カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2023年10月16日 未公開裁決事例紹介 課税売上割合に準ずる割合の承認取消しの可否(2023年10月16日号・№999)

未公開裁決事例紹介
課税売上割合に準ずる割合の承認取消しの可否
事業実態等に応じて合理的に配分


〇課税売上割合に準ずる割合が合理的に算出されたものではいことを理由として、同割合の承認を取り消すことができるか否かが争われた裁決。国税不服審判所は、準ずる割合は請求人(金融機関)の営む事業の実態や共通対応課税仕入れの内容及び性質に応じて、共通対応課税仕入れを課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとに合理的に配分する割合といえ、合理的に算定されるものに該当するから、準ずる割合の承認を取り消すことはできないとの判断を示し、原処分の全部を取り消した(大裁(諸)令4第39号、全部取消し)。

主  文

 原処分を取り消す。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、金融機関である審査請求人(以下「請求人」という。)が、提携金融機関の現金自動預払機の利用における共通対応課税仕入れに係る仕入控除税額の計算について、原処分庁から消費税法第30条第3項第2号に規定する課税売上割合に準ずる割合の適用の承認を受けていたところ、原処分庁が、当該承認に係る課税売上割合に準ずる割合は合理的に算出されたものではないとして、当該承認の取消処分を行ったことから、これを不服とした請求人が、その取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実及び審査請求に至る経緯

 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人について
 請求人は、×××××に基づいて、預金、融資、為替、国債・投資信託の窓口販売など日本国内における金融業務全般を事業とする金融機関であり、請求人に口座を保有する者(以下「請求人顧客」という。)との間で、預金の引出し、預入れ、振替、振込み及びカードローンの借入れ等の取引を行っている。
ロ 請求人顧客に対する現金自動預払機の利用サービスの提供について
(イ)請求人は、請求人顧客に対して預金の引出し、預入れ、振替、振込み及びカードローンの借入れ等の取引を現金自動預払機(以下「ATM」という。)を利用して行うことができるサービスを提供するため、自らATMを設置するとともに、他の金融機関その他の法人との間で、各自の顧客が各自の設置するATMを相互に利用できる旨の契約を締結している(以下、当該契約を「本件提携契約」といい、請求人との間で本件提携契約を締結している他の金融機関その他の法人を「提携金融機関等」という。また、請求人の設置するATMを「請求人ATM」といい、提携金融機関等の設置するATMを「提携ATM」という。)。
  請求人は、本件提携契約に基づき、当該提携に係る経費の分担金(以下「本件事務委託費」という。)及び請求人顧客が提携ATMを利用した件数に応じた提携金融機関等に対する手数料(以下「本件支払為替手数料」といい、本件支払為替手数料及び本件事務委託費を併せて「本件支払手数料」という。)を負担している。
(ロ)請求人顧客が提携ATMを利用して請求人の口座に係る取引を行った場合、請求人顧客は、提携ATMの利用に係る手数料を負担しなければならず、この手数料は請求人顧客が提携ATMを利用して取引を行った際に請求人顧客の口座から引き落とされる。もっとも、請求人は、××××××××××を実施しており、××××××××××している。
  請求人は、上記請求人顧客の提携ATMの利用に係る手数料について、請求人顧客の利用した提携ATMが×××××の設置したものである場合には請求人が収受するものとし(以下、請求人顧客が×××××の設置する提携ATMを利用した場合に請求人が受け取る手数料を「本件受取手数料」という。)、×××××以外の提携金融機関等の設置したATMである場合に請求人顧客が支払った当該手数料は当該提携金融機関等が収受するものとしていた。
ハ 課税売上割合に準ずる割合の適用の承認について
(イ)課税売上割合に準ずる割合の適用の承認申請に向けた原処分庁との協議について
  請求人の担当者及び顧問税理士らは、提携ATMの利用に係る課税仕入れ等のうち共通対応課税仕入れであるもの(以下「提携ATMに係る共通対応課税仕入れ」という。)に係る共通仕入控除税額(以下「提携ATMに係る共通仕入控除税額」という。)などの計算に課税売上割合に準ずる割合を用いることについて、×××××の承認を受けるため、平成28年4月から平成29年1月にかけて、原処分庁所属の担当職員との間で、請求人が用いようとする課税売上割合に準ずる割合の内容などについての協議をした。
(ロ)課税売上割合に準ずる割合の適用の承認申請について
 A 請求人は、平成29年1月26日、×××××に対し、提携ATMに係る共通仕入控除税額などの計算に課税売上割合に準ずる割合を用いることについての適用の承認申請を行った(以下「本件旧承認申請」という。)。
  本件旧承認申請は、本件支払手数料を提携ATMに係る共通対応課税仕入れについて生じる具体的な費用とするものであった。また、本件旧承認申請は、請求人ATM、又は請求人ATMと提携ATMの両方の維持、運用、取得、利用に係る課税仕入れ等のうち共通対応課税仕入れであるものについての共通仕入控除税額の計算に用いようとする課税売上割合に準ずる割合についてもその内容とするものであった。
 B 本件旧承認申請における提携ATMに係る共通仕入控除税額の計算に用いる課税売上割合に準ずる割合(以下「本件準ずる割合」という。)の内容は、次のとおりである。
 (A)本件準ずる割合の計算方法
 本件準ずる割合は、次の(B)の提携ATMにおける課税資産の譲渡等に係る取引件数(以下「提携ATMにおける課税取引件数」という。)を、提携ATMにおける課税取引件数と次の(C)の提携ATMにおける非課税資産の譲渡等(消費税法別表第一に掲げるもので消費税を課さない資産の譲渡等)に係る取引件数(以下「提携ATMにおける非課税取引件数」という。)の合計件数(以下「提携ATMにおける取引件数」という。)で除する計算方法によって算出する。
 (B)提携ATMにおける課税取引件数とは、提携ATMで行われた次の各取引の件数の合計件数をいう。
  a 請求人のカードによる引出し(手数料を収受するものに限る。)
  b 請求人のカードによる預入れ(手数料を収受するものに限る。)
  c 請求人のカードローンの返済(手数料を収受するものに限る。)
 (C)提携ATMにおける非課税取引件数とは、提携ATMで行われた次の各取引の件数の合計件数をいう。
  a 請求人のカードによるカードローン借入れ(手数料を収受しないものに限る。)
  b 請求人のカードによる引出し・振込み等における当座貸越し(手数料を収受しないものに限る。)
(ハ)本件旧承認申請に係る承認について
  ×××××は、請求人に対し、平成29年3月24日付で、共通仕入控除税額の計算に本件準ずる割合を用いること及びその他の本件旧承認申請に係る課税売上割合に準ずる割合を用いることを承認する旨の通知をした(以下、当該通知による承認を「本件旧承認」という。)。
ニ 本件旧承認の取消処分について
(イ)原処分庁所属の調査担当職員は、令和2年1月から同年6月にかけて、請求人の平成28年4月1日から平成31年3月31日までの各事業年度に係る法人税及び各課税期間に係る消費税について、請求人に対する実地の調査を行った。
(ロ)×××××は、上記調査の結果に基づき、請求人に対し、令和4年1月27日付で本件旧承認を取り消す旨の処分(以下「本件取消処分」という。)を行った。なお、本件取消処分の効果は、消費税法施行令第47条第5項の規定するところにより、本件取消処分のあった日の属する課税期間以後の課税期間、すなわち、令和3年4月1日を始期とする課税期間(以下「本件課税期間」という。)から生じる。
  本件取消処分の理由は、本件準ずる割合の計算方法の提携ATMにおける課税取引件数には本件受取手数料の生じる取引が含まれるところ、当該取引は、×××××が恒常的に実施されており、実質的には恒常的に課税売上げを生じない取引となっているため、提携ATMにおける課税取引件数に含めるべきではなく、本件準ずる割合の計算方法によって算定される本件準ずる割合が課税売上割合に準ずる割合として合理的に算定されるものとは認められないことから、消費税法施行令第47条第3項に規定する「その承認に係る課税売上割合に準ずる割合を用いて共通仕入控除税額を計算することを不適当とする特別の事情が生じたと認める場合」に当たるというものであり、その旨が本件取消処分の通知書にも記載されていた。
ホ 本件取消処分後の課税売上割合に準ずる割合の適用の承認申請について
(イ)請求人は、令和4年2月24日、×××××に対し、本件旧承認申請のうち本件準ずる割合に関する部分を除いた内容の課税売上割合に準ずる割合についての適用の承認申請を行った(以下「本件新承認申請」という。)。
(ロ)×××××は、請求人に対し、令和4年4月11日付で本件新承認申請に係る課税売上割合に準ずる割合の適用を承認する旨の通知をした(以下、当該通知による承認を「本件新承認」という。)。なお、本件新承認は、消費税法施行令第47条第6項の規定により、同年3月31日において、その承認があったものとみなされることから、本件課税期間から適用される。
へ 本件取消処分に対する審査請求について
 請求人は、令和4年4月25日、本件取消処分に不服があるとして、その取消しを求めて審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。

争点および主張

(1)本件新承認後も本件取消処分の取消しを求める本件審査請求に審査請求の利益があるか否か(争点1)。
(2)原処分庁は、本件準ずる割合が課税売上割合に準ずる割合として合理的に算出されるものでないことを理由として、本件旧承認を取り消すことができるか否か(争点2)。
(3)本件取消処分に処分理由の提示の不備の違法があるか否か(争点3)。

(争点についての主張は省略)

審判所の判断

(1)争点1(本件新承認後も本件取消処分の取消しを求める本件審査請求に審査請求の利益があるか否か。)について
イ 法令解釈
 国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項は、国税に関する法律に基づく処分に不服がある者は、不服申立てをすることができる旨規定しているところ、審査請求によって処分の取消しを求めるには、その処分を取り消すことによって回復される法律上の利益が存在していることが必要であり、その利益は審査請求の裁決を行う時にも存在していなければならない。
 そして、審査請求の利益があるか否かは、原処分を取り消すことによって回復すべき権利又は法律上の利益が存在しているか否かという観点から判断するものであって、審査請求に係る処分の法的効果が消滅し、処分の取消しによって回復すべき法的利益が存在しなくなったときは、当該処分の取消しを求める審査請求の利益はないことになると解するのが相当である。
ロ 当てはめ及び原処分庁の主張について
(イ)請求人は、上記のとおり、本件取消処分を受けた後、本件新承認を受けているが、本件新承認は、本件旧承認のうち本件準ずる割合に関する部分を除いたものをその内容とするものであり、提携ATMに係る共通仕入控除税額の計算に本件準ずる割合を用いることを承認したものではない。したがって、請求人が本件新承認に基づき提携ATMに係る共通仕入控除税額を計算することはできず、請求人が本件準ずる割合を用いて提携ATMに係る共通仕入控除税額を計算するためには、本件取消処分が取り消される必要がある。
  以上のとおり、請求人は、本件取消処分が取り消されない限り、本件準ずる割合を用いて提携ATMに係る共通仕入控除税額を計算することができないから、請求人には、本件取消処分を取り消すことによって回復すべき権利又は法律上の利益が存在していると認められる。したがって、本件審査請求には、本件取消処分の取消しを求める審査請求の利益がある。
(ロ)原処分庁は、本件取消処分が取り消されたからといって本件準ずる割合を用いることができることになるものではない旨主張するが、上記(イ)のとおり、本件取消処分が取り消されれば、本件準ずる割合を用いることができるようになるとともに、本件取消処分が取り消されない限り、請求人が本件準ずる割合を用いて提携ATMに係る共通仕入控除税額を計算することはできないのであるから、請求人には本件取消処分を取り消すことによって回復すべき権利又は法律上の利益が存在しているといえ、上記原処分庁の主張には理由がない。
(2)争点2(原処分庁は、本件準ずる割合が課税売上割合に準ずる割合として合理的に算出されるものでないことを理由として、本件旧承認を取り消すことができるか否か。)について
イ 法令解釈
 消費税法第30条第3項は、共通仕入控除税額の計算に当たり、税務署長の承認を得て、課税売上割合に代えて、当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定される割合を用いることができる旨規定している。
 共通仕入控除税額の計算に当たっては、仕入税額控除の趣旨が消費税の累積の排除にあることから、共通対応課税仕入れに係る消費税の金額のうち課税資産の譲渡等に要する範囲を明らかにするため、共通対応課税仕入れに係る消費税の金額の合計額に課税売上割合を乗じることを原則とするが、事業者が営む事業や共通対応課税仕入れの種類によっては、共通対応課税仕入れに係る消費税の金額に占める課税資産の譲渡等に要するものの範囲が必ずしも課税売上割合に反映されない場合があると考えられる。消費税法第30条第3項は、かかる事例に対処するため、課税売上割合よりも合理的な割合を適用することがその事業者にとって適切であるならば、その合理的な割合を認める趣旨の規定であると解される。
 したがって、共通仕入控除税額の計算に当たって事業者の用いようとする割合が合理的に算出されたものであるか否かは、当該割合が、事業者の営む事業の実態や共通対応課税仕入れの内容及び性質に応じて、共通対応課税仕入れに係る消費税の金額を課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとに合理的に配分するものか否かによって判断すべきである。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人の事業について
 A 請求人は、日本国内における金融業務全般を事業とする金融機関である。金融機関においては、貸出金利息、有価証券利息及び有価証券の譲渡対価等その他の資産の譲渡等による売上げが大きく、資産の譲渡等の対価の額の合計額に占めるその他の資産の譲渡等の対価の額の合計額の割合が高いことから、課税売上割合(消費税法第30条第6項に規定する課税売上割合をいう。)が他の業種よりも低くなっている。
 B 請求人は、上記のとおり、請求人顧客との間でATMを利用した取引を行うため、請求人ATMを設置するとともに、提携金融機関等との間で本件提携契約を締結している。その目的はATMの利用による請求人顧客の利便性の向上を図り、請求人の収益獲得の機会を増やすことにあるが、上記貸出金利息、有価証券利息及び有価証券の譲渡対価等の売上げは、請求人顧客が請求人との間でATMを利用して行う取引によるものではなく、当該売上げと請求人顧客のATM利用との間の相関性は低い。
  また、請求人顧客による提携ATMの利用による預金の引出しについては、所定の金額の範囲内とされており、上限金額が設定されている。
(ロ)本件支払手数料について
 本件支払手数料には、上記のとおり、本件支払為替手数料と本件事務委託費がある。
 本件支払為替手数料は、請求人顧客が提携ATMを利用して預金の引出し、預入れ、振替、振込み及びカードローンの借入れ等の取引を行った場合に請求人が提携金融機関等に対して支払う費用である。その金額は、本件提携契約に基づき、請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との取引件数の総数に応じて決定される。
 本件事務委託費は、請求人顧客が提携ATMを利用するために必要な請求人ATM及び提携ATMのネットワークを維持するために支払う費用であり、請求人と提携金融機関等が共同して負担している。請求人をはじめとする全国の×××××が負担する金額は、全国の×××××において分担すべき金額の総額を全国の×××××における顧客が提携ATMを利用して行った×××××との前年度の取引件数の総数を基にあん分して決定されている。
ハ 検討
(イ)本件支払手数料は、上記ロの(ロ)によれば、いずれも請求人が提携ATMを利用して請求人顧客との間で取引を行うために支払う費用である。
  請求人が提携ATMを利用して請求人顧客との間で取引を行った場合に請求人に生じる売上げとしては、提携ATMの利用に係る手数料収入のほか、預金の引出しや預入れ、振替、振込みに係る手数料収入、カードローンに係る利息収入などがあるところ、預金の預入れやカードローンに係る資金の貸付けなどは消費税法第6条《非課税》第1項、同法別表第一第3号並びに消費税法施行令第10条《利子を対価とする貸付金等》第1項及び第3項の規定により非課税取引に該当する。
  したがって、請求人が提携ATMを利用して請求人顧客との取引を行うために提携金融機関等から提携ATMの利用の提供を受けることは、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものといえ、請求人にとって共通対応課税仕入れに該当する。
(ロ)本件支払手数料のうち本件支払為替手数料の金額は、上記ロの(ロ)のとおり、請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との取引件数の総数に応じて決定されるものであるから、その金額は当該取引件数の総数に比例するものである。この取引件数の総数は、請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との課税資産の譲渡等の件数とその他の資産の譲渡等の件数の合計であるから、請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との取引件数の総数に占める課税資産の譲渡等に該当する取引の件数の割合は、当該課税資産の譲渡等に該当する取引の件数に比例するものである。したがって、本件支払為替手数料に係る消費税の金額に占める課税資産の譲渡等に要したものの割合は、請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との取引件数の総数に占める課税資産の譲渡等に該当する取引の件数の割合に比例するものである。
  また、本件支払手数料のうち本件事務委託費の金額は、上記ロの(ロ)のとおり、全国の×××××において分担すべき金額の総額を全国の×××××における顧客が提携ATMを利用して行った×××××との前年度の取引件数の総数を基にあん分して決定されるものである。請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との取引件数の総数に占める課税資産の譲渡等に該当する取引の件数の割合は、請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との課税資産の譲渡等に該当する取引の件数に比例するものである。したがって、本件事務委託費に係る消費税の金額に占める課税資産の譲渡等に要したものの割合は、請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との取引件数の総数に占める課税資産の譲渡等に該当する取引の件数の割合に比例するものである。
  以上のとおり、請求人顧客が提携ATMを利用して行った請求人との取引件数の総数に占める課税資産の譲渡等に該当する取引の件数の割合は、本件支払手数料に係る消費税の金額に占める課税資産の譲渡等に要したものの割合と比例することから、当該割合は、本件支払手数料の内容及び性質に応じて、本件支払手数料に係る消費税の金額を課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとに合理的に配分するものに当たる。
(ハ)本件準ずる割合は、上記のとおり、本件支払手数科を提携ATMに係る共通対応課税仕入れに係る具体的な費用として、これに係る共通仕入控除税額の計算に当たり、課税売上割合に代えて、提携ATMにおける取引件数に占める提携ATMにおける課税取引件数の割合を用いることを内容とすることから、その内容は、上記(ロ)に説示した内容に沿うものである。
  本件準ずる割合の計算方法は、上記基礎事実及び審査請求に至る経緯のハの(ロ)のBのとおりであるところ、その計算において提携ATMにおける課税取引件数及び提携ATMにおける非課税取引件数を用いることが合理的であることについては、当事者間に争いがない。当該計算方法において、提携ATMにおける課税取引件数は、手数料を収受するものに限るとされているが、請求人顧客との間の提携ATMを利用した取引が課税資産の譲渡等に該当する場合であっても、請求人が請求人顧客から手数料を収受しない場合、請求人が請求人顧客から収受する消費税は存在しないのであるから、仕入税額控除を認める必要はなく、提携ATMにおける課税取引件数に含まれるものを、手数料を収受するものに限ることも合理的である。また、提携ATMにおける非課税取引件数は、手数料を収受しないものに限るとされているが、請求人顧客との間の提携ATMを利用した取引がその他の資産の譲渡等に該当する場合であっても、請求人が請求人顧客から手数料を収受する場合、その手数料の中には提携ATMの利用に係る消費税が含まれているから、提携ATMにおける非課税取引件数に含まれるものを手数料を収受しないものに限ることが合理的でないとはいえない。
  以上のとおり、本件準ずる割合は、上記(ロ)に説示した内容に沿うものであって、その計算に用いられる提携ATMにおける課税取引件数及び提携ATMにおける非課税取引件数の内容も適切であるから、本件支払手数料の内容及び性質に応じて、本件支払手数料に係る消費税の金額を課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとに合理的に配分するものといえる。
  したがって、本件準ずる割合は、消費税法第30条第3項第1号にいう「事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるもの」に当たる。
(ニ)よって、本件旧承認については、消費税法施行令第47条第3項に規定する「その承認に係る課税売上割合を用いて共通仕入控除税額を計算することを不適当とする特別の事情」が本件旧承認後に生じた後発的事由に限られるか否かにかかわらず、課税売上割合に準ずる割合として合理的に算出されるものでないことを理由として取り消すことができない。
  以上によれば、本件取消処分は理由がなく、違法であるから、取り消されるべきである。
ニ 原処分庁の主張について
(イ)原処分庁は、×××××の結果、本件受取手数料が×××××されており、実質的には××××××××××にもかかわらず、これが提携ATMにおける課税取引件数に含まれているとして、本件準ずる割合は課税売上割合に準ずる割合として合理的に算定されるものではない旨主張する。
  しかしながら、本件準ずる割合は、その文言上、提携ATMにおける課税取引件数を提携ATMにおける取引件数によって除する計算方法によって算定されるにすぎず、×××××が行われた場合に当該取引が提携ATMにおける課税取引件数に含まれることを前提にするものとはいえない。本件準ずる割合の計算方法が、本件支払手数料の内容及び性質に応じ、本件支払手数料に係る消費税の金額を課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとに合理的に配分するものであることは、上記ハに説示したとおりであり、×××××が行われた場合に当該取引が提携ATMにおける課税取引件数に含まれるか否かは、本件準ずる割合を具体的に計算する際の適用上の問題であって、本件準ずる割合の計算方法自体の合理性に影響を及ぼす事情とはいえない。
  したがって、原処分庁の主張は、その前提を欠くものであるから、理由がなく採用できない。
(ロ)原処分庁は、本件準ずる割合が、請求人の課税売上割合と比較して著しく高率であることから、本件準ずる割合が請求人の提携ATMに係る取引の実態を適切に反映しているとはいえない旨主張する。
  しかしながら、消費税法第30条第3項が、共通仕入控除税額の計算に当たって、課税売上割合に準ずる割合を用いることができる旨規定している趣旨は、上記イのとおり、事業者が営む事業や共通対応課税仕入れの種類によっては、共通対応課税仕入れに係る消費税の金額に占める課税資産の譲渡等に要するものの範囲が必ずしも課税売上割合に反映されない場合があることから、事業者にとって適切な合理的な割合を用いることを認めることにある。したがって、本件準ずる割合が課税売上割合と比較して著しく高率であることをもって、本件準ずる割合が合理的に算定されるものでないということはできない。
  課税売上割合は、請求人の事業全体の売上げに基づいて算定されるところ、請求人は、上記のとおり、金融業務全般を事業とする金融機関であり、その事業全体の中では、貸出金利息、有価証券利息及び有価証券の譲渡対価等その他の資産の譲渡等による売上げが大きく、資産の譲渡等の対価の額の合計額に占めるその他の資産の譲渡等の対価の額の合計額の割合が高いことから、課税売上割合が他の業種よりも低くなっている。そして、請求人の売上げに占める割合の大きい上記貸出金利息、有価証券利息及び有価証券の譲渡対価等の売上げは、請求人顧客が請求人との間でATMを利用して行う取引によるものではなく、当該売上げと請求人顧客のATMの利用との間の相関性は低いのであるから、請求人の課税売上げが、提携ATMを含むATMを利用した取引の実態を反映したものであるとも認められない。
  以上に加え、本件準ずる割合が、本件支払手数料の内容及び性質に応じて、本件支払手数料に係る消費税の金額を課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとに合理的に配分するものであることは、上記ハのとおりであるから、本件準ずる割合と課税売上割合の乖離が大きいことをもって、本件準ずる割合が、消費税法第30条第3項第1号に規定する「事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるもの」に当たらないということはできない。
  以上のとおり、原処分庁の主張には理由がないから、採用できない。
(3)本件取消処分の適法性について
 本件準ずる割合は、上記(2)のハのとおり、合理的に算出されるものであることから、争点3について判断するまでもなく、本件取消処分は違法であり、取り消すべきである。
(4)結論
 よって、審査請求には理由があるから、原処分を取り消すこととし、主文のとおり裁決する。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索