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解説記事2023年12月11日 税制改正解説 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設(上)(2023年12月11日号・№1006)

税制改正解説
各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設(上)
 山本真太郎

はじめに

 令和5年度税制改正においては、「第2の柱」(グローバル・ミニマム課税)のうち所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)に係る法制化(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設等)を行うこととされた。
 この各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税関係の改正は、次の法令により行われる。
(法律)
・所得税法等の一部を改正する法律(令5.3.31法律第3号)
(政令)
・法人税法施行令の一部を改正する政令(令5.6.16政令第208号)
・地方法人税法施行令の一部を改正する政令(令5.6.16政令第209号)
・国税通則法施行令の一部を改正する政令(令5.6.16政令第210号)
・租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(令5.6.16政令第211号)
(省令)
・法人税法施行規則の一部を改正する省令(令5.6.30財務省令第47号)
・地方法人税法施行規則の一部を改正する省令(令5.6.30財務省令第48号)
・国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令の一部を改正する省令(令5.6.30財務省令第49号)

第一 法人税法関係

一 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設

Ⅰ 導入の経緯及び制度の概要

(1)導入の経緯
① BEPSプロジェクトとその後の国際的な議論の動向
  「BEPSプロジェクト」は、公平な競争環境の確保という考え方の下、各国政府・グローバル企業の透明性を高め、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)を防止するために、国際課税ルール全体を見直す取組みとして、平成24年(2012年)にOECD租税委員会によって立ち上げられ、その後、平成27年(2015年)に「BEPS最終報告書」が公表された。
  BEPSプロジェクトにおいて示された15の行動計画のうち、行動1では「電子経済の課税上の課題への対応」について検討が行われ、消費課税上の課題については見直しを提言するに至ったが、法人課税における対応については合意に至らず、将来に向けて検討を継続することとされていた。その後の検討を経て、令和3年(2021年)10月に、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」(Inclusive Framework on BEPS)において、市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)とグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の「2本の柱」からなる解決策が最終的に合意されるに至った。
  このうちグローバル・ミニマム課税は、年間総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の国際的な活動を行う企業グループを対象に、一定の適用除外部分を除いた所得について各国ごとに最低税率15%の課税を確保するという仕組みであり、低い法人税率や優遇税制によって外国企業を誘致する動き(いわゆる「法人税引下げ競争」)により各国の法人税収基盤が弱体化するとともに、税制面において企業間の公平な競争条件が阻害されてきたことへの対応策と位置付けられている。
(参考)「第1の柱」である市場国への新たな課税権の配分は、売上高200億ユーロ超、利益率10%超の大規模・高利益水準の多国籍企業グループを対象に、利益率10%を超える残余利益の25%を、市場国に新たな課税権として配分する仕組みであり、市場国に支店等の恒久的施設(PE:Permanent Establishment)を置かずにビジネスを行う企業が増加する中で、PEがある場合にのみ、そのPEの事業から生じた所得へ課税できるとする既存の国際課税ルール(「PEなければ課税なし」)では、市場国において課税を行うことができないという問題が顕在化していることへの対応策と位置付けられているものである。
② グローバル・ミニマム課税を巡る最終合意以降の動き
  令和3年(2021年)の最終合意以降、同年12月、BEPS包摂的枠組みにより、各国が国内法整備に当たって参照すべきモデルルール(Global Anti-Base Erosion Model Rules)が、次いで令和4年(2022年)3月には当該モデルルールに係るコメンタリー(Commentary to the Global Anti-Base Erosion Model Rules)が承認された。その後も、納税者のコンプライアンス上の事務負担の軽減等の観点からセーフハーバー等に関するルールを定めた「実施パッケージ(Implementation Package)」(令和4年(2022年)12月)及び、制度の明確化等の観点からコメンタリーを補足する「執行ガイダンス(Administrative Guidance)」(令和5年(2023年)2月)がそれぞれ公表されている。
  これらにより、2021年10月の合意において2022年末までの目標とされていた「実施枠組み(Implementation Framework)」の策定が達せられたが、引き続き、制度の詳細についての議論が継続されており、合意されたものから順次、追加的な執行ガイダンス等の形で公表されていく見通しとなっている(注1)・(注2)。
(注1)このように、グローバル・ミニマム課税の制度的枠組みはモデルルール及びその解釈を示したコメンタリーのほか、これらを補足するガイダンスによって構成されている。本稿においては、以下、これら一連のルール等を包括して「GloBEルール」(GloBE Rule: Global Anti-Base Erosion Rule)という。
(注2)これらの公表の後、令和5年(2023年)7月には追加の執行ガイダンスが公表されているが、令和5年度税制改正においては上記の令和5年(2023年)2月に公表された執行ガイダンスのみが法制化の対象とされている。
(2)グローバル・ミニマム課税の概要
① 国際的な位置付け
  令和3年(2021年)の最終合意において、GloBEルールは、「コモン・アプローチ」と位置付けられている。これは、BEPS包摂的枠組みへの各参加国は、必ずしも国内で同制度を採用することを要求されない一方、採用する場合には、モデルルールやコメンタリーのほか合意された各ガイダンス等に定められた結果に整合する形で制度を実施・運用することが求められるというものである。
② 制度の構成
  グローバル・ミニマム課税は、次の3つのルールから構成されている。
イ 所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)
  国際的な活動を行う企業グループ(MNEグループ)に属する子会社等の所在する国・地域(所在地国)における実効税率が最低税率(15%)を下回る場合に、親会社等の所在地国で、当該親会社等に対して、その税負担が最低税率相当に至るまで課税する仕組みである。例えば、我が国に親会社等が、軽課税国に子会社等が所在する場合、我が国において当該親会社等に対して、当該子会社等の税負担が最低税率に至るまで課税が行われる。
ロ 軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)
  MNEグループの親会社等の所在地国における実効税率が最低税率を下回る場合に、子会社等の所在地国でその税負担が最低税率相当に至るまで課税する仕組みである。例えば、我が国に子会社等が、軽課税国に親会社等が所在する場合、我が国において当該子会社等に対して、当該親会社等の税負担が最低税率に至るまで課税が行われる。
  制度上、UTPRは、IIRのもとで課税が行われない限定的な状況においてのみ適用されることが想定されている。仮にIIRのみで制度が構成されている場合、例えば、本来IIRの課税を受けるべき親会社等を軽課税国に移転する一方、軽課税国に所在する子会社等をもともと親会社等が所在していた国に移転することでIIRの課税を回避する行動が想定される。これに対して、子会社等の所在地国においてUTPRによる課税が行われれば、最低税率による課税は確保されることになる。したがって、そうした意味において、UTPRはIIRによる課税を補完する機能を果たすこととなる。
ハ 適格国内ミニマムトップアップ課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)
  MNEグループに属する会社等について、その所在地国における実効税率が最低税率を下回る場合に、当該所在地国において当該会社等に対して、その税負担が最低税率に至るまで課税する仕組みである。
  QDMTTによって最低税率相当まで課税が行われた場合には、その税額を他国からのIIRやUTPR課税上で計算された税額から控除することが認められる。したがって、QDMTTは、他国のIIRやUTPR課税について生じるべき税額を減殺する点において、他国のIIRやUTPR課税から自国に所在する会社等を防衛する機能を持つものといえる。

Ⅱ 納税義務者

 内国法人は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税を納める義務がある(法法4①)。
 ただし、公共法人については、その義務はないこととされている(法法4②)。

Ⅲ 課税所得の範囲

 特定多国籍企業グループ等に属する内国法人に対しては、各対象会計年度の国際最低課税額について、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税を課することとされている(法法6の2)。

Ⅳ 対象会計年度

 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の課税期間は「対象会計年度」とされている。ここでいう対象会計年度は、多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結等財務諸表の作成に係る期間をいう(法法15の2)。

Ⅴ 定義等

 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税における重要な用語について、法律、政令及び省令において、それぞれ定義規定が設けられている。

1 特定多国籍企業グループ等
(1)特定多国籍企業グループ等

 特定多国籍企業グループ等とは、原則として、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロを本邦通貨表示の金額に換算した金額以上である多国籍企業グループ等をいう(法法82四)。
(注1)「総収入金額」とは、多国籍企業グループ等に係る最終親会社等の連結等財務諸表における売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額をいう(法規38の6①)。
(注2)対象会計年度の期間が1年でない場合には、7億5,000万ユーロを12で除し、これにその対象会計年度の月数を乗じて計算した金額とすることとされている(法令155の6①)。なお、上記の月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とすることとされている(法令155の6②)。
(2)連結等財務諸表
 連結等財務諸表とは、特定財務会計基準又は適格財務会計基準に従って企業集団の財産及び損益の状況を連結して記載した計算書類等の一定の計算書類をいう(法法82一、法規38の4)。
(注1)「特定財務会計基準」とは、国際的に共通した会計処理の基準その他これに準ずるものをいい、具体的には、次に掲げる会計処理の基準とされている。
 ① 国際会計基準(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第93条(指定国際会計基準に係る特例)に規定する国際会計基準をいう。下記②において同じ。)
 ② 我が国又は次に掲げる国若しくは地域において一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(国際会計基準を除く。)
  イ アメリカ合衆国
  ロ インド
  ハ 英国
  ニ オーストラリア
  ホ カナダ
  ヘ シンガポール
  ト スイス
  チ 大韓民国
  リ 中華人民共和国
  ヌ ニュージーランド
  ル ブラジル
  ヲ 香港
  ワ メキシコ
  カ ロシア
  ヨ 欧州連合の加盟国
  タ 欧州経済領域の加盟国(上記ヨに掲げる国を除く。)
(注2)「適格財務会計基準」とは、最終親会社等(下記10(2)①に掲げる共同支配会社等を含む。)の所在地国において一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(特定財務会計基準を除く。)をいう。
(3)企業グループ等
 企業グループ等とは、次に掲げるものをいう(法法82二、法令155の4、法規38の5)。
① 連結等財務諸表にその財産及び損益の状況が連結して記載され、又は記載されることとなる会社等(重要性の乏しいこと等の理由により連結の範囲から除かれ、又は除かれることとなる一定の会社等を含む。)に係る企業集団のうち、最終親会社に係るもの
② 会社等(上記①の企業集団に属するものを除く。)のうち、その会社等の恒久的施設等の所在地国がその会社等の所在地国以外の国又は地域であるもの
(注)「会社等」とは、会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)をいう。
(4)多国籍企業グループ等
 多国籍企業グループ等とは、次に掲げる企業グループ等をいう(法法82三、法令155の5)。
① 上記(3)①の企業グループ等に属する会社等の所在地国が2以上ある場合のその企業グループ等その他これに準ずる企業グループ等
② 上記(3)②の企業グループ等

2 導管会社等
(1)概要

 一定の会社等について、国又は地域の租税に関する法令において、課税上透明であるものとして取り扱われる場合がある。このような会社等の区分として導管会社等という概念が設けられている。このような性質に鑑み、例えば、所在地国の判定やグループ国際最低課税額の計算において、一般的な構成会社等とは異なった特殊な取扱いが定められている。
(2)意義
 導管会社等とは、収入等の全部が次に掲げるもののいずれかに該当する会社等をいう(法法82五、法令155の7)。
① 会社等(設立国以外の国又は地域の租税に関する法令において、その国又は地域に本店等の場所を有することにより、対象租税を課することとされるものを除く。)の設立国の租税に関する法令において構成員の収入等として取り扱われる収入等
② 会社等(いずれかの国又は地域の租税に関する法令において、その国又は地域に本店等の場所を有することにより、対象租税又は自国内最低課税額に係る税を課することとされるもの及び設立国に事業を行う場所を有するものを除く。)の構成員の所在する国又は地域の租税に関する法令において構成員の収入等として取り扱われ、かつ、会社等の恒久的施設等に帰せられない収入等

3 恒久的施設等
(1)概要

 本税制では、国又は地域における実効税率の計算を適切なものとするため、会社等が恒久的施設等を有する場合における実効税率が基準税率以上であるかどうかの判定は、会社等の所在地国と恒久的施設等の所在地国のそれぞれについて判定することとされている。
 なお、恒久的施設等という概念は、あくまでも会社等の一構成部分を指すものである。そのため、会社等が恒久的施設等を有することをもって、その会社等の概念が恒久的施設等を除いた部分になるわけではない。
(2)意義
 恒久的施設等とは、会社等の所在地国以外の国又は地域(3において「他方の国」という。)において会社等の事業が行われる場合における次に掲げる場所をいう(法法82六、法規38の8)。
① 条約等に基づいて他方の国における恒久的施設又はこれに相当するものとして取り扱われる事業が行われる場所
② 条約等がない場合において、他方の国の租税に関する法令において当該他方の国においてその会社等の事業が行われる場所を通じて行われる事業から生ずる所得に対して租税を課することとされるときにおけるその事業が行われる場所
③ 他方の国に法人の所得に対して課される租税が存在しない場合において、OECDモデル租税条約第5条における恒久的施設又はこれに相当するもの
④ 他方の国においてその会社等の事業が行われる場所が上記①から③までに掲げる場所に該当しない場合において、その所在地国の租税に関する法令においてその事業が行われる場所を通じて行われる事業から生ずる所得に対して租税を課することとされないときにおけるその事業が行われる場所

4 所在地国
(1)概要

 内国法人の属する企業グループ等が多国籍企業グループ等に該当するか否かの判定や国又は地域別に実効税率の計算を行うためには、その企業グループ等に属する会社等の所在地国を決定する必要がある。その決定方法が次のように定められている。
(2)意義
 所在地国とは、次に掲げるものの区分に応じそれぞれ次に定める国又は地域をいう(法法82七)。
① 会社等(導管会社等を除く。) 次に掲げる会社等の区分に応じそれぞれ次に定める国又は地域
 イ 国又は地域の租税に関する法令において、当該国又は地域に本店等の場所を有することにより、法人税又は法人税に相当する税を課することとされる会社等 当該国又は地域
 ロ 上記イに掲げる会社等以外の会社等 その会社等の設立国
② 導管会社等(最終親会社等であるもの又は各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当するものを課することとされるものに限る。) その設立国
③ 恒久的施設等 上記3(2)①から③までに掲げる恒久的施設等の区分に応じそれぞれ上記3(2)①から③までの他方の国

5 所有持分
(1)概要

 本税制における各種の特殊な会社等の判定や国際最低課税額の計算等において所有持分に係る割合が多く用いられている。
(2)意義
 所有持分とは、連結等財務諸表の作成に用いる会計処理の基準によって会社等の純資産の部に計上されるその会社等に対する持分のうち利益の配当を受ける権利又は残余財産の分配を受ける権利が付されたものをいう(法法82八、法令155の9)。
 また、会社等の恒久的施設等がある場合においては、その会社等はその恒久的施設等に対する所有持分を有するものとみなすこととされる。

6 支配持分
(1)概要

 一般的に連結財務諸表の対象とされる会社等は、その連結財務諸表を作成する親会社等が支配持分を有する会社等とされる。本税制は、いわゆる連結財務諸表を基礎としてその適用に係る判定を行う仕組みであることから、その連結財務諸表の対象とされる会社等を特定するために支配持分の概念が規定されている。
(2)意義
 支配持分とは、企業集団に係る連結等財務諸表に財産及び損益の状況が連結して記載され、又は記載されることとなる会社等その他の一定の会社等に対する所有持分の全部をいう(法法82九)。
 また、会社等の恒久的施設等がある場合においては、その会社等はその恒久的施設等に対する支配持分を有するものとみなすこととされる。

7 最終親会社等、中間親会社等及び被部分保有親会社等
 特定多国籍企業グループ等に属する内国法人が次に掲げるいずれかの会社等に該当する場合には、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に係る申告書の提出義務が生ずる可能性がある。
(1)最終親会社等
 最終親会社等とは、最終親会社又は上記1(3)②に掲げる会社等をいう(法法82十)。
(2)中間親会社等
 中間親会社等とは、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等(恒久的施設等を除く。)のうち、他の構成会社等又は共同支配会社等に対する所有持分を直接又は間接に有する構成会社等(最終親会社等、被部分保有親会社等及び各種投資会社等を除く。)をいう(法法82十一)。
(3)被部分保有親会社等
イ 概要
  本税制における国際最低課税額を計算する場合、基本的には、特定多国籍企業グループ等の頂点に位置する最終親会社等から順にその適用を検討することとされている。ただし、被部分保有親会社等がある場合には、その被部分保有親会社等が有する国際最低課税額を優先して国際最低課税額の計算を行うこととされている。
ロ 意義
  被部分保有親会社等とは、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等(恒久的施設等を除く。)のうち、他の構成会社等又は共同支配会社等に対する所有持分を直接又は間接に有し、かつ、非関連者における直接・間接の請求権割合が20%を超える構成会社等(最終親会社等及び各種投資会社等を除く。)をいう(法法82十二、法令155の10①)。

8 構成会社等
 「構成会社等」とは、本税制の対象とされる特定多国籍企業グループ等に属する会社等(重要性の原則により連結会計の対象から除外されている会社等や譲渡目的で保有されることから連結会計の対象から除外されている会社等を含む。)をいう。また、本税制が国地域単位における実効税率に焦点を当てた仕組みであることから、会社等の恒久的施設等についても構成会社等として認識することとされている。
 具体的には、構成会社等とは、上記1(3)①に掲げる企業グループ等に属する会社等(除外会社等を除く。)及び上記1(3)②に掲げる会社等(除外会社等を除く。)並びにそれらの会社等の恒久的施設等をいう(法法82十三)。

9 除外会社等
(1)概要

 除外会社等に該当する会社等は、本税制の対象となる構成会社等に該当しないこととされる。基本的には、除外会社等として定められている会社等は、グループの連結財務諸表にその財産及び損益の状況が連結して記載されることはなく構成会社等に該当しないと考えられるが、モデルルールにおいては、網羅性と整合性の観点から、また、ルール適用の確実性を高めるために、これらの会社等を除外会社等として明示的に構成会社等の範囲から除外することとされている。
(注)モデルルールでは、政府や政府間組織なども「除外事業体(Excluded Entity)」に該当することとされているが、そもそもこれらの事業体は「会社等」に該当しないものと考えられるため、我が国の法制上はこれらの事業体を「除外会社等」として規定していない。したがって、例えば、国、地方公共団体、国際機関などの事業体は、本税制の対象となる構成会社等に該当しないものと考えられる。
 なお、除外会社等に該当する場合には、本税制の適用において次の3つの効果及び影響が生じる。
① 本税制の適用が求められない。例えば、除外会社等が最終親会社等である場合には、下位の中間親会社等において本税制(我が国以外の国又は地域における本税制に相当するものを含む。)を適用することになる。また、仮に特定多国籍企業グループ等に属する全ての会社等が除外会社等である場合には、その特定多国籍企業グループ等に対して本税制は適用されない。
② 本税制の適用上、除外会社等に係る損益、発生税額、有形資産等については、実効税率や国際最低課税額の計算から除外される。ただし、特定多国籍企業グループ等に該当するかどうかの判定における総収入金額の計算は、除外会社等の収入を含めて行う。
③ 特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供を含め、本税制における各種の執行上の義務が免除される。
(2)意義
 除外会社等とは、次に掲げる会社等をいう(法法82十四)。
① 政府関係会社等
  政府関係会社等とは、国等がその持分の全部を直接又は間接に有する会社等であって、次に掲げる要件を満たす会社等をいう(法法82十四イ、法令155の11①)。
 イ 国等が本来果たすべき役割を担うこと又は国等の資産を運用することを主たる目的とすること。
 ロ 利益を得ることを目的とする事業(国等のために行うものを除く。)を行わないこと。
 ハ 毎年、国等又は他の政府関係会社等のいずれかに対し、業務の実績を報告しなければならないこととされていること。
 ニ 国等又は他の政府関係会社等のみに対し、利益の配当を行い、かつ、その残余財産の全部が帰属することとされていること。
② 国際機関関係会社等
  国際機関関係会社等とは、国際機関のみによって保有される会社等をいう(法法82十四ロ)。
③ 非営利会社等
  非営利会社等とは、次に掲げる会社等をいう(法法82十四ハ、法令155の11②③、法規38の10①~③)。
 イ 次に掲げる要件を満たす会社等
 (イ)専ら宗教、慈善、学術、技芸、教育その他の公益を目的とする会社等であってその設立国における租税に関する法令においてその公益を目的とする活動から生ずる所得(収益事業から生ずる所得以外の所得に限る。)に対して法人税又は法人税に相当する税を課することとされないこと。
 (ロ)設立国においてその活動が行われること。
 (ハ)利益の配当を受ける権利が付された持分を有する者がないこと。
 (ニ)慈善を目的とする会社等以外の会社等及び特定の個人に対して金銭その他の財産の支払又は交付を行わず、かつ、その有する資産をこれらの者の利益のために使用しないこと。
   ただし、次に掲げる場合を除くこととされている。
   ⅰ これらの行為が慈善を目的として行われる場合
   ⅱ これらの行為がその業務に通常必要と認められる場合
    具体的には、支払若しくは交付をする金銭その他の財産の額又は供与をする経済的利益の価額が、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定めるものに照らし、これらの行為の基因となる取引に係る対価として相当であると認められる金額である場合とされている。
  (ⅰ)その取引に係る市場価格がない場合 その取引の内容その他の事情
  (ⅱ)その取引に係る市場価格がある場合 その取引に係る市場価格
 (ホ)残余財産の全部が設立国若しくはその地方公共団体(これらの者に係る政府関係会社等を含む。)又は他の非営利会社等に帰属することとされていること。
 (ヘ)設立の目的に直接関連しない事業を行わないこと。
 ロ 次に掲げる要件を満たす会社等
 (イ)次に掲げる会社等であること。
  ⅰ 商工会(我が国以外の国又は地域におけるこれに類するものを含む。)又は商工会議所(我が国以外の国又は地域におけるこれに類するものを含む。)
  ⅱ 労働組合(我が国以外の国又は地域におけるこれに類するものを含む。)
  ⅲ 専門的な知識及び技能を必要とする特定の業種に属する事業を行う者で組織する会社等
  ⅳ 事業上の共通の利益を有する者で組織する会社等
  ⅴ 農業又は園芸に従事する者で組織する会社等
  ⅵ 市民活動を行うことを目的として組織する会社等
  ⅶ 社会福祉の増進を目的とする事業のみを行う会社等
 (ロ)上記イ(ロ)から(ヘ)までに掲げる要件を満たすこと。
 (ハ)設立国における租税に関する法令においてその設立の目的とする活動から生ずる所得(収益事業から生ずる所得以外の所得に限る。)に対して法人税又は法人税に相当する税を課することとされないこと。
④ 年金基金
  年金基金とは、次に掲げる会社等をいう(法法82十四ニ、法令155の11④⑤、法規38の10④)。
 イ 次に掲げる要件を満たす会社等
 (イ)主として退職年金、退職手当その他これらに類する報酬(④において「退職年金等」という。)を管理し、又は給付することを目的として運営 されること。
 (ロ)次のいずれかに該当すること。
  ⅰ 設立国の法令の規定その他の制限により退職年金等の管理又は給付に関する業務が規制されるものであること。
  ⅱ 退職年金等の給付が設立国の規制によって確保されており、かつ、退職年金等を給付することができなくなった場合にその給付を補塡し、又は補足する旨を定める信託契約があることその他これに相当する措置が講じられていること(上記ⅰに掲げる要件に該当する場合を除く。)。
 ロ 主として次に掲げる事業のいずれかを行う会社等
 (イ)上記イの年金基金のために行う資産の運用
 (ロ)同一の企業グループ等に属する上記イの年金基金が行う退職年金等の管理又は給付に関する事業に付随する事業
⑤ 最終親会社等である投資会社等又は最終親会社等である不動産投資会社等(法法82十四ホ)
⑥ 1又は2以上の保有会社等(上記①から⑤までに掲げる会社等その他一定のものをいう。)との間にその保有会社等による持分の所有その他の事由を通じた密接な関係がある会社等(法法82十四ヘ、法令155の11⑥、法規38の10⑤~⑦)
(3)除外会社等に関する特例
 イ 趣旨
   原則として除外会社等は構成会社等から除くこととされるが、企業の判断によって一定の除外会社等に限り構成会社等に該当することを選択する特例が設けられている。例えば、所得合算ルールに係る申告書の提出義務を負う特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等が複数ある場合に、この選択を行うことによってその提出義務を負う構成会社等を1社に減少させることが可能。
  なお、この選択を行った場合には、5対象会計年度を経るまで、取りやめをすることができない。
 ロ 概要
 (イ)本特例の選択
   特定多国籍企業グループ等の各対象会計年度に係る特定多国籍企業グループ等報告事項等(その対象会計年度以後の各対象会計年度において上記(2)⑥の除外会社等に該当する会社等について本特例の適用を受けようとする旨を含むものに限る。(イ)において同じ。)の提供がある場合又は我が国以外の国若しくは地域の租税に関する法令を執行する当局にその特定多国籍企業グループ等報告事項等に相当する事項の提供がある場合(法人税法第150条の3第3項(特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供)の規定の適用がある場合(以下「提供義務免除規定の適用がある場合」という。)に限る。)には、その対象会計年度以後の各対象会計年度においてその会社等は除外会社等に該当しないものとして、法人税法の規定を適用する(法法82の3①)。
(注)本特例の選択は、その対象会計年度の直前の4対象会計年度のうちに「本特例の取りやめ((ロ)を参照)を行った対象会計年度」がない場合に限り、適用することができる(法法82の3③)。
  なお、その直前の4対象会計年度のうちに特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人がない対象会計年度がある場合には、ここでいう「本特例の取りやめを行った対象会計年度」には、本特例の取りやめに相当する我が国以外の国又は地域の租税に関する法令の規定の適用を受けることとなった対象会計年度を含むものとされる(法令155の57②)。
 (ロ)本特例の取りやめ
   特定多国籍企業グループ等の各対象会計年度に係る特定多国籍企業グループ等報告事項等(その対象会計年度以後の各対象会計年度において上記(2)⑥の除外会社等に該当する会社等について本特例の適用を受けることをやめようとする旨を含むものに限る。(ロ)において同じ。)の提供がある場合又は我が国以外の国若しくは地域の租税に関する法令を執行する当局にその特定多国籍企業グループ等報告事項等に相当する事項の提供がある場合(提供義務免除規定の適用がある場合に限る。)には、その会社等については、その対象会計年度以後の各対象会計年度において、本特例は適用しないこととされる(法法82の3②)。
 (注)本特例の取りやめは、その対象会計年度の直前の4対象会計年度のうちに「本特例の選択((イ)を参照)を受けることとなった対象会計年度」がない場合に限り、適用することができる(法法82の3④)。
   なお、その直前の4対象会計年度のうちに特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人がない対象会計年度がある場合には、ここでいう「本特例の選択を受けることとなった対象会計年度」には、本特例の選択に相当する我が国以外の国又は地域の租税に関する法令の規定の適用を受けることとなった対象会計年度を含むものとされる(法令155の57③)。
 (ハ)各対象会計年度の前対象会計年度(特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人がない対象会計年度に限る。)において、特定多国籍企業グループ等に属する上記(2)⑥の除外会社等に該当する会社等につき我が国以外の国又は地域の租税に関する法令を執行する当局に特定多国籍企業グループ等報告事項等に相当する事項(本特例に相当する我が国以外の国又は地域の租税に関する法令の規定の適用を受けようとする旨を含むものに限る。)の提供があった場合には、その会社等については、(イ)の特定多国籍企業グループ等報告事項等又は特定多国籍企業グループ等報告事項等に相当する事項の提供に関する要件にかかわらず、本特例の適用があるものとされる。すなわち、我が国における各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の適用の対象とされる対象会計年度の前対象会計年度において、我が国以外の国又は地域における本特例に相当する規定の選択を行っている場合には、特定多国籍企業グループ等報告事項等に係る記載要件に関わらず、我が国において本特例の適用が認められる(法令155の57①)。
  ただし、その対象会計年度において本特例の取りやめ((ロ)参照)の場合に該当するときは、この限りではない(法令155の57①ただし書)。

10 共同支配会社等
(1)概要

 特定多国籍企業グループ等の事業の一環として、いわゆるジョイントベンチャー(JV)を設立することがある。JVは持分法により特定多国籍企業グループ等の連結財務諸表に記載されるため、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等にしない。
 モデルルールでは、このようなJVのうち一定のもの(特定多国籍企業グループ等の最終親会社等が50%以上の持分を有するJV)についても、本税制の対象とし、グループ国際最低課税額の計算対象とすることとされている。なお、共同支配会社等については、構成会社等と異なり、本税制の納税義務は課されていない。
(2)意義
 共同支配会社等とは、次に掲げる会社等をいう(法法82十五、法令155の3②六、155の12)。
① 共同支配親会社等(最終親会社等の連結等財務諸表において持分法が適用され、又は適用されることとなる会社等で、最終親会社等における直接・間接の請求権割合が50%以上であるもの(特定多国籍企業グループ等の最終親会社等その他一定の会社等を除く。))
② 共同支配親会社等の連結等財務諸表にその財産及び損益の状況が連結して記載され、又は記載されることとなる会社等(除外会社等を除く。)
③ 上記①又は②に掲げる会社等の恒久的施設等
(注)「持分法」とは、会社等が他の会社等に対する所有持分を有する場合において、当該他の会社等の純資産及び損益のうち当該会社等に帰属する部分の変動に応じて、その投資の金額を各対象会計年度ごとに修正する方法をいう(法規38の11①)。

11 各種投資会社等
 モデルルールでは、各種投資会社等の収入が一般的に事業体レベルで課税されることはないという前提の下、各種の記載が行われる。そのため、所在地国が同一であることだけをもって各種投資会社等と一般的な構成会社等とをブレンディングして実効税率の計算を行うと適切な結果が算出されない可能性が高いといえる。そのため、各種投資会社等は一般的な構成会社等とは区分して実効税率の計算を行うこととされている。
 具体的には、各種投資会社等とは、次に掲げる会社等をいう(法法82十六)。
(1)投資会社等
(2)不動産投資会社等
(3)付随会社等
(4)保険投資会社等

12 無国籍会社等、無国籍構成会社等及び無国籍共同支配会社等
 無国籍会社等とは、会社等又は恒久的施設等のうち所在地国がないものをいい(法法82十七)、構成会社等のうち無国籍会社等に該当するものを無国籍構成会社等と(法法82十八)、共同支配会社等のうち無国籍会社等に該当するものを無国籍共同支配会社等と(法法82二十二)いうこととされている。

13 被少数保有構成会社等
① 概要
  被少数保有構成会社等は、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等以外の者にその持分の多くを所有されることが想定される。そのため、被少数保有構成会社等に係る投資構造に影響を及ぼさないよう、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等と被少数保有構成会社等が所在地国を同一にする場合であっても、それぞれ別個に国別実効税率等の計算を行うこととされている。
② 意義
  被少数保有構成会社等とは、構成会社等のうち、最終親会社等における直接・間接の請求権割合が30%以下であるものをいい(法法82十九、法令155の14)、他の被少数保有構成会社等の支配持分を直接又は間接に有する被少数保有構成会社等(他の被少数保有構成会社等がその支配持分を直接又は間接に有しないものに限る。)を被少数保有親構成会社等と(法法82二十)、被少数保有親構成会社等がその支配持分を直接又は間接に有する被少数保有構成会社等を被少数保有子構成会社等という(法法82二十一)こととされている。

14 被少数保有共同支配会社等
 被少数保有共同支配会社等とは、共同支配会社等のうち、共同支配親会社等における直接・間接の請求権割合が30%以下であるものをいい(法法82二十三、法令155の15)、他の被少数保有共同支配会社等の支配持分を直接又は間接に有する被少数保有共同支配会社等(他の被少数保有共同支配会社等がその支配持分を直接又は間接に有しないものに限る。)を被少数保有親共同支配会社等と(法法82二十四)、被少数保有親共同支配会社等がその支配持分を直接又は間接に有する被少数保有共同支配会社等を被少数保有子共同支配会社等という(法法82二十五)こととされている。

15 個別計算所得等の金額
(1)個別計算所得等の金額の計算

 個別計算所得等の金額とは、次に掲げるものの区分に応じそれぞれ次に定めるものとされている(法法82二十六、法令155の16~155の33)。
① 構成会社等 構成会社等個別計算所得等の金額(構成会社等の各対象会計年度に係る当期純損益金額に加算調整額を加算した金額から減算調整額を減算した金額をいい、国際海運業所得に係る特例等の一定の特例の適用がある場合にはその適用後の金額をいう。)
② 共同支配会社等 共同支配会社等個別計算所得等の金額(共同支配会社等の各対象会計年度に係る当期純損益金額に加算調整額を加算した金額から減算調整額を減算した金額をいい、国際海運業所得に係る特例等の一定の特例の適用がある場合にはその適用後の金額をいう。)
(2)当期純損益金額
① 会社等の当期純損益金額
  会社等の当期純損益金額は、各対象会計年度に係る特定連結等財務諸表の作成の基礎となる構成会社等又は共同支配会社等の税引後当期純損益金額をいう(法法82二十六、法令155の16①一)。ここでいう「税引後当期純損益金額」とは、最終親会社等財務会計基準(最終親会社等財務会計基準に基づくことが実務上困難であると認められる場合には、代用財務会計基準。(2)において同じ。)に基づき計算される構成会社等又は共同支配会社等の当期純利益金額又は当期純損失金額であって、特定連結等財務諸表の作成において必要とされる一定の会計処理が行われなかったものとしたならば算出されることとなる金額をいう(法令155の16①一、法規38の13①②)。
② 恒久的施設等の当期純損益金額
  恒久的施設等の当期純損益金額は、次に掲げる恒久的施設等の区分に応じそれぞれ次に定める金額とされている。
 イ 恒久的施設等(下記ロに掲げるものを除く。) 最終親会社等財務会計基準に従って作成された又は作成されることとなる恒久的施設等の個別財務諸表に係るその最終親会社等財務会計基準に基づき計算された又は計算される恒久的施設等の当期純利益金額又は当期純損失金額(下記③において「恒久的施設等純損益金額」という。)(法令155の16①二)
 ロ 上記3(2)④に掲げる恒久的施設等 上記3(2)④の他方の国においてその恒久的施設等を通じて行われる上記3(2)④の会社等の事業から生ずる収益の額(その会社等の税引後当期純損益金額の計算に用いられる会計処理の基準に基づき計算される収益の額で、その会社等の所在地国の租税に関する法令においてその会社等の所得の金額の計算上益金の額に算入されないものに限る。)からその事業から生ずる費用の額(その会計処理の基準に基づき計算される費用の額で、その会社等の所在地国の租税に関する法令においてその会社等の所得の金額の計算上損金の額に算入されないものに限る。)を減算した金額(法令155の16①三)
③ 恒久的施設等の当期純損益金額の調整
  恒久的施設等の個別財務諸表が、税務上恒久的施設等に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表(最終親会社等財務会計基準に従って作成されることとなるものに限る。)と異なる場合には、その個別財務諸表に係るその最終親会社等財務会計基準に基づき計算される恒久的施設等純損益金額をもってその恒久的施設等の当期純損益金額とすることとされている(法令155の16⑪)。
④ 本店と恒久的施設等との間の当期純損益金額の調整
  構成会社等若しくは共同支配会社等が恒久的施設等を有する場合又は導管会社等に該当する構成会社等若しくは導管会社等に該当する共同支配会社等の事業がその構成会社等若しくはその共同支配会社等の構成員の恒久的施設等を通じて行われている場合には、これらの構成会社等又は共同支配会社等の税引後当期純損益金額には、これらの恒久的施設等の当期純損益金額を含まないものとされている(法令155の16⑫)。

16 調整後対象租税額
(1)対象租税

 対象租税とは、次に掲げる税をいう(法法82二十九、法令155の34①)。ただし、モデルルールにおける所得合算ルール(IIR)、軽課税所得ルール(UTPR)及び適格国内ミニマム課税(QDMTT)により課することとされる税その他一定の税は対象租税に含まれない(法令155の34②)。
① 国又は地域の法令における所得に対する法人税又は法人税に相当する税(下記②の税を除く。)
② 適格分配時課税制度により課される税
③ 上記①の税と同一の税目に属する税で、特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの
④ 特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税
⑤ 利益剰余金その他の純資産に対して課される税(所得と利益剰余金その他の純資産とに対して課される税を含む。)
(2)調整後対象租税額
① 意義
  調整後対象租税額とは、次に掲げる金額の合計額をいう(法法82三十、法令155の35①)。
 イ 当期対象租税額
 ロ 法人税等調整額に一定の調整を加えた金額(以下「繰延対象租税額」という。)
 ハ 特定連結等財務諸表の作成の基礎となる個別財務諸表(純資産の項目又はその他の包括利益の項目に限る。)に記載された一定の対象租税の額
② 当期対象租税額
  当期対象租税額は、当期法人税等の額に被配分当期対象租税額(構成会社等又は共同支配会社等が恒久的施設等である場合等の一定の場合において構成会社等又は共同支配会社等から他の構成会社等又は共同支配会社等に配分される対象租税の額をいう。)を加算した金額に個別計算所得等の金額以外の金額に係る当期法人税等の額を減算する等の一定の調整を加えた金額をいう(法令155の35②)。
③ 繰延対象租税額
  繰延対象租税額は、調整後法人税等調整額(基準税率を上回る適用税率により算出された繰延税金資産又は繰延税金負債は基準税率により算出されたものとする等の一定の前提の下で算出した場合における法人税等調整額をいう。)に一定の調整を加えた金額をいう(法規38の28③)。
④ 過大であった過去対象会計年度における調整後対象租税額が少額である場合に係る特例
  特定多国籍企業グループ等の選択により、構成会社等又は共同支配会社等の所在地国における国別の過去対象会計年度に係る過大であった調整後対象租税額の合計額が100万ユーロを本邦通貨表示の金額に換算した金額に満たない場合には、「再計算国別国際最低課税額」の計算における調整を行わないことができることとされている(法令155の35④、法規38の28⑪)。

17 自国内最低課税額に係る税
 自国内最低課税額に係る税とは、モデルルールにおける適格国内ミニマム課税(QDMTT)に対応するものとして定められており、外国の租税に関する法令において、その国又は地域を所在地国とする特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等に対して課される一定の税又はこれに相当する税をいう(法法82三十一)。

18 基準税率
 15%をいう(法法82の2②一、法令155の3②九)。本税制では、国又は地域において最低限度の課税が行われているかどうかを判定する基準として多く用いられる。

19 本邦通貨表示の金額への換算
 本税制の規定におけるユーロ金額の本邦通貨表示の金額への換算は、原則として、本税制を適用する対象会計年度開始の日の属する年の前年12月における欧州中央銀行によって公表された外国為替の売買相場の平均値を用いて行うこととされている(法規38の3、改正法規附則3③)。

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