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解説記事2024年05月06日 SCOPE 子会社から債務免除受け、子の滞納国税に第二次納税義務(2024年5月6日号・№1026)

利益相反取引に該当し無効との主張認められず
子会社から債務免除受け、子の滞納国税に第二次納税義務


 子会社から土地の売買代金債務の免除を受けた親会社が、子会社の滞納国税に係る第二次納税義務を有するか否かが争われた事案で、東京地裁民事38部(鎌野真敬裁判長)は令和6年4月19日、処分の取消しを求めた納税者の請求を棄却した。
 原告は、本件売買契約は、原告及び子会社双方の代表取締役を務めていた人物が締結したものであるから、利益相反取引に該当し無効であり、本件債務免除は無効などと主張していたが、東京地裁は、親会社である原告の株主が本件売買契約について承諾しており、利益相反取引を理由に無効とはならないとの判断を下した。
 両者は完全親子会社関係にあるため利益相反取引に該当しないとした裁決とは異なり、株主の承諾の有無を判断要素とした点、注目される。

代表取締役が同一の親子会社間の利益相反の有無、株主の承諾を判断要素に

 不動産の売買、仲介、賃貸等を行う株式会社である原告は、Y社を完全子会社化するとともに、Y社が所有する土地を約8億円で購入する売買契約を締結した。その後、本件売買契約に係る売買代金債務について相殺や弁済などがされたが、平成25年11月、Y社は原告に対し残金約2億5,000万円(本件未収金債務)を免除した。
 処分行政庁は、Y社の滞納国税に係る徴収すべき額の不足は、本件債務免除に基因するとし、原告に対し、第二次納税義務を負うとして納付告知処分を行った。本件は、原告がその処分の取消しを求めて訴訟に至った事案である。

裁決は完全親子会社間に利益相反なしと判断
 原告は、本件売買契約は、当時原告及びY社双方の代表取締役を務めていたA氏が、原告及びY社の双方を代表して締結したもので、会社法356条1項2号に定める利益相反取引に該当するから無効であり、本件未収金債務は存在せず、本件債務免除は無効などと主張していた。
 国税不服審判所は、会社法356条について、「取締役が会社の利益の犠牲において自己又は第三者の利益を図ることを防止することが趣旨であると解されており、親会社の取締役が子会社を代表して親会社と取引する場合にも、子会社に当該親会社以外の株主が存するときは適用がある一方、親会社が子会社の発行済株式総数の100%を保有するときは親子会社間に利害の対立がなく適用がないと解されるところ、請求人は、本件売買契約の締結の際に、滞納法人の株式を100%保有する完全親会社の立場にあり、当該各規定の適用はないと解するのが相当であることから、本件売買契約は成立している」との判断を下していた。
 一方、東京地裁はまず、「仮に、本件売買契約当時、原告の全株式の保有者が、A氏であった場合、本件売買契約が利益相反取引に該当しないか、利益相反取引に該当したとしても総株主の承諾が認められるから、本件売買契約が利益相反取引を理由に無効となることはない」とし、また、「仮に、本件売買契約当時、原告の全株式の保有者がB氏であった場合、本件売買契約が利益相反取引に該当したとしても、総株主であるB氏が本件売買契約の経緯につき承諾をしていれば、本件売買契約が利益相反取引を理由に無効となることはない」として、B氏が本件売買契約の締結について承諾をしていたか否かについて検討した。
その後の代取と株主とのトラブルは影響なし
 東京地裁は、①原告が当該取引に関与する目的は、2億5,000万円の転売益を得ることにあったといえるから、B氏が当該土地の購入代金と売却代金に大きな関心を寄せていたことが強く推認されること、②本件株式売買契約や別件売買契約については、B氏がA氏から事前に説明を受け、その内容を了承してから、原告が契約を締結していることも考慮すれば、本件売買契約についても、B氏がA氏から事前に説明を受け、その内容を了承していたと考えるのが自然であること、③B氏がA氏から本件売買契約の内容について説明を受けて然るべき機会が複数あったことなどを指摘し、本件売買契約の内容について認識していなかったなどのB氏の供述等は不自然であるとした。
 一方原告は、A氏が、原告が取得した本件各土地の一部を、A氏が実質的に支配していたR社経由で転売し2億円以上の利益を得ていたとし、このことから平成25年6月頃、B氏が税理士に調査依頼し、関係者らを集めてA氏を糾弾し、A氏が原告およびY社の代表取締役を辞任したことなどを挙げ、B氏は本件売買契約の締結を承諾していないと主張した。
 しかし東京地裁は、本件売買契約の後にB氏がA氏とトラブルになったとしても不自然ではなく、原告が主張する事情は、B氏が本件売買契約の締結を承諾したことと必ずしも矛盾するものではないとした。
 結論として、東京地裁は、本件売買契約は有効であり、本件売買契約が無効であることを理由に、本件滞納国税に係る徴収不足が本件債務免除に基因しないということはできないとして、原処分を適法とした。

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