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解説記事2023年09月18日 SCOPE 寺院山門と商業施設一体の土地、空洞部分は非課税の参道と判断(2023年9月18日号・№995)

大阪高裁、固定資産税の課税処分を取消し
寺院山門と商業施設一体の土地、空洞部分は非課税の参道と判断


 宗教法人の保有する寺院の山門と商業施設が一体になった建物の空洞部分(参道)に課された固定資産税額の取り消しを求めた控訴審で、大阪高等裁判所第6民事部(大島眞一裁判長)は令和5年6月29日、固定資産税の賦課決定処分を適法とした原判決を変更し、課税処分を取り消した(令和4年(行コ)第164号)。宗教法人(寺院)の逆転勝訴となった形だ。大阪高裁は、建物は課税用途(商業施設)と非課税用途(宗教施設)の複数の用途に供されているとした上で、空洞部分の参道では商業行為は行われておらず、土地全体を収益事業とすることは、地方税法348条2項に反するとの判断を示した。

商業施設と宗教施設が混在すると認定も、大阪地裁は収益事業と判断

 本件は、宗教法人の所有する寺院の山門及び参道の一部(以下「本件対象地」)が、商業施設と一体になった空洞部分にあるため、その参道の空間が宗教施設に該当するか、すなわち、固定資産税が非課税となるか争われたものである。本件対象地が含まれる建物は、地上17階建てで、1階から3階までの中央部には、本堂に通り抜けができるように、幅約21m、高さ約13mの空洞が設けられ、5階から17階にはホテルが入居する商業施設となっていた(参照)。

 宗教法人における固定資産税については、「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に対しては、固定資産税を課すことができない旨定められている(地方税法348条2項3号)。被控訴人(被告)の大阪市は、土地全体に借地権が設定されており、本件対象地の上には商業施設が存在していることなどを理由に、令和2年度の固定資産税として、本件対象地を含む土地全体の面積で算定した約3億1,800万円を賦課した。これに対して控訴人(原告)は、本件対象地は本堂への唯一の参道として使用されており、宗教法人の宗教目的のために必要不可欠な土地であるとして、参道の空間は「宗教法人が専らその本来の用に供する……境内地」に該当すると主張し、賦課決定処分の取り消しを求めていた。なお、建物と土地の接地面については、商業用地として課税されることに争いはない。
 原審の大阪地裁は、本件対象地は本堂に参拝するための参道として日常的に使用され、宗教的行事等にも使用されている土地であることなどから、地方税法348条2項3号に規定する「宗教法人法第3条に規定する……境内地」に当たるとしたが、その一方で、本件対象地の空洞の上部には商業施設が存在し、収益事業である不動産賃貸業のために使用されていることや、建物の空洞部分とその上部の建物部分とを区別することなく土地全体に借地権を設定し、その対価として不動産会社から賃料を受領していると認められると指摘。本件対象地が参道として使用されていても、同時に商業施設として恒常的に使用されている場合は、原則として「宗教法人が専らその本来の用に供する」ものには当たらないとの判断を示し、原告の宗教法人の請求を棄却した(令和3年(行ウ)第63号・令和4年11月17日判決)。

大阪高裁、参道は借地契約の対象外とするのが相当

 控訴審となった大阪高裁は、土地について地方税法348条2項の適用の可否を検討するには土地の用途が何であるかを認定する必要があるが、土地の所有権は地盤と地上空間を支配する権能であって、土地の用途はその地上空間(又は地下地盤)がどのような用途に供されているかによって決まることになるとの見解を示した。
 その上で、大阪高裁は、本件対象地を含む土地全体が不動産会社に賃貸されていることは借地契約からも明らかであるものの、これは平面的に見た場合であって、立体的に見た場合は異なるものであると指摘。賃貸されているのは参道空間を除く部分であり、地面には敷石が敷き詰められ、天井は寺院の天井を連想させる格子状の外装となっているなど、本件土地は課税用途(商業施設)と非課税用途(宗教施設)の複数の用途に供されている土地であるとした。また、借地契約では、宗教的雰囲気と尊厳を損なうような建物の利用をしないよう配慮すべきことまでが合意されており、参道部分が大きな店舗あるいは多数の店舗の収容が可能な空間であるにもかかわらず、商業行為をしていないことからも、参道の空間が賃貸借契約の対象物件から除外されているとするのが相当であり、借地契約の対価(賃料)には、参道空間の使用収益を含んでいないと判断した。したがって、大阪高裁は、課税用途(商業施設)と非課税用途(宗教施設)が混在する本件土地のうち、非課税用途に供されている部分にまで固定資産税を賦課することは地方税法348条2項に反するとして、原判決を変更し、約480万円分の賦課決定処分を取り消した。

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