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解説記事2020年02月03日 税務マエストロ 純資産価額方式における簿外資産の計上(2020年2月3日号・№821)

税務マエストロ
純資産価額方式における簿外資産の計上
#242
 税理士 梶野研二


略歴
国税庁 課税部 資産評価企画官付企画専門官、同資産課税課課長補佐、東京地方裁判所 裁判所調査官、国税不服審判所本部 国税審判官、東京国税局 課税第一部資産評価官、玉川税務署長などを経て、平成25年6月 税理士登録。現在、相続税を中心に税理士業務を行っている。○主な著書 「ケース別 相続土地の評価減」、「非公開株式評価実務マニュアル」(新日本法規)、「判例・裁決にみる非公開株式評価の実務」(共著)(新日本法規)、「株式・公社債評価の実務」、「土地評価の実務」(共著)(大蔵財務協会)

今回のテーマ

 「純資産価額方式」は、評価会社の有するすべての資産について課税時期における時価を求め、それら各資産の価額の合計額から負債の金額の合計額を控除し、さらに評価差額に対する法人税等相当額を控除して評価会社の株式の価額を評価する方法である。この評価方法においては、評価会社の貸借対照表や法人税申告書及び各勘定科目の明細などを参考にして課税時期に評価会社が有しているすべての資産を洗い出し、その評価を行うこととなる。この場合、貸借対照表等に計上されていない資産や負債であっても、課税時期において評価会社が有するものについては、純資産価額に反映させる必要がある。今回は、純資産価額方式の適用に当たり、計上漏れとなることの多い「簿外資産」について説明することとする。

マエストロの解説

1 純資産価額方式の概要

 取引相場のない株式の原則的評価方式の一つである純資産価額方式は、課税時期において評価会社が有しているすべての資産及び負債を財産評価基本通達等の定めに従って評価し、その資産の金額の合計額と負債の金額の合計額との差額である純資産価額を求め、その純資産価額から、評価会社の資産及び負債を財産評価基本通達等の定めに従って評価したことにより生ずる帳簿価額との評価差額に対する法人税等相当額を控除して、評価会社の株式の価額を求める方式である。これを計算式で示すと次頁のとおりとなる。この算式から明らかなように、1株当たりの純資産価額を計算するためには、課税時期における相続税評価額による総資産価額、すなわち、課税時期における各資産を財産評価基本通達の定めにより評価した価額の合計額を適正に求めなければならず、そのためにはまず、評価会社が課税時期において有しているすべての資産を明らかにしなければならない。

2 簿外資産

(1)簿外資産の把握
 上記1のとおり、1株当たりの純資産価額を求めるためには、評価会社が課税時期に有する全ての資産について、その時価を評価しなければならない。評価会社の有する資産は、直前期末の貸借対照表を基に法人税の申告書や各勘定科目の明細を参考にし、さらに直前期末から課税時期までの間の変動を織り込むことにより確定していくこととなる(脚注1)。しかしながら、課税時期において評価会社の有する資産のすべてが評価会社の帳簿に記載されているとは限らない。評価会社の帳簿に計上されていない資産(以下、本稿において「簿外資産」という。)であっても、課税時期において評価会社が有している資産については、総資産価額に反映させなければ正しい純資産価額を計算することはできない。つまり、評価実務上、「取引相場のない株式の評価明細書第5表」の「資産の部」の「相続税評価額」欄に評価会社が有する資産が網羅されている必要があるということである。
(2)簿外資産の生じる原因
 「簿外資産」が生じる原因としては、次に掲げるものが考えられる。
① 会計帳簿の仕組み上、そもそも資産に計上されないもの
  自然発生借地権や自己創設の営業権など
② 課税上の特例措置等により、資産に計上されていないもの
  租税特別措置法の規定により即時償却された機械装置など
③ 本来、帳簿に計上されていなければならないにもかかわらず、経理処理の誤り等により資産に計上されていないもの
  売上を帳簿に計上しなかったことにより作られた預貯金、役員に対する貸付金など
 ①の資産については、評価会社の事業実態を把握した上で、3で述べる典型的な簿外資産の有無についてチェックすることが必要である。
 ②の資産については、過去の法人税の申告書を確認することが求められる。
 ③の資産については、過去の法人税の税務調査の結果を見直すとともに、評価会社の役員等へのヒアリングと依頼者へのリスク説明を行っておく必要があろう。
 以下、純資産価額方式において、計上漏れとなることの多い資産について説明する。

3 純資産価額方式において計上漏れの多い資産

(1)借地権
 イ 簿外資産となる借地権
(イ)いわゆる自然発生借地権
  借地権とは、建物の所有を目的として設定された地上権及び賃借権をいい、借地借家法(旧借地法を含む。)により強い保護を受ける権利である。
  国内の多くの地域では、借地権の設定に際し権利金の授受が行われる慣行があるといわれている(脚注2)。評価会社が借地権の設定を受けるに当たり権利金を支払った場合には、当該権利金の額は、借地権として資産計上されることとなる。しかしながら、現在権利金の授受の慣行がみられる地域であっても、借地権の設定当時には、権利金の授受の慣行がなかった場合には、借地権設定時に権利金の授受が行われておらず、したがって土地の借主である評価会社の貸借対照表上に借地権が計上されていないこととなる。その後、課税時期までの間に権利金の授受の慣行が存在するに至った場合には、課税時期においていわゆる自然発生借地権が評価会社に存していることとなる(脚注3)。
  また、借地権の設定に当たり権利金の授受を行う取引慣行のある地域においても、権利金の授受に代えて相当の地代を支払うこととした場合には、評価会社において借地権が計上されることはない(法令137)。その後、この借地権の設定された土地の地価が上昇したにも関わらず、それと連動して支払地代の額が引き上げられないときには、借地権設定時に相当の地代の授受が行われていたとしても、相対的にその水準が低下し、課税時期においては、相当の地代に満たない地代の授受が行われている状態となる(脚注4)。契約時に権利金の授受がなされていないことから借地権者である評価会社の資産に借地権は計上されないが、課税時期においては、次頁の算式により評価した価額を借地権の価額として資産に計上しなければならない(相当地代通達(脚注5)4)。

(ロ)権利金の認定課税が行われなかったため簿外資産となっている借地権
  借地権の設定に当たり、権利金を授受する慣行があったにも関わらず、権利金の授受を行うことなく借地権の設定がされることがある。この場合、無償で借地権の設定を受けた法人は、権利金相当額の利益を受けたと認定され、これが法人税の課税所得を構成することとなり、同額が借地権の価額として資産に計上されることとなる。しかしながら、借地権の設定を受けた法人の認識が不十分であったことから、このような処理がされず、また税務当局による税務調査がなかったことから申告漏れの指摘を受けることもなく、その結果、無償で取得した借地権が資産に計上されることもないまま課税時期に至ることもあり得る。このような法人は、そもそも借地権課税についての認識の薄い法人であることから、その株式を評価する場合においても、借地権の計上を失念するおそれが高いと思われる。
(ハ)評価会社から被相続人に相当地代が支払われている場合等の扱い
  借地権の設定に際してその設定の対価として権利金を支払う取引上の慣行のある地域において、その権利金の支払いに代えて、相当の地代を支払うこととした場合には、権利金相当額の認定課税は行われない(相当地代通達1)。そして、相当の地代が支払われている限り、その借地権の価額は0として取り扱われることから(相当地代通達3)、一般的には純資産価額方式において借地権を資産に計上する必要はない。
  ただし、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対して土地を貸し付けている場合には、当該同族会社の純資産価額の計算に当たり、その借地権の設定されている土地の自用地としての価額の20%に相当する金額を借地権の価額として資産に計上する必要がある(相当地代通達6(注)、相当地代貸宅地通達(脚注6))。

○相当の地代を収受している貸宅地の評価について(昭和43年10月28日・直資3-22ほか2課共同)
 標題のことについて昭和42年7月10日別紙2のとおり東京国税局直税部長から上申があり、これに対して同年12月5日別紙1のとおり指示したところであるが、今後、同様の事案については、これにより処理されたい。
別紙1
 相当の地代を収受している貸宅地の評価について(昭和42年7月10日付東局直資第72号による上申に対する指示)
 標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を控除した金額により、評価することとされたい。
 なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。
(理由)
 地代率との相関関係から借地権の有無につき規定している法人税法施行令第137条の趣旨からすれば、本件の場合土地の評価に当たり借地権を無視する考え方もあるが、借地借家法の制約賃貸借契約にもとづく利用の制約等を勘案すれば、現在借地慣行のない地区についても20%の借地権を認容していることとの権衡上、本件における土地の評価についても借地権割合を20%とすることが適当である。
 なお、本件における借地権の価額を被相続人が所有するI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入するのは、被相続人が同社の同族関係者である本件の場合においては、土地の評価額が個人と法人を通じて100%顕現することが、課税の公平上適当と考えられるからである。
別紙2(省略)

(ニ)土地の貸借に関して「無償返還届出書」が提出されている場合の扱い
  法人又は個人が借地権を設定し、評価会社に土地を使用させた場合において、その地代の年額が相当の地代に満たない場合には、権利金相当額(実際に権利金の授受が行われている場合には、その額を控除した金額)の贈与があったものと認定し、評価会社に法人税の課税が行われる。しかしながら、借地権の設定の際の契約書において、将来、借地人がその土地を無償で返還することが定められており、かつ、その旨を土地等の所有者と借地人との連名の書面、いわゆる「無償返還に関する届出書」により納税地の税務署長に届け出たときには、この認定課税は行われず(法基通13-1-7)、借地権の価額は零として取り扱われることとなるから(相当地代通達5)、純資産価額方式において借地権を資産に計上する必要はない。
  ただし、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対して土地を貸し付けている場合には、「無償返還に関する届出書」が提出されているとしても、その借地権の設定されている土地の自用地としての価額の20%に相当する金額を借地権の価額として資産に計上する必要がある(相当地代通達8 なお書き、相当地代貸宅地通達)。
 ロ 簿外資産である借地権の有無の確認
  法人が建物を所有しているにも関わらず、土地を所有していない場合には、借地権が存すると考えられる。そこで、法人が建物を所有する場合には、その所有する建物の敷地が、土地の所有権なのか、借地権であるのかを確認する。法人の帳簿から、建物に対応する敷地が確認できない場合には、上記イのいずれかの借地権が簿外資産となっている可能性がある。
(2)雑種地の賃借権等
 借地権と並んで総資産価額の計算から漏れる可能性の高い資産が、建物には該当しない構築物の所有を目的とする賃借権である。堅固な構築物の所有を目的とする賃借権などを除き、一般に賃貸借の開始時に権利金等の一時金を支払う慣行がないことから、貸借対照表に賃借権が計上されていることはない。財産評価基本通達では、雑種地の賃借権の価額は、その残存期間に応じて、その土地が貸し付けられていないものとして評価した価額に一定の率を乗じて評価することとされている(評基通87)(脚注7)。
 また、事例はそれほど多いわけではないが、財産評価基本通達9(10)に定める占用権(脚注8)についても注意する必要があろう。
 このような賃借権等についても、簿外資産となっている借地権の場合と同様に、評価会社の事業活動の実態を十分に把握し、構築物等が計上されているにもかかわらず、土地又は土地の上に存する権利が計上されていない場合には土地利用の権原を確認する必要がある。
(3)営業権
 代表的な簿外資産として例示されている資産の一つが営業権である(脚注9)。一般に営業権とは、「企業が有する長年にわたる伝統と社会的信用、名声、立地条件、営業上の秘訣、特殊の技術、特別の取引関係の存在等を総合した、将来にわたり他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産価値を有する事実関係と解すべき」であり、これは、将来におけるその超過収益力を資本化した価値として、原則として課税時期においてこれを評価し、総資産価額の中に含めるべきものであるとされている(脚注10)。
 自己創設の営業権については帳簿に計上されておらず、有償取得した営業権であっても償却が完了したもの(脚注11)については帳簿価額が存在しないことから、総資産価額の計算上、計上漏れが生じやすい。
 財産評価基本通達においては、営業権の価額は次のように評価会社の超過利益金額を求め、その超過利益金額を営業権の持続年数に応じる複利年金現価率を乗じて求めることとしている(評基通165)。保有する資産に比して高い利益を上げているような会社については、営業権の有無を確認する必要がある(脚注12・13)。
 なお、財産評価基本通達においては、評価会社が自ら実施している特許権、実用新案権、意匠権及びそれらの実施権(評基通145、146)や自ら使用している商標権及びその使用権(評基通147)などの無体財産権については営業権の価額に含めて一括評価することとされているので、これらの資産が帳簿に計上されていないとしても、別途、評価して資産に計上する必要はない。

《営業権の評価方法》
 営業権の価額は、次の算式によって計算した金額によって評価する(評基通165、166)。
  平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額×0.05=超過利益金額
  超過利益金額×営業権の持続年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率=営業権の価額
(注)1 営業権の持続年数は、原則として10年とする。
   2 平均利益金額は、課税時期の直前期末以前3年間における所得の金額の合計額の3分の1に相当する金額(その金額が、課税時期の直前期末以前1年間の所得の金額を超える場合には、課税時期の直前期末以前1年間の所得の金額とする。)とする。この場合における所得の金額は、法人税法第22条第1項に規定する所得の金額に損金に算入された繰越欠損金の控除額を加算した金額とし、その所得の金額の計算の基礎に次に掲げる金額が含まれているときは、これらの金額は、いずれもなかったものとみなして計算した場合の所得の金額とする。
    ① 非経常的な損益の額
    ② 借入金等に対する支払利子の額及び社債発行差金の償却費の額
    ③ 損金に算入された役員給与の額
   3 標準企業者報酬額は、次に掲げる平均利益金額の区分に応じ、次に掲げる算式により計算した金額とする。

   4 総資産価額は、財産評価基本通達に定めるところにより評価した課税時期直前に終了した事業年度の末日における企業の総資産の価額とする。

(4)建物、構築物、機械装置、車両運搬具、器具備品等の減価償却資産
 財産評価基本通達においては、建物の価額は、原則としてその建物の固定資産税評価額に1.0を乗じて求めた金額により評価し(評基通89)、構築物の価額は、その構築物の再建築価額から、建築の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した後の金額(償却方法は定率法によるものとし、その耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に規定する耐用年数による。)の100分の70に相当する金額によって評価することとされている(評基通97)。また、機械装置、車両運搬具、器具備品などの動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価することとされているが、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額(償却方法は定率法によるものとし、その耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に規定する耐用年数による。)によって評価することとされている(評基通129、130)。
 しかしながら、建物以外の減価償却資産については、実務上、帳簿価額をそのまま評価明細書第5表の「相続税評価額」欄に記載しているケースも多く、評価額が少額で課税上の弊害がない限り、そのような処理もある程度許容されているものと思われる。
 ところで、租税特別措置法には、多くの即時償却及び特別償却・割増償却の特例が設けられている。これらの特例措置を適用した後の建物(脚注14)、建物附属設備(脚注15)、構築物、機械装置、車両運搬具、器具備品などの帳簿価額が、これらの資産を財産評価基本通達の定めによって評価した価額と乖離する場合には、評価会社の1株当たりの純資産価額が適正に算出されない。これらの特例措置を適用した資産について税務上の帳簿価額をそのまま「相続税評価額」欄に記載することは評価会社の純資産価額を過少に評価することとなる。特に、中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の即時償却(措法42の12の4)の特例を適用した資産、平成27年3月31日までの間に取得等をした太陽光発電設備(旧措法42の5①一⑥)、平成28年3月31日までの間に取得等をした風力発電設備(旧措法42の5⑥)、平成29年4月1日前に取得等をした特定生産性向上設備等(旧措法42の6⑦⑧)について即時償却の対象とされており、これらの設備等について即時償却が行われると、税務上、貸借対照表上に現れない簿外資産となっている場合があることから注意を要する(脚注16)。
 これらの特例を適用した資産については、財産評価基本通達の定めにより評価した価額を「相続税評価額」欄に記載することが必要である。
(5)生命保険金請求権
 被相続人を被保険者とする生命保険金の受取人が評価会社である場合には、当該生命保険金請求権を資産に計上し、当該生命保険金に係る積立金額については資産に計上しない。
 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算は、原則として評価会社が課税時期において仮決算を行い、課税時期における各資産及び各負債の金額を確定することによって行うことから、被相続人の死亡を保険事故とする生命保険金契約がある場合、課税時期において当該生命保険契約に係る生命保険金請求権が計上されることとなるが、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるとして、評価会社が課税時期において仮決算を行わずに、直前期末の資産及び負債を基に評価を行う場合にこの生命保険金請求権の計上漏れが生じやすいことから注意が必要となる(脚注17)。
(6)本来、会社の帳簿に計上されていなければならない資産
 上記(5)までに掲げた資産は、会計帳簿の仕組み上、そもそも資産に計上されないものであったり、課税上の特例措置等により資産に計上されていないものであるが、本来、会社の帳簿に計上されていなければならないにも関わらず、さまざまな理由で帳簿に計上されていない資産がある場合がある。例えば、会社の経費として帳簿処理をしたが、役員への貸付金と認められるケース、会社の売上の一部が簿外の預金口座に入金されている場合、子会社の株式の名義が評価会社以外の名義となっている場合などが挙げられる。このようなケースは、法人税の税務調査により明らかにされることが多いと思われる。株式の評価に当たっては、法人税申告書別表五(一)(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)の内容をチェックするとともに、株式の評価をした後においても、評価会社に法人税の税務調査が行われた場合には、株式の評価額に影響する指摘事項がなかったかどうかを確認し、仮に株式の評価額に影響する指摘事項があったと認められた場合には、速やかに評価額の再計算を行わなければならない。

4 おわりに

 資産に計上すべき資産を計上せずに算出した純資産価額をもとに相続税や贈与税の申告を行った場合には、税務調査により多額の過少申告を指摘されることとなりかねない。また、土地等や株式等の計上漏れがあった場合には、正しい評価を行った結果、評価会社が土地保有特定会社や株式等保有特定会社に該当することとなり(脚注18)、予期せぬ税負担を負うことにもなりかねない。純資産価額の計算上、資産に計上しなければならない簿外資産には、上記でみたように様々なものがあるが、計上漏れの多い資産については、わずかな注意を払えば容易に確認できるものが多いことから、基本に忠実な評価作業が重要となる(脚注19)。
 今後は、企業取引の広域化と取引の複雑化に伴い、海外資産の計上漏れや様々な無体財産権についても計上漏れが問題となる事例が増えてくると思われる(脚注20・21)。純資産価額の計算に当たっては、会社の活動の実態を的確に把握し、適正な評価に努めなければならない。

脚注
1 評価会社が課税時期において仮決算を行っていないため、課税時期における資産及び負債の金額が明確でない場合において、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、課税時期における各資産及び各負債の金額については、直前期末の資産及び負債の課税時期における相続税評価額により純資産価額を計算することが認められている(平成2年12月27日付直評23ほか「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」通達の「記載方法等」の「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の2(4))。多くのケースでは、この取扱いにより課税時期における資産及び負債に代えて、直前期末の資産及び負債を基に純資産価額を計算しているが、この場合には、直前期末の時点における簿外資産を明らかにする必要がある。
2 令和元年分の路線価図には借地権割合を示すアルファベットAないしGの表示がされ、また評価倍率表にもほとんどの地域に借地権割合の記載がみられる。これらの地域には借地権の設定に際し権利金の授受が行われる慣行があると考えられる。
3 課税時期において、なお借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にあると認められる借地権の価額については評価しないこととされていることから(評基通27ただし書き)、このような借地権は、純資産価額方式の適用に当たり、資産に計上する必要はない。
4 借地権の設定に当たり相当の地代を授受することとした場合において、その後の地代の額の改訂方法について、借地権の設定されている土地の価額の上昇に応じて順次その地代の額を引き上げることを定め、その旨を税務署長に届け出た場合(法基通13-1-8)には、相当の地代の授受が維持されているとみることができることから、自然発生借地権は生じない。
5 昭和60年6月5日付直資2-58・直評9「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」通達を本稿では「相当地代通達」と表記している。
6 昭和43年10月28日付直資3-22ほか2課共同「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達を本稿では「相当地代貸宅地通達」と表記している。
7 借地権については、借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しないこととされている(評基通27ただし書き)が、賃借権についてはこのような取り扱いは定められていないことに留意する必要がある。
8 占用権とは、河川法第24条(土地の占用の許可)(同法第100条第1項(この法律の規定を準用する河川)において準用する場合を含む。)の規定による同法第24条に規定する河川区域内の土地の占用の許可に基づく権利で、ゴルフ場、自動車練習所、運動場その他の工作物(対価を得て他人の利用に供するもの又は専ら特定の者の用に供するものに限る。)の設置を目的とするもの、道路法第32条第1項(道路の占用の許可)の規定による道路の占用の許可又は都市公園法第6条第1項(都市公園の占用の許可)の規定による都市公園の占用の許可に基づく経済的利益を生ずる権利で、駐車場、建物その他の工作物(対価を得て他人の利用に供するもの又は専ら特定の者の用に供するものに限る。)の設置を目的とするものをいう(地価税法施行令2②、評基通9(10))。
9 平成2年12月27日直評23・直資2-293ほか「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」通達の「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の記載方法においても、「評価の対象となる資産について、帳簿価額がないもの(例えば、借地権、営業権等)であっても相続税評価額が算出される場合には、その評価額を「相続税評価額」欄に記載し、「帳簿価額」欄には「0」と記載します。」と記載されている。
10 昭和63年1月27日東京地裁判決(税務訴訟資料163号23頁)。
11 営業権の法定耐用年数は5年である。
12 評価会社に営業権があると認められる場合に財産評価基本通達の定めに従ってその価額を評価することとなるのであるが、特段の理由がない限り、同通達の定めに従って計算した結果、超過利益金額が算出された場合に営業権が存すると判断されることが多いと思われる。
13 財産評価基本通達の定めに従えば、平均利益金額が5,000万円以下の場合は、標準企業者報酬額が平均利益金額の2分の1以上の金額となるので、営業権の価額は算出されない(評基通166(2)(注))。
14 建物については固定資産税の課税明細を確認することにより、資産への計上漏れは防止することができると考えられ、また、建物の価額は固定資産税評価額を基に評価することとされており(評基通89)、一般的には、帳簿価額をそのまま「相続税評価額」欄に記載することはないと考えられる。
15 建物附属設備で建物に取り付けられ、その建物と構造上一体となっているものについては、建物の価額に含めて評価されることとなっていることから(評基通92(1))、このような建物附属設備については、「相続税評価額」欄に記載しなければならないケースは少ないと考えられる。
16 厳密にいえば、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(租税特別措置法67の5①)(取得価額30万円未満の減価償却資産について、年間300万円を限度に損金に算入することができるとする特例措置。)の適用をした減価償却資産についても、評価額に及ぼす影響が少なくないと認められる場合には、「相続税評価額」欄への記載が必要となろう。
17 筆者の課税庁勤務時代の経験では、会計検査院の検査において生命保険金請求権の計上漏れが指摘される例が毎年少なからずあった。
18 評価明細書の「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の「土地等の価額の合計額」または「株式等の価額の合計額」欄に正しい金額が記載されていなければ、土地保有特定会社や株式等保有特定会社の判定を行う際の土地保有割合や株式等保有割合が正しく計算されないこととなる。
19 国税当局が、相続税の申告書に添付して提出することを呼び掛けている「相続税の申告のためのチェックシート」においても、非上場株式の評価に関して、「① 貸借対照表に計上されていない借地権はありませんか。」、「② 機械等に係る割増償却額を修正していますか。」、「③ 法人の受取生命保険金及び生命保険の権利の評価を資産計上していますか。」などのチェック項目が記載されている。
20 「P国の土地使用権は、土地○○法に法律の保護を受ける侵害できない権利である旨規定されており、また、都市○○法が、土地使用者が土地使用権の上に存する不動産を譲渡し、抵当に供する場合は、当該土地使用権を同時に譲渡し、又は抵当に供する旨規定していることからすれば、譲渡及び抵当権の設定が可能な財産であると認められ、また、評価会社により工業用地として現に有効に利用されていることから当該土地使用権は財産価値があると認められる」とされた事例(平成20年12月1日裁決・裁決事例集No.76-368頁)など。
21 ノウハウ、デジタルコンテンツ、暗号資産、許認可に係る権利などにも注意をする必要があると考えられる。

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