カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2023年05月01日 ニュース特集 中小企業の設備投資に対する新固定資産税の特例のポイント(2023年5月1日号・№977)

ニュース特集
賃上げ方針表明で最大5年間、3分の1に軽減
中小企業の設備投資に対する新固定資産税の特例のポイント


新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、令和2年度税制改正では、機械装置等に係る固定資産税の特例措置が令和5年3月31日まで延長されるとともに、拡充が行われた。今回、適用期限を迎えるにあたって、令和5年度税制改正では、新たな固定資産税の特例措置が導入されることになった。市区町村から先端設備等導入計画(労働生産性が年平均3%以上向上することが見込まれることが要件)の認定を受けた中小企業者等が認定経営革新等支援機関の確認を受けた投資利益率5%以上の投資計画に記載された機械装置等を令和5年4月1日から令和7年3月31日までに取得等した場合には、固定資産税の課税標準を3年間に限り2分の1に軽減するというものだ。加えて、賃上げ方針を先端設備等導入計画内に位置付けて従業員に表明した場合は、最大で5年間、課税標準が3分の1に軽減されることになる。本特集では、これまでの固定資産税の特例措置との違いを含め、新たな固定資産税の特例措置についてQ&A形式で解説する。

工業会等の証明書は不要

Q
 令和5年度税制改正で導入された中小企業の設備投資に対する固定資産税の特例措置の対象設備について教えてください。
A

 平成30年度税制改正で措置された中小企業者を対象とした設備投資に係る固定資産税の特例措置(以下「旧特例措置」という)は、生産性向上に資する指標が旧モデル比で年平均1%以上向上する①機械装置(160万円以上/販売開始時期10年以内)、②測定工具及び検査工具(30万円以上/5年以内)、③器具備品(30万円以上/6年以内)、④建物附属設備(60万円以上/14年以内)が対象となっており、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、令和2年度には事業用家屋と構築物が追加され、令和5年3月31日まで延長された(現在は廃止)。
 今回の新固定資産税の特例措置(以下「新特例措置」という)では、投資利益率5%以上の投資計画に記載された①機械装置(160万円以上)、②測定工具及び検査工具(30万円以上)、③器具備品(30万円以上)、④建物附属設備(60万円以上)のみが対象設備となっており、事業用家屋と構築物は対象外となっているほか、販売開始時期の制限がなくなっている。また、「生産性向上に資する指標が旧モデル比で年平均1%以上向上」との要件もなくなっているため、従来であれば必要であった工業会等による証明書は不要となっている。一方、新特例措置での要件となっている「投資利益率5%以上の投資計画に記載された設備」であるかどうかは、認定経営革新等支援機関が確認することになる。

「先端設備等導入計画」と「投資計画」の確認を認定経営革新等支援機関に依頼

Q
 適用を受けるための手続きについて教えてください。
A

 適用を受けるためのスキームについては、対象設備について工業会等の証明書の発行を受ける手続きがなくなった以外は、旧特例措置と大きく変わるところはない。
 このため、まずは、認定経営革新等支援機関に先端設備等導入計画記載の直接当該事業の用に供する設備の導入によって労働生産性が年平均3%以上向上することが見込まれるかについて確認してもらう必要がある。特例措置を受ける場合には、これに加えて、対象設備について年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれるかの投資計画の確認を受ける必要がある。これは、旧特例措置とは異なる点だ。認定経営革新等支援機関から先端設備等導入計画の事前確認書及び投資計画に関する確認書の発行を受けた後は、市区町村に対して、先端設備等導入計画の申請を行うことになる。なお、先端設備等の取得は市区町村からの計画認定後に行う必要がある。

計画認定前に取得した設備は対象外

Q
 先端設備等導入計画の認定よりも前に取得した設備について、特例措置の対象となるための救済措置のような制度はありますか。
A

 旧特例措置と同様だが、前記したとおり、市区町村から先端等設備導入計画の認定を受けた後に取得した先端設備等でなければ特例措置の対象とはならない。
 平成28年度税制改正で措置された中小企業等経営強化法に基づく固定資産税の軽減措置(旧特例措置よりも前の制度)では、実務上、「経営力向上計画」の認定前に取得した設備等であっても、取得日から60日以内に同計画の申請が受理されれば軽減措置の適用を受けることができるとされていたが、新特例措置については、このような救済措置は設けられていないので留意したい。

軽減割合は地方税法で規定、全国一律

Q
 旧特例措置では、ほとんどの自治体で軽減割合をゼロとする条例が制定されていましたが、新特例措置の軽減割合も各自治体の条例で制定されるのですか。
A

 旧特例措置は、市区町村が生産性向上特別措置法(令和3年に中小企業等経営強化法に移管)に基づき導入促進基本計画を策定し、これを国に同意してもらった上で、市区町村の条例により3年間固定資産税の軽減割合をゼロ以上2分の1以下とすることになっていた。ほとんどの市区町村が軽減割合をゼロとしていたが、条例で定めることが前提となっていた。
 しかし、新特例措置は、市区町村の条例に関係なく、改正地方税により軽減割合が定められており、全国一律で3年間に限り、固定資産税の課税標準が2分の1に軽減される。加えて、新特例措置では、中小企業等の賃上げを後押しするため、賃上げ方針を先端設備等導入計画内に位置付けて従業員に表明した場合は、令和5年4月1日から令和6年3月31日までに取得した設備については5年間、令和6年4月1日から令和7年3月31日までに取得した設備は4年間、課税標準が3分の1にまで軽減割合が拡充されることになる。

賃上げができなくとも特例措置の適用は可能

Q
 賃上げ方針の表明ですが、仮に賃上げをできなかった場合には固定資産税の特例措置の適用を受けることはできなくなりますか。
A

 賃上げ方針については、雇用者給与等支給額の1.5%以上の賃上げを行うことを従業員に対して説明した上で、計画の認定申請書とともに書類を提出することになるが、その際には、表明を受けた従業員の代表者の署名(記名・押印も可)が必要になる。賃上げについては、経済情勢や経営状況等により必ずしも想定通りにできるとも限らないため、賃上げが実現できなかっただけをもって固定資産税の追納等がなされることはないとしている(本誌974号参照)。ただし、賃上げ方針を表明していないにもかかわらず、表明したとの虚偽の申請をした場合には、賃上げに関する特例部分(特例率3分の1)については適用できない。
 なお、賃上げ方針を計画内に位置付けることができるのは新規申請時のみとなる。変更申請時に賃上げ方針を計画に追加することはできないため、仮に賃上げを検討しているのであれば、最初の申請時に行っておく必要がある。

パートやアルバイトの給与も該当

Q
 賃上げに関しては、雇用者給与等支給額の1.5%以上が必要とされています。この雇用者給与等支給額にはパートやアルバイトの給与も含まれますか。
A

 雇用者給与等支給額とは、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されるすべての国内雇用者に対する給与等の支給額となる。国内雇用者については、法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指し、パート、アルバイト、日雇い労働者も含まれるが、使用人兼務役員を含む役員及び役員や個人事業主の特殊関係者(親族等)は除かれる。また、給与等とは、所得税法28条1項に規定する給与等をいい、退職金などは給与等に含まれず、派遣社員等に係る費用も給与等には該当しない。

計画の認定を受けても特例措置の適用を受けられないことが

Q
 資本金3億円の製造業ですが、先端設備等導入計画の認定を受けようと思っています。固定資産税の特例措置の適用も受けることができますか。
A

 資本金3億円以下の製造業の場合、先端設備等導入計画の認定を受けることはできるが、固定資産税の特例措置を適用することはできない。中小企業等経営強化法(2条1項)と地方税法による中小企業者の範囲が異なるためだ(なお、資本金1億円超でも3億円以下であれば中小企業等経営強化法の中小企業者に該当する業種は、製造業のほか、ゴム製品製造業、ソフトウエア業又は情報処理サービス業がある)。一方、固定資産税の特例措置の適用を受けることができる中小企業者とは、①資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人、②資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人、③常時使用する従業員数が1,000人以下の個人となっている。ただし、同一の大規模法人(資本金もしくは出資金の額が1億円超の法人又は資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人超の法人、資本金又は出資金の額が5億円以上である法人との間に当該法人による完全支配関係がある法人等)から2分の1以上の出資を受ける法人及び2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人については、資本金が1億円以下でも中小企業者とはならない。
 なお、先端設備等導入計画の認定を受ければ、中小企業信用保険法の特例として、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等通常枠とは別枠での追加保証を受けることができる。

中小企業経営強化税制との併用も可能

Q
 今回の特例措置の対象となる設備について、特別償却等も併せて適用することは可能ですか。
A

 同じ償却資産で2以上の固定資産税の特例措置を受けることはできないが、特別償却・税額控除に係る税制措置とは重複して適用することができる。また、補助金についても補助金のルールで併用を禁止されていなければ同時に適用できる。
 例えば、中小企業経営強化税制の収益力強化設備(B類型)の要件は、「投資収益率が年平均5%以上」と新特例措置と同じとなっている。対象設備もソフトウエア以外は同じである。手続きはそれぞれの制度で必要になるものの、要件さえクリアできれば重複適用も容易にできそうだ。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索