解説記事2023年07月10日 SCOPE マンションの相続税評価、市場価格の6割以上に(2023年7月10日号・№986)

令和6年1月1日以後の相続等から適用
マンションの相続税評価、市場価格の6割以上に


 国税庁は6月30日、マンションの相続税評価の見直し案を明らかにした。マンションの相続税評価額が市場価格理論値の60%未満になっているものについては、60%になるよう評価額を補正する。今後、国税庁は財産評価基本通達の改正案を公表し、意見募集を行う予定。適用は令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産について適用する。なお、国税庁は、今回の見直しは評価額と時価の乖離を適切に是正するものであり、一部の租税回避行為の防止のみを目的とするものではないとしている。

市場価格理論値の60%未満のマンションの評価額を補正

 約7億円の相続財産の相続税額をゼロにしたことなどで財産評価基本通達の総則6項の適用を受けた事案では、令和4年4月19日に最高裁で納税者側が敗訴することで決着となったが、この最高裁の判決以降、マンションの評価額の乖離に対する批判や、取引を手控える動きなど、不動産市場への影響を懸念する声があがっていた。このような状況の中、与党が取りまとめた令和5年度税制改正大綱では、相続税におけるマンションの評価方法の適正化を検討する旨が盛り込まれた(本誌964号参照)。これを踏まえ、国税庁は今年1月30日に、大学教授、税理士、不動産業界の関係者等で構成される有識者会議を設置(本誌965号参照)。今回の見直し案は有識者会議の検討結果である。
 国税庁の調査によると、マンションの乖離率は2.34倍(平成30年)となっており、一戸建ての乖離率の1.66倍を上回る。相続税評価額が市場価格と乖離する主な要因としては、例えば、建物の評価額は一棟全体の再建築価格に基づく評価額を専有面積の割合で按分して算定するが、市場価格はそれに加えて建物の総階数、所在階も考慮されているほか、評価額への築年数の反映が不十分だと評価額が市場価格に比べて低くなるケースがあるのではないかとしている(本誌982号参照)。
 このため、市場価格との乖離要因と考えられる築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度の4つの指数に基づいて評価額を補正するとしている。具体的には、一戸建ての物件とのバランスも考慮し、相続税評価額が市場価格理論値の60%未満となっているもの(乖離率1.67倍を超えるもの)について、60%(乖離率1.67倍)になるよう評価額を補正することになる(図表1参照)。算式は、「現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率×最低評価水準0.6(定数)」となる(図表2参照)。評価水準60%〜100%は補正せず、100%を超えるものについては、100%となるよう評価額を減額する。

 なお、最低評価水準等については、固定資産税の評価の見直し時期に合わせて、当該時期の直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直すこととするほか、マンション市場価格の大幅な下落などにより、今回の評価方法に従って評価することが適当でないと認められる場合は、個別に課税時期における時価を鑑定評価などの方法により算定する旨を明確化する。

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