解説記事2023年07月31日 税制改正解説 令和5年度における国際課税関係の改正について(2023年7月31日号・№989)

税制改正解説
令和5年度における国際課税関係の改正について
 渡邉正晴

はじめに

 経済のデジタル化・グローバル化や取引の多様化・複雑化が進展する中、国際課税制度の重要性はますます高まっており、近年、我が国はBEPSプロジェクトの合意事項等を踏まえ、国際的な課税逃れの防止に向けて累次の制度整備を行ってきたところである。2021年10月には、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」において、経済のデジタル化に伴う国際課税上の課題への対応について、国際的な合意がまとめられた。本国際合意は、市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)とグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の2つの柱からなる。BEPSプロジェクトの立上げ時から、国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきた我が国としては、本国際合意の実施に向けた取組みを進めることが重要と考えており、引き続き国際的な議論に積極的に貢献するとともに、国際合意に則った法制度の整備を進めていくことになる。
 こうした状況の下、令和5年度税制改正においては、「第2の柱」のうち所得合算ルール(IIR: Income Inclusion Rule)に係る法制化(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設等)を行うこととされた。
 加えて、「第2の柱」の導入により対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、外国子会社合算税制について見直しを行うこととされた。具体的には、①特定外国関係会社(ペーパー・カンパニー等)の適用免除要件である租税負担割合の引下げ及び②書類添付義務の緩和等の措置が講じられた。
 このほか、特定複合観光施設(IR)に関する税制として、令和3年度与党税制改正大綱に示された方向性に沿った検討が行われ、非居住者のカジノ所得の非課税制度が創設された。
 これらの改正を含む国際課税の改正(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税関係を除く。)は、次の法令により行われている。
(法律)
・所得税法等の一部を改正する法律(令5.3.31法律第3号)
(政令)
・租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令(令5.3.31政令第145号)
・租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律施行令の一部を改正する政令(令5.3.31政令第148号)
(省令)
・租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令の一部を改正する省令(令4.12.28総務省・財務省令第5号)
・租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令の一部を改正する省令(令5.3.31総務省・財務省令第2号)
・租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令(令5.3.31財務省令第19号)
・法人税法施行規則の一部を改正する省令(令5.4.14財務省令第34号)(申告書別表関係)
(告示)
・国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第5条第4項、法人税法施行規則第36条の4第6項、地方法人税法施行規則第7条第6項及び消費税法施行規則第23条の4第5項の規定に基づき国税庁長官が定めるファイル形式を定める件の一部を改正する件(令5.3.31国税庁告示第14号)

Ⅰ 外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)の見直し

1 改正前の制度の概要
(1)制度の概要

 外国子会社合算税制は、外国子会社等を利用した租税回避行為を防止するため、一定の要件に該当する外国子会社等の所得に相当する金額について、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度とされている。
① 特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額に係る合算課税(会社単位の合算課税)
  外国関係会社がペーパー・カンパニー等である場合(特定外国関係会社)又は経済活動基準のいずれかを満たさない場合(対象外国関係会社)には、その外国関係会社の所得に相当する金額について、内国法人の所得とみなして、課税することとされている(措法66の6①)。
 (注1)上記の「外国関係会社」とは、居住者・内国法人等が直接若しくは間接に50%を超える持分を有する外国法人又は居住者・内国法人が外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求することができるなど会社財産に対する支配関係がある場合のその外国法人をいう。
 (注2)上記の「ペーパー・カンパニー」とは、外国関係会社のうち特定外国関係会社とされる三つの類型の一つで、具体的には、次のいずれにも該当しない外国関係会社をいう。ただし、次のいずれにも該当しない場合であっても、本制度の合算対象とならない子会社配当等が収益の大宗である外国関係会社など、一定の要件の下で、租税回避リスクが限定的であると考えられるものについては、ペーパー・カンパニーに該当しないこととされている。
  イ その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有している外国関係会社
  ロ その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(本店所在地国)においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている外国関係会社
 (注3)上記の「経済活動基準」とは、以下の基準をいう。
  イ 事業基準(主たる事業が株式の保有等の一定の事業でないこと)
  ロ 実体基準(本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること)
  ハ 管理支配基準(本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること)
  ニ 次のいずれかの基準
  (イ)所在地国基準(主として本店所在地国で事業を行っていること)
   ※ 下記以外の業種に適用
  (ロ)非関連者基準(主として関連者以外の者と取引を行っていること)
   ※ 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業、物品賃貸業
  なお、各事業年度の租税負担割合が30%以上である特定外国関係会社及び各事業年度の租税負担割合が20%以上である対象外国関係会社は、会社単位の合算課税の適用を免除することとされている(会社単位の合算課税に係る適用免除基準)(旧措法66の6⑤)。
② 部分適用対象金額に対する合算課税(受動的所得の合算課税)
  部分対象外国関係会社とは、経済活動基準を全て満たす外国関係会社をいう。本制度では、経済活動基準を全て満たす場合であっても、配当、利子等の一定の受動的所得については、内国法人の所得とみなして、課税することとされている(措法66の6⑥⑧)。
  ただし、部分対象外国関係会社につき次のいずれかに該当する事実がある場合には、受動的所得の合算課税の適用を免除することとされている(受動的所得の合算課税に係る適用免除基準)(措法66の6⑩)。
 イ 各事業年度の租税負担割合が20%以上であること。
 ロ 各事業年度における部分適用対象金額が2,000万円以下であること。
 ハ 各事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額のうちに部分適用対象金額の占める割合が5%以下であること。
(2)書類添付義務
 内国法人は、添付対象外国関係会社(次に掲げる外国関係会社をいう。以下同じ。)の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書その他の一定の書類を当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含む各事業年度の確定申告書に添付しなければならないこととされている(旧措法66の6⑪)。
① 租税負担割合が20%未満である外国関係会社(特定外国関係会社を除く。)
② 租税負担割合が30%未満である特定外国関係会社
(注)上記の「一定の書類」とは、添付対象外国関係会社に係る次に掲げる書類その他参考となるべき事項を記載した書類をいう(旧措規22の11)。
 イ 貸借対照表及び損益計算書(これに準ずるものを含む。)
 ロ 株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書その他これらに準ずるもの
 ハ イに掲げるものに係る勘定科目内訳明細書
 ニ 本店所在地国の法人所得税に関する法令により課される税に関する申告書で各事業年度に係るものの写し
 ホ 企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合に計算される法人所得税の額に関する計算の明細を記載した書類及びその法人所得税の額に関する計算の基礎となる書類で各事業年度に係るもの
 ヘ 各事業年度終了の日における株主等の氏名及び住所又は名称及び本店若しくは主たる事務所の所在地並びにその有する株式等の数又は金額を記載した書類
 ト 各事業年度終了の日における内国法人と添付対象外国関係会社との間に介在する外国法人の株主等に係るヘに掲げる書類
(3)居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例
 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例についても、基本的に上記(1)及び(2)と同様の仕組みとされている(旧措法40の4)。

2 改正の内容
(1)特定外国関係会社に係る適用免除基準の見直し

① 概要
  特定外国関係会社に係る各事業年度の租税負担割合が27%以上である場合には、会社単位の合算課税を適用しないこととされた(措法66の6⑤一)。
② 改正の趣旨・背景
  特定外国関係会社については、平成29年度税制改正において、租税負担割合が30%以上の場合に会社単位の合算課税の適用を免除することとされた。
  一方で、平成29年度税制改正以降、租税負担割合が30%を下回る場合には租税回避リスクが高くはないと考えられる子会社を含めて一律に特定外国関係会社の該当性の判定作業が必要となったことで、申告事務に係る負担が増加した旨の指摘が行われてきた。
  今般の改正において、「各対象会計年度に係る国際最低課税額に対する法人税」が導入され、対象企業に追加的な事務負担が生じることを契機として、外国子会社合算税制に関して、想定される租税回避リスクと企業の事務負担等とを総合的に勘案して、上記の見直しを行うこととされた。
(2)書類添付義務の見直し等
 上記(1)の改正と同様、今般の改正において「各対象会計年度に係る国際最低課税額に対する法人税」が導入されたことを契機として、申告事務に係る負担軽減の観点から、次の見直しが行われている。
① 添付対象外国関係会社の範囲の見直し
  部分対象外国関係会社につき、次のいずれかに該当する事実がある場合には、受動的所得の合算課税の適用による合算所得が生じないため、租税回避リスクの把握と申告事務とのバランスを考慮すると、必ずしも確定申告書に外国関係会社に関する書類の添付を常に求める必要があるとまではいえないとも考えられる。そのため、このような部分対象外国関係会社については、添付対象外国関係会社の範囲から除く見直しが行われた(措法66の6⑪)。
 イ 各事業年度における部分適用対象金額が2,000万円以下であること。
 ロ 各事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額のうちに当該各事業年度における部分適用対象金額の占める割合が5%以下であること。
② 書類保存義務の創設
  上記①の見直しに伴い、部分対象外国関係会社のうち上記①イ又はロのいずれかに該当する事実があるもの(添付不要部分対象外国関係会社)については、その添付不要部分対象外国関係会社の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書その他の一定の書類(保存書類)を整理し、起算日から7年間(欠損金額が生じた事業年度に係る保存書類にあっては、10年間)、その保存書類を納税地に保存しなければならないこととされた。
  保存書類の範囲については、書類添付義務が求められる書類の範囲(上記1(2)(注))と同様とされている。
  また、ここでいう起算日とは、添付不要部分対象外国関係会社の各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含む各事業年度の確定申告書の提出期限の翌日をいう。
③ 法人税申告書別表に係る改正
  内国法人と外国関係会社との間の資本関係に関する事項を記載する法人税申告書別表17(三)付表一(添付対象外国関係会社に係る株式等の保有割合等に関する明細書)の記載方法について、見直しが行われている。
  具体的には、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度において、内国法人と外国関係会社との関係を系統的に図示した書類(③において「出資関係図」という。)を確定申告書に添付した場合には、同表の各欄に記載すべき事項及び同表の記載要領第2号から第5号までの規定により同表に添付すべき書類に記載すべき事項のうち、その出資関係図にその記載があるものについては記載を要しないこととされた。
(3)居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例
 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例についても、上記(1)及び(2)(③を除く。)と基本的に同様の改正が行われた(措法40の4、措規18の20)。
(4)関連制度の見直し
 内国法人が、その経済実態や実質的な株主構成を変えずに、外国法人の子会社となるような事象をコーポレート・インバージョンとして捉え、このような外国法人の所得を内国法人等の所得とみなして課税することとされる制度(特殊関係株主等である内国法人等に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例)についても、上記(1)から(3)までと基本的に同様の改正が行われた(措法40の7、66の9の2、18の20の2、22の11の3)。

3 適用関係
(1)上記2(1)及び(2)の改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合について適用し、内国法人の同日前に開始した事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合については、従前どおりとされている(改正法附則48①)。また、上記2(4)の改正のうち、特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例についても同様とされている(改正法附則48②)。
(2)上記2(3)の改正は、居住者の令和6年分以後の各年分の課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合について適用し、居住者の令和5年分以前の各年分の課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合については、従前どおりとされている(改正法附則35①)。また、上記2(4)の改正のうち、特殊関係株主等である居住者に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例についても同様とされている(改正法附則35②)。

Ⅱ 非居住者のカジノ行為の勝金に係る一時所得の非課税制度の創設

1 制度の内容
(1)制度の概要

 令和9年1月1日から令和13年12月31日までの間において一定の非居住者につき生ずるカジノ行為の勝金に係る一時所得については、所得税を課さないこととされた(措法41の9の2)。
(2)非課税の対象となる者
 本制度の適用を受けることができる者は、非居住者に限定されている。
 ただし、非居住者であっても、次に掲げる者のいずれかに該当する場合には、非課税の対象外とされる(措法41の9の2)。
① 特定複合観光施設区域整備法(以下「IR整備法」という。)の規定によりカジノ行為を行ってはならないこととされている者(措法41の9の2一・二)
  IR整備法の規定によりカジノ行為(IR整備法2⑦)を行ってはならないこととされている者とは、具体的には、次に掲げる者をいう。
 イ 入場禁止対象者
   IR整備法上、次に掲げる者はカジノ行為を行ってはならないこととされている(IR整備法174①)。また、カジノ事業者(IR整備法2⑨)は、原則として、これらの者をカジノ施設(IR整備法2⑩)に入場させ、又は滞在させてはならないこととされている(IR整備法69各号)。
 (イ)20歳未満の者
 (ロ)暴力団員等
   暴力団員(暴力団対策法2六)又は暴力団員でなくなった日から起算して5年を経過しない者(IR整備法41②二イ(8))
 (ハ)入場料等未払者
   IR整備法第181条第1項又は第2項((入場料及び認定都道府県等入場料の納付義務等))の規定に違反して、入場料(IR整備法176①)又は認定都道府県等入場料(IR整備法177①)を納付しない者
 (ニ)入場回数制限超過者
  ⅰ 本邦内に住居を有しない外国人以外の者であって、カジノ施設に入場し、又は滞在しようとする日(ⅱにおいて「入場等基準日」という。)から起算して過去7日間において入場等回数が既に3回に達しているもの(直近の賦課入場時等からそれぞれ24時間を経過するまでの間にある者を除く。)(IR整備法69四)
  (注1)「入場等回数」とは、IR整備法第176条第1項((入場料の賦課等))の規定により入場料を賦課されてカジノ行為区画(入場し、又は滞在しようとするカジノ施設以外のカジノ施設のカジノ行為区画を含む。)に入場した回数及び同条第3項の規定により入場料を再賦課され、又は同条第5項の規定により入場料を再々賦課された回数をいう(IR整備法69四)。なお、「カジノ行為区画」とは、主としてカジノ行為を顧客との間で行い、又は顧客相互間で行わせるための区画をいう(IR整備法2⑩一)。
  (注2)「賦課入場時等」とは、賦課入場時、再賦課基準時又は再々賦課基準時をいう(IR整備法69四)。なお、「賦課入場時」とはIR整備法第176条第1項の規定により賦課された入場料の納付後初めてカジノ行為区画に入場した時を、「再賦課基準時」とは入場料を納付した者がその入場料の納付後初めてカジノ行為区画に入場した時から24時間を経過する時を、「再々賦課基準時」とは入場料を再納付した者が再賦課基準時から24時間を経過する時を、それぞれいう(IR整備法69四、176②④)。
  ⅱ 本邦内に住居を有しない外国人以外の者であって、入場等基準日から起算して過去28日間における入場等回数が既に10回に達しているもの(直近の賦課入場時等からそれぞれ24時間を経過するまでの間にある者を除く。)(IR整備法69五)
 ロ カジノ事業者と一定の社会的関係にある者
  IR整備法上、次に掲げる者は、原則として、それぞれ次に定めるカジノ施設において、カジノ行為を行ってはならないこととされている(IR整備法174②)。
  (イ)特定複合観光施設区域整備推進本部長(IR推進法17①)、特定複合観光施設区域整備推進副本部長(IR推進法18①)、特定複合観光施設区域整備推進本部員(IR推進法19①)及び事務局長その他の職員(IR推進法22②)……全てのカジノ施設
  (ロ)特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(IR整備法5①)及び特定複合観光施設区域の整備に関する計画(IR整備法9①)に関する事務に従事する政府職員((イ)に掲げる者を除く。)……全てのカジノ施設
  (ハ)カジノ管理委員会の委員長、委員、専門委員及び事務局の職員……全てのカジノ施設
  (ニ)認定都道府県等の職員(その認定都道府県等に係る認定区域整備計画(IR整備法2②)に関する事務に従事する者に限る。)……その認定区域整備計画に記載された特定複合観光施設区域に設置されるカジノ施設
  (注)「認定都道府県等」とは、区域整備計画の認定を受けた都道府県等をいう(IR整備法10②)。
  (ホ)カジノ事業者の従業者(役員以外の者にあっては、カジノ業務又はカジノ行為区画内関連業務(IR整備法2⑪)に従事する者に限る。)……そのカジノ事業者が設置するカジノ施設
  (ヘ)カジノ施設供用事業者(IR整備法2⑮)の従業者(役員以外の者にあっては、カジノ施設供用業務(IR整備法2⑭)に従事する者に限る。)……そのカジノ施設供用事業者が管理するカジノ施設
② IR整備法の規定により入場料等を賦課するものとされている者(措法41の9の2三)
  IR整備法の規定により入場料等を賦課するものとされている者とは、具体的には、入場者(本邦内に住居を有しない外国人を除く。以下同じ。)をいう。
 (注1)「入場者」とは、カジノ行為区画に入場しようとする者及びカジノ行為区画に入場した後そのカジノ行為区画に滞在する者(業務として入場する者その他一定の者を除く。)をいう(IR整備法68①一)。
 (注2)入場者は、IR整備法上、カジノ行為区画に入場しようとする時に、国から3,000円の入場料を、認定都道府県等から3,000円の認定都道府県等入場料を、それぞれ賦課されるものとされている(IR整備法176①、177①)。
(3)非課税の対象となる所得
 本制度の適用により非課税となる所得は、令和9年1月1日から令和13年12月31日までの間において上記(2)の非居住者につき生ずるカジノ行為の勝金(カジノ事業者によりカジノ行為において勝ちとなった顧客に対して支払われる金銭をいう。以下同じ。)に係る一時所得とされている(措法41の9の2、措規19の3の2、カジノ管理委員会関係特定複合観光施設区域整備法施行規則3②五)。
 ただし、次に掲げるカジノ行為は、これらのカジノ行為の勝金に係る一時所得については、非課税の対象外とされる(措法41の9の2)。
① カジノ事業の免許の対象となるカジノ行為以外のカジノ行為
 (注)「カジノ事業の免許の対象となるカジノ行為」とは、IR整備法第39条((免許等))の免許に係るカジノ行為区画で行うその免許に係る種類及び方法のカジノ行為をいう(IR整備法39)。
② 設置運営事業の停止の命令等(IR整備法30②、204①②、206⑧)に違反して行われたカジノ行為

2 適用関係
 上記1の制度は、令和9年1月1日から施行される(改正法附則1八ロ)。

Ⅲ その他

一 特定外国法人が特定金融機関等との間で行う債券現先取引に係る利子等の非課税措置の改正

1 改正前の制度の概要
 特定外国法人が、平成29年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する振替国債等を用いて行う債券現先取引で一定の要件を満たすものにつき、特定金融機関等から支払を受ける利子及び差益については、それぞれ所得税及び法人税を課さないこととされている(旧措法42の2③、67の17⑨)。ただし、特定外国法人が適用除外とされる特定金融機関等の国外関連者に該当する場合には、非課税とされない(旧措法42の2④、67の17⑩)。
 また、適用除外とされない場合であっても、恒久的施設を有する特定外国法人が支払を受ける利子及び差益で、恒久的施設帰属所得(法法141一イ)に該当するものについては、非課税とされない(旧措法42の2⑥、67の17⑫)。

2 改正の内容
 本非課税措置の適用期限が、令和8年3月31日まで3年延長された(措法42の2③、67の17⑨)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和5年4月1日から施行されている(改正法附則1)。

二 振替国債等の利子の課税の特例等における非課税適用申告書等の電子情報処理組織による申請等の方法の改正

1 改正前の制度の概要
(1)振替国債等の利子の課税の特例等

① 振替国債等の利子の課税の特例
 イ 制度の概要
   非居住者又は外国法人が、特定振替機関等又は適格外国仲介業者から開設を受けている口座においてその特定振替機関等の営業所等又はその適格外国仲介業者の特定国外営業所等を通じて振替記載等を受けている振替国債又は振替地方債につき支払を受ける利子については、所得税を課さないこととされている(措法5の2①)。
  また、恒久的施設を有する非居住者が支払を受ける振替国債又は振替地方債の利子で恒久的施設帰属所得(所法164①一イ)に該当するものについては、所得税の源泉徴収を行わないこととされている(措法5の2⑤)。
 ロ 非課税適用手続
 (イ)非課税適用申告書等の提出
  ⅰ 非課税適用申告書の提出
  非居住者又は外国法人が振替国債又は振替地方債の利子につき上記イの適用を受けようとする場合には、非課税適用申告書を、最初に上記イの適用を受けようとする際、特定振替機関等を経由し、又は適格外国仲介業者及びその適格外国仲介業者の国内の特定振替機関等を経由してその特定振替機関等の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(措法5の2①⑤)。
  ⅱ 非課税適用申告書の提出の特例
   非居住者又は外国法人が次に掲げる口座において最初に振替国債(割引債に該当するものを除く。ⅱにおいて同じ。)又は振替地方債(割引債に該当するものを除く。ⅱにおいて同じ。)の振替記載等を受ける場合において、その振替記載等を受ける際、次に掲げる口座の区分に応じそれぞれ次に定める者が、特例書類を作成し、これを上記ⅰの税務署長に対し提出したときは、その非居住者又は外国法人は、その振替国債又は振替地方債につき上記ⅰによる非課税適用申告書の提出をしたものとみなすこととされている(措令3②)。
   (ⅰ)特定振替社債等に係る確認に係る振替記載等に係る口座……その特定振替社債等に係る確認を行った特定振替機関等の営業所等の長又はその特定振替社債等に係る確認を行った適格外国仲介業者の特定国外営業所等の長から振替社債等の利子等の課税の特例における非課税適用申告書を受理したその適格外国仲介業者の国内の特定口座管理機関の営業所等の長若しくは特定間接口座管理機関の営業所等の長
   (ⅱ)特定振替割引債に係る確認に係る振替記載等に係る口座……その特定振替割引債に係る確認を行った特定振替機関等の営業所等の長又はその特定振替割引債に係る確認を行った適格外国仲介業者の特定国外営業所等の長から振替割引債の差益金額等の課税の特例における非課税適用申告書を受理したその適格外国仲介業者の国内の特定口座管理機関の営業所等の長若しくは特定間接口座管理機関の営業所等の長
 (ロ)異動申告書等の提出
   非課税適用申告書を提出した非居住者又は外国法人は、次に掲げる場合に該当することとなった場合には、その該当することとなった日以後最初にその非課税適用申告書を提出した特定振替機関等又は適格外国仲介業者から振替記載等を受けている振替国債又は振替地方債の利子の支払を受けるべき日の前日までに、それぞれ次に定める申告書((ロ)において「異動申告書等」という。)を、その特定振替機関等を経由し、又はその適格外国仲介業者及びその適格外国仲介業者の国内の特定振替機関等を経由して上記(イ)ⅰの税務署長に提出しなければならないこととされ、その異動申告書等を提出しなかったときは、その該当することとなった日以後に支払を受けるその振替国債及び振替地方債の利子については、上記イの適用を受けることはできないこととされている(措法5の2⑫)。
  ⅰ 非課税適用申告書又は更新申告書に記載した所定の事項の変更をした場合……異動申告書
  ⅱ 非課税適用申告書を提出した日、異動申告書を提出した日又は更新申告書を提出した日のいずれか遅い日の翌日から5年を経過した場合……更新申告書
 (ハ)非課税適用申告書及び異動申告書等の電子提出
  非居住者又は外国法人は、上記(イ)ⅰの非課税適用申告書の提出及び上記(ロ)の異動申告書等の提出に代えて、特定振替機関等の営業所等に対しこれらの申告書等に記載すべき事項を電磁的方法(インターネットを利用する方法などの電子情報処理組織を使用する方法をいう。以下同じ。)により提供することができることとされている(措法5の2⑰)。
② 振替社債等の利子等の課税の特例
 イ 制度の概要
   非居住者又は外国法人が、特定振替機関等又は適格外国仲介業者から開設を受けている口座においてその特定振替機関等の営業所等又はその適格外国仲介業者の特定国外営業所等を通じて振替記載等を受けている特定振替社債等につき支払を受ける利子等については、所得税を課さないこととされている(措法5の3①)。
   また、恒久的施設を有する非居住者が支払を受ける特定振替社債等の利子等で恒久的施設帰属所得(所法164①一イ)に該当するものについては、所得税の源泉徴収を行わないこととされている(措法5の3③)。
 ロ 非課税適用手続
  本特例においても、上記①の振替国債等の利子の課税の特例の非課税適用手続と同様に、非課税適用申告書の(電子)提出、特例書類の提出及び異動申告書等の(電子)提出などの非課税適用手続が措置されている(措法5の3①③⑨、措令3の2)。
③ 振替割引債の差益金額等の課税の特例
イ 制度の概要
(イ)特定振替割引債の償還金に係る差益金額に対する源泉徴収の不適用
  非居住者又は外国法人が、特定振替機関等又は適格外国仲介業者から開設を受けている口座においてその特定振替機関等の営業所等又はその適格外国仲介業者の特定国外営業所等を通じて振替記載等を受けている特定振替割引債につき支払を受ける償還金に係る差益金額については、所得税の源泉徴収を行わないこととされている(措法41の13の3①)。
(ロ)特定振替割引債の償還差益に対する所得税の非課税等
  非居住者が特定振替割引債の償還金に係る差益金額につき上記(イ)の適用により所得税の源泉徴収をされなかった場合には、その特定振替割引債につき支払を受ける償還差益については、所得税を課さないこととされ、その特定振替割引債の償還により生ずる損失の額は、所得税に関する法令の規定の適用上ないものとみなすこととされている(措法41の13の3②③)。
ロ 非課税適用手続
  本特例においても、上記①の振替国債等の利子の課税の特例の非課税適用手続と同様に、非課税適用申告書の(電子)提出、特例書類の提出及び異動申告書等の(電子)提出などの非課税適用手続が措置されている(措法41の13の3①⑫、措令26の20)。
(2)電子情報処理組織を使用する方法による申請等
① 制度の概要
 イ 申請書面等記載事項を入力して送信する方法につき国税庁の使用に係る電子計算機において用いることができる場合
   電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により税務署長等に対し申請等を行う者は、原則として、その申請等につき規定した法令の規定において書面等に記載すべきこととされている事項(以下「申請書面等記載事項」という。)並びに税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を入力して、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、その申請等を行わなければならないこととされている(国税オンライン化省令5①)。
  この申請書面等記載事項を送信する場合におけるその送信に関するファイル形式は、原則としてXML形式とされているが、支払調書等の一定の書類に記載すべき事項を送信する場合にはXML形式又はCSV形式とされている(国税オンライン化省令5④、旧平30.4国税庁告14①一・二)。
 ロ 申請書面等記載事項を入力して送信する方法につき国税庁の使用に係る電子計算機において用いることができない場合
   電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う税務署長等に対する申請等について、上記イによる申請書面等記載事項を入力して送信する方法につき国税庁の使用に係る電子計算機において用いることができない場合には、原則として、税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を入力して、その申請書面等記載事項を一定の要件を満たすようにスキャナにより読み取る方法その他これに類する方法により作成した電磁的記録(以下「イメージデータ」という。)に記録されたその申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、その申請等を行うことができることとされている(国税オンライン化省令5②前段)。
  この申請書面等記載事項のイメージデータを送信する場合におけるその送信に関するファイル形式は、PDF形式とされている(国税オンライン化省令5④、旧平30.4国税庁告14①三)。
② 振替国債等の利子の課税の特例等における非課税適用申告書等を提出する場合の電子情報処理組織を使用する方法による申請等
  特定振替機関等の営業所等の長から税務署長に対して次に掲げる申告書等を提出する場合の電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請等については、申請書面等記載事項を入力して送信する方法を用いるためのシステムの整備が行われていないことから、申請書面等記載事項に係るイメージデータを送信する方法によることとされており、その送信に関するファイル形式はPDF形式とされている(国税オンライン化省令5②④、旧平30.4国税庁告14①三)。
 イ 非課税適用申告書(上記(1)①ロ(イ)ⅰ、②ロ、③ロ)
 ロ 特例書類(上記(1)①ロ(イ)ⅱ、②ロ、③ロ)
 ハ 異動申告書等(上記(1)①ロ(ロ)、②ロ、③ロ)
 (注)上記イからハまでの申告書等は、特定振替機関等の営業所等を経由して税務署長に提出することとされているが、このようないわゆる経由手続については、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第3条第8号((定義))において、非居住者又は外国法人から特定振替機関等の営業所等への提出と特定振替機関等の営業所等から税務署長への提出は別の申請等として取り扱うこととされている。この非居住者又は外国法人から特定振替機関等の営業所等への提出については、上記(1)①ロ(ハ)、②ロ及び③ロの電子提出制度が令和3年度税制改正において措置されており、また、特定振替機関等の営業所等から税務署長への提出については、上記①のとおり、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律によるオンライン化の措置が講じられている。

2 改正の内容
 国税庁の使用に係る電子計算機において申請書面等記載事項を入力して送信する方法を用いることを可能とするシステムの整備が行われることを前提に、法令上も上記1(2)②イからハまでの申告書等に係る申請書面等記載事項の送信に関するファイル形式をXML形式又はCSV形式とすることとされた(平30.4国税庁告14①二)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和6年7月1日から施行される(令5.3国税庁告14附則①三)。

三 租税条約等実施特例法の改正

1 新たな限度税率を定める租税条約に対応するための国内法の整備
(1)改正の内容

 令和4年12月27日にバクーにおいて署名された「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアゼルバイジャン共和国との間の条約((1)において「日・アゼルバイジャン租税条約」という。)」及び令和5年2月7日にアルジェにおいて署名された「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約((1)において「日・アルジェリア租税条約」という。)」では、住民税がその対象とされており(日・アゼルバイジャン租税条約第2条3(b)(v)、日・アルジェリア租税条約第2条3(b)(v))、かつ、これまでに我が国が締結した租税条約にはない7%の限度税率が定められている(日・アゼルバイジャン租税条約第10条2、第11条2、第12条2、日・アルジェリア租税条約第11条2)。
 そこで、この新たな限度税率を定める租税条約に対応するため、租税条約の限度税率が住民税をも含めて規定されている場合における法人税の軽減額の計算に係る限度税率について、限度税率が7%である場合には5.9%の税率とすることとされた(実特令4四)。
(注)日・アゼルバイジャン租税条約及び日・アルジェリア租税条約の効力発生については、両国それぞれの国内手続を経た後、外交上の経路を通じて、その国内手続の完了を確認する通告を相互に行い、遅い方の通告が受領された日の後30日目の日に効力を生ずることとなる(日・アゼルバイジャン租税条約第30条1、日・アルジェリア租税条約第29条1)。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和5年4月1日から施行されている(改正実特令附則ただし書)。

2 上場株式等の配当等に係る源泉徴収義務等の特例の適用がある場合における租税条約の適用手続に関する特例の改正
(1)改正の内容

 上場株式等の配当等の支払の取扱者のその配当等に関する事項等の提供について、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により提供することができることとされた(実特規2⑰、2の2⑯、2の3⑯、2の4⑯、2の5⑰、9の5⑨、9の6⑨、9の7⑩、9の8⑩、9の9⑩)。
(注)上記の電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により提供する場合におけるその提供に関するファイル形式は、CSV形式とされる。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和6年7月1日以後に提供する報告事項について適用し、同日前に提供した報告事項については、従前どおりとされている(改正実特規附則②)。

3 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の改正
(1)改正の内容

 報告対象国の範囲について、6か国・地域の租税条約等の相手国等(ウガンダ、ウクライナ、タイ、モルドバ、モンテネグロ、ヨルダン)が追加されるとともに、1か国・地域の租税条約等の相手国等(ニウエ)が除外された(実特規別表十三、十四、五十五、九十四、九十六、九十八、旧実特規別表六十二)。
(2)適用関係
 上記(1)の改正は、令和4年12月28日から施行されている(令4.12改正実特規附則)。

4 滞納処分免脱罪の適用対象の整備等に伴う徴収共助制度の改正
(1)改正の内容

① 滞納処分免脱罪の適用対象の整備
  今般の国税徴収法の改正において、滞納処分免脱罪の適用対象の整備が行われたことに伴い、租税条約等の相手国等の租税の徴収の共助についても、同法の改正と同様の罰則規定の整備が行われた(実特法13①)。
② 滞納処分に関する調査手続等の見直し等
  今般の国税徴収法の改正において、徴収職員の滞納処分に関する調査手続等の見直し及び徴収職員の事業者等への協力を求める措置の整備が行われたことに伴い、租税条約等の相手国等の租税の徴収の共助についても、同法の改正において見直し等がされた規定(徴法141、141の2、146の2、147、徴令51の2、徴規2①)を準用するとともに(実特法11④柱書、実特令7①柱書、実特規17③)、罰則規定についても同法の改正と同様の整備が行われた(実特法13④七・八)。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和6年1月1日以後にした違反行為について適用し、同日前にされた違反行為に対する罰則の適用については、従前どおりとされている(改正法附則1三ハ、78)。
② 上記(1)②の改正は、令和6年1月1日から施行される(改正法附則1三ヘ)。

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