税務ニュース2024年04月19日 被相続人の名義株ではとの指摘への反論(2024年4月22日号・№1024) 相続開始時までに株式の贈与があったことを主張・立証する必要
相続税の調査では、調査官から相続人名義の上場株式について、当該株式の取得資金の出捐者及び管理運用者が被相続人であることなどを理由に、当該株式は被相続人の名義株式であり、相続財産に加算すべきという指摘を受けることがよくある。
この場合、税理士が反論の根拠として、相続税法基本通達9−9《財産の名義変更があった場合》を引用するケースが見受けられる。すなわち、被相続人が当該株式を、取得資金を負担した上で相続人名義としていることから、その取得時点において原則として贈与として取り扱われるため、当該株式は被相続人の名義株式ではなく、相続人が被相続人から贈与により取得した株式であり、相続財産には含まれないとの主張だ。
相続税法基本通達9−9は、そもそも贈与は親族間で行われることが多く、贈与であるか否かの事実認定が困難であることや、贈与税も相続税も課税できないという事態を避ける必要があることを踏まえて設けられている。具体的には、一般に不動産登記等の名義(外観)が権利関係を公示するものであることに着目し、通常は「外観と実質が一致すること」、すなわち財産の名義人とされている者がその真実の所有者であるとの経験則が存在することを前提として、他の者の名義で新たに財産を取得した場合等には、「反証がない限り」は、名義と実質が一致するものとして贈与があったことを事実上推認する取扱いとしたものと解されている。したがって、「反証」としてその推認の前提となる経験則の適用を妨げる事情の存在が認められる場合には、その推認は働かないことになる(平成27年9月1日公表裁決)。
以上を踏まえると、税理士が単に相続税法基本通達9−9の取扱いそのものを述べても、調査官の見解は、推認の前提となる経験則を妨げる反証であるため、相続人名義で被相続人が株式を取得した時点において贈与があったという推認は働かないことになる。すなわち、税理士としては、相続人名義で株式を取得した後、相続開始時までの間に、被相続人から相続人に対し当該株式の贈与があったことを別途主張・立証する必要がある。
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