税務ニュース2023年06月16日 不当費消の相続財産≠貸付金又は預託金(2023年6月19日号・№983) 民法上、不当利得返還請求債権及び遅延損害金請求債権に該当
相続開始後、相続人が被相続人の生前に同人の預金から無断で現金を引き出していたといった事実が発覚することがある。このような場合、相続税の課税財産の種類を「被相続人から相続人への貸付金又は預託金」と判断して申告するケースが少なからず見受けられる。
東京地裁令和5年2月16日判決(本誌975号)では、認知症の亡母口座から現金14億円を出金した二男に対する不当利得返還請求権が「亡母の相続財産に含まれる」とした相続税の更正処分を適法と判断しているが、実務家の間では、被相続人の生前に同人の財産を相続人が不当に費消していた場合の相続税の課税財産の種類を「不当利得返還請求権」あるいは「貸付金又は預託金」のいずれと見ようが、その価額が同じであれば、そもそも課税財産の種類を検討する意味があるのか、との声が聞かれる。
しかし、民法704条は、「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」と規定している。そして、被相続人の財産を不正に費消していた相続人は、その利得について法律上の原因がないことを知っていた者、すなわち、民法704条における「悪意の受益者」に該当する。
したがって、当該相続人は、被相続人に対し不正に費消していた利益を返還するだけでは足りず、それに対する利息を付して返還しなければならないことになる。つまり、相続税の課税財産は、「不当利得返還請求債権及び当該請求債権に係る遅延損害金請求債権」ということになる。なお、東京地裁平成23年5月17日判決も、両債権が相続税の課税財産である旨認定している。
顧客への遠慮から、安易に相続人への貸付金又は預託金として申告すれば、後の調査で否認されるリスクがあるばかりか、顧客からその旨の説明がなかったとして損害賠償を求められることにもなりかねない。顧客に対しては、「相続税の課税財産は、不当利得返還請求債権及び当該請求債権に係る遅延損害金請求債権である」ことを必ず説明しておく必要がある。
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