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解説記事2023年07月03日 税制改正解説 令和5年度における相続税・贈与税関係の改正について(2023年7月3日号・№985)

税制改正解説
令和5年度における相続税・贈与税関係の改正について
 大内大地

相続税法の改正

一 相続時精算課税制度の見直し

1 改正前の制度の概要
 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により財産を取得した受贈者は、暦年課税の適用を受けることに代えて、その受贈者の選択により、相続時精算課税の適用を受けることができることとされている。
 この相続時精算課税制度は、贈与時に、特定の贈与者からの贈与により取得した財産に対する相続時精算課税に係る贈与税を納め、その後、その特定の贈与者の相続開始時に、相続時精算課税に係る贈与により取得した財産の価額と相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により取得した財産の価額を合計した価額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税に相当する金額を控除することにより、贈与税・相続税を通じた納税をすることができる。
(1)相続時精算課税の適用対象者
① 贈与者
  贈与をした年の1月1日において60歳以上の者であれば、相続時精算課税に係る贈与者となることができる(相法21の9①)。
② 受贈者
  上記の贈与者の推定相続人である直系卑属のうち、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上である者が相続時精算課税に係る受贈者となることができる(相法21の9①)。したがって、贈与者の配偶者は推定相続人ではあるが、直系卑属ではないので相続時精算課税に係る受贈者となることはできない。
(注)上記のとおり、相続税法上の相続時精算課税に係る受贈者は、贈与者の推定相続人に限定されているが、一定の要件を満たす場合には、租税特別措置法の規定により、贈与者の孫も相続時精算課税に係る受贈者となることができる(措法70の2の6~70の2の8)。
(2)相続時精算課税の選択
① 受贈者による選択
  相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は、贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内(贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの期間内)に贈与者ごとに相続時精算課税選択届出書を作成し、贈与税の申告書に添付して、贈与税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(相法21の9②、相令5①、相規10①)。なお、この相続時精算課税選択届出書には、戸籍の謄本その他一定の書類を添付する必要がある(相令5②、相規11①)。
② 受贈者の相続人による選択
  受贈者が相続時精算課税の適用を受けることができる場合において、その受贈者が相続時精算課税選択届出書の提出期限前にその相続時精算課税選択届出書を提出しないで死亡した場合には、その受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に相続時精算課税選択届出書を贈与税の申告書に添付して、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出することができる(相法21の18、相令5の6①、相規10②)。なお、この相続時精算課税選択届出書には、戸籍の謄本その他一定の書類を添付する必要がある(相令5の6②、相規11②)。
  また、受贈者の相続人が2人以上いる場合には、相続時精算課税選択届出書の提出は、これらの者が一の相続時精算課税選択届出書に連署して行う必要がある(相令5の6③)。
(3)贈与税額の計算
 相続時精算課税に係る贈与税額の計算は、次のとおり、相続時精算課税に係る贈与税の課税価格から相続時精算課税に係る贈与税の特別控除額を控除した後の金額に一律20%の税率を乗じて計算する。
① 相続時精算課税に係る贈与税の課税価格
  相続時精算課税選択届出書を提出した受贈者(以下「相続時精算課税適用者」という。)がその相続時精算課税選択届出書に係る贈与者(以下「特定贈与者」という。)からの贈与により取得した財産については、特定贈与者ごとにその年中において贈与により取得した財産の価額を合計し、それぞれの合計額をもって相続時精算課税に係る贈与税の課税価格とする(相法21の10)。
② 相続時精算課税に係る贈与税の特別控除
  相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、特定贈与者ごとに相続時精算課税に係る贈与税の課税価格からそれぞれ次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除することができることとされていた(旧相法21の12①)。
 イ 2,500万円(既にこの相続時精算課税に係る贈与税の特別控除により控除した金額がある場合には、その金額の合計額を控除した残額)
 ロ 特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る贈与税の課税価格
  なお、この相続時精算課税に係る贈与税の特別控除は、贈与税の期限内申告書に控除を受ける金額のほか一定の事項の記載がある場合に限り、適用することとされている(相法21の12②、相規12)。
  また、税務署長は、特定贈与者からの贈与により取得した財産について、上記の事項の記載がない期限内申告書の提出があった場合において、その記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類の提出があった場合に限り、相続時精算課税に係る贈与税の特別控除を適用することができる(相法21の12③)。
③ 相続時精算課税に係る贈与税の税率
  相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税の額は、特定贈与者ごとに上記①により計算した相続時精算課税に係る贈与税の課税価格(上記②の相続時精算課税に係る贈与税の特別控除の適用がある場合には、相続時精算課税に係る贈与税の特別控除額を控除した後の金額)にそれぞれ20%の税率を乗じて計算した金額とされていた(旧相法21の13)。
(4)相続時精算課税における相続税額の計算
 相続税は、相続又は遺贈により財産を取得しないと相続税の納税義務自体が生じないことを基本としている(相法1の3①一~四)が、相続時精算課税においては、贈与により財産を取得していても相続又は遺贈により財産を取得しない者もいることがあるため、相続時精算課税適用者については、相続又は遺贈により財産を取得しなくても相続税の納税義務が生じることとされている(相法1の3①五)。
 すなわち、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した者及びその特定贈与者に係る相続時精算課税適用者の相続税の計算については、相続時精算課税を選択した年分以後の年にその特定贈与者から贈与を受けた財産の贈与時における価額と相続又は遺贈により取得した財産の価額を合計した価額(相続又は遺贈により財産を取得しない場合には、贈与を受けた財産の贈与時における価額を合計した価額)を相続税の課税価格として計算した相続税額から相続時精算課税に係る贈与税の税額に相当する金額を控除することにより、納付すべき相続税額を算出することとされていた(旧相法21の15、21の16)。
① 相続税の課税価格
  特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者については、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものの贈与時の価額を、相続又は遺贈により取得した財産の価額に加算した価額が相続税の課税価格とされていた(旧相法21の15①)。
  また、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者については、その特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものをその特定贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなして相続税の課税価格を計算することとされている(相法21の16①)。ただし、この相続又は遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税価格に算入される財産の価額は、その贈与時の価額によることとされていた(旧相法21の16③)。
② 債務控除
 イ 相続税法第1条の3第1項第1号又は第2号に規定する納税義務者(無制限納税義務者)については、相続又は遺贈により取得した財産及び相続時精算課税の適用を受ける財産の価額から同法第13条第1項の規定による債務控除をすることとされていた(旧相法21の15②)。
 ロ 相続税法第1条の3第1項第3号又は第4号に規定する納税義務者(制限納税義務者)については、相続又は遺贈により取得した財産で相続税法の施行地にあるもの及び相続時精算課税の適用を受ける財産の価額から同法第13条第2項の規定による債務控除をすることとされていた(旧相法21の15②)。
 ハ 相続税法第1条の3第1項第5号に規定する納税義務者(特定納税義務者)については、相続時精算課税の適用を受ける財産の価額から、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める規定による債務控除をすることとされていた(相法21の16、旧相令5の4①)。
 (イ)その納税義務者が相続に係る被相続人の相続開始の時において相続税法の施行地に住所を有する場合 相続税法第13条第1項
 (ロ)その納税義務者が相続に係る被相続人の相続開始の時において相続税法の施行地に住所を有しない場合 相続税法第13条第2項
③ 相続開始前3年以内の贈与加算(相法19)
  相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものについては、相続税法第19条第1項の規定の適用はない(相法21の15②、21の16②)。ただし、特定贈与者からの贈与により取得した財産のうち相続時精算課税の適用を受ける年分前に取得したものについては、その財産の取得が特定贈与者の相続開始前3年以内である場合には、相続税法第19条第1項の規定の適用を受けることになり、その財産の価額は相続税の課税価格に加算されることになっている(相基通19−11)。
④ 相続時精算課税における贈与税の税額に相当する金額の控除及び還付
  相続時精算課税の適用を受ける財産について課せられた贈与税があるときは、相続税額からその贈与税の税額(外国税額控除(相法21の8)前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額を控除する(相法21の15③、21の16④)。
  なお、この金額は、相続税法第15条から第20条の2まで(第19条の2を除く。)の規定により算出された金額から控除することになる(相令5の3)。
  さらに、上記により相続税額から控除する場合において、なお控除しきれない金額があるときには、その控除しきれない金額(相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与税について外国税額控除(相法21の8)の適用を受けた場合にあっては、その金額から外国税額控除額を控除した残額)に相当する税額の還付を受けることができる。ただし、この還付を受けるためには、相続税の申告書を提出しなければならない(相法27③、33の2①④、相規15、16)。

2 改正の内容
(1)相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除の創設

 相続時精算課税制度の利用を促進する観点から、相続時精算課税を選択した後の贈与についても、毎年110万円の基礎控除が設けられることになった。なお、この相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除は、従来の暦年課税に係る贈与税の基礎控除とは別のものとなっている。その結果、暦年課税に係る基礎控除と相続時精算課税に係る基礎控除とをそれぞれ適用することで、年間で最大220万円までの贈与について贈与税が課税されないことになる。
(注)相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除は、暦年課税に係る贈与税の基礎控除(相法21の5)と同様に相続税法上は60万円となっている(相法21の11の2①)が、いずれも租税特別措置法で110万円に引き上げられている(措法70の2の4①、70の3の2①)。ここでは、いずれの基礎控除額も110万円という前提で解説する。
 この相続時精算課税に係る基礎控除の110万円は、受贈者1人につき毎年認められる。したがって、同一の年に2人以上の特定贈与者から相続時精算課税の対象となる贈与を受けた場合であっても、その年の相続時精算課税に係る基礎控除は110万円が限度となる。この場合、各特定贈与者から贈与を受けた財産について適用される基礎控除の額は、110万円を特定贈与者ごとの贈与税の課税価格であん分計算する(相法21の11の2②、措法70の3の2③、相令5の2、措令40の5の2)。
(2)相続税の課税価格に加算される相続時精算課税適用財産の価額の改正
 改正前の相続時精算課税制度では、特定贈与者の相続税の計算上、特定贈与者から贈与を受けた財産の価額が相続税の課税価格に加算されることとされていたが、贈与時に上記(1)の相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除により控除された額については、特定贈与者の相続時に特定贈与者の相続税の課税価格に加算されないこととされた(相法21の15①、21の16③)。
(3)相続時精算課税選択届出書の提出方法の見直し
 今回の改正により相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除が設けられた結果、特定贈与者から贈与を受けた財産の価額が基礎控除以下である場合には、贈与税の申告が不要(相法28①②)となったことから、そのような場合には相続時精算課税選択届出書のみを提出することができることとされるとともに、その旨を相続時精算課税選択届出書に記載することとされた(相令5①前段、5の6①前段、相規10①四、②五)。
 なお、特定贈与者から相続時精算課税に係る基礎控除を超える金額の贈与を受けた場合や特定贈与者から贈与により取得した財産の価額が相続時精算課税に係る基礎控除以下であってもその財産以外の財産を贈与により取得したため贈与税の申告が必要となる場合には、従来と同様、相続時精算課税選択届出書を贈与税の申告書に添付して提出することとされている(相令5①後段、5の6①後段)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用される(改正法附則19①④⑤⑥、51④、改正相令附則2、5)。

二 相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算対象期間等の見直し

1 改正前の制度の概要
 相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得している場合には、その者については、その者の相続税の課税価格にその贈与により取得した財産の価額を加算した金額をその者の相続税の課税価格とみなし、その課税価格に基づいて算出された相続税額からその加算に係る受贈財産について課せられた贈与税額を控除した金額がその者の納付すべき相続税額とされていた(旧相法19)。
 なお、この加算の対象となる財産の価額は、贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されるものに限られているため、次の財産の価額は加算の対象にならない。
(1)相続税法第21条の3に規定する贈与税の非課税財産
(2)相続税法第21条の4の規定により特定障害者が特定障害者扶養信託契約に基づいて贈与により取得したものとみなされる信託受益権の価額のうち贈与税が非課税とされる6,000万円又は3,000万円までの金額
(3)贈与税の制限納税義務者が贈与により取得した相続税法の施行地外に所在する財産
(4)相続税法第19条第2項に規定する特定贈与財産

2 改正の内容
(1)加算対象期間の見直し

 相続税の課税価格に加算される生前贈与の対象期間(3年)について、相続開始前7年以内(改正前:3年以内)とされた(相法19①)。
(2)加算される財産の価額の見直し
 相続開始前3年以内の贈与については、従来からその贈与を受けた財産の価額が相続税の課税価格に加算されることとされていたが、今般の改正により延長された期間(相続開始前3年超7年以内)に贈与を受けた財産の価額については、総額100万円までは相続税の課税価格に加算されないこととされた。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用し、同日前に贈与により取得した財産に係る相続税については従前どおりとされている(改正法附則19①)。また、令和6年1月1日から令和12年12月31日までの間に相続又は遺贈により財産を取得する者については、この措置の対象となる生前贈与の加算期間は、それぞれ次のとおりとされている。
(1)令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に相続又は遺贈により財産を取得する者については、相続開始前3年以内の贈与が加算対象となる(改正法附則19②)。
(2)令和9年1月1日から令和12年12月31日までの間に相続又は遺贈により財産を取得する者については、令和6年1月1日からその相続開始の日までの間の贈与が加算対象となる(改正法附則19③)。

三 相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示等の改正

1 改正前の制度の概要
 被相続人から相続又は遺贈(相続時精算課税に係る贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した者は、他の共同相続人等(その相続又は遺贈により財産を取得した他の者をいう。以下同じ。)がいる場合には、その被相続人に係る相続税の期限内申告書、期限後申告書若しくは修正申告書の提出又は更正の請求に必要となるときに限り、他の共同相続人等が被相続人から相続開始前3年以内に取得した財産又は他の共同相続人等が被相続人から取得した相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格(贈与税について修正申告書の提出又は更正若しくは決定があった場合には、その修正申告書に記載された課税価格又は更正若しくは決定後の贈与税の課税価格)の合計額について、税務署長に対し開示の請求をすることができる(旧相法49)。
 なお、この贈与税の申告内容の開示請求をできる者には、次の者も含まれている(相基通49−1)。
① 相続税の申告書を提出すべき者がその申告書の提出前に死亡した場合において、国税通則法第5条の規定により相続税の納付義務を承継した者
② 相続税法第21条の17第1項又は第21条の18第1項の規定により相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継した者
 この贈与税の申告内容の開示請求については、被相続人に係る相続の開始の日の属する年の3月16日以後に、原則として、被相続人の死亡の時における住所地の所轄税務署長に行うこととされている(旧相法49①、相令27③④)。
 また、この請求に基づく贈与税の申告内容の開示は、贈与税の課税価格の合計額(相続税法第19条第2項に規定する特定贈与財産を除く。)を次に掲げる金額ごとに開示されることとされていた(旧相令27⑤)。
① 被相続人に係る相続の開始前3年以内にその被相続人からの贈与により取得した財産の価額(②の価額を除く。)の合計額
② 被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けたものの価額の合計額
 なお、この贈与税の申告内容の開示請求を受けた税務署長は、請求後2月以内に開示をしなければならないこととなっている(旧相法49②)。

2 改正の内容
 前述及びの改正に伴い、相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示を請求しようとする者は、加算対象贈与財産(相続税法第19条第1項に規定する加算対象贈与財産をいう。①において同じ。)については①の金額を、相続時精算課税適用財産については②の金額を、それぞれ請求することとされた(相法49①)。
① 他の共同相続人等が被相続人から贈与により取得した次に掲げる加算対象贈与財産の区分に応じそれぞれ次に定める贈与税の課税価格に係る金額の合計額(相法49①一)
イ 相続開始前3年以内に取得した加算対象贈与財産 贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格の合計額
ロ 上記イに掲げる加算対象贈与財産以外の加算対象贈与財産 贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格の合計額から100万円を控除した残額
② 他の共同相続人等が被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税適用財産に係る贈与税の申告書に記載された相続時精算課税に係る基礎控除後の贈与税の課税価格の合計額
 なお、上記①及び②の贈与税について修正申告書の提出又は更正若しくは決定があった場合には、これらの贈与税の課税価格は、その修正申告書に記載された贈与税の課税価格又はその更正若しくは決定後の贈与税の課税価格とされること(相法49②)や開示請求を受けた税務署長が請求後2月以内に開示をしなければならないこと(相法49③)は、従来どおりとされている。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和6年1月1日以後に相続又は遺贈により財産を取得する者がする開示の請求について適用され、同日前に相続又は遺贈により財産を取得した者がする開示の請求については従前どおりとされている(改正法附則19⑧)。また、開示の対象となる贈与税の課税価格について所要の経過措置が講じられている(改正法附則19⑨~⑪)。

四 相続税についての更正、決定等の期間制限の特則の創設

1 新制度の概要
 同一の被相続人に係る相続人等(相続時精算課税適用者を含む。以下「共同相続人等」という。)のうち一部の者から更正若しくは決定又は加算税の賦課決定(以下「更正決定等」という。)をすることができないこととなる日前6月以内に相続税について更正の請求がされた場合において、その請求に係る更正に伴いその請求をした者以外の共同相続人等に係る相続税の課税価格又は相続税額に異動を生ずるとき(注)は、次の(1)又は(2)については、国税通則法第70条第1項の規定にかかわらず、その請求があった日から6月を経過する日まで、することができることとされた(相法36)。
(注)共同相続人等のうち一部の者からされた更正の請求が、その更正の請求をした者以外の共同相続人等について国税通則法第70条第1項の規定により更正決定等をすることができないこととなる日前6月以内にされた場合に限る。
(1)その更正の請求をした者以外の共同相続人等に係る上記の課税価格又は税額に異動を生ずる相続税に係る更正又は決定
(2)(1)の更正若しくは決定又は(1)の相続税に係る期限後申告書若しくは修正申告書の提出に伴い相続税に係る加算税についてする賦課決定
 この場合において、上記(1)の更正又は決定、上記(2)の賦課決定及び上記(2)の期限後申告書又は修正申告書の提出により納付すべき相続税の徴収を目的とする国の権利は、これらの更正決定等又は提出があった日から5年間行使しないことにより、時効により消滅することとされた(相法36による読替後の通法72)。

2 適用関係
 上記1の改正は、令和5年4月1日以後に相続税の申告書の提出期限が到来する相続税について適用される(改正法附則19⑦)。

五 調書の提出の特例の改正

1 改正前の制度の概要
(1)調書の提出義務

 相続税法では、次に掲げる調書について、提出義務が課されている(相法59①~③)。
① 保険金又は退職手当金等の支払に関する調書
  保険会社等又は退職手当金等を支給した者で国内に営業所等を有するものは、その月中に支払った生命保険契約の保険金若しくは損害保険契約の保険金のうち一定のもの又は支給した退職手当金等について、翌月15日までに、受取人別又は受給者別の一定の事項を記載した調書をその調書を作成した営業所等の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。
② 保険契約の変更に関する調書
  保険会社等で国内に営業所等を有するものは、生命保険契約又は損害保険契約の契約者が死亡したことに伴いこれらの契約の契約者の変更の手続を行った場合には、その変更の効力が生じた日の属する年の翌年1月31日までに、一定の事項を記載した調書をその調書を作成した営業所等の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。
③ 信託に関する調書
  信託の受託者で国内に営業所等を有するものは、信託の効力が生じたことその他一定の事由が生じた場合には、その事由が生じた日の属する月の翌月末日までに、一定の事項を記載した受益者別の調書をその営業所等の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。
(2)電子情報処理組織又は光ディスク等による調書の提出
① 上記(1)①~③の調書のうち、調書の提出期限の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの間に提出すべきであった調書の枚数が100以上であるものについては、その調書を提出すべき者は、上記(1)①~③にかかわらず、その調書の記載事項を次に掲げる方法のいずれかにより所轄税務署長に提供しなければならない(相法59⑤)。
 イ あらかじめ税務署長に届け出て行う電子情報処理組織(e-Tax又は認定クラウド)を使用する方法
 ロ 記載事項を記録した光ディスク等(光ディスク又は磁気ディスクをいう。以下同じ。)を提出する方法
② 上記①の者以外の調書を提出すべき者は、次のいずれかに該当する場合には、その者が提出すべき調書の記載事項を記録した光ディスク等を提出することができることとされていた(旧相法59⑥)。
 イ 所轄税務署長の承認を受けた場合
 ロ 調書の提出期限の属する年以前の各年のいずれかの年において上記①ロの光ディスク等を提出した場合

2 改正の内容
 調書の提出義務者のうち電子情報処理組織又は光ディスク等による提出義務制度の対象とならない者は、上記1(2)②イ及びロの場合に該当することなく、調書に記載すべき事項を記録した光ディスク等の提出ができることとされた(相法59⑥)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和5年4月1日以後に提出すべき調書について適用され、同日前に提出すべき調書については従前どおりとされている(改正法附則19⑫)。

租税特別措置法の改正(相続税・贈与税関係)

一 国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等の改正

1 改正前の制度の概要
 相続又は遺贈により財産を取得した者が、その財産を相続税の申告書の提出期限までに、国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人のうち、教育若しくは科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する特定の法人(注)に贈与した場合には、その贈与した財産の価額は、その相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入しないこととされている(措法70①)。
 なお、上記の特定の法人で贈与を受けたものが次の場合に該当するときは、上記の規定にかかわらず、上記の贈与した財産の価額は、その相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入することとされている(措法70②)。
(1)その贈与があった日から2年を経過した日までに上記の特定の法人に該当しないこととなった場合
(2)その贈与により取得した財産をその贈与があった日から2年を経過した日においてなおその公益を目的とする事業の用に供していない場合
(注)公益を目的とする事業を行う法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する特定の法人とは、次の法人をいう(旧措令40の3)。
 イ 独立行政法人
 ロ 国立大学法人及び大学共同利用機関法人
 ハ 地方独立行政法人で一定の業務を主たる目的とするもの
 ニ 公立大学法人
 ホ 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団及び日本赤十字社
 ヘ 公益社団法人及び公益財団法人
 ト 学校の設置を主たる目的とする学校法人等
 チ 社会福祉法人
 リ 更生保護法人

2 改正の内容
 本特例の対象となる特定の法人の範囲に、福島国際研究教育機構が追加された(措令40の3二)。

3 適用関係
 上記2の改正は、相続又は遺贈により取得した財産を、令和5年4月1日以後に贈与する場合について適用される(改正措令附則1)。

二 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の改正

1 改正前の制度の概要
(1)概要

 平成25年4月1日から令和5年3月31日までの間に、個人(教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の者に限る。)が、その直系尊属と受託者との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合、その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき銀行等の営業所、事務所その他これらに準ずるもので日本国内にあるもの(以下「営業所等」という。)において預金若しくは貯金として預入をした場合又は教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託の受益権、金銭又は金銭等(以下「信託受益権等」という。)の価額のうち1,500万円までの金額(既に本特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされている。ただし、その個人の信託受益権等を取得した日の属する年の前年分の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、適用されない(旧措法70の2の2①)。
(2)贈与者死亡時の相続税の課税
 信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合(受贈者が23歳未満である場合等(注1)に該当する場合を除く。)には、その贈与者に係る受贈者については、管理残額(注2)をその贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなして、相続税法その他相続税に関する法令の規定が適用され、管理残額は、相続税の課税対象に含まれることとなる。この場合において、取扱金融機関の営業所等は、相続又は遺贈により取得したものとみなされた管理残額及びその贈与者が死亡した日を記録しなければならない(旧措法70の2の2⑫⑬)。
(注1)「23歳未満である場合等」とは、贈与者が死亡した日において、受贈者が以下の場合に該当する場合(ロ又はハの場合に該当する場合には、その旨を明らかにする書類(電磁的記録を含む。)を、その贈与者が死亡した旨の届出と併せて提出又は提供した場合に限る。)をいう(旧措法70の2の2⑬)。
 イ 23歳未満である場合
 ロ 学校等に在学している場合
 ハ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
(注2)「管理残額」とは、贈与者が死亡した日における非課税拠出額から教育資金支出額(訂正があった場合には、その訂正後のものとし、学校等以外に支払う教育資金については、500万円を限度とする。)を控除した残額のうち、その贈与者から取得した信託受益権等で本特例の適用を受けた部分の価額に対応する金額をいう(旧措法70の2の2⑫二、旧措令40の4の3)。
(3)契約終了時の贈与税の課税
 教育資金管理契約が終了した場合(受贈者が死亡したことにより終了した場合を除く。)において、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額(相続又は遺贈により取得したものとみなされた管理残額を含む。)を控除した残額があるときは、その残額をその終了の日において贈与により取得したものとみなして、相続税法その他贈与税に関する法令の規定が適用され、その残額は、贈与税の課税対象に含まれることとなる(旧措法70の2の2⑮、旧措令40の4の3)。この場合において、教育資金管理契約の終了の日において贈与者が生存しているときは、その贈与者から取得したものとみなされ、同日前に贈与者が死亡しているときは、「個人」から取得したものとみなされる(措令40の4の3一)。
 なお、「個人」から取得したものとみなされる場合においても、租税特別措置法第70条の2の5(直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例)の適用については、その個人を受贈者の直系尊属とみなすこととされており(旧措令40の4の3四)、受贈者がその年1月1日において18歳以上である場合には、この税率の特例措置が適用されていた。

2 改正の内容
 次の見直しが行われた上、その適用期限が令和8年3月31日まで3年延長された。
(1)贈与者死亡時の相続税の課税の見直し
① 具体的内容
  上記1(2)のとおり、改正前においては、贈与者が死亡した場合であっても、受贈者が23歳未満である場合等に該当するときは、管理残額は相続又は遺贈により取得したものとはみなされず、相続税の課税の対象とはされていなかった。改正後においては、受贈者が23歳未満である場合等に該当する場合であっても、贈与者に係る相続税の課税価格の合計額(注)が5億円を超えるときは、管理残額は、相続又は遺贈により取得したものとみなされ、贈与者の死亡に係る相続税の課税対象に含まれることとされた(措法70の2の2⑫⑬)。
(注)「贈与者に係る相続税の課税価格の合計額」とは、贈与者から相続又は遺贈(相続時精算課税の適用に係る贈与を含む。)により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(本特例の適用によりその贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされる管理残額がないものとした場合における相続税の課税価格)の合計額をいう(措法70の2の2⑬ただし書)。
  なお、この「贈与者に係る相続税の課税価格の合計額」は、相続税の申告書の提出期限から5年を経過する日(国税通則法第70条第3項又は相続税法第36条の適用がある場合には、その適用に係る更正の請求があった日から6月を経過する日)までに相続税額の計算の基礎となった財産の価額及び債務の金額を基準として計算する(措法70の2の2⑭)。
② 納税者等の手続
  受贈者が23歳未満である場合等に該当する場合には、受贈者及び取扱金融機関の営業所等において、次の手続が必要となる。
 イ 受贈者の手続
   改正前から、受贈者は、贈与者が死亡した事実を知った場合には、速やかに、その贈与者が死亡した旨を取扱金融機関の営業所等に届け出なければならないこととされている(措法70の2の2⑫一)。改正後においては、この届出のほか、贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限を経過した場合には、速やかに、その提出期限において次に掲げる場合のいずれに該当するかに応じ、それぞれ次に定める書類又はその電磁的記録(以下「確認書類等」という。)を取扱金融機関の営業所等に提出又は提供をしなければならないこととされた(措法70の2の2⑮一、措規23の5の3⑬)。
 (イ)贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超える場合において、受贈者が相続税の期限内申告書を提出しているとき 贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超える旨を記載した書類及びその申告書の写し
 (ロ)贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超える場合において、受贈者が相続税の期限内申告書を提出していないとき 贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超える旨を記載した書類及びその贈与者に係る相続税の課税価格の合計額の計算に関する明細を記載した書類
 (ハ) 贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えない場合 贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えない旨を記載した書類
 ロ 取扱金融機関の営業所等における手続
   上記イの贈与者が死亡した旨の届出を受けた取扱金融機関の営業所等は、贈与者が死亡した日及び管理残額を記録しなければならないこととされた(措法70の2の2⑫一)。
  また、確認書類等の提出又は提供を受けた取扱金融機関の営業所等は、その確認書類等に記載又は記録がされた事項に基づき、贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超える受贈者について、相続又は遺贈により取得したものとみなされる管理残額を記録するとともに(措法70の2の2⑫三⑮二)、その確認書類等を、各人別に整理し、その受贈者に係る教育資金管理契約が終了した日の属する年の翌年3月15日後6年を経過する日まで保存しなければならないこととされた(措法70の2の2⑮三、措規23の5の3⑭)。
③ 税務署長の通知等
  税務署長は、その受贈者の贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が、更正若しくは決定又は期限後申告書若しくは修正申告書の提出により5億円を超えることとなること又は5億円以下となることを知った場合には、取扱金融機関の営業所等の長に次の事項を通知するものとされた(措法70の2の2⑳四、措規23の5の3四)。また、その通知を受けた取扱金融機関の営業所等の長は、その通知に基づき、上記②ロの相続又は遺贈により取得したものとみなされる管理残額の記録を訂正しなければならないこととされた(措法70の2の2)。
 イ その受贈者の贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えた旨又は5億円以下となった旨
 ロ イの受贈者の氏名、住所又は居所及び生年月日
 ハ その事実に係る贈与者の氏名及びその贈与者が死亡した年月日
 ニ その他参考となるべき事項
(2)契約終了時の贈与税の課税の見直し
 教育資金管理契約の終了の時の残額に対する贈与税の課税に当たっては、その残額を特例税率の適用対象とならない財産(以下「一般贈与財産」という。)とみなすこととし、特例税率が適用されないこととされた(措法70の2の2⑰二)。
(3)適用対象となる支払先の拡充
 本特例の適用対象となる教育資金の支払先である学校等の範囲に、都道府県知事等から国家戦略特別区域内に所在する場合の外国の保育士資格を有する者の人員配置基準等の一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けた認可外保育施設が加えられた(平成25年文部科学省・厚生労働省告示第1号)。

3 適用関係
(1)上記2(1)及び(2)の改正

 令和5年4月1日以後に信託受益権等を取得する個人に係るその信託受益権等に係る相続税又は贈与税について適用され、同日前にのみ信託受益権等を取得した個人に係るその信託受益権等に係る相続税又は贈与税については、従前どおりとされている(改正法附則51②)。
 具体的には、贈与者が死亡した場合において23歳未満である場合等に該当する受贈者については、相続又は遺贈により取得したものとみなされる管理残額は、令和5年4月1日以後に取得した信託受益権等のうち本特例の適用を受けた部分の価額に対応する部分に限られる。そのため、この受贈者については、管理残額のうち同年3月31日以前に取得した信託受益権等で本特例の適用を受けた部分の価額に対応する部分については、相続又は遺贈により取得したものとはみなされない(改正措令附則14②)。
 また、教育資金管理契約の終了の時において贈与税の課税対象となる残額のうち、上記2(2)の見直しにより一般贈与財産とみなされる金額は、令和5年4月1日以後に取得した信託受益権等のうち本特例の適用を受けた部分の価額に対応する部分に限られる。そのため、残額のうち同年3月31日以前に取得した信託受益権等で本特例の適用を受けた部分の価額に対応する部分については、引き続き特例税率の対象となる(改正措令附則14①⑤)。
 なお、贈与者が死亡した場合において23歳未満である場合等に該当しない受贈者については、従前どおり、下記①②は、管理残額の計算から除外されており(改正措令附則14③)、また、相続税額の2割加算(相続税法第18条)の対象となる相続税額の計算の基礎となる管理残額は、令和3年4月1日以後に取得した信託受益権等のうち本特例の適用を受けた部分の価額に対応する部分に限られている(改正措令附則14④)。
① 令和2年3月31日以前に取得した本特例の適用に係る信託受益権等
② 令和2年4月1日から令和3年3月31日までに取得した本特例の適用に係る信託受益権等のうち、贈与者の死亡前3年以内に取得したもの以外のもの
(2)上記2(3)の改正
 令和5年4月1日以後に上記2(3)の認可外保育施設に教育資金を支払う場合に適用される(令和5年文部科学省・厚生労働省告示第4号)。

三 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の改正

1 改正前の制度の概要
(1)概要

 平成27年4月1日から令和5年3月31日までの間に、個人(結婚・子育て資金管理契約を締結する日において18歳以上50歳未満の者に限る。)が、その直系尊属と受託者との間の結婚・子育て資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合、その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を結婚・子育て資金管理契約に基づき銀行等の営業所、事務所その他これらに準ずるもので日本国内にあるもの(以下「営業所等」という。)において預金若しくは貯金として預入をした場合又は結婚・子育て資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託の受益権、金銭又は金銭等(以下「信託受益権等」という。)の価額のうち1,000万円までの金額(既に本特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされている。ただし、その個人の信託受益権等を取得した日の属する年の前年分の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、適用されない(旧措法70の2の3①)。
(2)契約終了時の贈与税の課税
 結婚・子育て資金管理契約が終了した場合(受贈者が死亡したことにより終了した場合を除く。)において、その結婚・子育て資金管理契約に係る非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額(相続又は遺贈により取得したものとみなされた管理残額を含む。)を控除した残額があるときは、その残額を贈与者(結婚・子育て資金管理契約の終了の日までに死亡した贈与者を除く。)から同日において贈与により取得したものとみなして、相続税法その他贈与税に関する法令の規定が適用され、その残額は、贈与税の課税対象に含まれることとなる(旧措法70の2の3⑭、旧措令40の4の4)。この場合には、租税特別措置法第70条の2の5(直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例)による税率の特例措置が適用されていた。
(注)「管理残額」とは、贈与者が死亡した日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額(訂正があった場合には、その訂正後のものとし、結婚関係費用に関する結婚・子育て資金については、300万円を限度とする。)を控除した残額のうち、その贈与者から取得した信託受益権等で本特例の適用を受けた部分の価額に対応する金額をいう(措法70の2の3⑫二、措令40の4の4)。

2 改正の内容
 結婚・子育て資金管理契約の終了の時の残額に対する贈与税の課税に当たっては、その残額を租税特別措置法第70条の2の5に規定する税率(以下「特例税率」という。)の適用対象とならない財産(以下「一般贈与財産」という。)とみなすこととし、特例税率が適用されないこととされた上(措法70の2の3⑭二)、その適用期限が令和7年3月31日まで2年延長された。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和5年4月1日以後に信託受益権等を取得する個人に係るその信託受益権等に係る贈与税について適用され、同日前にのみ信託受益権等を取得した個人に係るその信託受益権等に係る贈与税については、従前どおりとされている(改正法附則51③)。
 具体的には、結婚・子育て資金管理契約の終了の時において贈与税の課税対象となる残額のうち、上記2の見直しにより一般贈与財産とみなされる金額は、令和5年4月1日以後に取得した信託受益権等のうち本特例の適用を受けた部分の価額に対応する部分に限られる。そのため、残額のうち同年3月31日以前に取得した信託受益権等で本特例の適用を受けた部分の価額に対応する部分については、引き続き特例税率の対象となる(改正措令附則14⑥)。

四 相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除の特例の創設

1 改正の内容
 今回の改正により創設された相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除(相法21の11の2①)について、租税特別措置として、その控除額が110万円に引き上げられた(措法70の3の2①)。
2 適用関係
 上記1の改正は、令和6年1月1日以後の贈与に係る贈与税について適用される(改正法附則51④)。

五 相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例の創設

1 制度の内容
(1)概要

 相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した土地又は建物が、その贈与を受けた日から特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害(注1)によって相当の被害(注2)を受けた場合(相続時精算課税適用者(相続税法第21条の17又は第21条の18の規定により相続時精算課税適用者に係る権利又は義務を承継したその相続人及び包括受遺者を含む。以下同じ。)が、その土地又は建物を贈与により取得した日から災害が発生した日まで引き続き所有していた場合に限る。)において、相続時精算課税適用者が贈与税の納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、土地又は建物の贈与の時における価額からその災害により被害を受けた部分に対応するものとして計算した金額を控除した残額が、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算又は算入をされることとされた(措法70の3の3①)。
 ただし、本特例は、相続時精算課税の適用に係る贈与により取得した土地又は建物について、災害により発生した物理的な被害を対象として講じられたものであることから、同種の災害を対象としている災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の規定の適用を受けようとする場合又は受けた場合には、適用されない(措法70の3の3③)。
(注1)「災害」とは、震災、風水害、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び火災、鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害をいう(措法70の3の3①、措令40の5の3①)。
(注2)「相当の被害」とは、次の財産の区分に応じそれぞれ次に定める程度の被害をいう(措令40の5の3③)。
  土地 土地の贈与の時における価額のうちにその土地に係る被災価額の占める割合が10分の1以上となる被害
  建物 建物の想定価額のうちにその建物に係る被災価額の占める割合が10分の1以上となる被害
(注3)「被災価額」とは、本特例の適用に係る土地又は建物が災害により被害を受けた部分の価額から保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される金額を控除した残額をいう(措令40の5の3②二)。
   なお、「相当の被害」に該当するかどうかの判定に当たっては、土地に係る被災価額は、土地の贈与の時における価額が限度とされ、建物に係る被災価額は、建物の想定価額が限度とされる(措令40の5の3④)。
(注4)「想定価額」とは、次の算式により求めることとされている災害が発生した日における建物の想定上の価額をいう(措令40の5の3②一、措規23の6の2①~③)。

① 次の建物の区分に応じそれぞれ次に定める年数
 イ 贈与の日において想定使用可能期間の年数(建物の全部が事務所用であるものとした場合における減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第1に定める耐用年数をいう(参考)。ロにおいて同じ。)の全部を経過している建物 その想定使用可能期間の年数の100分の20に相当する年数
 ロ イの建物以外の建物 その建物の想定使用可能期間の年数から経過済年数(その建物の新築の日から贈与の日までの期間の年数)を控除した年数と、経過済年数の100分の20に相当する年数とを合計した年数
② 贈与の日から災害が発生した日までの期間の年数(①の年数を上限とする。)
(参考)①イの「想定使用可能期間の年数の100分の20に相当する年数」、①ロの「経過済年数」及び「経過済年数の100分の20に相当する年数」並びに②の「贈与の日から災害が発生した日までの期間の年数」が1年未満である場合又はこれらの年数に1年未満の端数がある場合には、これらの年数又は端数を切り捨てる。
(注5)令和6年1月1日以後の贈与の場合には、相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除額も、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる額から控除される。
(2)特例の適用を受けるための手続
① 納税者による申請・申請書の記載事項
  本特例の適用に係る承認を受けようとする相続時精算課税適用者は、次に掲げる事項を記載した申請書を、災害が発生した日から3年を経過する日(同日までに相続時精算課税適用者が死亡した場合には、同日とその相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含む。)がその相続時精算課税適用者の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日とのいずれか遅い日。)までに贈与税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(措法70の3の3①、措令40の5の3⑤、措規23の6の2④)。
 イ 相続時精算課税適用者の氏名、住所又は居所及び生年月日
 ロ 特定贈与者の氏名及び住所又は居所
 ハ 災害により被害を受けた次の財産の区分に応じそれぞれ次に定める事項
 (イ)土地 土地の贈与の時における価額並びにその土地の所在、地番、地目及び面積
 (ロ)建物 建物の贈与の時における価額並びにその建物の想定価額及びその計算の根拠を明らかにする事項並びに所在、家屋番号及び床面積
 ニ 土地又は建物を贈与により取得した年分及びその贈与に係る贈与税の申告書を提出した税務署の名称
 ホ 災害が発生した日
 ヘ 災害による被害を受けた部分の価額及び保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される金額
 ト 被災価額及びその計算の根拠を明らかにする事項
 チ その他参考となるべき事項
 (注)相続時精算課税に係る権利又は義務を承継した者が申請書を提出する場合には、上記の記載事項のほか、相続税法第21条の17又は第21条の18の規定により権利又は義務の承継をされた者のその死亡の時における住所又は居所及びその死亡の年月日並びにその承継をした全ての者の承継をされた者との続柄を記載しなければならない(措規23の6の2⑥一)。また、その承継した者が2人以上ある場合には、それらの者が一の申請書に連署して申請するものとされている(措規23の6の2⑥三)。
② 申請書の添付書類
  上記①の申請書には、次の財産の区分に応じそれぞれ次に定める書類を添付しなければならない(措令40の5の3⑥、措規23の6の2⑤)。
 イ 土地 次に掲げる書類
 (イ)土地の登記事項証明書その他の書類で相続時精算課税適用者が土地を贈与の日から災害が発生した日まで引き続き所有していたことを明らかにするもの
 (ロ)土地が災害により被害を受けたこと及び災害が発生した日を明らかにする書類
 (ハ)土地の原状回復に要する費用に係る見積書の写しその他の書類で土地が災害により被害を受けた部分の価額及び保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される金額を明らかにするもの
 (ニ)その他参考となるべき書類
 ロ 建物 次に掲げる書類
 (イ)建物の登記事項証明書その他の書類で建物の新築をした年月日及び相続時精算課税適用者が建物を贈与の日から災害が発生した日まで引き続き所有していたことを明らかにするもの
 (ロ)市町村長又は特別区の区長の証明書その他の書類で建物が災害により被害を受けたこと及び災害が発生した日を明らかにするもの
 (ハ)建物の修繕に要する費用に係る見積書の写し、保険金の支払通知書の写しその他の書類で建物が災害により被害を受けた部分の価額及び保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される金額を明らかにするもの
 (ニ)その他参考となるべき書類
 (注)相続時精算課税に係る権利又は義務を承継した者が申請書を提出する場合には、上記の書類のほか、戸籍の謄本又は抄本その他の書類でその承継をされた者の全ての相続人を明らかにするものを添付しなければならない(措規23の6の2⑥二)。
③ 税務署長による手続
  上記①の申請書の提出を受けた税務署長は、申請書の内容を審査し、その申請に対して承認又は却下をし、その旨を申請者に通知することとされている。また、税務署長は、その承認をする場合には、その審査した被災価額を併せて通知することとされている(措令40の5の3⑦⑧)。
  この「審査した被災価額」は、納税者から提出された申請書に記載されている事項及び添付されている書類により明らかにされる情報に基づいて計算した被災価額をいう。保険金や損害賠償金が支払われたこと等により、事後的に、被災価額に異動が生じた場合(下記④参照。)には、この「審査した被災価額」と相続税の課税価格に加算される財産の価額等から控除される金額(下記(3)参照。)とは、異なることとなる。
④ 被災価額に異動を生ずべき事由が生じた場合の手続
  承認を受けた相続時精算課税適用者は、被災価額に異動を生ずべき事由が生じた場合には、遅滞なく、次の事項を記載した届出書に、保険金の支払通知書の写しその他の書類でロの事項を明らかにするものを添付し、これを上記①の所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(措令40の5の3⑨、措規23の6の2⑦⑧)。
 イ 上記①イ~ニの事項
 ロ 保険金、損害賠償金その他これらに類するものの支払を受けたことその他の被災価額に異動を生ずる事由
 ハ 異動を生ずる被災価額に係る上記①の申請書を提出した税務署の名称
 ニ その他参考となるべき事項
(3)相続税の課税価格に加算される財産の価額等から控除される金額
 本特例により相続税の課税価格に加算される財産の価額等から控除される金額は、承認を受けた災害について、贈与の時における価額(土地の場合)又は想定価額(建物の場合)のうちに被災価額の占める割合が10分の1以上となる場合におけるその被災価額をいう。そのため、保険金や損害賠償金の支払があったことにより、承認を受けた後に、被災価額が贈与の時における価額や想定価額の10分の1を下回ることとなった場合には、本特例により相続税の課税価格に加算される財産の価額等から控除される被災価額はないこととなる。また、同一の土地又は建物が2以上の災害により被害を受ける場合も想定される。このような場合において、本特例により相続税の課税価格に加算される財産の価額等から控除される金額は、承認を受けた各災害に係る被災価額の合計額となる(措令40の5の3⑩前段)。
 ただし、この被災価額の合計額は、それぞれ贈与の時における土地又は建物の価額が上限となる(措令40の5の3⑩後段)。
(4)開示請求への対応
 税務署長は、上記(2)④により提出された届出書については、その都度、その内容を審査するものではない。そのため、税務署長は、本特例の適用対象となる土地又は建物について、相続税法第49条第3項(相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示等)の規定により開示をするときは、審査した被災価額(上記(2)③参照。)に基づいて開示すべき金額を計算することとされている(措令40の5の3⑪)。

2 適用関係
 上記1の特例は、令和6年1月1日以後に、土地又は建物が災害により被害を受ける場合について適用される。なお、同日前に相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した土地又は建物が同日以後に災害により被害を受ける場合についても適用される(改正法附則51⑤)。

六 医業継続に係る贈与税・相続税の納税猶予制度等の改正

1 改正前の制度の概要
(1)贈与税の納税猶予及び税額控除

 認定医療法人の持分を有する個人(以下(1)において「贈与者」という。)がその持分の全部又は一部の放棄をしたことにより、その持分がその認定医療法人の持分を有する他の個人(以下(1)において「受贈者」という。)に帰属することとなり、その持分の増加という経済的利益について受贈者に対して贈与税が課される場合には、その放棄により受けた経済的利益の価額に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税が猶予される。また、移行期限までに受贈者が有している認定医療法人の持分の全てを放棄した場合等には、納税猶予されている贈与税は免除される(旧措法70の7の9①⑪)。
 厚生労働大臣又は地方厚生局長若しくは地方厚生支局長(以下「厚生労働大臣等」という。)は、贈与税の納税が猶予されている場合において、受贈者又は認定医療法人について、納税の猶予に係る期限の確定に係る事実があったことを知ったときは、遅滞なく、その事実が生じた旨その他一定の事項を、書面により、国税庁長官又は受贈者の納税地の所轄税務署長に通知することとされている(旧措法70の7の9⑭)。
 なお、受贈者が贈与者による放棄の時からその放棄により受けた経済的利益に係る贈与税の申告書の提出期限までの間に、その認定医療法人の持分の全部又は一部を放棄した場合には、通常の計算による贈与税額から上記の納税猶予分の贈与税額に相当する額を控除した残額が贈与税の申告書の提出期限までに納付すべき贈与税額となる(旧措法70の7の10①)。
(2)相続税の納税猶予及び税額控除
 個人が持分あり医療法人の持分を有していた他の個人から相続又は遺贈によりその持分あり医療法人の持分を取得した場合において、その持分あり医療法人が相続税の申告書の提出期限において認定医療法人であるときは、その持分を取得した個人(以下(2)において「相続人等」という。)が相続税の申告書の提出により納付すべき相続税額のうち、その持分の価額に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税が猶予される。また、移行期限までに相続人等が有している認定医療法人の持分の全てを放棄した場合等には、納税猶予されている相続税は免除される(旧措法70の7の12①⑪)。厚生労働大臣等が相続人等又は認定医療法人について納税の猶予に係る期限の確定に係る事実があったことを知った場合における通知については、上記(1)と同様である(旧措法70の7の12⑭)。
 なお、持分あり医療法人が相続の開始の時において認定医療法人(相続税の申告書の提出期限又は令和5年9月30日のいずれか早い日までに厚生労働大臣の認定を受けた持分あり医療法人を含む。)であり、かつ、その持分を取得した相続人等が相続の開始の時から相続税の申告書の提出期限までの間に厚生労働大臣の認定を受けた持分あり医療法人の持分の全部又は一部を放棄した場合には、通常の計算による相続税額から上記の納税猶予分の相続税額に相当する額を控除した残額が、相続税の申告書の提出期限までに納付すべき相続税額となる(旧措法70の7の13①)。
(3)贈与税の課税の特例
 認定医療法人の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄(その認定医療法人がその移行期限までに持分なし医療法人への移行をする場合におけるその移行の基因となる放棄に限るものとし、その個人の遺言による放棄を除く。)をしたことによりその認定医療法人が経済的利益を受けた場合であっても、その認定医療法人が受けたその経済的利益については、贈与税は課されない(旧措法70の7の14①)。
(注1)「認定医療法人」とは、平成26年10月1日から令和5年9月30日までの間に、持分なし医療法人に移行する計画を作成し、その計画について厚生労働大臣の認定を受けた医療法人をいう(措法70の7の9②一)。
(注2)「認定移行計画」とは、持分なし医療法人に移行するための取組の内容などが記載された計画で厚生労働大臣の認定を受けたものをいう(措法70の7の9②三)。
(注3)「移行期限」とは、認定移行計画に記載された持分なし医療法人に移行する期限をいい、認定の日から3年以内とされていた(措法70の7の9②五、旧良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(平成18年法律第84号)附則10の3②④三)。

2 改正の内容
 次の見直しが行われた上、本特例の対象となる認定医療法人の認定期限が令和8年12月31日まで3年3月延長された。
(1)移行期限の延長
 認定移行計画による持分なし医療法人への移行期限が認定移行計画の認定の日から5年(改正前:3年)とされた(良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律附則10の3④三)。
(2)通知事項の拡充
 厚生労働大臣等は、認定移行計画の変更(移行期限に係るものに限る。)について認定をした場合には、遅滞なく、次の事項を国税庁長官又は納税地の所轄税務署長に通知しなければならないこととされた(措法70の7の9⑭、70の7の12⑭、措規23の12の6⑧二、23の12の8⑦)。
① その認定を行った旨
② 受贈者及び受贈者に係る贈与者の氏名及び住所又は居所並びに認定医療法人の名称及び主たる事務所の所在地
③ その認定を行った年月日並びにその認定による変更前及び変更後の移行期限
④ その他参考となるべき事項
(3)規定の整備
 相続時精算課税制度の見直しに伴い、医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除に係る猶予税額の計算について、所要の規定の整備がされた(措令40の8の12⑤二)。

3 適用関係
 上記2(1)の改正は、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和5年法律第31号)の公布の日(令和5年5月19日)から施行される(同法附則1一)。
 上記2(2)の改正は、令和5年4月1日以後に認定移行計画の変更について認定を行う場合について適用される(改正法附則51⑧)。
 上記2(3)の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により財産を取得する者について適用し、同日前にのみ贈与により財産を取得した者については従前どおりとされている(改正措令附則1三、14⑦)。

七 特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例等の改正

1 改正の内容
 相続時精算課税制度の見直しに伴い、次の措置に係る相続税の課税価格又は納税猶予税額の計算についても所要の規定の整備がされた。
① 特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例(措法69の5①)
② 山林についての相続税の納税猶予及び免除(措令40の7の6⑥二)
③ 特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除(措令40の7の7⑤二)
④ 個人の事業用資産についての納税猶予及び免除(措法70の6の8②三ロ、措令40の7の10⑩二)
⑤ 非上場株式等についての納税猶予及び免除(及びその特例)(措法70の7②五ロ、70の7の5②八ロ、措令40の8の2⑭二、40の8の6⑰二)

2 適用関係
 上記1の改正は、令和6年1月1日以後の贈与に係る相続税又は贈与税について適用され、同日前の贈与に係る相続税又は贈与税については従前どおりとされている(改正法附則51①⑥⑦、改正措令附則14⑦⑧)。

租税特別措置法の改正(登録免許税関係)

一 福島国際研究教育機構の創設に伴う非課税法人の範囲の改正


1 改正の内容
 国及び登録免許税法別表第二に掲げる法人が自己のために受ける登記等については登録免許税を課さないこととされているが(登法4①)、この別表第二に掲げる法人(非課税法人)の範囲に、福島国際研究教育機構が追加された。

2 適用関係
 上記1の改正は、令和5年4月1日以後に福島国際研究教育機構が受ける登記等に係る登録免許税について適用される(改正法附則1)。

二 認定民間都市再生事業計画に基づき建築物を建築した場合の所有権の保存登記の税率の軽減措置の改正

1 改正前の制度の概要
(1)都市再生緊急整備地域に係る特例

 認定事業者が、都市再生特別措置法に規定する認定計画(平成19年4月1日から令和5年3月31日までの間に国土交通大臣の認定(国家戦略特別区域法の規定によりその認定があったものとみなされる場合の認定を含む。以下「計画認定」という。)を受けたもののうち、その計画認定の申請が特定民間都市再生事業に係る工事着手前に行われたものに限る。次の(2)において「認定民間都市再生事業計画」という。)に基づきその計画認定の日から3年以内にその特定民間都市再生事業の用に供する建築物の建築をした場合には、その建築物の所有権の保存の登記に係る登録免許税の税率は、1,000分の3.5とされていた(旧措法83①)。
(注)建築物の要件
  地上階数10以上又は延べ面積7万5,000m2以上の耐火建築物が整備され、かつ、①又は②のいずれかに該当すること
① 事業区域内において整備される公共施設用地面積の割合が30%以上
② 居住者等利便施設整備費が10億円以上
(2)特定都市再生緊急整備地域に係る特例
 認定事業者が、認定民間都市再生事業計画に基づき特定都市再生緊急整備地域内に特定民間都市再生事業の用に供する建築物の建築(国土交通大臣の認定(国家戦略特別区域法の規定によりその認定があったものとみなされる場合の認定を含む。以下同じ。)の日から3年以内(特定民間都市再生事業のうち一定のものについては、5年以内)にするものに限る。)をした場合には、その建築物の所有権の保存の登記に係る登録免許税の税率は、1,000分の2とされていた(旧措法83②)。
(注)建築物の要件
  地上階数10以上又は延べ面積5万m2以上の耐火建築物が整備され、かつ、上記(1)(注)①又は②のいずれかに該当すること

2 改正の内容
(1)適用対象となる建築物の要件の見直し

 上記1(2)の特例について、地上階数10未満の事業についての延べ面積の要件が5万m2以上から7万5,000m2以上に引き上げられた(措令43の2①一)。
(2)適用期限の延長
 適用期限が令和8年3月31日まで3年延長された(措法83)。

3 適用関係
 上記2(1)の改正は、令和5年4月1日以後に国土交通大臣の認定を受ける場合について適用され、同日前に国土交通大臣の認定を受けた場合については、従前どおりとされている(改正措令附則15)。

三 租税特別措置の適用期限の延長

1 次に掲げる租税特別措置の適用期限が令和7年3月31日まで2年延長された。
(1)信用保証協会等が受ける抵当権の設定登記等の税率の軽減措置(措法78)
(2)農業競争力強化支援法に規定する認定事業再編計画に基づき行う登記の税率の軽減措置(措法80④)
(3)特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合等の所有権の移転登記の税率の軽減措置(措法83の2の3)
(4)特例事業者等が不動産特定共同事業契約により不動産を取得した場合の所有権の移転登記等の税率の軽減措置(措法83の3)

2 次に掲げる租税特別措置の適用期限が令和8年3月31日まで3年延長された。
(1)土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減措置(措法72)
(2)農用地利用集積等促進計画に基づき農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置(措法77)
(3)医療機関の開設者が再編計画に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等の税率の軽減措置(措法80の3)
(4)居住誘導区域等権利設定等促進計画に基づき不動産を取得した場合の所有権等の移転登記等の税率の軽減措置(措法83の2の2)

3 鉄道事業者が取得した特定の鉄道施設に係る土地等の所有権の移転登記等の免税措置の適用期限が令和13年3月31日まで8年延長された(措法84の2)。

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