会社法ニュース2023年09月15日 大手でも財源規制に違反する自己株取得(2023年9月18日号・№995) 配当時のみならず自己株取得時にも分配可能額の算定は必須
東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を求める中、株価対策の観点から配当の増額・維持やROEを向上させるため、自己株式取得を検討している上場会社は少なくない。分配可能額の計算ミスによる違法配当はしばしば見受けられるが(直近では、ダイヤモンドエレクトリックホールディングス(東証プライム)が、2022年9月30日を基準日とする中間配当を実施したものの、2023年3月末(期末)時点で繰越利益剰余金の欠損が生じる水準の多額の赤字が生じ分配可能額を喪失、中間配当が違法であったことが判明(同社の8月28日付リリース))、配当時のみならず、自己株式取得時にも分配可能額を算定しなければならないという点は見落としがちだ。
会社法上、自己株式の取得は、会社法および会社計算規則により算定した分配可能額(会社法461条2項)の範囲内で行われる必要がある。これは、自己株式の取得は配当と同じく純資産の流出であることから、純資産がみだりに流出して債権者の利益が害されることを防ぐため。この財源規制に違反して自己株式を取得するととともに、結果として分配可能額を超過して中間配当を行ってしまったのが、旧日本電産のニデックだ。同社によると、自己株式取得に伴う分配可能額の減少について担当役職員における知識・認識不足があり、取締役会においても、1名の取締役が剰余金の配当と自己株式取得がともに財源規制の対象となることについて“抽象的な認識”を有していたものの、その他の取締役は自己株式取得の場面で同規制が適用されるということを認識していなかったという(同社の2023年6月2日付リリース)。
財源規制に違反して自己株式の取得が行われた場合、自己株式の取得に関する職務を行った取締役および取締役会において自己株式の取得に賛成した取締役は、「その職務を行うことについて注意を怠らなかったこと」を証明しない限り、当該違法な自己株式の対価を“連帯して”会社に支払う義務を負うとともに(会社法462条1項)、取締役や監査役がその任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うことになる(会社法423条1項)だけに要注意だ。
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