て売却され、その売却代金の全てがMRFの買付けにあてられた。本件口座からは平成25年12月から平成28年1月までに約14億円の現金が引き出されていた。
 原告は、本件各出金については、本件各更正処分の際に知らされるまで全く知らなかったとして、本件各出金をしていないと主張。また、仮に、原告二男が出金をしていたとしても、少なくとも亡母と原告二男との間では、原告二男が亡母に代わって本件口座から出金する一般的、包括的な権限を有する旨認識されていたことや、亡母と原告二男との間で出金の権限に係る具体的な合意がなくても、介護施設に入院している認知症の親のために、子が親の口座から金員を引き出して施設の費用の支払等にあてることは、社会通念上、ごく当たり前に行われているなどと主張した。
 東京地裁は、出金に必要なカードが一枚しか発行されていなかったことや、原告二男の行動履歴や目撃情報などから、原告二男が出金したものと推認するに足りる事実が複数存在すると指摘。亡母や原告長男の病状などからは彼らが出金を行ったとは考え難いことからすれば、本件各出金は原告二男が行ったものと認められるとした。
 また、原告二男が亡母の施設利用料等を支払っていたことなどを考慮しても、14億円もの資産をすべて現金に換えて引き出すという権限を亡母が付与することは、黙示的であれ、通常考え難いとした。仮に、原告二男が何らかの権限を有していたとしても、原告二男は、出金後の金員の所在及び使途について明らかにしておらず、相続開始時点において自己のために所持し、又は費消したことが認められるとして、亡母は原告二男に対する不当利得返還請求権を有するとの判断を下した。

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