税務ニュース2023年06月30日 信託型SOの源泉税、求償放棄時の扱いは(2023年7月3日号・№985) グロスアップ計算による追加源泉税が発生も、賃上げ税制の適用余地

  • 信託型ストックオプション(SO)の権利行使に伴う過年度分源泉税の求償権を放棄した場合には、放棄を行った年分の給与の追加支給として、グロスアップ計算による源泉税追加納付が必要。
  • 賃上げ税制の他の要件を満たせば、同税制の適用が可能。

 国税庁が令和5年5月30日付でウェブサイトに公表した「ストックオプションに対する課税(Q&A)」の問4でも解説されている通り、信託型SOについて権利行使時課税がないとの認識のもとで、権利行使まで行われてしまっている場合、発行法人に対して過年度分の源泉税課税が行われることになる。発行法人が納付する過年度分の源泉税については、所得税法222条に従い、権利行使をした従業員に対して求償するのが原則だが、様々な理由から、源泉税を納付した法人が求償権の放棄を検討することがある。法人が信託型SOの過年度分の権利行使に関して納付した源泉税の求償権を放棄すると判断した場合、その従業員に対して、求償権放棄が行われた年分の給与が追加で支給されたものと扱うことが、本誌による課税当局への取材で確認された。
 求償権放棄により追加支給される給与については、遡って権利行使時が行われた年分の給与として扱う必要はないが、源泉税の追加納付が必要となる。この場合、所得税基本通達221−1及び181〜223共−4に従って、求償権を放棄した過年度分の源泉税額自体を源泉税控除後の手取額と考えたうえでの“グロスアップ計算”を行うことになる。なお、求償権を放棄するつもりはないが従業員と連絡がつかない等の理由でその回収ができない場合、回収できなかったことが貸倒れと認められれば、グロスアップ給与の追加支給ではなく、貸倒損失の問題として税務上の取扱いを検討していくことになる。
 また、求償権の放棄が行われた場合の追加支給分の給与を、放棄をした法人側で賃上げ税制の対象に含めてよいのかという疑問も実務家の間で生じている。この点についても本誌が課税当局に取材したところ、グロスアップされた給与は措置法42条の12の5第3項3号の「給与等」に該当し、それが国内雇用者への給与等であれば、同項9号の「雇用者等給与支給額」に含まれることが確認された。
 求償権放棄を検討せざる得ない場合、放棄をしたことで生ずるグロスアップ給与を法人税法上の賃上げ税制の対象とできれば、法人全体で見た場合の税負担は幾分か軽減されることになる。

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