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解説記事2023年08月14日 SCOPE 住澤整国税庁長官がインボイス制度の調査方針示す(2023年8月14日号・№991)

税務行政のDXを推進、税務手続を簡便化
住澤整国税庁長官がインボイス制度の調査方針示す


 本誌は、令和5年7月4日付けで財務省主税局長から第54代国税庁長官に就任した住澤整氏にインタビューを行った。インボイス制度が10月1日からスタートするが、住澤長官は、税務調査の過程でインボイスの記載不備を把握したとしても、インボイスだけでなく他の書類等を確認するなど、柔軟に対応していく姿勢を見せている。また、6月23日に公表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション−税務行政の将来像 2023−」を踏まえ、税務行政のDXをさらに推進していく考えを示した。

インボイスの記載事項の不足を確認するための税務調査は実施せず

本誌:10月1日施行のインボイス制度の開始に向けた取組みなどについてお聞かせください。
長官:現在、インボイス制度の登録については、令和5年6月末現在で約356万の事業者が申請を済ませており、課税事業者は9割以上がすでに申請を行っている状況です。今後は、免税事業者など小規模事業者向けの周知広報に引き続き力を入れていくとともに、登録をすべきかどうか迷っている事業者に対して個別相談という形で対応を行っていくことが重要と考えています。また、インボイス制度開始後に初めて消費税の申告を行う納税者もいますので、丁寧に説明を行うことで、まずは制度の円滑な定着に向けて、柔軟な対応を心がけていきたいと思います。
 税務調査に関しては、大口・悪質など調査必要度の高い納税者を優先的に対象としているため、これまでも請求書等の保存書類の軽微な記載事項の不足を確認するための税務調査は実施していません。インボイス制度の開始後も方針に特に変更はなく、例えば、調査の過程でインボイスの記載不備を把握したとしても、インボイスだけでなく他の書類等を確認するなど、柔軟な対応を行います。
令和9年にはすべての給与情報が自動入力に
本誌:税務行政のDXの取組みについてお聞かせください。
長官:国税庁が6月に策定して公表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション−税務行政の将来像 2023−」では、これまでの「納税者の利便性の向上」や「課税・徴収の効率化・高度化」の2つの柱に、新たに「事業者のデジタル化促進」という3本目の柱を加え、税務行政のDXをさらに進めていく方針を示しました。
 第1の柱である「納税者の利便性の向上」では、例えば、令和5年分の所得税の確定申告以降はe-Taxとマイナポータルを連携することにより、オンラインで提出された給与情報について、申告書への自動入力を順次拡充します。令和9年には、地方税当局が持っている給与支払報告書のデータについても国税に連携でき、その時にはすべての給与情報が自動入力可能になりますので、最終的にはそこを目指して取組みを進めていきます。また、第2の柱である「課税・徴収の効率化・高度化」については、AIも活用しつつ、幅広いデータの分析により、申告漏れの可能性が高い納税者の判定などを進めます。
 第3の柱である「事業者のデジタル化促進」では、税務を含め、事業者が行う事務処理についてデジタル処理を可能にしていくことで、単純誤りの防止や経理に関するコスト負担を軽減し、生産性の向上につなげていくほか、経営の可視化を通じて、中小規模の事業者がより高度な経営に取り組むことができる環境を整備することにつなげていければと思っています。
改正電帳法の趣旨を踏まえて周知広報
本誌:電子帳簿保存法について、円滑な制度実施に向けた今後の対応をお聞かせください。
長官:国税庁としては、令和3年度及び令和5年度の税制改正の趣旨を踏まえ、すでに国税庁ホームページに「電子帳簿等保存制度特設サイト」を開設し各種パンフレット等を閲覧できるようにしていますが、今後も積極的に周知広報を図り、引き続き制度の普及促進に努めていきます。
国外財産調書やCRS情報等を分析・活用
本誌:消費税不正還付への対応、富裕層や国際的な租税回避事案への対応についてお聞かせください。
長官:まず、消費税不正還付事案については、国税局・税務署に、消費税調査を専門に担当する部署を設置し、積極的に調査を実施しています。また、専門的なノウハウを持つこうした部署の職員が一般の税務署職員と連携して消費税調査を実施するといった取組みを通じて、国税組織全体の調査能力向上を図っています。
 富裕層及び国際的な租税回避事案への対応については、資産運用形態の多様化・国際化や租税回避スキームの複雑化を踏まえ、重点的に取組みを進めています。具体的には、国外送金等調書、財産債務調書、国外財産調書といった各種資料の活用、また、外国税務当局から入手したCRS情報の資料等を分析・活用するほか、国税局・税務署に富裕層や国際的な租税回避事案への対応を専門に担当する部署を設置するなどの体制を整備し、積極的に調査を実施しています。
 国外送金等調書の内容について確認を要する場合や、財産債務調書及び国外財産調書が未提出であることが想定される場合には、文書で照会を行い自発的な適正申告を促す取組みも実施しています。
本誌:本日はありがとうございました。

住澤 整(すみさわ ひとし)
昭和63年4月 主計局総務課
平成7年7月 岡崎税務署長
  23年7月 主税局税制第二課長
  26年7月 主税局税制第一課長
  28年6月 主税局総務課長
  30年7月 大臣官房審議官(主税局担当)
令和2年7月 主税局長
  5年7月 国税庁長官

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