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解説記事2024年04月29日 ニュース特集 Q&Aで読み解く会社代表者の住所非表示措置(2024年4月29日号・№1025)

ニュース特集
住所閲覧が可能な“法律上の利害関係者”とは?
Q&Aで読み解く会社代表者の住所非表示措置


 株式会社の代表取締役等の住所を申出等により非表示とすることができる措置が令和6年10月1日より講じられることになった(本誌1024号12頁参照)。本特集では、代表取締役等住所非表示措置の留意点についてQ&A形式で解説する。なお、住所が非表示になった場合であっても、住所が記載された書面を閲覧することについて法律上の利害関係を有する者については、登記簿の附属書類の利害関係を有する部分として閲覧することにより代表取締役等の住所を確認することができるが、新たに取引をする際の与信審査といった場合については、“法律上の利害関係者”には該当しない。取引を締結することができないといった事態も想定されるので住所の非表示を行う際には十分に留意したい点だ。

新しい資本主義実行計画に「会社登記等における個人情報の取扱い」の見直し
Q

 今回の改正の経緯について教えてください。
A
 平成29年から審議が行われた法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、個人情報保護の観点から、登記事項証明書においては株式会社の代表者(代表取締役又は代表執行役)の住所を記載せず、例外的に利害関係を有する者についてのみ代表者の住所の記載のある登記事項証明書の交付を請求することができるようにするかが検討されていたが、最終的には、株式会社の代表者の住所は、中小企業の取引実務において与信審査等のために利用されており、これを閲覧することができなくなった場合には、実務上大きな影響があるとの意見が多く寄せられたため、改正は見送りとなった。ただし、例外的に株式会社の代表者がDV被害者等であり、当該代表者から申出があった場合のほか、登記情報提供サービスにおいては、会社代表者の住所に関する情報を一律に提供しないこととする附帯決議が付されることになった。
 その後、法務省は、附帯決議を踏まえ、令和4年2月16日に「商業登記規則等の一部を改正する省令案」を公表。意見募集の結果、株式会社の代表者がDV被害者等であり、当該代表者から申出があった場合については住所非表示措置が講じられたものの(令和4年9月1日施行)、登記情報提供サービスにおいて会社代表者の住所を一律に表示しないとした案は、「代表者住所は、企業の属性を把握する上で必須の情報であり、詐欺的な人物等が関与する企業との取引を排除するために必要」など、様々な意見が寄せられたため、引き続き検討することになった。ただ、令和5年6月16日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」では、会社登記等における個人情報の取扱いの見直しが盛り込まれたことを受け、今回の改正に至ったものである。

登記情報提供サービスについても
Q

 代表取締役等住所非表示措置の概要について教えてください。
A
 株式会社の代表取締役、代表執行役及び代表清算人の住所は、個人情報の観点から一定の書類とともに申し出ることにより、登記事項証明書及び登記事項要約書において非表示とすることができることになった。登記情報提供サービスについても同様だ。

非上場会社の場合は実質的支配者の本人特定の書面も
Q

 申出の際に一緒に提出する書類について教えてください。
A
 住所を非表示とするには、設立の登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時に登記官に申し出ることが必要となる。申出に当たっては、上場会社である株式会社であれば「株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面」(すでに非表示措置が講じられている場合は不要)、上場会社以外の株式会社の場合は、原則として、①株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等、②代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書(住民票の写しなど)、③株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面(資格者代理人の法令に基づく確認の結果を記載した書面など)の添付が必要となる。なお、すでに非表示措置が講じられている場合は、前記②の書類のみで足り、株式会社が一定期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、③の書類添付は不要とされている。

実質的支配者に関する書面の提出理由は消費者被害対策
Q

 非上場の株式会社については、実質的支配者に関する書面を提出させることとしていますが、どのような理由からでしょうか。
A
 消費者被害対策として、会社の実質的支配者が本来の行為者である場合において、被害者等がその責任を追及することを可能とするためである。

住所は市区町村まで
Q

 非表示措置が講じられた場合、住所はすべてわからなくなるのでしょうか。
A
 非表示措置が講じられた場合の代表取締役等の住所は、市区町村まで(東京都は特別区、指定都市は区まで)の記載となる(下記参照)。法務省は、行政区画を表示することにより、会社の事務所がない時の会社の普通籍が明らかになるとともに、代表取締役等の特定に資するとしている。

周知期間を考慮し施行は「令和6年10月1日」
Q

 いつから施行されることになりますか。
A
 代表取締役等の住所非表示措置は、「令和6年10月1日」から施行するとされている。令和5年12月26日に公表された商業登記規則等の改正案では、施行日が「令和6年6月3日予定」とされていたが、関係者への周知期間が必要との意見を踏まえ施行日が変更されているので要注意だ。

すでに登記されている住所は適用対象外
Q

 すでに登記がなされている住所は非表示にすることができないのでしょうか。
A
 住所を非表示とするには、設立の登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時に登記官に申し出ることが必要となる。
 したがって、すでに登記がなされている代表取締役等が住所を非表示とする申出をすることができないので留意したい。ただし、その後に住所を変更するタイミングで非表示措置を講じることは可能となっている。

退任した代表者の住所も適用対象外
Q

 退任した代表取締役の住所を非表示とすることができますか。
A
 今回の住所に非表示措置は、登記の申請の際の申し出によることになるため、閉鎖事項証明書や閉鎖登記簿謄本に記載された住所を含め過去の住所についても適用対象外となる。

非表示措置の可否は書面などの要件から判断
Q

 住所の非表示措置は、登記官が適当と認めるときに講じられるとされていますが、その判断基準はありますか。登記官による恣意的な運用を懸念しています。
A
 必要な書面が添付されるなど、規定された要件を満たしているかの観点から判断される。したがって、登記官による恣意的な運用は想定されていない。

士業だからといって閲覧することは不可
Q

 弁護士や司法書士等であれば住所を閲覧することはできますか。
A
 弁護士や司法書士といった特定の士業だからといって住所を閲覧することはできない。また、銀行業などの特定の業種についても同様である。

附属書類の閲覧請求により利害関係者は閲覧可能も与信審査の場合は不可
Q

 非表示とされた代表者の住所は、どのような場合であれば閲覧することができるのでしょうか。閲覧することができない場合、業務上、不都合なケースも想定されます。
A
 住所が非表示になった場合であっても、住所が記載された書面を閲覧することについて法律上の利害関係を有する者については、登記簿の附属書類の利害関係を有する部分として閲覧することにより代表取締役等の住所を確認することができるとされている。
 法律上の利害関係を有する者については、例えば、すでに取引の契約を締結しており、債権を有している場合などであれば該当する模様。ただし、与信審査など、まだ取引関係に入っていない場合については“法律上の利害関係を有する者”には該当しないため、登記簿の附属書類を閲覧することはできない。

住所を非表示にした場合のデメリットは
Q

 住所の非表示措置を採用した場合、どのようなデメリットが生じる可能性がありますか。
A
 住所の非表示措置について、実際に行うかどうかは、あくまでも会社自身の判断に委ねられている。非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないことになり、金融機関から融資を受ける際に不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりする可能性がある。
 前述したとおり、与信審査の際には取引先が会社代表者の住所を確認することができないため、取引を避けられることも想定される。住所の非表示措置を行う際には慎重な判断が必要となりそうだ。

非表示措置は申出によりいつでも終了可
Q

 住所の非表示措置をやめることはできるのでしょうか。
A
 住所の非表示措置については、申出によりいつでも終了することができる。終了する場合は登記申請と同時である必要はなく、単独で行うことが可能。また、仮に当該株式会社が本店所在場所に実在しないことが認められた場合などには、登記官が職権で非表示措置を終了させることができるとされている。なお、「実在しないことが認められた場合」の判断基準は、今後、通達で明らかにされるとしている。

非表示措置の場合も登記の申請義務は免除されず
Q

 住所が非表示となった場合、今後は住所が変更になっても登記する義務は免除されますか。
A
 株式会社の代表取締役等の住所の非表示措置が講じられた場合であっても会社法の登記義務が免除されるわけではない。このため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記の申請をする必要があるので留意したい。

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