解説記事2024年04月08日 第2特集 四半期報告書廃止に伴う企業内容等開示府令等の留意点(2024年4月8日号・№1022)
第2特集
比較情報の免除規定は設けず
四半期報告書廃止に伴う企業内容等開示府令等の留意点
四半期報告書制度を廃止する令和5年金融商品取引法等の改正に係る「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」等が3月27日に公布された。上場会社等は四半期報告書に代えて半期報告書の提出が必要になることに伴い、四半期報告書等に関する条文を削除するなどの見直しが行われている。令和6年4月1日から施行された。本特集では、1月9日まで意見募集を行っていた公開草案に寄せられたコメントに対する金融庁の回答等を踏まえ、Q&A形式で解説する。
IPO時の有価証券届出書にも四半期財務情報の記載可
Q
通常方式以外の様式により作成される有価証券届出書においても、金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期又は第3四半期の決算短信で開示される四半期財務諸表を記載できるのか。
A
第2号様式以外の有価証券届出書等においても四半期に係る財務情報の記載が可能であること及び提出会社が上場時に四半期決算短信を開示する予定であり、金融商品取引所の定める規則に準じて四半期に係る財務情報を作成している場合にも開示ガイドライン5−21−2及び5−21−3の規定が適用されることが明確になる修正が行われた(開示ガイドライン5−21−4)。
非上場会社も任意に四半期財務情報の記載可
Q
金商法による四半期財務諸表を作成し公表していた非上場会社が、改正後も自社のHPで任意に第1四半期・第3四半期の四半期財務諸表を公表する場合、社債発行等における有価証券届出書等の発行開示書類において四半期財務諸表を併記することは可能か。
A
提出会社が非上場会社である場合であっても、上場会社等に準じて任意に四半期に係る財務情報を記載することが可能である(開示ガイドライン5−21−3)。なお、この場合には、四半期に係る財務情報のほか、四半期に係る財務情報の作成に当たり準拠した基準等を記載する必要がある。
組込方式の場合は追完情報、参照方式の場合は添付書類に
Q
通常方式以外の様式による有価証券届出書においても四半期財務諸表を記載することが許容される場合、例えば、組込方式による有価証券届出書(第2号の2様式)及び参照方式による有価証券届出書(第2号の3様式)においては、経理の状況を含む企業情報を記載する欄が様式上存在しない。どこに記載すればよいのか。
A
第2号様式以外の有価証券届出書等における四半期に係る財務情報の記載の取扱いについては、改正前の取扱いを踏まえて、組込方式の有価証券届出書の場合にあっては追完情報に、参照方式の有価証券届出書及び発行登録書においては添付書類として、記載又は添付することができる(開示ガイドライン5−21−8)。ただし、当該規定はあくまで一例にすぎないため、提出会社が、投資者への情報提供の観点から適当と考える場合には、証券情報として記載することも妨げられないとしている。
四半期財務情報が必須にあらず
Q
開示ガイドライン5−21−3は、直近の四半期連結累計期間に係る経営成績の概要を併記することができるとあるが、これは同5−21−2の四半期財務情報が記載されていることを前提としているのか。
A
開示ガイドライン5−21−3は、直近の四半期に係る財務情報がまだ作成されていないときに、当該四半期に係る経営成績の概要を記載することが可能であることを明確化するものであるため、必ずしも四半期に係る財務情報が記載されている必要はない。
レビューは義務付けなし
Q
取引所規則により四半期に係る財務情報を作成しているときは、直近の四半期連結累計期間に係る書類を掲載することができ、その場合は当該財務情報に対するレビューの有無を記載することになっているが、当該財務情報を有価証券届出書「経理の状況」に掲載した場合、金商法に基づく期中レビューの対象としなくてよいのか。
A
四半期に係る財務情報は任意の記載事項であること、現在の有価証券届出書においても四半期に係る財務情報を四半期の経営成績の概要として記載する場合には当該情報に対するレビューは付されておらず、法定開示書類に記載される財務情報に常にレビューが要求されるものではないこと、取引所規則に基づく四半期決算短信においても四半期連結財務諸表へのレビューは任意であることなどから、有価証券届出書に四半期に係る財務情報を記載する場合であってもレビューは義務付けしないものとしている。
もっとも、四半期に係る財務情報におけるレビューの有無については、投資者が当該財務情報の信頼性を判断するに当たり有用な情報と考えられることから、四半期に係る財務情報を記載する場合には、併せてレビューの有無の記載を求めている。
なお、四半期決算短信に含まれる四半期財務諸表について監査人の期中レビューを受けていない場合であっても、有価証券届出書を提出することを目的として、当該四半期財務諸表に対して、監査人から期中レビューを受けることは可能であるとしている。ただし、期中レビュー手続を行うためには一定の時間を要するため、監査人との間で、予め資金調達を想定したスケジュールの共有等を行うことが重要となる。
四半期レビューの有無の記載場所の指定はなし
Q
四半期レビューの有無を記載する箇所はどこか。
A
四半期に係る財務情報に対するレビューの有無についての記載場所に指定はないが、投資者にとって分かりやすい箇所に記載することが望ましいとされている。なお、レビューの有無の記載文言については、例えば、「当該四半期に係る財務情報に対するレビューは行われている」又は「当該四半期に係る財務情報に対するレビューは行われていない」旨記載すればよいとされている。
「代替書面・添付文書」として提出
Q
レビュー報告書は、EDINETにおいて有価証券届出書の添付書類として提出することになるのか。
A
そのとおりである。もっとも、四半期に係る財務情報に対するレビュー報告書を提出する場合は、「監査報告書」としてではなく、「代替書面・添付文書」として提出することになる。
取引所規則で四半期財務情報公表も訂正届出書の提出不要
Q
有価証券届出書の訂正報告書を提出すべき場合に関して、開示ガイドライン7−3及び7−7から四半期連結財務諸表の作成・公表・監査証明等に係る場合が削除されているが、一般論として、「金融商品取引所の定める規則により四半期に係る財務情報」を作成・公表し、監査証明を受けたことをもって、直ちに有価証券届出書の訂正報告書を提出する必要が生じるものではないとの理解でよいか。
A
有価証券届出書において、取引所規則により四半期に係る財務情報の作成・公表が行われた場合であっても、監査法人のレビューの有無にかかわらず、訂正届出書の提出が求められるものではない。また、すでに任意で四半期に係る財務情報を記載している場合であっても、四半期財務諸表等が新たに公表され又はこれに係る監査証明を受けたことをもって、訂正届出書の提出が求められるものでもないとしている。
もっとも、四半期に係る財務情報が投資者の投資判断に有用と考える場合には、提出会社の判断によって、自発的に訂正届出書を提出することは問題ない。
レビュー終了後に訂正届出書の提出は必要なし
Q
有価証券届出書に監査法人によるレビュー前の四半期の財務情報を記載した場合、レビューの終了後に、訂正有価証券届出書の提出は必要か。
A
四半期に係る財務情報の記載は任意であることから、仮に有価証券届出書にレビュー前の四半期に係る財務情報を記載した場合であっても、レビュー後に訂正届出書を提出する必要はない。もっとも、提出会社の判断において、自発的にレビューを実施した旨の訂正届出書を提出することは妨げられておらず、この場合には、レビュー報告書を併せて掲げる必要がある。
施行日前に提出した発行登録書でも発行登録追補書類は改正後の様式使用
Q
有価証券報告書等の様式に係る規定の適用に関して、有価証券届出書及び発行登録書(開示府令第2号様式等)は、「施行日以後最初に有価証券報告書を提出した時から適用(改正法附則第3条第2項の規定により、改正後の規定に基づく半期報告書を提出する会社にあっては、施行日以後最初に当該半期報告書を提出した時から適用)」と記載されているが、今回の改正の施行前に提出された発行登録書に紐づく発行登録追補書類についても、当該規則に従い提出するという理解でよいか。
A
そのとおりである。発行登録書が施行日前に提出されたものであっても、その後、有価証券報告書が提出された場合には、当該有価証券報告書の提出後に提出する発行登録追補書類は、改正後の様式を使用する必要があります。
発行登録書を取り下げても5年間は公衆の縦覧
Q
金商法25条1項の改正に伴い、発行登録関連書類は5年の間公衆の縦覧に供されることになっている。発行登録書を取り下げた場合であっても、発行登録書を用いて発行することはできないが、公衆の縦覧には供されているという理解でよいか。また、この場合、取り下げられた発行登録書かどうかは分かるのか。
A
そのとおりである。取下げ後の発行登録書については、EDINET上、取り下げられた旨が分かるように掲載を行うこととしている。
比較情報の作成は必要
Q
令和5年金商法等改正に伴い半期報告書を初めて作成し提出する場合、①四半期連結財務諸表を含む四半期報告書を提出していた上場会社で、今後、第一種中間連結財務諸表を含む半期報告書を提出する会社、②中間連結財務諸表を含む四半期報告書を提出していた上場特定事業会社で、今後、第二種中間連結財務諸表を含む半期報告書を提出する会社等、③中間連結財務諸表を含む半期報告書を提出していた非上場会社で、今後、第一種中間連結財務諸表を含む半期報告書を提出する会社において比較情報の作成が求められるか。
A
比較情報は、財務諸表利用者の理解に資するため当期財務諸表の一部を構成するものとして記載することを求めており、財務諸表等規則等の本則規定上は会計方針の変更時において比較情報の記載を免除する規定は設けられていない。他方、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合に、その実務上の負担などへの配慮から、例外的に附則において適用初年度における比較情報を不要としたケースも存在する。
今回の改正においては、①四半期報告書を提出していた上場会社(上場特定事業会社を除く)が第一種中間(連結)財務諸表を含む半期報告書を提出する場合は、四半期報告書制度から半期報告制度への移行という制度変更に伴うものであり、制度としての連続性は途絶えているが、中間会計基準等の経過措置により四半期会計基準での処理をそのまま継続することが可能と考えられる。したがって、前第2四半期(連結)累計期間と同一の会計処理を継続していれば、前第2四半期(連結)累計期間の情報を修正することなく比較情報として掲載が可能であることから、比較情報を不要とする附則を設けないこととしている。
また、今回の改正を契機に従前とは異なる会計方針を採用した場合は、新しい中間会計基準を適用するものであるため、会計方針の変更には当たらないが、当中間(連結)会計期間への影響が大きい場合には、追加情報として、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に関する注記に準じて税引前中間純損益に対する前中間(連結)会計期間における影響額などを注記することが考えられる。なお、比較情報の作成に当たっては、中間会計基準38項が適用される。
②四半期報告書を提出していた上場特定事業会社が第二種中間(連結)財務諸表を含む半期報告書を提出する場合は、いずれも中間作成基準に準拠して作成されるものであり、通常は前期の情報を修正することなく比較情報として掲載可能と考えられることから、比較情報を不要とする附則は設けないこととされた。また、今回の改正を契機に従前とは異なる会計方針を適用した場合は、会計方針の変更の注記を検討することになる。
最後に今回の改正において、③半期報告書を提出していた非上場会社が第一種中間(連結)財務諸表を含む半期報告書を提出する場合は、準拠する会計基準が中間作成基準から中間会計基準に変わるが、中間会計基準は中間作成基準より簡便的な会計処理が多く認められているものであるため、前中間(連結)会計期間と同一の会計処理を継続していれば、前中間(連結)会計期間の情報を修正することなく比較情報として掲載が可能であると考えられることから、比較情報を不要とする附則は設けないこととされた。また、今回の改正を契機に従前とは異なる会計方針を採用した場合は、新しい中間会計基準を適用するものであり、前記①と同様の取扱いとなる。
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