税務ニュース2023年06月23日 事前照会を根拠に信義則違反を問えるか(2023年6月26日号・№984) 口頭による事前照会は「公的見解の表示」を欠く可能性

  • 信託型ストックオプション問題をきっかけに、実務家の間で事前照会への関心高まる。
  • 事前照会の回答を根拠にして処分が違法だと言うためには、信義則違反を主張することが考えられるが、口頭による事前照会は、最高裁が判示した信義則の法理の適用要件(要素)のうち、「公的見解の表示」を欠くと判断される可能性。

 事前照会には、課税当局から「文書」で回答をもらえるものと、「口頭(電話)」で回答をもらえるだけのものがある。いずれも課税当局が行政サービスとして実施しているものだが、文書で回答をもらうためには、「事前照会に対する文書回答手続」を経なければならない。文書回答手続では、照会の事実や回答結果が公表されることになるだけに、手続きもかなり厳格に行われる模様だ。
 一方、口頭(電話)で回答がもらえる事前照会(以下、適宜「通常の事前照会」という)でも納税者側は照会書面を作成し提出するものの、通常の事前照会では文書回答手続のようなルールまでは定められていない。
 実務家にとって気になるのは、事前照会の効力だ。本税の場合、事前照会の回答を根拠にして処分が違法だと言うためには、信義則違反を主張することが考えられるが、最高裁昭和62年10月30日判決では、信義則の法理を適用するのは、租税の平等・公平が犠牲となっても納税者を保護すべき「特別な事情」があるときであるとし、この「特別な事情」があると言えるには、①税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示し、②納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、③右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受け、④納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責に帰すべき事由がない、という4要素を満たす必要があるとしている。
 この判決に照らすと、通常の事前照会は、国税局等の名前で回答があるわけではないことから、最高裁が判示した信義則の法理の適用要件(要素)のうち、①の「公的見解」の表示を欠くと判断される可能性も否定できない。一方、文書回答手続においては、国税局の審理課長等名義で回答がなされるため、公的見解の表示の要件(ないし要素)は満たすと考えられる。ただし、信義則違反と言えるためには上記の他の要件(ないし要素)も必要となるため、文書回答といえども絶対的なものではない点、留意する必要がある。

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