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解説記事2020年03月02日 未公開裁決事例紹介 審判所、各月最低額は定期同額給与に該当せず(2020年3月2日号・№825)

未公開裁決事例紹介
審判所、各月最低額は定期同額給与に該当せず
利益調整に利用しているか否かは関係なし



○理事長に対する宿直手当等が役員給与として損金の額に算入できるか否かが争われた裁決。国税不服審判所は、各月額最低額は、当該事業年度における各院長手当の支給額が最低であるものを結果から見て月額最低額としたものであると指摘。定期同額給与とは認められないと判断した(令和元年5月30日、棄却)。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、総合病院等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の職員による法人税等の調査において、理事長に対する月々変動する宿直手当等の額は定期同額給与の額に該当しないとの指摘を受け、当該手当等の各事業年度において最も少ない月の金額に相当する額を差し引いて修正申告をしたところ、原処分庁が、当該宿直手当等の全額が定期同額給与の額に該当しないとして法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実
 当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 請求人の概要
  請求人は、××××××××に設立された、××××××××××××××に主たる事務所を置く、病院及び介護老人保健施設を経営する社団たる医療法人であり、理事長には、平成25年2月28日から××××が就任している。
  なお、××××は、平成2年6月30日から平成25年2月27日までの間は、請求人の副理事長であった。
ロ 請求人の病院等について
  請求人は、請求人の主たる事務所の所在地で、「×××××」という名称の総合病院(以下「本件病院」という。)及び「×××」という名称の介護老人保健施設(以下「本件施設」という。)を運営し、××××は、平成2年中から本件施設の苑長を、平成11年5月1日から本件病院の院長をそれぞれ務めている。
ハ 役員給与の額の決定等
  請求人は、平成24年4月1日から平成25年3月31日まで、同年4月1日から平成26年3月31日まで、同年4月1日から平成27年3月31日まで及び同年4月1日から平成28年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成25年3月期」、「平成26年3月期」、「平成27年3月期」及び「平成28年3月期」といい、これらの各事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)の開始前の毎年3月に開催する理事会で、各翌事業年度の役員給与の額を決定しており、××院長に対して支払う医師としての給与についても、給与規程に基づく基本給等の額及び手当(以下、これらを併せて「医師給与等」という。)を別表1(編注:略)のとおり支給する旨を決定した。
ニ ××院長に支給した各種手当
  請求人は、本件各事業年度において、××院長に対して、「××××××職員就業規則」の第34条(給与)に基づく「××××××給与規程」(以下「本件給与規程」という。)などに基づき、勤務実績に応じて支給する下記(イ)から(ニ)までの各種手当を別表2-1から別表2-4(編注:略)までのとおり支給した。
  以下、××院長に対して支給した下記(イ)から(ニ)までの各種手当を併せて「本件各院長手当」という。
(イ)土曜日直手当
  医師が、土曜日(本件病院の休診日を除く。)の12時30分から17時30分までの間、日直として勤務した場合に支給する手当で、1回当たり10,000円である。
(ロ)年末年始の手当
  医師が、本件病院の年末年始の休診日に日直又は宿直として勤務した場合に支給する手当で、1日当たり4,000円である。
(ハ)早出手当
  医師が、月曜日の7時30分から8時30分までの間、早出勤務した場合に支給する手当で、1回当たり5,000円である。
(ニ)回数手当
  医師が、17時30分から翌日の8時30分までの間、宿直として勤務した場合に支給する手当(宿直手当)又は本件病院の休診日の8時30分から17時30分までの間に、日直として勤務した場合に支給する手当(日直手当)で、1回当たり25,000円である。
  ただし、宿直又は日直として勤務した時間が、上記の所定の時間に満たない場合は、勤務時間数に応じた計算による金額である。
ホ 請求人の経理処理等
  請求人は、本件各事業年度において、××院長に対する役員給与の額及び別表3(編注:略)の医師給与等の額を、それぞれ損金の額に算入した。
へ 国税庁が公表している質疑応答事例等
(イ)役員に対する歩合給について
  国税庁は、ホームページ上の「質疑応答事例」の「法人税」のページで公表している「役員に対する歩合給(定期同額給与)」(以下「本件役員歩合給質疑」という。)において、各月の支給額が異なることとなる役員に対する歩合給については、法人税法第34条第1項第3号に規定する業績連動給与のうち一定の要件を満たすものに該当するものを除き、損金の額に算入されない旨回答している。
(ロ)役員給与が複数回の改定があった場合の取扱いについて
  国税庁がホームページ上の「その他法令解釈に関する情報」のページで法令解釈通達の趣旨説明として平成20年12月に公表(平成24年4月改訂)した「役員給与に関するQ&A」(以下「本件役員給与Q&A」という。)のQ3の「複数回の改定が行われた場合の取扱い」において、一事業年度中に役員給与の複数回の改定が行われた場合には、改定の前後で期間を区分し、それぞれの期間ごとに、その期間中の各支給時期において支給される定期給与の額が同額であるかを判定することになる旨説明した上で、定時株主総会において定期給与の額の改定及び法人税法施行令第69条《定期同額給与の範囲等》第1項第1号に規定する改定(以下、これらの改定を併せて「本件通常改定等」という。)以外の増額改定後の各支給時期における支給額が同額であるときなどは、増額改定後の期間において増額改定前の支給額に増額分を上乗せして支給したものであるともみることができると考えられる旨説明して、このような場合には、損金不算入額は、増額改定後の定期給与の額のうち増額改定前の支給額に上乗せして支給した部分の金額となる旨の取扱いを示している。
(4)審査請求に至る経緯等
イ 確定申告
(イ)法人税
  請求人は、本件各事業年度の法人税について、青色の確定申告書に、別表4(編注:略)の「確定申告」欄のとおりそれぞれ記載して、いずれも法定申告期限までに原処分庁へ提出した。
(ロ)復興特別法人税
  請求人は、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税事業年度(以下「平成26年3月課税事業年度」という。)の復興特別法人税について、青色の申告書に別表5(編注:略)の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに原処分庁へ提出した。
(ハ)地方法人税
  請求人は、平成27年4月11日から平成28年3月31日までの課税事業年度(以下「平成28年3月課税事業年度」という。)の地方法人税について、青色の確定申告書に別表6(編注:略)の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに原処分庁へ提出した。
ロ 修正申告等
(イ)原処分に係る調査
  原処分に係る調査の担当職員は、平成30年1月17日から請求人に対する税務調査を開始した。
  そして、上記の担当職員は、請求人が、本件各院長手当を支給している事実を把握した。
(ロ)法人税の修正申告
  請求人は、別表7(編注:略)のとおり、本件各院長手当の手当ごとの月額支給額のうち、各事業年度において最も少ない金額に相当する金額(以下「本件各月額最低額」という。)は、定期同額給与の額に該当するが、これを超える部分は定期同額給与の額に該当しないなどとして、平成30年3月14日、別表4の「修正申告」欄のとおり記載した平成25年3月期、平成26年3月期及び平成27年3月期の法人税の各修正申告書を原処分庁へ提出した。
(ハ)復興特別法人税の修正申告
  また、請求人は、平成30年3月14日、別表5の「修正申告」欄のとおり記載した平成26年3月課税事業年度の復興特別法人税の修正申告書を原処分庁へ提出した。
ハ 更正処分等
(イ)法人税
  原処分庁は、平成30年5月8日付で、本件各院長手当が定期同額給与に該当しないことから、その全額が損金の額に算入されないとして、別表4の「更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分並びに平成26年3月期、平成27年3月期及び平成28年3月期の法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
  以下、平成26年3月期、平成27年3月期及び平成28年3月期の法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分を併せて「本件法人税各賦課決定処分」という。
(ロ)復興特別法人税 原処分庁は、平成30年5月8日付で、別表5の「更正処分等」欄のとおり、平成26年3月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分(以下「本件復興特別法人税更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件復興特別法人税賦課決定処分」という。)をした。
(ハ)地方法人税
  原処分庁は、平成30年5月8日付で、別表6の「更正処分」欄のとおり、平成28年3月課税事業年度の地方法人税の更正処分(以下「本件地方法人税更正処分」という。)をした。
ニ 審査請求
  請求人は、平成30年8月2日、上記ハの(イ)から(ハ)までの各処分に不服があるとして、審査請求をした。
ホ 再更正処分
  その後、原処分庁は、平成30年9月11日付で、平成28年3月期の法人税について、別表4の「再更正処分」欄のとおり、再更正処分をした。
  以下、本件各事業年度の法人税の各更正処分(平成28年3月期については、平成30年9月11日付でされた再更正処分後のもの)を併せて「本件法人税各更正処分」という。

争点および主張

 本件各事業年度の本件各月額最低額は、定期同額給与の額に該当するか。

【表】争点についての主張

原処分庁 請求人
 本件各院長手当は、支給時期が1月以下の一定の期間ごとではない手当や各支給時期における支給額が同額ではない手当であり、その全額が定期同額給与に該当しないから、その一部である本件各月額最低額は、定期同額給与の額に該当しない。
 また、本件役員歩合給質疑では、「たとえ一定の算定基準に基づき、規則的に継続して支給されるものであっても、その支給額が同額でない給与は、定期同額給与には該当しないこととなります」と理由が付されており、当該理由からすれば、本件役員歩合給質疑は、「支給額が同額でない給与は、定期同額給与に該当しない」ことを明らかにする事例として公表されたものであり、定期同額給与に該当しない給与が業績連動機能を有するもの等に限定されるということではない。
 さらに、各支給時期における支給額が同額であるものを要件としている法人税法第34条第1項の柱書の文理からも、請求人の主張するように解釈することはできない。
 本件各月額最低額が定期同額給与の額に該当するか否かの判断は、次のとおり、法人税法第34条の立法趣旨に沿った同条の論理解釈によるべきであるから、本件各月額最低額は、定期同額給与の額に該当する。
(1)平成18年度税制改正前の取扱いと改正の趣旨及び法人税法第34条第1項の趣旨と解釈
 イ 平成18年度税制改正の前においては、役員報酬の各月の金額が多少増減している場合であっても、各月の金額がおおむね同額であるときは、その全額が損金算入されていた。
  そして、平成18年度税制改正の趣旨について、立法担当者は、平成18年度税制改正の前に役員報酬として損金算入が認められていたものは、平成18年度税制改正後も、そのまま損金の額に算入することを認める趣旨である旨説明している。
 ロ 法人税法第34条第1項の趣旨は、役員給与を事業年度の中途に増額することで、役員給与を、お手盛りや恣意的な増額による利益調整及び法人税負担の回避(以下「利益調整等」という。)に利用することを防止する目的であるところ、請求人はあらかじめ決められた本件給与規程に従って、宿日直等に実際に従事した回数等に応じて、本件各院長手当を支給しており、本件各院長手当を利益調整等に利用していない。
 ハ なお、本件役員歩合給質疑が、業績連動機能を有する歩合給や能率給等が定期同額給与の概念に明らかに背反する事例として公表されていることからも、上記の法人税法第34条第1項の趣旨は利益調整等の防止であることが裏付けられている。
 ニ 国税庁は、本件役員給与Q&AのQ3において、事業年度の中途で役員給与の増額が行われた場合、本件通常改定等によらない増額前の金額に、増額金額を上乗せして支給したとみることができるので、増額部分だけが損金不算入額となる取扱いを明らかにしており、法人税法第34条に規定されていない内容を説明している。このことは、国税庁が法人税法第34条の解釈において、文理解釈ではなく論理解釈によるべきことを示したものである。
(2)本件各院長手当の支給が毎月恒常化していること
  本件各院長手当は、過去10年間の支給状況をみると、本件病院の運営上不可避的に発生し毎月支給されており、月によって著しい変動は見られない。また、××院長が担当する曜日等が定着しているから、実質的に毎月固定的に発生が予定されている同額部分があるといえる。
  このような同額部分を含む本件各院長手当については、その全額を直ちに損金不算入とすることは平成18年度税制改正の趣旨に反している。

審判所の判断

(1)認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件各院長手当の額の算出
  請求人は、他の常勤の医師と同様に、××院長が各種手当の支給事由に該当する勤務をした実績に応じ、1月を単位として、本件給与規程等において定められた1回又は1日当たりの支給額に、宿直、日直等の回数又は日数を乗じて、本件各院長手当の額を算出している。
ロ 本件各院長手当の支給
  請求人は、本件各院長手当について、上記イのとおり算出した額を原則、翌月25日に支給している。
(2)検討
イ 法人税法第34条第1項第1号は、内国法人がその役員に対して支給する給与で損金の額に算入することができる定期同額給与について、「各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与」と規定しているところ、請求人は、本件各月額最低額は、定期同額給与の額に該当する旨主張するので、以下検討する。
ロ 本件各院長手当は、上記(1)のとおり、本件給与規程等に基づき、定められた支給事由に対する1回又は1日当たりの支給額に、当該支給事由に該当する勤務をした回数又は日数を乗じて月ごとに算出されて支給されており、××院長の従事した実績に応じて、その月々の支給額が月ごとに変動するものであるから、「各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与」とは認められず、法人税法第34条第1項第1号に規定する定期同額給与に該当しない。
  そして、本件各月額最低額は、事業年度が終了した後に、当該事業年度における本件各院長手当の支給額が最低であるものを結果から見て月額最低額とするものであり、請求人が本件各月額最低額のみを別途計算して月ごとに支給しているものでもなく、上記(1)のとおり算出されて支給された月々の支給額が月ごとに変動する本件各院長手当の額と同額又はその一部にすぎない。
  したがって、本件各院長手当は、上記のとおり、定期同額給与に該当しないのであるから、本件各院長手当の額と同額又はその一部である本件各月額最低額は定期同額給与の額に該当しない。
(3)請求人の主張について
イ 平成18年度税制改正の趣旨及び法人税法第34条第1項の趣旨等を根拠とする主張について
(イ)請求人は、上記のとおり、平成18年度税制改正の趣旨及び法人税法第34条の趣旨等からすれば、平成18年度税制改正の前に役員報酬として損金算入が認められていたものは、平成18年度税制改正後も、そのまま損金の額に算入することが認められる旨、及び利益調整等に利用されない本件各院長手当については、本件各月額最低額は定期同額給与の額に該当するとの法人税法第34条の立法趣旨に沿った論理解釈を行うべきである旨主張する。
(ロ)法人税法第34条第1項は、役員給与のうち、①定期同額給与、②その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしている場合の当該給与を含む一定のもの又は③利益連動給与のうち一定のもののいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨定めている。
  このように、法人税法第34条第1項が損金の額に算入できる役員給与について具体的に規定して、上記の①から③までの定期同額給与等のいずれにも該当しないものの額が損金の額に算入されないこととされたのは、法人と役員との関係に鑑みると、役員給与の額を無制限に損金の額に算入することとすれば、その支給額をほしいままに決定し、法人の所得の金額を殊更に少なくすることにより、法人税の課税を回避するなどの弊害が生ずるおそれがあり、課税の公平を害することとなるためであると解される。
  しかしながら、租税法規は、多数の納税者間の税負担の公平を図る観点から、法的安定性の要請が強く働くから、その解釈は、原則として文理解釈によるべきであり、文理解釈によっては規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合に初めて、規定の趣旨・目的に照らしてその意味内容を明らかにする目的論的解釈が行われるべきであって、みだりに拡張解釈や類推解釈を行うべきではないと解されている。
  そうである以上、役員給与が法人税法第34条第1項各号に列挙されている定期同額給与等のいずれにも該当しない場合は、その役員給与については、損金の額に算入することができず、たとえ、その役員給与が、法人が利益調整等の目的で支給したものではなく、立法趣旨に反していないものであるとしても、このことをもって、損金の額に算入することができるものとはなり得ない。
  したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ロ 本件役員歩合給質疑の取扱いに関する主張について
  請求人は、上記のとおり、本件役員歩合給質疑が、業績連動機能を有する歩合給や能率給等が定期同額給与の概念に明らかに背反する事例として公表されていることからも、法人税法第34条第1項の趣旨は利益調整等の防止であることが裏付けられており、本件各院長手当を利益調整等に利用していない旨主張する。
  しかしながら、法人が利益調整等に利用しているか否かによって、法人税法第34条第1項各号に掲げる各給与に該当するか否かを判断するものではないことは、上記のとおりである。
  したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ 本件役員給与Q&AのQ3に関する論理解釈によるべきとする主張について
  請求人は、上記のとおり、本件役員給与Q&AのQ3では、本件通常改定等によらない増額があった場合であっても、増額前の金額に、増額金額を上乗せして支給したとみることができるので、増額部分だけが損金不算入額となる取扱いを明らかにしており、このことから、本件役員給与Q&AのQ3は、国税庁が法人税法第34条第1項第1号について文理解釈ではなく論理解釈によるべきことを示したものである旨主張する。
  しかしながら、本件役員給与Q&AのQ3は、法人税法第34条第1項第1号の定期給与について、一事業年度中に複数回の改定が行われた場合に、定期給与が定期同額給与に該当するか否かを判定するための取扱いを示したものであり、上記のとおり、本件各院長手当の増減は、給与改定によって生じたものではないのであるから、請求人の主張はその前提を異にしている。
  したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ニ 支給が毎月恒常化しているとする主張について
  請求人は、上記のとおり、本件各院長手当は、過去10年間の支給状況をみると、本件病院の運営上不可避的に発生し毎月支給されており、月によって著しい変動は見られず、××院長が担当する曜日等が定着していることが分かり、実質的に毎月固定的に発生が予定されている同額部分があるといえるから、このような同額部分を含む本件各院長手当について、その全額を直ちに損金不算入とすることは平成18年度税制改正の趣旨に反している旨主張する。
  しかしながら、病院の運営上不可避的に発生する支出であったとしても、法人税法上、損金の額に算入されないものがあり、役員給与については、法人税法第34条によって損金算入に制限が設けられていることは上記のとおりであり、仮に、本件各院長手当が病院の運営上不可避的に発生する費用であったとしても、その事実が本件各月額最低額の部分を含む本件各院長手当の全てが定期同額給与に該当するか否かの判断に影響を及ぼすものではない。
  したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(4)本件法人税各更正処分の適法性について
 上記のとおり、本件各月額最低額は定期同額給与の額に該当しないから、本件各事業年度の損金の額に算入することはできず、これに基づいて、当審判所において、請求人の本件各事業年度の所得金額、納付すべき税額及び翌期へ繰り越す欠損金額を計算すると、本件法人税各更正処分における額といずれも同額となる。
 また、本件法人税各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件法人税各更正処分は、いずれも適法である。
(5)~(9)(略)

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