税務ニュース2024年05月31日 換価代金交付終了で交付要求の効力消滅(2024年6月3日号・№1029) 東京地裁、回復すべき法律上の利益はなく訴えの利益を欠くと判断
本件は、税務署長が行った①確定申告で生じた還付金を予定納税の一部に充当する処分、②無申告加算税を完納しなかったとして原告の給与支払請求権に対する差押処分、③差押処分の執行機関(税務署)に対する交付要求は、いずれも違法であるなどとして、処分の取消しを求めたものである。原告は、医療法人の従業員に対する給与支払請求権を有しているところ、税務署は、納付されなかった予定納税分の国税を徴収するため、原告の給与支払請求権を差押債権とする差押処分を行った。あわせて、原告の無申告加算税等を徴収するため、税務署の徴収職員は差押処分の執行機関に対して交付要求を行っていた。なお、訴訟が提起された後、医療法人から国税全額の支払いが行われている。
国(被告)は、差押処分により差し押さえた債権の取立てとして、第三債務者である医療法人から国税の全額の支払いを受けている以上、交付要求の効力は消滅したものと解されるため、その取消しによって回復すべき法律上の利益はないと主張。一方、原告は、交付要求とは無関係に行われた医療法人からの送金をもって交付が終了したことにはならないから、交付要求に係る取消しの訴えの利益を有していると主張した。
東京地裁は、交付要求は滞納者の財産につき滞納処分等の強制換価手続(徴収法2条12号)が行われた場合において、その執行機関に対して滞納に係る国税について換価代金等を交付すべきことを要求するものであることからすれば、強制換価手続において換価代金等の交付が終了した場合には、その効果が消滅するというべきであると指摘。この場合には、交付要求の取消しにより回復すべき法律上の利益は存しないとの見解を示した。
本件では、差押処分により差し押さえた債権の取立てとして、第三債務者である医療法人から無申告加算税等に係る国税残額の全額に相当する額の送金を受けていることから、差押処分において医療法人から給付を受けた金銭の交付は終了したものと認められ、交付要求は、その効果が消滅したものと解されるとした。したがって、原告には、もはや交付要求の取消しによって回復すべき法律上の利益は存せず、訴えの利益を欠くとの判断を示し、原告の主張を斥けた。また、充当処分、差押処分の請求についても理由がないとして棄却した。
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