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解説記事2024年03月11日 税務マエストロ パーキングチケットの課税区分(2024年3月11日号・№1018)

税務マエストロ
パーキングチケットの課税区分
#298
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 パーキングチケットは駐車料金だと考え、仕入税額控除の対象としてきた実務家が多いようである。しかし、インボイス制度開始後のチケットにはインボイスの登録番号が記載されていない。ということは、パーキングの利用料金は課税仕入れではなかったということになるのだろうか。あるいはインボイスの保存がなくても仕入税額控除ができる「公共交通機関特例」の対象となる交通費に該当するのであろうか……。
 調べてみたところ、どうやら警視庁は問合せに対し、「非課税」と回答しているようである。「……消費税法第6条で消費税は非課税……」というシンプルな説明であるが、消費税法別表第2の5号(行政手数料)に該当するということなのだろうか……。たかだか300円の経費ではあるが、本稿ではこのパーキングチケットの課税区分について考えてみたい。

Ⅰ 警視庁ホームページの掲載内容

 警視庁のホームページから「トップページ→交通安全→道路環境への配慮→時間制限駐車区間(パーキング・メーター等)→時間制限駐車区間について」と検索すると、パーキングチケットに関する取扱いを確認することができる。
【パーキングチケットに関する取扱い】
○時間制限駐車区間

 短時間駐車の需要に対応するため、道路状況、交通への影響や支障などを勘案して、駐車枠で指定した場所・方法に限り短時間駐車を認めるというものである。
 このように時間を限って同一車両が引き続き駐車できる道路の区間であることが道路標識等により指定されている道路の区間のことを「時間制限駐車区間」という。
 使用するには指定された場所・方法を守る必要があり、守られていない場合は駐車違反になる。

○パーキング・メーター
 時間制限駐車区間内に設置され、車両を感知し引き続き駐車している時間を自動的に測定する機械のことである。
○パーキング・チケット発給設備
 時間制限駐車区間内に設置され、パーキング・チケットを発給する機械のことである。
 パーキング・チケットには、発給を受けた日時や駐車を終了すべき時刻等が自動的に印字される。

○インボイス制度への対応
 パーキング・メーターの作動手数料、パーキング・チケット発給機の発給手数料は、警察手数料に該当し、消費税法第6条で消費税は非課税とされている。

【FAQよくある質問】

Q. パーキング・メーターに入れるお金は、駐車場料金とは違うのですか。
A . 駐車場料金ではありません。
パーキング・メーター等の維持管理に必要な費用を、利用される方から「手数料」として納めていただくものです。

【パーキング・メーター等管理業務委託法人】
 千代田区・中央区は「一般財団法人 東京都交通安全協会」、東京都の他の市区町村は「株式会社GFM」と「株式会社アネシス」が令和5年4月1日~令和8年3月31日の期間で委託を受けている。

Ⅱ 非課税となる行政手数料の範囲

1 法律(別表第2)と施行令12①
 非課税となる行政手数料の範囲については、消費税の法令において次のように定められている。
(注)本稿のテーマである「パーキングチケットの課税区分」とは明らかに関係のない箇所については掲載と解説を省略する。

 まず、別表第2の5号のイの(1)~(4)に列挙するもののうち、(1)の「登記、登録、特許、免許、許可、認可、承認、認定、確認及び指定」と(4)の「裁判その他の紛争の処理」は、上記消令12①の非課税から除かれるものに書かれていないので非課税から除かれるものはなく、すべてが非課税となる。
 次に消令12①一のイ~ニであるが、前文で「検査、検定……次のいずれにも該当しないもの」と前置きしていることから、イ~ニに該当するものは非課税から除くものからさらに除かれ、結局のところ非課税となる。

 また、消令12①二は「前号に掲げる事務に係る証明……」と規定しているので、非課税から除外され、課税される事務(イ~ニに該当しない事務)に係る証明などが課税されることになる。また、一号のイ~ニに該当するものは非課税であるから、これらの事務に係る証明などは非課税となる。

2 法律(別表第2)と施行令12②

 上記の消令12②の1号と2号を読み比べてみると、どちらも別表第2の5号イと同様に、「国、地方公共団体、法別表第3に掲げる法人その他法令に基づき国又は地方公共団体の委託又は指定を受けた者が法令に基づき行う事務に係る役務の提供」である点は共通しているものの、1号は「料金の徴収が法令に基づくもの」との要件が柱書にあるのに対し、 2号についてはこの要件が付されていない。

3 基本通達
 非課税となる行政手数料等の範囲等については、消費税法基本通達:(非課税となる行政手数料等の範囲等)6−5−1と(非課税とならない行政手数料等)6−5−2に内容が整理されており、この基本通達の内容を要約して掲載すると下表のようになる。

Ⅲ 法令への当てはめ

1 法令に基づくものであること
 パーキングチケットの発給については、下記参考の警視庁関係手数料条例により、法令に基づくものであることが確認できる。
※法令には「条例」が含まれる(消基通6−5−1(1)前文前段の括弧書)

参考 警視庁関係手数料条例
※昭和24年東京都条例第67号の全部を改正して平成12年3月31日に条例第99号を公布。

(通則)
第1条 地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第227条の規定により東京都が徴収する手数料のうち警視庁が所管する事務に関する手数料(以下「手数料」という。)は、別に定めがあるもののほか、この条例の定めるところにより徴収する。
 (平13条例95・平17条例170・平27条例155・一部改正)
(手数料)
第2条 手数料は、別表第一及び別表第二のとおりとする。
             :
別表第一(第2条関係)
(平13条例73・平14条例102・平15条例115・平16条例107・平17条例96・平17条例126・平18条例88・平18条例113・平19条例75・平19条例144・平21条例54・平21条例79・平22条例109・平24条例87・平26条例89・平27条例87・平28条例3・平28条例112・平30条例48・令元条例56・令2条例47・令3条例114・令4条例62・令5条例45・一部改正)

2 消法別表2の5号に定める役務の提供のどれに該当するのか?
 パーキングチケットの発給手数料が非課税になることの根拠を探しながら、法令から通達まで精査してみたのだが、そもそも法別表第2の5号に列挙されている役務の提供のどれに該当するのかがわからない。
 別表第2の5号は「次に掲げる役務の提供」という書き出しで始まっている。よって、別表第2の5号に列挙されている役務の提供に該当しなければ非課税にはならない。
 では、「パーキングチケットの発給」という役務の提供は、登記、登録……と列挙されている役務の提供のどれに該当するのであろうか……。
 筆者が別表第2の5号を読む限り、イの(1)から(4)までで該当するものは見当たらない。ロの「政令で定めるもの」についても、それらしき役務の提供を見つけ出すことはできなかった。
 法別表第2の5号に定める役務の提供のいずれにも該当しないということであるならば、たとえ警視庁関係手数料条例に基づき徴収されるものであったとしても、そもそもが非課税にはならないと解釈すべきではないだろうか?

Ⅳ パーキング・メーター等の維持管理料とレッカー移動料との関係

1 パーキング・メーター等の維持管理料
 パーキングチケットの発給手数料(維持管理料)は、条例に基づき東京都に支払うものであるが、その金銭は、東京都を経由して東京都交通安全協会などに支払われている。
 よって、受託者である東京都交通安全協会が収受するパーキング・メーター等の維持管理は課税取引に該当することになる。
 では、東京都を経由して支払うパーキングチケットの発給手数料を、課税仕入れとして認識することはできないのであろうか?

2 レッカー移動料とパーキング・メーター等の維持管理料との関係
 交通違反の反則金は当然に課税仕入れとはならない。車両のレッカー移動料や保管料についても、交通違反に伴う損害賠償金であって、対価性がないことから課税仕入れには該当しない。
 ただし、警察の依頼により事業者が行うレッカー移動と車両の保管は課税取引に該当する(こんなときどうする消費税Q&A4013)。

 レッカー移動料は、あくまでも反則金の一部として徴収するものである。よって、たとえレッカー移動をする受託事業者と警察との取引が課税されるとしても、違反者が警察に支払うレッカー移動料は課税仕入れには該当しないことになる。
 しかし、パーキングチケットの発給手数料は、の【FAQよくある質問】にもあるように、パーキング・メーター等の維持管理に必要な費用を、利用者から「手数料」として収納するものである。よって、消費税の課税対象取引に該当し、さらには非課税にも該当しないことから課税取引になるべきものである。

Ⅴ 結 論

 週刊税務通信3790号(2024年02月19日号)の4頁には、パーキング・メーター利用料金は非課税であるとの記事が掲載されている。しかし、筆者が法令と通達を読む限り、パーキングチケットの発給手数料は非課税となる行政手数料には該当しないものと思われる。また、東京都を経由して東京都交通安全協会・(株)GFM・(株)アネシスに支払われている本件手数料は、課税仕入れに該当するものと思われる。東京都におかれましては、国税庁、警視庁と協議の上、パーキングチケットにインボイスの登録番号を記載することを早急に検討していただきたい。もしそれでもパーキングチケットの発給手数料が非課税だとするのなら、その根拠を示すとともに、せめて国税庁の質疑応答事例に掲載するくらいの配慮を期待したい。

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